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ニート狐たちのフォックストロット  作者: ポテンティア=T.C
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2.2-11 うみ?3

……そしてその日がやって来ました。

あれから1週間。

僕は、炎天下の中、考えに考え、とある結論に達したのです。


遠く離れると電波が届かなくなるというのなら……すなわち、細く長く分身たちをつなげていけば、各々が中継局の代わりになって、遠くまで意識が届くのではないか、と。


ですが、流石に、200km近く離れた目的地まで、分身たちをずっとつなげていくのは難しいですし、それに、そんなことしたら、本当に炎天下の中に、分身たちを放置しなくてはならなくなります。

更に言えば、展開も回収も大変……。

それでは本末転倒です。


なので……


『あー……たまにはこういうのもいいですねー』ぷかぷか


「いや、お主……。この町では元の姿に戻らぬのでは無かったのかの?」


夜の内に近くの港まで移動して、そして元の姿に戻って……。

そこで潜水艦をやることにしました。

まぁ、元は空中戦艦ですけど、別に、タービンの中に水を吸い込んで放出すれば推進機関は成立するので、実際のところは、空とか海とか関係ないんですよね……。


『なんか、もう、満足しました。さて、帰りますか』


「えっ……ちょっ、待つのじゃ!妾たちの海は、まだこれからなのじゃ?!」


『えぇ。もちろん、分かってます。僕だって、もっと綺麗な海で漂っていたいですからね』


というわけで。

僕とテレサ様は、今、町の港に沈んでいます。

より詳しく説明するなら、元の姿に戻った僕の中に、テレサ様が乗り込んでる、といった構図です。


本当は皆さんのことも乗せて、目的地まで移動したかったのですが、水中を移動すると、どうしても時間がかかってしまうので、主さんや他の人たちのスケジュールが合わず……。

その上、必ずしも安全とは断言できなかったので、何かあった時に対処できるテレサ様だけが乗り込んでいる、というわけです。

テレサ様は1回死んでますし、2回や3回くらい死んだところで、大した問題ではないでしょうからね。

……冗談ですけど。


そんなこんなで、僕たちは、先遣隊として、目的地の海岸に向かうことになりました。

後は、海岸に着いて、僕たちが安全を確保できれば、ルシアちゃんが転移魔法を使って皆を送り込んでくる、という寸法です。


「それにしても、なぜ、妾はここにいるのじゃろうかのう……と、港までの道中、何度も考えたのじゃが……やっぱり答えが見つからぬのじゃ……」げっそり


『そりゃ、テレサ様が皆さんに頼られているからではないですか?もっと、自信を持っていいと思いますよ?もしも、僕が浸水して沈んだりしても、テレサ様なr』


「おっと、それ以上は、言ってはならぬのじゃ?余計なフラグを立てるでないのじゃ……」


『テレサ様、機械の身体なのに、意外とそういうの気にしますよね……』


「……確かに妾の頭や身体の一部は機械かもしれぬが、心まで機械になったつもりはないのじゃ。縁起の悪いことは言わないのがベストなのじゃ。よく言うじゃろ?『思考が運命に繋がる』、と」


『それ、違うテレサ様の言葉ですよね……』


……詳しくはネットで検索して下さい。


まぁ、それはさておいて。


『ではそろそろ出発しましょうか』


「うむ。よーそろー、なのじゃ?」


『あ、操舵はすべて僕の方でやるので、そういうのいらないですよ?あと、ヨーソロー(直進)だと岸壁に衝突します』


「……ホント、妾は何をしに来たのじゃろうかのう……」げっそり


そう言って、ぐてー、と艦橋の椅子に沈み込むテレサ様。

どうやら彼女は僕のことを操舵してみたかったようです。

機能しないおもちゃの操縦桿でも置いておきましょうか……。



それから海の中をしばらく進み、外洋に出て。

僕たちは水深100m付近の水底を這うように進んでいきました。

これ以上、水深を上げると、付近を航行する他の船に影響が出ちゃうかもしれないですし、ソナーで見つかっちゃうかもしれないですし……。

逆に水深を下げると、無駄に水圧が上がって、外装を構成する分身たちに負担がかかっちゃいます。

ですから、100mくらいの場所を航行するのが、バランス的に良かったんですよ。


「しっかし、暇じゃのう……zzz」


『目的地周辺にたどり着いたら起こすので、それまで寝てていただいても構いませんよ?』


「……お主、妾が寝ておる間に、いたずらしたりしないじゃろうな?この前は、いつの間にか、妾の匂いを掻いで、機械臭い、などと言っておった気がしたのじゃがのう……」


『いえ。不可抗力で臭いを嗅ぐような状況に陥らない限りは、ありえないと考えて頂いて結構です。』


まぁ、今がその不可抗力な状況なんですけれどね……。

だって、周囲の壁も、テレサ様がふんぞり返っている椅子も、空気清浄機も、すべて僕の分身たちが形作ってるのですから……。

でも、それを言ったら、何となく大変な事になりそうなので、言わないでおきましょう。


と、そんな時でした。


ポォォォォォン……


水中を不意にそんな音が響き渡ってきたのです。

どうやらこの音は……


「ピンガー音じゃのう……」

『ピンガー音ですね……』


アクティブソナーの音だったようです。


どうやら……。

僕たちは早速、不審な潜水艦として、日本海軍かアメリカ海軍に所属する、艦船か哨戒機に見つかってしまったみたいです。

さて、どうしたものか……。



殺伐とした世の中で、僕たちみたいなイレギュラーが生きていくには、解決しなくてはならない問題が、色々とあるんですよ。

正直、放っておいてほしいのですが、面白そうなおもちゃを見つけたと言わんばかりに絡んでくる人たちとか……たくさんいますよね……。

こっちは真面目に生活を送っているだけなんですから、絡んでこないでほしいものです。

まぁ、社会というのは、そう言う風に出来てるものなんですけどね……。


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