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ニート狐たちのフォックストロット  作者: ポテンティア=T.C
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2.0-08 いじょうきしょう?8

……そして、ユキちゃんたちの言葉に甘えて、雪女ちゃんのことを、彼女たちに任せた次の日の朝のことです。

今日もテレサちゃんは、自室で眼を覚ました。


「……で、どうしてこうなったのじゃ?」


「それはきっと……みんな眠いからじゃない?」


「いや、それは分かっておる。そうではなくて、どうして皆、妾の狭いベッドの上で、重なるようにして寝ておるのか、ということなのじゃ。しかも、何で、ユキ殿も雪女嬢も、一緒に寝ておるのじゃ?これ主ら!そこを退()くのじゃ!重いのじゃ!というか、アメよ!さっさと服を着るのじゃ!お主は何故いつも、裸になって寝ておるのじゃ……」


部屋は違うはずなのに、朝になるといつも通りに川の字になって寝ている私とアメちゃん……だけでなく、今日はユキちゃんと雪女ちゃんも、何故か一緒に寝ていました。

恐らく、ユリアお姉ちゃん辺りも家に来ているはずですが……恐らく今頃、主さんの出勤のお手伝いでもしているのではないでしょうか?


ということはつまり……


「……じゃぁ、おやすみ」


今日は、主さんのお手伝いをしなくてもいいってことですね。


「ま、待つのじゃルシア嬢!今の妾には、主しか助けを求める相手がおらn」


ブゥン……


煩かったテレサちゃんが、急に姿を消しました。

どうやら、朝風呂みたいですね。

これでゆっくり寝られそうです。




それから、2度寝に就いて、しばらく経ち……扉の向こう側から、美味しそうなご飯の香りが漂ってきた頃……


「うーん……」


私は再び眼を覚ましました。

だけど、先ほどとは違って……


「……あれ?」


人肌の気配が完全に消えていて……


『…………』ガタガタ


その代わりに、何故か部屋の片隅で、まるで寒さに耐えるようにして、身を震わせるアメちゃんたち3人の姿が……。


「えっと……どうしたの?」


「い、いや……。なんでもないのじゃ……。の、のう?ユキよ?」


「そ、そうですね……」


「…………」コクコク


「みんな変なの……」


まぁ……テレサちゃんが先に部屋からいなくなった後、アメちゃんが今日みたいに膝を抱えて震えているのはよくあることなので、実際、なんでもないのでしょう。

……きっとね。




それからみんなでテレサちゃんの寝室から出て、茶の間の方へと階段を降りて行くと……珍しいことに、普通の朝食が並んでいました。

お味噌汁にご飯、それにお魚とダシ巻き卵……。

普通の朝食が珍しい、っていうのもおかしな話ですが、こんなに豪華な食事は、何週間も食べてない気がします。

それもこれも、旅行にいくためのお金を貯めていたせいです。


でも、ちゃんとした食事が出てくるということは……つまり、あまり良いとは言えないニュースが待っているのかもしれません。

つまりこれは、お金を貯める必要が無くなった、ってことですから……。

……主さんが宝くじを当てた可能性も否定は出来ないですけどね?


「テレサちゃんと主さんと、ユリアお姉ちゃん。おはようございます」


「おはようなのじゃ」

「…………」コクリ

「おはようございます。ルシアちゃん」


と、そんないつも通り(?)の朝の挨拶を返してきた3人の内、私はテレサちゃんに対して、疑問を口にしました。


「えっと……もしかして、何かあった?」


「うむ……」


私の問いかけに対して、朝食の準備をしながら、難しそうな表情を見せるテレサちゃん。

やっぱり、私の予想は的中していたようです。

……え?朝早くから、私がテレサちゃんのことを転移魔法(オートスペル)を使ってお風呂送りにしたことを、彼女が根に持ってる?

