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ニート狐たちのフォックストロット  作者: ポテンティア=T.C
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2.0-03 いじょうきしょう?3

それからアメちゃんに対して、しっかりとテレサちゃんの魔法の説明をしてから……。

アメちゃんが、テレサちゃんの魔法のトンデモなさに気づいて固まったところで、話は再び天気の話題へと戻ってきました。


「で、どうしようかのう?」


「そういえばさ……」


魔法の話と、テレサちゃんの『どうするか』という問いかけの2つの言葉で……ふと思い付いたことがあった私は、考え込んでいる様子のテレサちゃんと、ぽかーんと口を開けたままのアメちゃんの前で、話し始めました。


「寒いなら……温めればいいんじゃない?」


そう。

誰かが故意に気温を下げているなら……無理矢理に上げてしまえば良いんです。

要するに、力比べですね。


「ふむふむ。この星をてらふぉーみんぐするのじゃな?」


「……それ、ちょっと違うと思う……」


……今度、試しに、火星を温めてみようかな?

全力でやったら、お姉ちゃんに怒られちゃうかもしれないけど……。


まぁ、それはいつか思い出した時にやるとして……


「でも問題は……大規模な魔法を連続で使ったら、誰かにバレるかもしれない、ってことだね……」


力比べをしても一向に私は構わないんですけど、誰かに知られるのだけは、避けたいんですよね……。


前にテレサちゃんが言ったかもしれませんが、私たち獣人は、表向きこの世界にはいないことになっています。

なので、誰かに見つかったりしたら……カタリナお姉ちゃんみたいなマッドサイエンティストが沢山いる研究所に送られて、宇宙人みたいな扱いを受けて解剖されて……なんてことになりそうなので、絶対に見つかるわけにはいかないんです。


最近はそういった話をあまり聞かなくなりましたが、一部の同郷の人たちが捕まったらしい、という話を聞いたことがあるので、気を付けたいところなのですが……


「だけど、このまま旅行に行けないっていうのも、困るし……」


……私も、旅行に行きたいです。

どうにか出来るものなら、どうにかしたいというのは、テレサちゃんと同じ気持ちなんですから。


……まぁ、下手に魔法を使ってバレても、何重にも()()()()()をかけているから、すぐに捕まるようなことは無いと思うので…………今回くらいは良いかな?


「……やっちゃおうかな?」


「?!」


「誰かにバレた時は……テレサちゃんがどうにかしてね?」


「お、おぬっ?!……そ、その時は、主の魔力を大きく借りざるをえないと思うのじゃが、それでも良いのか?」


「うん。それはもちろん、仕方ないからね……って、前から言ってるよね?」


「…………なら……お願いするのじゃ?」


「おっけー」


というわけで……


ドゴォォォォン!!


私は家の中から、屋根越しに、空に向かって、久しぶりに大きな火魔法を行使しました。

……多分、今頃、斜め向かいの家で、温度差に反応したユキちゃん辺りが、狂喜乱舞しているのではないでしょうか?


「えっと……温度は30度くらいでいいかな?」


「……朝の最低気温がマイナスで、昼の気温が真夏日とか……大ニュースになるのじゃ」


「だよね……多分、メディアが大騒ぎになりそうだよね……」


そんな話をしていると……


ザーーーーッ……


降ってきていた雪が一気に解けて、雨に変わったようです。


するとアメちゃんがその雨に反応したのか、窓際まで歩いて行って、急激に溶けてきていた庭の雪から見え隠れを始めた空を眺め始めました。


「……うむ。これならワシにも協力できそうじゃの?」


そう言うとアメちゃんは、私の真似をするように、天井に向かって手を伸ばして、何かをブツブツと言い始めました。

そして、呪文のようなものが唱え終わったのか、彼女は口を閉じて、ニヤリ、と意味深げな笑みを浮かべると……天井に掲げていたその手を……


ブンッ……ガンッ!


勢い良く振り降ろしたんです。

……その際、勢い余って机に手をぶつけて、涙目になっていたその姿は……どことなく大きくなったテレサちゃんを見ているようでした。

テレサちゃん……アメちゃんみたいに身長が伸びるかどうかは分からないけど、多分、大きくなっても、今と変わらないんだろうなぁ……。


と、そんな時です。


ザァァァァッ!!


