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ニート狐たちのフォックストロット  作者: ポテンティア=T.C
63/66

2.2-14 うみ?6

「あやしい……」じとぉ


「…………」ぷるぷる


聞いてもいないのに雨女の話をするアメちゃん。

私と視線を合わせずにそっぽを向いて、小刻みに震えているところが、なおさらあやしいです。

そう言えば、前にキャンプをした時とか、アメちゃんが(うち)に住むことが決まった時とか、事あるごとに雨が降っていたような……。


「まぁ、いいけどね。私、雨女とか、信じてないから」


「えっ……」


「……もしかして、雨女だと思ってほしかったの?アメちゃん?」


「い、いや……そういうわけでは……ないぞ……?」


「やっぱり、あやしい……」


雨女かどうかは別にして、アメちゃんがすっごく挙動不審です。

これ、絶対なんか隠してますね……。

今度、問い詰めてみよっと。


まぁ、それは置いておいて。

どうしよっかなぁ……雨……。

このままだと、海で泳いでもあまり楽しくないし……やっぱり晴れてる方が良いですよね。

それにみんな楽しみにしてたんだし……。


というわけで、対処策を提案してみようと思います。

……誰に、って?

もちろん、我が家で全権を握っている主さんです。


「……主さん。テレサちゃんに天気変えてもらうように頼んでもいいなぁ?」


それに対して――


「…………」ふるふる


主さんは、首を縦に振りませんでした。

その理由は簡単です。


「……そうだよね。私たちの存在がバレちゃったら大変だもんね……」


下手に魔法を使って、私たちの存在が公の下に晒されるようなことがあったら、世界全体が大変な事になっちゃいます。


……いえ。

私たちが有名になっちゃうとか、それはそれほど重要なことじゃありません。

それが原因で、もっと面倒な事になっちゃうほうが大変です。


……お姉ちゃんたちの存在が、世界に知れ渡る……。


それが何を意味するのか。

私の想像を超えた話になっちゃうので断定は出来ませんが……。

多分、日本は、全世界の国から除け者にされて、孤立することになっちゃうでしょう。

――世界を一瞬で滅ぼせるだけの超兵器を隠し持っていた、と言われて……。


……え?私?

ちょっと何言ってるか分かりませんねー。


「まぁ、雨が降ってても、嵐とかじゃなければ、泳ごうと思えば泳げるし……それに最悪、別の遊び方もあると思うしね」


「…………」こくこく


「うん、そうだよね。主さんの言う通り(?)、降水確率自体は元々0%なんだから、すぐに晴れるかもしれないしね」


でも……。

テレサちゃんは、どう考えてるんだろう……。

その辺、ちゃんと考えてるのかなぁ……。


考えれば考えるほど、放っておいても、テレサちゃんが魔法を使うような気がしてきました。

彼女には前科がありますし……。


「……ちょっと電話するね?」


「…………」こくり

「うむ。構わぬ」


主さんとアメちゃんの表情を見ると、2人とも同じことを考えていたみたいです。

なら、ちゃんとテレサちゃんのことを止めないと!


トゥルルルル……


呼び出し音が6回ほど鳴って――


『はい。佐々木なのじゃ?』


佐々木さんが電話に出ました。

いったい誰でしょうね?

もちろん、テレサちゃんの番号に掛けているので、テレサちゃんしかいないんですけど……。


『……テレサちゃん、ふざけてるの?』


『……偽名なのじゃ。お主だって、佐々木と名乗ることがあるゆえ、分かっておるじゃろ?』


『……この前、佐藤って言ってなかった?』


『……田中、とは名乗ったことがあるかの?イニシャルが”テレサ”も”田中”も、両方とも”T”じゃからのう』


冗談なのか、本気なのか、良く分からないです。

でも多分、本気かなぁ。


『で、テレサちゃん。そっちの天気はどうなの?こっち雨降ってるんだけど……』


『うむ……残念ながら雨なのじゃ?まぁ、皆の者たちは、気にせず泳いでおるがの?どーせ、アメがこっちに向かってきておることが原因なのじゃろ?』


『テレサちゃんもそう思うんだ……』


『アメは生粋の雨女じゃからのう……』


これが、以心伝心、というやつでしょうか?

もちろん、私とテレサちゃんが、じゃなくて、アメちゃんとテレサちゃんが、ですけど。


さて。

いつまでも電話をしているわけにもいかないので、さっさと本題に入ろうと思います。


『ところでテレサちゃん。魔法使って、天気変えてない?主さんが、天気を帰るのはダメ、って言ってるよ?』


と、私が問いかけると――


『……ふっふっふっふ……』


何を思ったのか、テレサちゃんが、気持ちの悪い笑い声を上げ始めました。


『……もう切っていい?』


『冷たいのう……』


『いや、だって、テレサちゃんが怪しげな笑い声を上げるから……』


『……ふっふっふっh』


ブツッ……

プーップーップーッ……


「……テレサはなんと言っておった?魔法とやらは使っておらんかったか?」


「直接は聞いてないけど……使ってないと思う。向こうも雨降ってる、って言ってたし……。それに一応、釘を刺しておいたから、今日は多分、使わないんじゃないかなぁ?」


「さよか。お主らも、中々、気遣いが大変じゃのう?」


「んー、テレサちゃんはそうかもしれないけど、私の場合はちょっと違うかな?」


「ん?」


「ううん。なんでもない」


そう。

私は、魔法を使うか使わないかに、気は使ってません。

気を使っているのは、魔法の行使がバレないように、魔法を隠蔽するアルゴリズムの部分です。

具体的に言うなら――オートスペルの部分に、ね。


それに、もしもまったく魔法を使わないと……いえ。

なんでもありません。

その話は、機会があったら、いつかゆっくりと話そうと思います。


そんなこんなで……。

目的地に到着するまであと1時間。

私たちは雨の中を走る車に揺られ続けたのでした。

早く、夏、終わんないかなぁ……。

我が家の人たちは、みーんな暑いのが苦手です。

テレサちゃんなんか、今の時期、5分外で活動しただけで、熱中症にかかっちゃいます。

あれで本当に機械の身体なのかなぁ……。


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