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ニート狐たちのフォックストロット  作者: ポテンティア=T.C
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2.0-02 いじょうきしょう?2

「もう、こうなったら、そのあやかしとか言う奴を、ボッコボコにするしか無いのじゃ!」


ガタン!


と、椅子を立って、玄関の方へと向かうテレサちゃん。

どこにその妖かしさんがいるのか知ってるのかなぁ……?


「……テレサよ。コレばかりは無理じゃと思うぞ?」


アメちゃんがそう呼びかけたおかげで、テレサちゃんは玄関の手前で足を止めたみたいだけど……そのまま放っといたら、どこに行ったのか……個人的には正直なところ、ちょっと見てみたかったりします。


「じゃが、一体、どうすれば良いのじゃ?このままじゃと、妾たちの旅の計画はご破算になってしまうのじゃ!」


「……しかしの?テレサよ。主は丸腰じゃろ?その上、争い事にはなれておるようには見えぬ。そんな主が、頭のおかしい彼奴(きゃつ)らの前に出て行って、果たして無事で済むじゃろうか。ワシじゃて、この問題をどうにか解決したいとは思うが……世の中には出来ることと出来ないこと、そして、してはいけないことというものがあるのじゃ。どうか分かってはもらえぬか?」


「それは……相手に妾の魔法が通じぬかも知れぬ……ということじゃろうか?」


「ん?……すまぬが……ワシは、テレサが魔法とやらを使っておるところを見たことが無いんじゃが……」


「あ…………」


と、アメちゃんの一言が意外だったせいか、額に手を当てるテレサちゃん。

それから彼女は、私に対して視線を移して言いました。


「……ルシア嬢。なんか最近、妾の魔法が効かぬようなのじゃが……主で試してよいじゃろうか?」


「うん。嫌」


「……そう言うと思ったのじゃ」


するとテレサちゃんは……


バタバタ……


と走って、自分の部屋へと向かうと……


「ちょっと狩人殿の所まで行って試してくるのじゃ!」


自身の銀髪よりも白いロングコートを羽織って、外に出ていこうとしました。

……でも多分、向かいの家に行くまでに、遭難するんじゃないかなぁ……。

2階まで、雪が積もってるんだし……。


「……まったく。いいよ?私で試しても……」


「む?!……す、すまぬ。恩に着るのじゃ」


冷たく(あしら)っても、へそを曲げないテレサちゃん。

そんな彼女のことを……私は尊敬していたりします。


「……変なことやらせないでよ?」


「それはもちろん分かっておる(後での報復が恐ろしいから、の……)」


「分かってるならいいけど……」


すると、そんな私たちのやり取りを見ていたアメちゃんが、横から口を挟んできました。


「……何をしようとしておる?」


「えっとねぇ……実験?」


「うむ。アメに妾の魔法が効かぬから、ルシア嬢を実験台にして、ちゃんと効果があることを確認するのじゃ」


「……?」


テレサちゃんの言葉が理解できなかった様子で、首を傾げるアメちゃん。

彼女はもしかすると、眼に見える魔法が全て、と思っているのかも知れません。


「えっと……試す魔法は、言霊魔法だけでいいの?」


「そうじゃのう。言霊魔法が使えれば他の魔法も問題はないじゃろう……。多分の」


そう言って、微妙な表情を浮かべるテレサちゃん。

きっとテレサちゃんは、本当のところは魔法を使いたくないんだと思います。

これには色々と理由があるのですが……一番の理由は、補給無しで1日に使える魔法の数が尻尾の数と同じ3回まで、と決まっているせいです。


それで、魔法を使うとどうなるのか……。

それは実際にテレサちゃんが魔法を行使すると分かると思います。


「それじゃ、いくのじゃぞ?」


「うん」


……そして、テレサちゃんは、私でも出来ない、そのトンデモ魔法(?)を口にしました。


『ルシア嬢を中心に半径1m。5秒間だけ無重力に……なのじゃ!』


その瞬間……


フワッ……


と浮かぶ私の身体。

ついでに、絨毯や……近くにあった観葉植物の鉢植えまで浮き上がります。

……そして、5秒後。


ドスン!


