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ニート狐たちのフォックストロット  作者: ポテンティア=T.C
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1-02 ばれんたいん?2

「ぬあっ?!」


……そのあまりの風の強さに、妾は近くで飛竜が暴れておらぬか探してしまったのじゃ。

もちろん、奴が、妾たちにそんな嫌がらせじみたことをしてくるはずは無いがのう?

ここにはルシア嬢もおるのじゃから、もしも喧嘩を売ったりなどすれば、即、死あるのみ、なのじゃ。

……まぁ、そんなことになるのは、奴も重々承知しておるはずじゃから、まずあり得ないのじゃがのう。


それはそうと。

妾の隣におる件のルシア嬢の方は……


「あー、雨かー……」


と言いながら、強風などいざしらず、といった様子でポンチョの上からお気に入りの傘をさしておったのじゃ。


「……嬢よ?妾には風魔法を掛けてくれぬのか?」


そうなのじゃ。

強風の中で嬢が傘をさしていられるのは、風魔法で周囲の風を相殺しておったからなのじゃ。

ついでじゃから、妾にも掛けてくれればよいのじゃが……


「えー、これ大変なんだよ?確かに、傘は飛ばされないかもしれないけど、吹いてくる風を読んで逆方向の風を吹かせなきゃならないし……。自分の周りだけならそんなに問題は無いけど、テレサちゃんの周りも、ってなると……」


……要するに、面倒だったらしいのじゃ……。


「むむむ……」


……困ったものなのじゃ。

ルシア嬢のやつ、ワルツや主殿が見ておる前では猫を被っておるんじゃが、妾の前ではこの通りなのじゃ。

全く可愛げのない……少しは年上を見習ったらどうかと思うのじゃ。

……最近、身長を抜かされたがのう……。


じゃが、口論がそれほど得意ではない上、それが無駄に時間を喰うだけであることを知っておる(したた)かな妾は、言葉以外の戦略に出ることにしたのじゃ。


「ふむ……。主殿には多めにお金をもらったのじゃ。じゃから、稲荷z」


「うん!任せて!」


ブォォォォ!!


……所詮はまだ小娘。

ちょろいのじゃ。




そんなこんなで、横殴りの雨が降りしきる中を、全く風も雨も感じずに歩いてゆく妾とルシア嬢。

主殿がルシア嬢と共に買い物に行けと行ったのは、こういうことだったのじゃ。

要するに、車など必要ない、ということじゃろうのう……。


「ぐぬぬぬ……」


「ん?どうしたのテレサちゃん?」


「む?いや、なんでもないのじゃ。少し『思い出しぐぬぬ』をしておっただけなのじゃ」


「ふーん……変なの」


そんなやり取りをしながら、妾たちは主殿の家から出たところにある狭い路地を近くのスーパーとやらに歩いていったのじゃ。


しかしのう……。

妾、本当は、昼間に出歩きたくなかったのじゃ。

理由は尻尾や耳を隠さねばならぬことに起因することなのじゃが……詳しい話は、別の機会にするのじゃ。

……いや、別に、太陽の光を浴びると溶けるとか、そんなユキたちみたいな特殊な体質はしておらぬがのう?


まぁ、それはさておきじゃ。

昼間に出歩くのが嫌いなのに、現に今、こうして歩いておるのは……実は雨の日に出歩くのが嫌いではなかったからなのじゃ。

ポンチョを被っておる間は、尻尾が云々と考えなくとも良いからのう。

それに、このツイン尖りフードも気に入っておるしのう。


もしも、今日が雨でなかったら……スーパーに行くのは夜になってからのことじゃったろうな……。

いや、強風は余計じゃがの?




