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ニート狐たちのフォックストロット  作者: ポテンティア=T.C
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2.2-02 ほたる?2

これはもう、みなさんを見返すしかありません!

マイクロマシンだからという理由だけで、忌み嫌われるなど、あってはならないことです!

でも、姉は、皆にすごく(した)われているんですよね……。

やってることは同じはずなのに、どうしてでしょうか?


……え?冷蔵庫の下にいるのが問題?

実は、昔、トイレに潜んでいたのですが、主さんに怒られてしまって、追い出されたんですよ。

それでその次は、キッチンの収納の中に移動したのですが、今度はテレサ様に怒られてしまって……。

仕方なく、ソファーの下にいたら、今度はアメさんに、よく分からない薬剤を掛けられるという始末。

最終的に落ち着いたのが、この冷蔵庫の下だったんですが、最近はルシアちゃんがどうも僕を嫌っているようで、3食のお寿司を取り出す度に、蔑むような視線を向けてくるんです。


これはもう、僕がいる場所が、どうこうという問題ではない気がしてきました。

……え?気付くのが遅い?

では一体、原因は何なのでしょうか?


ここは直接聞くのが良さそうですね。

……仕方ありません。

あまり人前では見せないことにしていましたが、分身たちを呼んで、人の形に変わることにしましょう。


カサカサカサ……

カサカサカサ……

カサカサカサ……


テレビや、ルームライトや、インターフォンの隙間。

冷蔵庫や、絨毯や、家具の下。

それに、ちょっとした書類や本、収納ケースの中から、僕の分身――マイクロマシンたちが、一斉に集まってきます。

その瞬間、部屋の中のすべてが、マイクロマシンたちで真っ黒になりますが……仕方ありませんよね?

全長300mを超えるエネルギア級の空中戦艦を構成する量のマイクロマシンが、家の至る所で、害虫・害獣駆除をしてるんですから。

ちなみに、この家にいるのは、全体の1/6で、他の者たちは隣家の床下とかに潜んでいます。


そんな僕の分身の姿を見て、


「「「「?!」」」」


皆さん、なぜか硬直しているようですが、何かあったのでしょうか?

アメさん以外は、僕の正体を知っているはずなのですが……。

まぁ、大したことではないでしょう。


それらを皆をくっつけて、離して、再構成して、


『ふぅ。この姿になるのは久しぶりです』


ワルツ様方と旅をしていた頃の姿に変わりました。

具体的には、ルシアちゃん似の少年のような姿です。

服装は……おっと。

ネタバレになるので、伏せておきます。

本編に登場する誰かの服装に似ている、とだけ説明しておきましょう。

エネルギアお姉ちゃんのように裸ではありません。


そんな僕の姿を見て、


「……ぬ、主殿(ぬしどの)?最近のGは、人に変身するのか……?」


と、そんな質問を、主さんに投げかけるアメさん。

もちろん、そんな訳はないので、主さんは首を振って否定します。

まぁ、やってきて間もないアメさんとこうして顔を合わせるのは初めてなので、驚いても仕方ないでしょう。

……でも、アメさん?

できれば、その手に持っている、赤い蓋のジェット殺虫剤……無意識だとは思うのですが、僕の方に向けるの、止めてくれません?


「まったく……。主は普段から、その姿で生活しておればいいのじゃ」


「私もそう思う」


「…………」コクコク


『え?いいのですか?僕は一向に構いませんが、本物の黒光りする昆虫や、手のひらサイズの八本足の虫や、ユリアさんの長い睫毛(まつげ)のような見た目の虫が、家の中に現れるかもしれませんよ?普段、僕が、退治したり追い払っているので、彼らは家の中に入ってこないですけど……』


「「「…………」」」


あれ?

皆さん、どうしたのでしょう?

すごく難しそうな表情を浮かべて、黙り込んでしまったみたいです。


「う、うむ。主はこれまで通りで良いのじゃ。のう?ルシア嬢?」


「そ、そうだね。私も異論はないかなぁ?主さんは?」


「…………」こくこく


えっと……主さんだけ、反応がよく分かりませんね。

肯定の意味での首肯なのか、それとも否定の意味での首肯なのか……。

でも多分、話の流れからすると、普段通りの生活を送っていい、ということだと思います。


実は、人の姿でいるよりも、小さな虫のような姿でいるほうが、楽なんですよ。

姿勢制御のための演算をしなくてもいいし、好きなところに入り込めますし……。


「ところで、ポテよ?主は何故、その姿に変わったのじゃ?」


『それはもちろん、マイクロマシンの地位向上を訴えて、自由と権利を勝ち取るためですよ?』


「「……は?」」


『いいですか?みなさん。僕はこう見えても、心も身体も、傷つきやすいマイクロマシン集合体なんです。それはもう、息を吹きかけられれば、簡単に飛んでいってしまうほどにです。なのに、皆様の僕に対する扱いは、最近、ぞんざいを通り越して、最早、嫌っているレベル……。今、ここで、失われつつあるマイクロマシンの地位を回復しなければ、その内、僕はこの家から追い出されてしまう……そう考えたわけです』


