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ニート狐たちのフォックストロット  作者: ポテンティア=T.C
35/66

2.0-04 いじょうきしょう?4

「ど、どうするのじゃ?」


アメちゃんとの会話の流れから、家に来た人物が誰なのかを予想して、テレサちゃんが顔を青ざめさせながら問いかけてきました。


「どうするって言っても……」


まさか、大々的に魔法を使って戦うわけにも行かないので、選択肢は1つしか無いですよね?


「転移魔法で、どっか遠くに吹き飛ばすしか無いんじゃない?」


「う、うむ……そうじゃのう……。ルシア嬢は、さらっと恐ろしいことを言うのじゃ……」ぷるぷる


と、身じろぎしながら、そんなことを口にするテレサちゃん。

なんでだろう……。

なんか、テレサちゃん、私の転移魔法を怖がっている気がします……。


私たちがそんなやり取りをしていると……


ピンポーン……


再び、家のチャイムが押されました。

どうやら、お客さんは、大人しく帰ってくれないようです。


「まずは……ワシが出よう」


アメちゃんは、自分がここにいるために、私たちに迷惑が掛かったと思ったみたいで、辛そうな表情を浮かべながら、私とテレサちゃんの間を抜けて、玄関の方へと歩いて行こうとしました。


そんな彼女の手を……私は、思わず握ってしまいました。

何処かへと行ってしまうような……そんな気がしたんです。


「……アメちゃん?なんか辛そうだけど……大丈夫?」


「ルシア嬢。心配せんでも大丈夫じゃ。ワシに任せておくが良い。妖かしの相手をするのには慣れておるつもりじゃからの」


アメちゃんはそう言うと、私の手を優しく振りほどいて……そして玄関の方へと歩いて行きました。

彼女が振り向く際、なんとなく悲しげな表情を見せていたのは……もしかすると、最悪の展開を想像したからなのかもしれません……。




そして、彼女の後ろを、私とテレサちゃんが付いて行って……そして玄関にたどり着きました。


「……では、扉を開けるから、2人はワシの後ろに隠れておるのじゃぞ?」


「う、うん……」

「う、うむ……」


アメちゃんに言われた通り、彼女の背中に隠れながら、玄関の外側に向かって注意を向ける私とテレサちゃん。


そんな私たち2人の配置を確認した後で、アメちゃんは……


ガチャ……


もしかすると、向こう側に危険な『妖かし』がいるかもしれない……その玄関のドアを、ゆっくりと外側を確かめるように開けたんです。


……その瞬間でした。


「あ、おはようございます。アメさん」


雪女がまるで顔見知りに対して投げかけるような……そんな挨拶をしてきたです。

……ただし、ユキちゃんですけど……。


「……なんじゃ。ユキ殿じゃったか」


「えっと……なんかすみません。もしかして、取り込み中でしたか?」


と、苦笑を浮かべながら、心配そうに問いかけてくるユキちゃん。

私たちの姿は、彼女から見ると、狐の獣人が3人並んで殺伐とした気配を出しながら、玄関に顔を出したように見えていたんだと思います。


「えっとねぇ……ちょっと怖い話をしてたから警戒してたかも……」


私はそう言いながら、人知れず手の中に溜めていたしていた魔力の塊を、握りしめて再び身体の中に戻しました。

もしも、相手が急に手を出してきたなら、容赦なく転移させるか蒸発させるつもりでしたけど、何もなくて良かったです。


「……の、のう、ルシア嬢?」ぷるぷる


「ん?どうしたのテレサちゃん?」


「……お主。今、何か、手の中に、危険なモノを隠し持っておらんかったか?」


……どうやら、人知れず、というわけには行かなかったみたいですね。


一方で。

アメちゃんとユキちゃんの会話は、用件を聞いていなかったので、当然のごとく続いていました。


「まぁ、玄関で話すというのもなんじゃから、中に入るがよい」


「あの……本当は、急に暖かくなった原因をルシアちゃんに訪ねるつもりで来たので、ゆっくりとスパイス入りご飯でも頂いて、お話を聞きたかったのですが……」


と、大量のご飯の入ったタッパを片手に言い渋るユキちゃん。

彼女は、すっかり、激辛スパイスにハマっちゃったみたいです……。


それからもユキちゃんは、どこか申し訳無さそうにしながら、言葉を続けました。


「……実は、ちょっと問題が起こって、予定を変更して、ルシアちゃんに回復魔法をお願いしようかと思って尋ねたのです。……ユリア?」


シュタッ!


