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プロローグ
少女は駆ける。
獲物を求める野獣のように。
その姿は美しく、その心は清く、その矜持は気高く、そして力は残酷に。
その刃を血で染めるがごとく。
ただ、求めるように。
「突破された!S30、N45!」
左耳に突っ込まれたイヤホンから、緊急通達が入る。
「了解!追撃します!」
少女は黒い渦の中へと飛び込む。その先は、上下左右全てが、黒いカーテンで覆われたような不気味な空間。しかし、方角を知っているのか、少女は構わず走り続ける。しばらくすると、前方に光が差し込み始めた。
「逃がさないわ、絶対に!」
少女は光の中へと溶けていく。