と、再び地面に落ちました。

……これがテレサちゃんのトンデモ魔法。

言霊魔法の上位魔法である……『支配魔法』です。


詳しい原理は分かりませんが、支配魔法を掛けた相手の魔力を使って、その対象の人間の思考と、周囲の空間の物理現象を自由に書き換えることが出来る……なんていう、人権と物理法則無視のいやーな魔法です。

しかも、相手に魔力が残っているかどうかなんて関係なく、無理矢理に魔力を引き出すので、殆ど魔法が使えない人に対して使うと……どうしようもなく大変なことになります。

詳しく説明しなくてもどうなるかは……分かりますよね?

……あ。

この魔法ですが、この世界に来てから身に着けた魔法なので、テレサちゃんの書いているお話とは直接、関係無いですよ?


「あれ?おかしいのう……。普通に魔法が使えるのじゃ……」


と言いながら、3本あった尻尾が2本に減ってしまったことを気にしながら、首を傾げるテレサちゃん。

そんな感じで、魔法を使う度に、尻尾が減っていくんです。

魔法を3回使うと……尻尾は無くなりませんが、すごく(みじ)めな感じの微妙な尻尾になっちゃいます。

なんというか……腰から紐が生えている感じ、って言えば分かるでしょうか?

……まぁ、その話は、いつか機会があった時に詳しくお話します。


それで……不思議そうな表情を浮かべていたテレサちゃんは、その適当過ぎる性格のためか、すぐに元の表情に戻って言いました。


「まぁよいか。アメの時は、多分、寝起きじゃったから、上手くいかなかったんじゃろ」


「……いいの?この魔法、テレサちゃんの生命線だよね?」


「うむ。例え、妾が戦で倒れたとて、その後ろにはルシア嬢もカタリナ殿も、そしてワルツも主殿もおるのじゃ!全然、負ける気がしないのじゃ!」


「……それ、テレサちゃん自身は負けてるよね……」


「……ん?」


それからテレサちゃんが、何故か難しい表情を浮かべて、顎に手を当てながら考え込む素振りを見せ始めましたが……多分、何も考えてないと思います……。


すると、私たちのやり取りを黙って見ていたアメちゃんが、テレサちゃんと同じように顎を触りながら、口を開きました。


「つまり……テレサは……嬢を浮かべる魔法が使える、ということなのじゃな?」


「違っ!お主、何を見ておった?!」


「いやー、テレサちゃん……。アメちゃんにその辺、詳しく説明してないから、多分、分かんないと思うよ?」


……だって、私もよく分かってないんですから。

以前、テレサちゃんがこの魔法を使った時も、ろくな事に使ってませんでしたし……。

確か…………オーブンレンジで焼いた大きなクッキーが、熱すぎて持てなくて、自分自身に魔法を使って、無理やり重力制御魔法を使ってたような……。

それで一気に魔力切れになって、3日間寝込んだんです。

本来なら使えない魔法を、保有する魔力の範囲で自由に使えるようになる……という意味では、すごい魔法だとは思うんですけど、それを使う場面が……ちょっとどうかと思うんですよね……。


……え?

私も大体、似たようなもの?

それは……まぁ、一緒に住んでいる姉妹みたいなものですから。

テレサちゃんの支配魔法にしても、私のオートスペルにしても、本編の方で身に着けていたわけではなくて、こっちの世界に来てから身に付けたものですよ?

なので、本編の方では、これらの魔法が出てくることはありません。

その代わり……他のトンデモ魔法が出てくると思いますけど、そっちの方は本編で紹介された後……ということになると思います。

……じゃないと、単なるネタバレですからね〜。


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