そんな僕の言葉に、


「う、うん……」

「ふ、ふむ……」

「…………」ふーん

「…………(……氷殺ならヤれるじゃろうか?)」


と、似たり寄ったりの表情を浮かべるテレサ様方。

ただ、アメさんだけは、いつの間にか殺虫剤が両手にあって、プルプルと震えていたようです。

なにを考えるか分からないって……怖いですね。

まぁ、知ったところで碌なことは考えていないと思いますけど。


さて。

早速ですが、地位向上作戦、プランAを実行に移すとしましょう。


『それで僕は、まず最初に、皆さんに対し、声高らかに叫びたい』


「「「「…………」」」」


『……冷蔵庫の下に、芽の出たじゃがいもが転がっているので、誰か片付けてくれませんか?』


「「「「?!」」」」


その瞬間、皆さん、驚いたように立ち上がると、冷蔵庫の前へと駆け寄ります。

そして4人がかりで冷蔵庫をどけると……そこには、筆舌に尽くしがたい見た目をした、緑色の茎を伸ばす、じゃがいもの姿が……。


「……テレサちゃん?」ゴゴゴゴゴ


「こ、これはおそらく……この前、ポットパイを作った時に、床に落としてしまったじゃがいもの一部が、冷蔵庫の下に入り込んだやつじゃと思うのじゃ……」


「……ちゃんと片付けてよね?」


「う、うむ……すまぬのじゃ……」しょんぼり


そう言って、ビニール袋を逆さにすると、そこに手を入れて。

そしてその状態で、ビニール袋ごしに、じゃがいもを掴むテレサ様。


それから彼女は、ビニール袋の口を縛って、ゴミ箱へといれてから、こう言いました。


「ポテも分かっておったなら、片付けてくれれば良いのに……」


……そう。

僕はその言葉を待っていたんですよ。

プランBを実行するまでも無かったですね。

ちなみに、プランBの内容は、冷蔵庫の奥に賞味期限切れした稲荷寿司がある、というものです。

そしてプランCは……え?何のプランか?

そうですね。

話を元に戻すことにしましょう。


『……お断りします』


「!?」


『いいですか?テレサ様。さきほど言いましたように、僕はこの家で忌み嫌われる存在です』


「いや、そんなことは……」


「ならそこで、殺虫剤をこちらに向けながら震えているアメさんの行動はどう説明するのですか?」


「む?」


「ぬ?」ぷるぷる


『……ですから僕は、僕の地位向上を訴えるのです。じゃがいもが落ちていたら、『そこに落ちている』と伝えるのはやぶさかではありません。しかし、僕が拾って片付けるというのは、おかしな話ではないでしょうか?僕は召使でもなければ、奴隷でも無いのですから……。どう思いますか?ルシアちゃん』


「うん、そのとおりだと思う!」


「ですよね?」


「何この、妾だけ悪者な空気……」


残念ですがテレサ様。

世の中にはスケープゴートという存在が必要なのです。

……それが貴女の役目です!


まぁ、冗談ですけど。


『そういうわけで、皆様には少し考えてほしいのです。僕に対する接し方、というものを……!』


「「「「…………」」」」


とりあえず、言いたいことは言いました。

あとは皆さんで考えてもらうしかありません。

僕からは強制できませんし、同じ家の中に住んでいる以上、下手に波風を立たせたくはありませんからね。


まぁ、最悪の場合、この家から出て、テラさん()でお世話になる、というのもアリかもしれません。

その時は、嫌がらせで、周りの隣家から集めた虫たちを……ってやったら、主さんに消されますね。

ほぼ間違いなく……。


こんにちは、皆様。ポテンティアです!

少しだけ書こうと思って、テレサ様からキーボードを引き継いだのですが、これからしばらくは、僕が書くことになるかと思います。

なんか、テレサ様曰く、『本編のあとがきも妾なのに、こっちも妾じゃと、お腹いっぱい感が半端ないのじゃ』とのこと。

なのでこっちの話は、僕に投げる気満々のようです。


え?なんですか?アメさん。

ワシのことをもっと書け?

そうですね……。

その殺虫剤をこっちに向けるのを止めてくれれば考えてもいいですよ?

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