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ニート狐たちのフォックストロット  作者: ポテンティア=T.C
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2.2-05 ほたる?5

何もない空間から稲荷寿司を創り出したルシアちゃん。

ただ、それがアメさんの言うような『神通力』であるとは限りません。

なにせ彼女は、転移魔法を自由自在に操ることのできる魔法使い。

お寿司が置いてある場所さえ分かれば、召喚することだって、容易(たやす)いことなんですから。


とは言っても――


「これ……食べれるのかなぁ?」


ルシアちゃん自身が戸惑いながら、お寿司を見ていたところを見ると、どうやら彼女は転移魔法を使ってお寿司を召喚したわけでは無いようです。


「……お主、何故、よりにもよって稲荷寿司を創り出した……」


「だって、アメちゃんが言ってたじゃん。神通力って、『想いの力』だ、って……。だから、強く思っただけだよ?」


「「「『…………』」」」


それはまぁ……そうなんでしょうね……。

多分、どの世界の、どこを探したって、思いの力だけで稲荷寿司を作り出せる人物なんて、ルシアちゃんしか居ないと思います。

逆に、お寿司以外のものが作り出せるか聞きたいところですが……藪蛇な気がするので、止めておきましょう。


「しかし……ふむ……」


ルシアちゃんが創り出した稲荷寿司を、何処か嬉しそうに観察しながら、納得げな表情を見せるアメさん。

それから彼女は、そのままの表情で、ルシアちゃんにこう言いました。


「どうも主には、神通力の才能がありそうじゃな。それも、ワシがこれまで見たことがないほどにの?」


「ふーん。で、これ、食べれるの?」じゅるっ


「……そ、そうじゃのう。主がしっかりと詳細な部分まで想像できておるなら、食べることも出来るじゃろうて。じゃが、生半可な想像なら、味も食感もすべてが半端じゃろう。最悪、ひどい味やもしれぬが……実は、この神通力、実体があるわけでは無いゆえ、食べたところで毒で死ぬ、ということはない。その代わり栄養も無いg」


「じゃぁ、いただきまーす!」パク


「……お主、ワシの話を聞いてないじゃろ?」


「んー、美味しい!もう1個!」ボトッ


「「「『…………』」」」


もう、なんて言えばいいのでしょうね……。

まぁ、ルシアちゃんが幸せそうなので、とりあえず良いということにしましょうか。



それから僕も、テレサ様も、主さんも神通力が使えるかを試してみたのですが、やはり僕らには難しい話でした。

前兆の現象どころか、何も起こらないのですから。

やはり、神通力とは、魔法の一種なのかもしれませんね。


なので、僕と主さんはすぐに諦めたのですが――


「ぐぬぬぬ……」


テレサ様は、未だに何かを生み出そうと、手を虚空にかざしていました。

傍から見れば、完全に中二病の末期患者です。


『あの……テレサ様?』


「な、何じゃ?今、忙しいのじゃが……」ゴゴゴゴゴ


『えっと……がんばってください……。ところで、何を創り出そうとしているのですか?』


「……聞きたいかの?」にやり


……いえ。

聞いてから思いましたけど、あんまり聞きたくないかもしれません。

なんとなく分かりますし……。


それから、やっぱり良いです、と断ろうかと考えていたのですが……。

返答せずとも、テレサ様が勝手に喋り始めました。


「ワルツの機動装甲なのじゃ?」


『あ、そうですか……』


「何じゃ、お主……。そちらから聞いておきながら、随分とツレナイ反応ではなかろうかの?」


『あの、テレサ様?お言葉ですけど、ワルツ様の機動装甲の中身って……ご存知なのですか?』


「んぐっ?!」


『神通力というのは、想像力を力にする能力なのですよ?細部まで想像できなくては、たとえ作り上げられたとしても、ハリボテでしかないと思うのですが……』


「む、むむむ……!」


テレサ様は難しそうな表情を浮かべて唸り始めると、それっきり黙ってしまいました。

つい今しがたまで、神通力が使えるかを考えていたのに、多分、今は、ワルツ様の機動装甲の中身を必死になって考えているに違いありません。

見たこともないのに、想像できるのでしょうか?

まぁ……頑張ってください。


そんなやり取りを1時間ほど繰り返しながら歩いていると、いつの間にかお寿司屋さんの前までやってきていました。

先日までアメさんが潜伏していた神社の前にある、お寿司屋さんです。


「寿司屋はまだやっておるようじゃが……ルシア嬢?あれから何個食べておるかは知らぬが、それでもまだここに寄って、寿司を買っていくのかのう?その様子じゃと、もう十分……」


「何言ってるの?テレサちゃん。アメちゃんの話、聞いてなかったの?」


「「「『…………』」」」


「これ、何個食べても、栄養にならないんだよ?一向にお腹も膨れないし……」ボトッ


「……のう、アメよ?ルシア嬢のやつ、ちゃんとお主の話を聞いておったようなのじゃ?」


「そうみたいじゃな……」


「さっ!買いに行こ!」ガラガラ


そして店の中に入ってくルシアちゃん。


それから彼女は主さんにお金を貰って、稲荷寿司を購入するのですが……。

1ヶ月分のお小遣いを、迷わずにすべて、稲荷寿司の購入に使ってしまうところは……流石としか言いようがありません。

僕の想像を越えて、稲荷寿司のことが大好きなのでしょう。

だからこそ、初めて使う神通力で、稲荷寿司を創り出せたのかもしれませんね。



その後で、僕たちは、ホタルが見える場所まで向かうことになったのですが、少しばかり時間が早く……。

今、丁度、太陽が沈みゆくところでした。


「まだかなり早いのう……」


町並みの隙間にかろうじて見える、そのオレンジ色の太陽を眺めながら、そう口にするテレサ様。


するとアメさんが、頭2つ分ほど背の低い彼女の頭に手を置いて、こう言います。


「なれば、丁度良い。近くまで来たことじゃし、ワシの住処に寄って()こうぞ?色々と持っていきたいものもあるからのう」


そう言って彼女が視線を向けた先には、赤い鳥居がたくさん立ち並ぶ神社があって……。

入り口の左右には、厳つい表情をした狐の石像が飾ってありました。

どうやら典型的な稲荷神社のようです。


それを見て――


「妾、この場所がすごく苦手なのじゃ……」


テレサ様が珍しく、そんなことを言い始めました。

今は魔法で獣耳も尻尾も見えなくしていますが、もしも見えていたなら、しょんぼりとしていることでしょう。


『何かあったのですか?』


「うむ……。前にここで()()()ことがあるのじゃ……」


『…………?』


何か気になるニュアンスですね……。

僕がそれに気付いて首を傾げていると、テレサ様が言葉を追加します。


「ここには……(おきな)がおるのじゃ……。それも、化物のような翁が、のう……」


テレサ様の言う『翁』というものが、一体どんなものなのかは分かりませんが……。

幾多の戦場を抜けてきたテレサ様が恐れているのです。

きっと、その翁というモノは、とんでもない化物に違いありません……。


……そういうことにしておきましょう。



テレサ様の強いご要望により、『翁』を登場させていただk……え?

別に要望してない?

またまたそんな……。

事あるごとに、『おじいちゃんが降臨したのじゃ!』とか、謎の発言をしているではないですか。

まったく、テレサ様はツンデレなんですから……。


さて。

問題は次回からの話ですね。

今回までの話は、僕の関与があまり無かったと思うのですが、次回からは飛ばしていく予定です。


こう、カサカサカサ、ブーン、と……。

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