「はっ……ここに……」


ユキちゃんの呼びかけで、タイミング良く、上から降ってきたユリアお姉ちゃん。

この感じ、家の屋根で出番を待っていたに違いありません……。

世間体が悪くなるので、そういうのやめて欲しいんですけど…………後でテレサちゃんが、支配魔法を使って、隣家の人の記憶を書き換えてもらえばいいから、別にいっか。


……ま、それはさておきです。

降ってきたユリアお姉ちゃんの腕の中には……何か白いものが抱かれていました。


「……大きな大福?」


「嬢よ……流石に、()を喰べるというのはどうかと思うのじゃ……」


と、私の前にいて、アメちゃんの後ろにいたテレサちゃんが、呆れたような声色を含ませながらそんなことを口にしました。

……白くて丸い塊があれば……ふつう、大福だって思いません?

……ゴマフアザラシとかも、モフモフとして美味しそうですよね……。


おっと、ついつい話が逸れちゃいました。

それで……どうやらユキちゃんたちは、ユリアお姉ちゃんが抱いている()()()に対して、私の回復魔法を掛けて欲しいみたいです。

性別は分かりませんが、その子がぐったりとして意識を失っているところを見ると……急いで回復魔法を掛けた後で、ちゃんと病院に連れて行った方が良さそうですね。


そんなことを考えていた私としては、言うまでもないですことですが、回復魔法を使うことに全く否やはありませんでした。

誰かが傷ついているなら、無条件で手を差し伸べる……。

カタリナお姉ちゃんに教わった、人としての大切なことです。

例えそれが、敵対する者であったとしても……。

だから、私は、当然のごとく、その柔らかそうな白い服を来た子どもに対して、回復魔法を使おうと手をかざしました。


するとどういうわけか……アメちゃんが静止するように手をあげて、私のことを止めました。

それから彼女は、厳しそうな表情を浮かべながら眼を細めて、そして客人2人に問いかけます。


「……主ら、これをドコで拾ってきたのじゃ……?」


その子どもを、『これ』といって、人扱いしないアメちゃん。

普段の彼女とはまるで違うその行動に……私たちは、その子どもの正体が何なのかを悟りました。


「もしかして……この子が、『妖かし』?」


「……うむ。そうじゃ」


その白い服を来た子どもから、眼を離さずに肯定するアメちゃん。


そんな彼女の言葉を聞いた私とテレサちゃんが、再び警戒を始めるその一方で……


「え?何の話ですか?」

「家の前で行き倒れていたので連れてきただけなのですが……拙かったでしょうか?」


子どもを抱いていたユリアお姉ちゃんと、その隣にいたユキちゃんには、事態が把握できなかったようで、2人とも戸惑いの表情を浮かべていました。


……でも多分、アメちゃんもテレサちゃんも、その内心では、どうすればいいのか困ってるんじゃないかなぁ。

だって、私も、どうしようか困ってるんですから……。


挿絵(By みてみん)

前回の更新から随分と時間が開いてしまいました。

この間、何をしていたのかというと……実は、取材だったり、主さんのお手伝いだったり……。

色々と忙しかったんです。

でも、どんなことがあっても、途中で話を書くのを辞めるようなことはないと思います。

だって、この物語が無いと……本編と次の物語を繋ぐための穴埋めにならないですからね。


とまぁ、そんなところで、補足に入ります。

……インターフォン。

もちろん、主さんの家にもインターフォンはあります。

誰が来たのか、インターフォンで確認すれば良かったんですけど……でも、3人とも、その存在をすっかり忘れていたんです。


まぁ、インターフォンを使った場合……


------------


ピンポーン!


ガチャッ……


『はい。どちら様ですか?』


「おはようございます。ユキです」


『あ、ユキちゃんでしたか。今、テロ警戒中で忙しいので、お帰りください』


ガチャッ


「?!」


「あの……私の出番は?」


------------


と、なりかねないので、インターフォンの存在を忘れていて正解だったと思います。

……多分、そうはならないとは思いますけど……。


他に補足は……無さそうですね。

というわけで、今日はこの辺であとがきを終わらせていただきます。


次回の予告は……

『寸胴鍋に雪女は入るかなぁ……』

です。

……もちろん、嘘ですよ?

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