それは無いと思います。

だって、テレサちゃん、お姉ちゃんなんですから。


「……ルシア嬢。今、ものすごく、失礼なことを考えたじゃろう?」


「ううん。そんなことないよ?ただ……何となく、嫌な予感がしてるんだよね……」


「う、うむ。やはり、ルシア嬢には分かるのじゃな。……実はのう、全国的に宿が取れない状況にある、という話を主殿と一緒にしておったのじゃ。つまり、予定通りに旅行にいくというのは……難しいのじゃ」


「…………」コクリ


と、話すテレサちゃんと、首を縦に振る主さん。

ユリアお姉ちゃんは、今回の旅行の計画には、直接関与していませんでしたが、苦笑を浮かべているところを見ると、事情は把握しているようです。


そうだよね……。

家が潰れちゃうくらい急に雪が降って、それがその日の内に全部溶けて……。

そんなことになったら、国中で大混乱になっちゃうよね……。


私がそんなことを考えていると、アメちゃんの方も何かを考えていたらしく……彼女は、ユキちゃんの膝の上に大人しく座っていた雪女ちゃんへと、チラッチラッ、と視線を向けては、


「…………はぁ……」


と、大きな溜息を吐いていました。


彼女が、一体何のために、大雪を降らせたのか……。

もしかして、嫌がらせのためなんじゃないか……。

アメちゃんがどう考えているのかは分かりませんが、テレサちゃんならそう考えるに違いありません。


「……ルシア嬢……。お主、また……」


「ううん。なんでもないよ?それとも……考えていたことを口に出して言った方が良かった?全然構わないよ?」


「……いや、遠慮しておくのじゃ……」


……全く、テレサちゃんの鋭さには、呆れるばかりです。


それはそうと……。

雪女ちゃんは、どうして大雪を降らせようと思ったのでしょうか。

……むしろ、大雪を降らせたのは、本当に、この雪女ちゃんなのでしょうか。

昨日は、『どうしてここに来たのか』という保身優先の質問しかせずに解散して、大雪を降らせた理由までは聞いていませんでした。


というわけで、早速聞いてみようと思います。

……彼女たちが、朝からこの家にいる理由については、後で聞くつもりです。


「……ねぇ、お嬢ちゃん?」


「……?!」ビクゥッ


……えっ?

話しかけただけなのに、何でそんな怖がるの?


……なんか、納得いかないけど、アメちゃんやユキちゃんも微妙な表情を浮かべているので……私に何か原因があるみたいです。

んー、なんかあったかなぁ……思い出せません。


「正直に答えて欲しいんだけど、昨日大雪を降らせたのは、お嬢ちゃんのしわざ?」


「…………ひっく」ガクガク


……ただ聞いただけなのに、雪女ちゃんは震え上がって泣き出しちゃいました……。

やっぱり、怖がっている原因をどうにかしないと、普通に会話もできないみたいです……。


「……全く、ルシア嬢は、子どもの扱いに慣れておらぬようじゃのう?」


「そう言う、テレサちゃんだって、子どもに接する機会なんて無かったんじゃないの?」


「……イブ嬢」


「でも、あれ……子どもなのかなぁ……」


私たちの脳裏を、クセ毛が印象的な黄色い髪のメイドが駆け抜けていきましたが……今、その話は関係ないので、お掃除箱の中にでも置いておきましょう。


「じゃぁ……私の代わりに、テレサちゃんが聞いてみてよ?」


「仕方ないのう……」


テレサちゃんはそう言うと、雪女ちゃんと同じ視線の高さになるようにしゃがみ込んで……それから問いかけ始めました。

そういった細かな心遣いができるというところは、流石お姉ちゃん役、といったところでしょうか。


「……雪女嬢よ。『主が、大雪を降らせたのかの?』」


……でも、支配魔法は使うんだね……テレサちゃん……。


結果、支配魔法を受けたために、質問に対して答えざるを得なくなった雪女ちゃんは……嗚咽を漏らしながら、ゆっくりと話し始めました。


「かあさまの……ためです」ぐすっ


かあさま?