と、見たこともないような土砂降りの雨が降ってきました。


「っ〜〜〜!!て、手さえ傷んでおらねば、かっこ良く決められたと思うんじゃが……」


「……もしかして、この土砂降りを振らせているのって……アメちゃんなの?」


「うむ。雨を降らせることしか能がない狐じゃからの」


そんな言葉の割には、随分と満足気に話すアメちゃん。

きっと、彼女にとって雨を降らすことは、誰にも負けない特技、ということなんでしょうね……。


…………


「あ、雪が全部なくなっちゃったみたい」


ぬるま湯のような雨が振り始めてから15分ほどで、窓から見える雪は殆ど無くなってしまいました。


「とりあえず、この街の雪は無くなったみたいだけど……他のところはどうなんだろう?」


「流石にワシの雨は、この周辺限定じゃから外がどうなっておるかは分からぬ。ところで……ルシア嬢はどの辺りまで加熱しておる?」


「えっとねぇ……この地図だと……この辺まで?」


そう言いながら、私は、主さんのデスクトップPCに表示されていた地図を指さしました。


「……に、日本全体……」


「うん。大きな魔法って、力加減が難しいから、小さくてもこのくらいの範囲になっちゃうんだよね……」


「……す、すまぬ……。何を言っておるのか分からぬ……」


「ううん。気にしないで?よく言われることだし、理解できなくても全然おかしいことじゃないから」


「…………」


そして再び固まってしまうアメちゃん。

もしかする彼女は……私が本気を出せば、地球全体を水に沈められるくらいの魔法を使えることに、気づいているのかもしれません……。

……自分の首を閉めるだけなので、間違ってもやらないですけどね。


「この辺は雪が無くなったんだし、アメちゃんの方は、もう魔法を止めても良いんじゃない?」


「ふむ。そうじゃのう」


そう言うと、手をスナップして、何かを捕まえるような……あるいは閉じ込めるような素振りを見せるアメちゃん。

その瞬間……


ザァァァ…………


雨は小ぶりになって……止んでしまいました。

そして、雲の隙間から出て来たのは……


「……まるで夏じゃな……」


「火魔法はかけ続けたままだからね……」


大きな熱量を持った、太陽……のような高熱の空気です。

きっと、先程まで気温差に狂喜乱舞していただろうユキちゃん辺りは、今頃、水着か何かを来て、外へと出て……そして早速、真夏のような日差しの中で日光浴を楽しみ始めているのではないでしょうか。

明日辺り、真っ黒な雪女になってたりして……。


「嬢はいつまで魔法を使うつもりじゃ?」


「うーん……とりあえず、今日一日かな?炎天下を作り出せば、雨が降ってないところも、全部雪が溶けるんじゃないかなって思うし……」


「ふむ……。嬢の魔法は特別に強いんじゃな」


「うん!お姉ちゃんの勇者だからね!」


……それだけが、私の誇りです。


と私が胸を張っていると……


「のうのう?試しにテレビを付けてみないかのう?」


テレサちゃんが、くすぐったそうな笑みを浮かべながら、そんなことを口にしました。


「なるほど。ワシも見てみたいの?」


「……魔法を使ってる本人としては、なんとなく恥ずかしいから見たくないんだけど……見てみよっか?」


……というわけで、テレビをつけた私たち。

するとテレビからは案の定……


『こ、今年は、エルニーニョ現象とラニーニャ現象が同時に起こり……』


と、顔を真っ青にした専門家の解説が流れてきました。


「この人、なに言ってるんだろう……」


「さぁの?海面温度が冷たくて温かいとか、わけ分からぬことを言っておるだけじゃろ?」


「……だよね……」


きっと、本人も何を言っているのか、分からないんでしょうね……。


それからチャンネルを変えていくテレサちゃん。

どのチャンネルでも、大体同じようなことを言っているようです。

まぁ、どっかのテレビ局は、緊急特番を組まずに、いつも通りドラマを放送してるみたいですけど……。


と、そんな時です。

私たちと同じように、ニヤニヤしながらテレビを見ていたアメちゃんが、ピクリ、と耳を動かすと……


「…………相手側からこっちにやってきたようじゃな……」


真顔に戻って、急にそう口にしました。


「つまり……妖かしの雪女さんがやってきたってこと?」


「うむ……。この気配は……恐らくの」


「も、もしかして、バレた?」


ヒヤリ……。

寒くはないのに、そんな気配が私の背筋を撫でました。


すると、私の様子に気づいたのか、アメちゃんが優しげな笑みを浮かべながら言います。


「まだ見つかったかどうかは分からぬ。単に近くを通りがかっただけかも知れぬしのう……」


「……危険な人が、町中を闊歩(かっぽ)してるってこと?」


「まぁ……そうなるかのう?」


そうアメちゃんが口にした後。

今度はテレサちゃんが、不思議そうな表情を浮かべながら問いかけました。


「……のう、アメよ?何故、お主は、妖かしとやらが近くにおると分かったのじゃ?」


「それは……気配を感じたからのう?」


「ふむ。なるほど。妾たちには分からぬが、彼奴らと浅からぬ関係を持つ主には、気配が分かるということじゃな」


そう言うとテレサちゃんは、眉を顰めてから……持っていた懸念を口にしました。


「……逆に、なのじゃ。お主の存在が、彼奴らに知られておる……その可能性はどうなのじゃ?」


「あ…………」


問いかけられたアメちゃんが、少し間の抜けたような表情を浮かべた……そんな時です。


ピンポーン……


家のチャイムを鳴らす音が鳴り響きました。

……誰かが、この家にやってきたみたいです……。

一体、どんなお客が来たのでしょうか。

……まぁ、一人(?)しかいないんですけど……。


次回は……私が身に付けた新しい魔法が、少しだけお目見えすると思います。

……忘れなければ、ですけどね。


あ、そうだ。

テレサちゃんを見習って、次回予告を書いてみようと思います。

……次回、『カッチカチな狐』乞うご期待!、です。

……え?いやもちろん、ネタバレではないですよ?

だって、テレサちゃんを凍らせると…………いえ。

それ以上は、本当にネタバレになりそうなので言わないでおきます。


それではまた。

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