2.1-02 あうとどあ?02
「……狩人の資質があるんじゃないか?……どうだ?この際、一緒に狩人をやらないか?」
「いや、そういう勧誘はいらぬのじゃ。餌に針を通すのが悲しすぎるから、なるつもりはないのじゃ!」
大量に捕れたアマゴ、イワナを持って、登った川を逆に下る私たち。
いや大量じゃなくて、大漁だな。
テレサが釣りを始めた瞬間から、『入れ食い』で魚が釣れ始めて早2時間。
って言っても、その時間のほどんどは、根掛かりで針を失ったり、木に引っ掛かった糸を回収したり……そして、針に餌をつけようとしていたテレサが、餌とにらめっこして固まったりしている無駄な時間だったけどな……。
まぁ、それでも、今日来ているメンバー全員で食べることを考えても、十分な量が釣れたと思う。
「なぁに。慣れだよ慣れ。最初は可哀想とか、気持ち悪いとか思うかもしれないけど、そのうち心が麻痺してきて……」
「い、いや、待つのじゃ狩人殿!そんな慣れはいらないのじゃ、のーせんきゅーなのじゃ!」
「そ、そうか……。残念だ……」
てっきり、テレサもこちらの世界に足を踏み入れるかと思ってたんだが、流石に無理か……。
「でも……たまに来るくらいならいいかも知れぬのう?」
「……!」キラキラ
「いや、そんな期待を込めた視線をこちらに向けられても困るのじゃが……」
……そんなやり取りをしながら、私たちは、胴付長靴越しに感じるひんやりとした川の流れを感じつつ、川を下っていったんだ。
途中、普通の長靴しか持っていなかったテレサの事を、川を渡る際に背負った……にも関わらず、彼女は何を思ったか、川を挟んで転がっていた石と石との間をジャンプしようとして……足を滑らせて、びしょ濡れになって……。
そんなこんなで、川の縁を歩くことおよそ15分。
「ふぅ……よ、ようやく着いたのじゃ……。もうボロボロな狐になってしまったのじゃ……」
「いや、びしょ濡れな狐の間違いじゃないか?っていうか、テレサの場合は、運動不足すぎだな」
どうやったら、単に川の中を歩くだけで全身満遍無くびしょ濡れになれるのかは分からないが……とりあえず、ケガをすること無く、私たちは野営地点……じゃなくて、キャンプ場に辿り着いた。
そこで私たちを待ち構えていたのは……
「どうだった?テレサちゃん。釣れた?」
と釣果を問いかけてくるルシアと、
「テレサ……。お主は、一体どうして濡れておる?」
とビール缶片手に問いかけるアメ。
それに……
「…………!」きゅぴーん
と恐らく、大好きな鮭科の魚に反応しただろうテレサたちの家主の3人だ。
他にも、コンロの近くには……
「ふごぉぉぉぉ!!……ひぃふぅ……もうダメかもだね……」
という謎の口癖から分かる通り、垂れた獣耳とメイド服が特徴的なイブと、
「燃えたぎる炎……」わくわく
……熱いものに反応している様子のユキ。
他にも、彼女の補佐のユリアと、その部下のシルビア、リサ。
それに……
「と、とけるです……」
……むしろ、直射日光のせいか、半分溶けかかってた雪女ちゃんがいた。
彼女たちと私たちを含めると10人だな。
ここで挙げた人物は、テレサの書いている本編や、既出のメンバーだから誰が誰が何者なのか、わざわざ説明する必要は無いと思うんだが……それでも、こんな疑問が生じるんじゃないだろうか。
……11人で1台の車に乗ってきたのか、と。
もしもそうだとするなら……バスじゃない限りは、きっと違法な乗り方になるだろうな……。
だけど、もちろん違う。
実は、もう一人、車を出してくれた運転手がいるんだ。
……ちなみに、ユリアが魔眼を使って、レンタカー屋の店員を誤魔化して車を奪ってきたわけじゃないぞ?
多分、出来るだろうけどな。
だけど、そうじゃなくて、ユリアたちの家の住人が全員きたということは……つまり、ユリアたちの家主も、やってきた、ってことだな。
で、そのユリアたちの家主っていうのは、テレサたちの家主殿……
「だから言ったじゃんイブ!鞴作れって……」
……の姉だ。
名前は……私が言ってもいいのかな?