お母さんのことでしょうか?


「かあさまがおおケガをして、とけてたですから、こおらせようとしたです。でも、きゅうに()()()()()()、とけちゃったです……」ぐすっ


……世の中には…………聞かなきゃ良かったって思うことが、たくさんありますよね……。


「……嬢よ」


「……うん?」


「……心中お察しするのじゃ」


「……うん……」


私とテレサちゃんが、似たような表情を浮かべて、俯いていると……


「ルシア嬢よ。気に負うでない」


不意にアメちゃんがそんなことを口にしました。


「雪女が解けておるというのは、すなわち、天寿を全うした印なのじゃ。そうなってしまえば、最早どんな処置も叶わず、単に世界へと還っていくのみじゃ。じゃから、主が使った魔法とやらが、此奴(こやつ)の母を殺めてしまったなどということは無いはずじゃ。じゃから、主は気にするでない」


そう言って……私の頭を乱暴に撫でてくるアメちゃん。

私、子供じゃないんだけど……ま、いっか……。


「えっと……じゃぁ、今回の一件は、仕方なかったってことかなぁ?」


仕方なかった、で片付けるには、少々問題が大きすぎるような気がしなくもないですが……それは私の魔法の大きさにも言えることなので、今更、気にしても仕方ないことですよね……。


「仕方なかった……か。そうじゃのう。ま、時間は限られておるわけではないのじゃ。折を見て、再び旅行の計画を立てようぞ?」


「……うん。アメちゃんがそう言うなら、私に(いな)やはないよ?」


「うむ。妾もなのじゃ」


「…………」コクコク


こうして、この家の住人たちが、みんな(?)首を縦に振ったんです。

つまり……旅行にいくのは、延期、ってことですね……。

ちょっと残念だけど、タイミングが悪かったので仕方がありません。


「さて……気を取り直して、朝食が冷えてしまう前に、食事を取ってしまうのじゃ!」


「……その前に、一つだけ質問。どうしてユキちゃんたちがここにいるの?」


テレサちゃんが朝食を促してきたところで、私はおもむろに問いかけました。

……まぁ、彼女たちがどうしてここにいるのかは、大体予想が付いているんですけどね……。


「えっと、その話なのですけど……」


そう言って、魔法のカバンの中から、ラップの掛かった山盛りの白いご飯を取り出すユキちゃん……。

ここには、ユキちゃんを除いて6人がいるんですけど……ガスマスク、5人分しか無いですよ?

はぁ……。

忙しいです。

忙しすぎるんです。

テレサちゃんか主さんが宝くじを当ててくれれば、こんな大変な思いをしなくても良いんですけど……。

でも多分、2人のどちらかに、高額の宝くじが当たれば、私には黙って……マシニングセンタかSLS方式の3Dプリンタを買うんでしょうね……きっと。


まぁ、そんなことは置いておいて。

補足をしようと思います。

なんかあったかなぁ……。

ユキちゃんたちが、朝からこの家に来ていた理由は、直接言っていないですが、説明しなくてもいいですよね?

それでも、一応言っておくと、例の激辛スパイスを食べに来た、といえば分かってもらえるでしょうか。

ユキちゃん、余程、癖になっちゃったみたいです。


あとは……補足すべきことは無いんですけど、雪女ちゃんの話し方について触れておこうと思います。

彼女の話し方は……本編の方で出てきた、初期のエネルギアちゃんと同じように、ひらがなとカタカナだけの文で書いていく予定です。

エネルギアちゃんの方は、あまりに読みにくすぎて、成長するに従い、徐々に感じを使った文へと変わっていったようですが……こちらの物語の雪女ちゃんは、終始ひらがなとカタカナだけです。

読みにくいかもしれませんが、ご了承ください。


まぁ、今日は眠いし、こんなところですかね。

次回からは、新しい話が始まる予定です。

……いつまでも春の話をしているわけにはいかないですから。

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