プロローグ
初めての小説投稿です。長編の予定ですので宜しくお願いします。
高校2年の春。
俺<<長井正義ナガイマサヨシ>>は足取り重く桜並木通りを学校目指し歩いていた。通っている高校は聖皇高校<<セイオウ>>。お堅い進学校だ。何故足取りが重いのかというと、また猫を被らなければならないからだ。いや、真面目な話。俺の親父のはNOCの社長。そう、パソコン作ってる会社。社長ともなると「子育てに失敗できない。」らしい。だから小さい頃から厳しかった。小学校にもなると習い事地獄になった。月曜日から金曜日まで全て埋まっていた。ピアノ、習字、茶道、塾、剣道。土曜日は親父のチェック。一週間の成果を見せなければならなかった。唯一の休みは日曜日。でも大抵宿題で潰れた。おかげで小さい頃はほとんど遊べなかった。中学から持っている携帯も監視されていた。メル友なんてもってのほか。一週間で6時間だけ自由だった。その貴重な6時間は決まって外に遊びに行った。「普通の友達」が欲しかった。親の連れてくる連中はどいつもこいつも常に敬語で、親第一。一緒に笑うことができるやつなんて1人もいなかった。でもそんなある日。町はずれの公園で初めて「普通の友達」ができた。その日彼女は公園で一人さびしくブランコに乗っていた。暫く眺めていると、こちらに気づき
「一緒に遊ばない?」と声をかけてきた。
「うん。」
「あたしは田中奈央。君は?」
「正義…長井正義。」
笑われると思った。だって…正義って書いてまさよしだぜ?でも意外な返事が返ってきた。
「正義君か。よろしく。」
そう言ってほほ笑む彼女の笑顔が印象的だった。生まれて初めて暖かい笑顔を見た気がした。曇り空の下、小さな太陽が俺の目の前で輝いていた。もう7年も前の話だ。いわゆる幼馴染というやつだ。あそこの木の陰で俺を驚かしてやろうとしているのが、奈央だ。反対側から驚かしてやった。