さて。

雨の道を暫く進んだ所で……妾たちは、とある知り合いに出くわしたのじゃ。


「ん?おう、テレサとルシア。こんな時間に珍しいな?」


黒っぽい傘をさした『すーつ』姿の狩人殿だったのじゃ。


猫の獣人である狩人殿の場合、尻尾以外は隠さずにそのままだったのじゃ。

元々獣耳も髪も真っ黒じゃったから、寝癖、と言っておればどうにかなるらしいのじゃ。

それに、尻尾も細いものじゃったから、服の中にどうにかしまえるものじゃったしのう。

……こういう時は羨ましい限りなのじゃ。


「あ、こんにちは、狩人さん」


「うむ。こんにちは、なのじゃ。というか、狩人どのよ。主も珍しいのう?このような時間帯に出歩くとは……」


「いやいや、テレサ?私が夜行性か何かだと勘違いしてないか?」


「てっきりお主は、早朝だけ裏山に狩りに出て、それ以外は家の中で獲物を捌いたり、料理したり、あるいは次の日の朝まで酒を呑むか寝ておるだけじゃと思っておったが……」


「そうか……テレサの中では、私はそんな風に見られていたんだな……」


ぬ?

何かおかしなことを言ったじゃろうか?。

ルシア嬢も、狩人殿に対して首をかしげておるところを見ると……恐らく妾と同じ疑問をいだいておるのじゃろうな……。


「ふむ。何か誤解があったようじゃから、すまない、と言っておくのじゃ」


「いや、いいんだ。気にしないでくれ」


「で、今日はどうしたのじゃ?」


「あぁ、これから、部下の奴らと会合だな」


「……こんな時間から飲みにゆくのか?」


「飲みに行くことが目的じゃないけどな……まぁそんなところだ」


狩人殿はそう言って、苦笑しながら頬を掻いたのじゃ。

たまに同じような仕草をしておるところを見ると……彼女の癖なのかのう?


「で、お前たちはどうしたんだ?」


「えっとねぇ、今日、バレンタインじゃないですか?それで、スーパーまで稲荷寿司……じゃなくて、チョコレートを買いに行こうかなって思って……」


「あー、なるほどな」


ルシア嬢の言葉に、傘を持ったまま器用に腕を組んで、納得した表情を見せる狩人殿。

それから彼女は……いやーなことを口にしたのじゃ。


「だけどな……多分、もう、売り切れてると思うぞ?」


『え……』


「なんたって、この国どころか、全世界挙げての大イベントだからな。世界の半分が女性だとすると……相当数のチョコレートが必要になるのは、想像に難くないだろう?」


「確かにそうですね……」


「う、うむ……。ならば諦めるしか無いんじゃろうか……」


そんな妾の言葉に……狩人殿は苦笑を浮かべたまま、首を振ったのじゃ。


「まだ確認したわけじゃないだろ?こうは言ったが、大きいスーパーなら、まだ在庫は残ってるかもしれないぞ?」


そんな狩人殿の言葉を浮けて逸早(いちはや)く立ち直ったのは……ルシア嬢だったのじゃ。


「……そうですね。行くだけ行ってみます」


……この気配、目的はチョコレートではないのじゃ……。

完全に稲荷寿司じゃろ……。


「う、うむ。では、狩人殿。行って参るのじゃ」


「あぁ、気をつけてな……おっと、電車に遅れそうだ。それじゃあな!」


そう言うと狩人殿は、慌てた様子で走っていったのじゃ。

横からは雨風が吹き付けておるはずなのに全く濡れておらぬのは……やはり、騎士団長の名を背負うほどの御仁じゃからかのう……。

……まぁ、見習うつもりは無いがの。


「……さてと。嬢よ。妾たちもゆこうかのう?」


そう言って妾は、隣りにいたはずのルシア嬢に視線を向けたのじゃ。

すると……


ビューーー!!


「うわっふ?!」


どういうわけか、雨粒が妾の顔に襲い掛かってきおったのじゃ。


「ほらテレサちゃん!早くいかないと置いてくよ?」


気づくと、随分と離れてた場所におるルシア嬢。

……大体、いつもこんな感じなのじゃ。

奴はスーパーに近づけば近づくほど、まるで磁石に引き付けられるかのように歩く速度を早めてゆくのじゃ……。

妾には理解できぬほど、稲荷寿司が好きなのじゃろうな……。


「ま、待つのじゃ!」


ビューーー!!


「うばっ?!」


……こうして妾は、競歩以上の速度で移動し始めたルシア嬢を、必死になって追いかけたのじゃ……。

ばれんたいんを過ぎてから、チョコレートネタを書く……。

うむ。

後の祭り感(?)が半端ないのじゃorz"

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