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地球外なあいつ ~カミングアウト~

作者: 桃園真理子

一部修正しています。主人公は、女に修正。

攻めは、優しげなヤンデレな人外。ちょっとSF?

「僕、実は宇宙人なんだよね。」


「鍋の〆はうどんでいい?おじやにする?」


「大学生というのは仮の姿なんだ、僕の任務は、地球の生命体が、害悪か判断する任務を帯びている。もし悪と判断した場合、僕は地球を滅ぼさないといけないんだ。」


「やっぱりうどんにしようか、卵もあるし、残ったネギを入れて、はい、蓋をしてこのままおいて。」


「カオル、なのにお前に恋をしてしまった。僕は、君のために地球を守ろうと思う。」


付き合ってちょうど一年目の記念すべきクリスマスイブに、彼氏から電波な告白を受けました。




********


 いっちゃっている人にその内容についてあまり話しかけると、良くないと聞いた事がある。

妄想の強化になるそうだ。嘘か本当かは知らない。

 彼氏が、電波だった場合どう対応したらいいのだろうか。


「ケイ、お正月は実家に帰らないの?」

「流石に、三億光年で行って帰るのは難しい。せめて、一年は必要だな。」


 物理は不得意だけど、光の計算間違ってないだろうか。


「そうなんだ、で、なんでまだここに居るの。アパートに帰れば。」


 あの衝撃的な電波発言から一週間、ケイはうちに泊まり続けている。

 今日は大晦日だ。明日は元旦。新しい年を迎えるために、みんなが家族や恋人、友人と過ごす。

 できれば、電波な彼氏とは過ごしたくなかったかな。


「カオルは冷たいな。オレが、清水の舞台から飛び降りる覚悟で、カミングアウトした事実を、どうしてそんなにスルーするんだ!俺は、カオルの気持ちが知りたいんだ。」


 流暢に日本語と外来語を使いこなす宇宙人になんといえばいいのだろう。

 カオルは、自分のどてらを着こみ、炬燵に座り込んで蜜柑の筋を念入りに除いているケイを改めて眺めた。

 外から鐘の音が聞こえてきた。

 今年も、もう終わりだ。

 

 ケイは、八頭身の高身長にシンメトリーの美しい黄金比の顔を持っている。くっきりとした二重のアーモンド形の瞳は、髪と同じチョコレートブラウンで、笑うと少し目尻に皺が寄って優しげな表情を演出する。

 初めて彼を見た時は、作り物めいて精巧なマネキンかと思ってしまった。話をしてみると、外見を裏切りとてもフレンドリーで、笑い皺のある瞳が打ち解けやすく感じたことを覚えている。いつもニコニコして、怒る姿を見たことが無い。校内でも人気の高かったケイとは、大学の入学式の席が隣り同士になった事を切っ掛けで、講義が重なる事も多く自然とつるむようになった。

 友人以上の感情を持つと告白されたのは一年の冬。社交的な彼と平凡でインドア派の自分がうまくいくのか当初は不安だったが、思った以上にケイは、優しくてそして常にカオルの事を思いやってくれた。当初の不安を払拭するようにお付き合いは順調に続いた。

 深い付き合いになったのは半年前。

 そうして、その半年後に電波発言をされてしまった。


「……別に、ケイが宇宙人だろうと地底人だろうと関係ないよ。」

「カオル、君ならそういってくれると思っていたよ!」


 ケイは、蜜柑で黄色くなった手で、炬燵越しに、カオルを抱きしめる。


「おい、やめっ、こら!」


 カオルは、ケイの着ているどてらを掴んで引き離そうとするが、細見の体型の癖にびくともしない。


「もう、わかったから。苦しいってば。」

「カオル、僕が君を守るよ。君の住むこの地球を。」

「どっかの漫画の題名みたい。わかった。いいから、もう離れて。」


 どうにか、自分からケイを引き離すと、まじまじとお互いの顔を見つめあう事になってしまった。間に炬燵と蜜柑があるとはいえ、ケイの顔は整い過ぎてあまり見る事ができない。カオルは平凡な自分の顔が恥ずかしくなり、顔を下に向けながらちらりとケイを伺った。

 ケイの髪と同じ色の瞳がきらきらと嬉しそうに光っている。


 うん、同じ色?


「ケイ、お前の眼って茶色じゃなかったか?それ、カラコン?」


 ケイの瞳は青かった。白目は、細かい青の血管が走って薄青く見え、中央の黒目の所は黒いけど、縦に長く閉じている瞳孔が青い筋になっている。


「ああ、思わず外装が緩んじゃった。」

「な、何言って。」

「もう、カオルに隠さないでいいと思ったら、つい気が緩んじゃったよ。驚かせてごめんね。これから、少しずつ本当の僕に慣れていってね。」


 そういったケイの赤い唇から、ちょろりと先の割れた舌が出ている。白くて滑らかな首筋は、ぼこぼこと鱗のように隆起して表面を盛り上げている。


「け、ケイ?」

「ああ、地球人を愛するなんて、考えたことも無かったけど、僕は君に会えて本当に嬉しいんだ。君に会うために地球に来たんだと思うよ。カオルに本当の僕を受け入れてもらえてよかった、もしカオルが僕を拒否したら、きっと僕は地球を滅ぼしていたと思うよ。君ごと地球を壊せば、君は誰のものにもならないで済むんだからね。愛しているよ。カオル。」




 遠くでまだ鐘の音が聞こえている。


***********


カオルの犠牲の上で、今日も地球は守られている。


              <おわり>


カオル:女、大学二年生。地味系。黒髪ショート。主にジーパン、ボーイッシュ。


ケイ:男、イケメン。実は宇宙人。トカゲとか爬虫類系。大学二年だが、本当はもっと大人。社交的でフレンドリーだが、本当は冷たくて、執着が強いタイプ。


*月で、BLバージョンもお送りしたいと思っています。


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