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誰もいない部屋

ミステリーホラーを目指した結果です。未熟者だ。

玉木さまぎ 悠紗ゆうさ(♂)

華日はなび 月詠つくよみ(♀)

小鳥遊たかなし 深月みつき(♂)

使用人(不問)



悠紗 孤立した少年、寂しさを紛らわすためにリストカットしている。18歳

月詠 クラスの委員長、悠紗を何とか笑わせたい。健気な少女。18歳

深月 悠紗の義理の兄。孤立状況を作った本人。25歳

使用人 玉木家に仕える使用人。深月と悠紗の関係を気にかけている。35歳



悠紗「僕の家は小鳥遊によって支配されてる」


月詠「それを何とかしないとダメじゃないのかな」


深月「無駄だね」


悠紗「みんな、何もわかってない」


月詠「言わなきゃわからないわ」


悠紗「僕は、あいつが…嫌いだ」





月詠「玉木くん。こんにちは」


使用人「少々お待ちください、坊ちゃん、お客様ですよ」


月詠「あ、私が…。玉木くん、ねえ今日も出てくれないの?」


悠紗「…帰って」


月詠「新しい本が出てたよ?買ってきちゃったんだ、読まない?」


悠紗「帰れよ」


使用人「坊ちゃん、お客様に何てことを」


月詠「ああ、いいですよ!!玉木くんそういう気分じゃないよね。ごめん」


使用人「玄関までお送りします」


月詠「もう慣れたから、平気です。それよりも、あの人を何とかしてください」


使用人「…深月様ですね…」




悠紗「君は誰」


悠紗「僕は、何でいるの?」


悠紗「わからない、わからない!」


深月「悠紗」


悠紗「?!小鳥遊…」


深月「お兄様だろ?」


悠紗「…お、にいさ」


深月「はっ、お前って本当に使えない愚弟だな。またリストカットしてる、本当に気持ちの悪い弟だよ。お前の姉と結婚してなきゃお前と顔なんか合わせたくもない」


悠紗「申し訳ありません」


深月「ふん、つまらない」


使用人「っ、深月様。坊ちゃんのお部屋には入らないでくださいと旦那様に…」


深月「今から出るって。大体、こいつと一緒なんて気味悪い」


使用人「深月様…」


悠紗「夕食か…置いといて」


使用人「悠紗様」


悠紗「いいから…いい、から。僕が行ってもお父様たちが気味悪がるから」


使用人「…かしこまりました」


悠紗「僕は誰だ、僕はいる必要ない、僕は、誰だ」



月詠「玉木くん、おはよう。今日は…休み?」


悠紗「…もう来ないで」


月詠「でも、私は」


悠紗「委員長として来てるなら、無意味だよ」


月詠「そうじゃない!!」


悠紗「僕は、誰だ」


月詠「え?」


悠紗「僕は、必要ない」


月詠「ちょ、そんなこと!!そんなこと言わないでよ!!」


悠紗「僕は汚い、僕は、僕…」


月詠「玉木くん。私に出来ることはないの?私、あなたを」


悠紗「どっかいけよ!!いなくなれ!!消えろ!!ああああああ!!!!」


月詠「っ、ご、ごめん!」


悠紗「っ、また…また、切って…汚い。汚い。醜い。汚い」





使用人「坊ちゃんがまた、発作を起こされただけですよ。お気になさらないでください」


月詠「…はい、いえ。でもしつこかったのかもしれないですし」


使用人「そんなこと…」


深月「なんだ、早朝から」


使用人「深月様」


深月「…客人なら先に言え」


使用人「もうお帰りになりますので」


月詠「…貴方が、小鳥遊様ですか」


深月「ほう、知っているのか」


月詠「はい」


深月「そう、まあいいか」


月詠「絶対に、彼を助けますから」


深月「…こいつ、まさか、おい。何故屋敷に入れているんだ」


月詠「私は彼の友人だからです」


使用人「…さあ、学校に遅れてしまわれます」


月詠「そうね。ごめんなさい、また見送ってもらって」


使用人「構いません」


深月「…っ、気に食わないな」




悠紗「僕は、汚い」


深月「そうだ、お前は汚い」


悠紗「僕は、いない」


深月「ああ、そうだ。消えてしまえ」


悠紗「僕は…死んでいる」



悠紗「誰も気づかない、誰も見てくれない。嫌いな奴ばかり僕を見つける。小鳥遊も、委員長も、必要な時に僕を見てくれなかったじゃないか」



深月「悠紗、最近元気ないけど、どうしたんだ?」


悠紗「…元気だよ」


月詠「玉木くん、おはよう!今日ね、ラッキーカラーがね」


悠紗「そ、なんだ」


使用人「坊ちゃん、お怪我が多いようですが」


悠紗「そうかな」


悠紗「一人だった、一人でずっと耐えるしかなかった。いじめられていることも、リストカットも」


深月「なんだ、その傷…リスカしてたのか。…気持ち悪い」


月詠「あ、玉木くん!最近、クラスの子と打ち解けたみたいね!」


使用人「坊ちゃん、そろそろ婚約者様にお会いしないと…」


悠紗「自分勝手で誰も見てくれなかった」


深月「嘘を言え、俺は気づいただろう?!」


月詠「私がもっと、もっと早くに気づいてあげてたら」


使用人「坊ちゃんは部屋で一人だったのですね」


悠紗「今更遅いんだよ!!」


使用人「坊ちゃん?どうかなさいましたか?昼食のお時間です」


悠紗「そこに置いといて。どうせ死んでるんだ…食べれる訳無いだろ」


使用人「かしこまりました」


月詠「玉木くん!今日ね、実は告白されたの。どうしたらいいかな?」


悠紗「委員長って、のんきだよね」


深月「おい、愚弟。いいかげんにしろ。お前、いつまで部屋に閉じこもるつもりだ」


悠紗「わからないんだね、腐敗した僕を」




悠紗「僕はクローゼットの中にいる。誰もいない部屋に向かって皆が話しかけてくる。見つけてももらえない。僕は、孤立している」





使用人「誰も気づいていらっしゃいません。深月様もです。いかがなさいますか?」


使用人「はい、遺体はきちんと埋葬致しますね」


使用人「旦那様、何故腐敗するまで放置なさっているのですか?」


使用人「…お金持ちの、ただの娯楽ですか。左様で。では、処理致しますね」




悠紗「使用人以外、未だに僕が生きていると信じて話しかける」


悠紗「僕はそれに答えてやるだけ」


悠紗「誰もいない部屋に向かって話しかける二人は、とっても面白いからね」








END

実は悠紗は死んでいて、深月も月詠も気づいていない。という落ちです。

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