「なら、テラちゃんが接着剤と布か紙を用意してよ!イブは持って来てないかもだからね!」イラッ
……まぁ、イブが言ったからいいか。
そんなわけで、ここには、
・私、狩人
・テレサ
・ルシア
・アメ
・主殿(テレサたちの家主)
・テラ(ユリアたちの家主)
・イブ
・ユキ
・ユリア
・シルビア
・リサ
・雪女
の12人が来ているわけなんだが……もしかすると、人数が多すぎて、全員については触れられないかも知れないな。
まぁ、頑張って書いていくさ。
……というか、テラについては、まだこの話で触れちゃいけない気がするんだが……今の本編には関係無いからいいか。
さて。
それじゃぁ、話をテレサたちのところまで戻そう。
「ほーれ、見るのじゃ?この銀色に輝く、妾の獲物たちを!妾にも、この程度を採るくらい、どーってことは無いのじゃ!」
「ひーふーみー……ちょっと足りないかな?」
「ちょっ……どれだけ食べるつもりじゃ、ルシア嬢?!」
「いや、私じゃなくて、主さんがね?」
「…………」じゅるっ
「あー……なるほどのう……」
と言いながら、釣ってきた魚を専用のバッグの中から出して、皿の上に並べるテレサ。
その際、手から魚が滑って、バッグの中から中々掴み出せないのは、お約束だな。
「……テレサ?そういう時は、頭を上にするようにして掴むんだ。そうすれば、ウロコやヒレに指が引っかかりやすくなって、持ち上げられるようになるぞ?」
「むむ?……ほう。なるほどのう……」
それから彼女は、ある程度慣れた様子で魚を掴んでいくんだが……やっぱり、慣れてないせいか、たまに落としそうになってるみたいだ。
初々しいというかなんというか……子どもが魚のつかみ取りをしているみたいだな。
そして、すべての魚を取り出し終わったタイミングで……
「ほれ、テレサよ。これで手を拭くがよい」
「うむ。すまぬアメよ。助かるのじゃ」
と、アメから濡れタオルを受け取るテレサ。
それから彼女が手を拭き終わって、タオルをキャンプ用の机の上に置いた……その瞬間だ。
ガバッ!
「……まったく、主は、どこの童じゃ!こんなにびしょ濡れになりおって……」
「ぶはっ?!や、止めるのじゃ!アメ!」
恐らく、温泉に入るための予備として持って来ていたバスタオルを使って、アメがテレサのことを、ゴシゴシと頭から拭き始めた。
まぁ、あれだけ濡れてたんだから、気温が温かいといっても、流石に風邪を引くよな。
「もが〜〜〜……!」
「ふっ……。これで少しは機械臭くない狐になるじゃろう」
と、どこか嬉しそうにテレサの事を揉みくちゃにするアメ。
さっきまでは、呆れたような表情を浮かべていたはずなんだが……どうしてだろうな。
その様子を傍から見ていたルシアがこんなことを言うんだが……もしかすると、それがヒントかもしれない。
「……なんか、母娘って感じだよね……。ちょっと羨ましいかも」
テレサもルシアも、眼の前で母親を失ってるからな……。
……って、そうじゃなくて、今回はアメ側の話だ。
アメの見た目は、そんなに歳を取ってるようには見えないけど……ユキみたいに、見た目と年齢が一致しない魔王もいるわけだから、実は歳を取ってても不思議では無いんだよな。
実は既に子どもがいたりなんかして……。
「……狩人殿?今、ワシについて何か思わなかったじゃろうか?年増とか……」
「ぐ、ぐぬぅっ?!」
なんで分かるんだ?!
まさか……顔に出てたか?!
「はぁ……。お主が何を考えているのかは……確かに、顔を見るだけで、はっきり分かりそうじゃ……」
やっぱり顔に出ていたみたいだ。
……?
でも何か、アメの言い方に引っかかりを感じるが……気のせいか。
それからテレサが、濡れた服を着替えるためにテントへと消えてから……。
彼女が戻ってくるまでの間に、私は魚を下ごしらえすることにした。
虫一匹をエサにするにも手が震えていたテレサに、魚を捌けっていうのは……流石に、ちょっと危険だからな。
ぬめりのせいで滑るから包丁も入りにくいわけだし……。
まぁ、1匹くらいは、捌かせてもいいかもしれないけど……その時には、きっとすごい顔をするんだろうな……。
前回から随分と時間が開いてしまってすまない。
盆休みになって、ようやく書ける時間が取れるようになったんだ。
おかげですっかり夏になってしまったが……この話の季節は、梅雨頃だぞ?
本当は季節が追いつくように、足早に書いていきたいところだけど……難しそうだ。
さて、一つだけ補足しておかなければならないことがある。
……テラについて。
寺生まれのTさんとか、一切関係ないからな?
彼女は、テレサたちの主殿の姉なんだが、本当なら、この話には直接関係しない人物だ。
だけど、皆で移動することを考えた時、どう考えても車1台で移動できる人数じゃなかったから、仕方なく登場させてもらった、というわけだ。
別に、ユリアがカージャックして、運転するという展開でも良かったかもしれないが……あいつ、そんなに器用じゃないから、多分、5秒で事故って終わりな気がして……な。
ちなみに、テラが登場する予定の物語は……2つ先らしいぞ?
つまり、実時間で4年後くらいだろうか。
その頃になっても覚えてるんだろうか…………その物語を書く担当者……。




