ストーカー
いや、普通に、純粋な目で見たら「あいつ」の行為は、こういう事ですよね。
僕の身に、いつ、何が起こっても良いように、僕は今、この文章を書いている。
僕が、近々この世からいなくなったとしたら、真っ先に「あいつ」を疑って欲しいからだ。
何年前からかは、わからない。
本当に気がついたら、毎年この季節になると「あいつ」からの手紙が届くようになっていた。
毎年届くから、僕も事の重大さに気付いていなかったんだ。
ただ、うっすらとした気味の悪さを感じるくらいで。
「あいつ」は、僕の生活を、見張っている。
手紙の内容を見ると、僕の日常について、事細かに書かれている。
犬の散歩を欠かさずやっている事を「あいつ」は、さも見ていたかのように、書き綴ってくる。
いや、犬の散歩だけなら、まだいいのだ。
「あいつ」は、僕が歯磨きが嫌いな事まで知っている。
親に吐いた暴言や、友人と喧嘩した事なども「あいつ」は、さも知ったような口ぶりで書いてくる。
盗聴器がしかけられているのかもしれない。
僕は、背後を気にするようになり、家の隅々まで、怪しいモノは無いか調べるようになった。
同居している親は、僕に呆れていた。
親には、この気持ちの悪さはわからないのだ。
確かに、僕は、誰かに、見張られている。
最近、気がついたのだが、「あいつ」は僕の心も読めるのかもしれない。
「あいつ」は、手紙に添えて、プレゼントまで贈ってくるようになった。
しかも、僕が前から欲しいと思っていたモノを。
気持ちが悪いから、最近は、何を見ても興味が無い振りをしている。
だが、それでも、毎年、届くのだ。
僕の心を見透かしたかのような、僕の欲しがっていたものが。
ストーカーに違いない。 と、僕は思っている。
しかも、僕の日常を、くまなく見張っている。
外にいる時も、家の中にいる時も「あいつ」はずっと僕を見ているんだ。
もう、気がどうにかなりそうになって、親に助けを求めた。
「誰かが僕を見張っている。何をされるか、わからない。怖い」と。
だが、親は、呆れたような一瞥を僕に投げて、
「そんなわけないだろう。
私達もこの家に住んでいるが、何も変わった様子は無い。
怪しい者もいない。
確かに、手紙は届く。
誰かが見ているかも知れないが、悪いことさえしていなければ、それほど気に病むことはないだろう」
と言う。
親はもう、あてにならない。
僕は、僕を見張る得体の知れない「あいつ」の存在に耐えかねて、警察に助けを求めた。
だが、年配のその警官は、僕の差し出した「あいつ」からの手紙を見てから、明るい笑顔でこう言った。
「ストーカー?そんなわけないよ。別に気に病むことは無い。確かに、誰かが見ているかも知れないが、誰に見られても恥ずかしくない正しい行動をしていたらいいだけだ。胸を張っていればいいんだよ」
違うんだ。
確かに、誰かが見ているのなら、見られてもいいような行動をすればいいだけという、理屈はわかる。
だが、そういう問題じゃない!
誰かが、
得体のしれない何かが、僕の生活を見張っている。
それがどれだけ苦痛か!
年老いた警官は、笑顔で「気に病むな」と言い、何故か親が交番まで僕を迎えに来て、僕を引っ張るように家に連れ戻した。
誰も、僕を信じてくれない。
だが、確実にストーカーはいて、毎年、毎年、僕のプライベートな行動を褒めたり、けなしたりしている。
さらに、プレゼントまで贈ってくる。
僕がそのストーカーについて知っているのは、手紙の下に書いてある手書きの名前だけだ。
「サンタ」
僕は、恐ろしいそのストーカーがいる限り、ゆっくり眠れやしないだろう。
ああ、幼稚園バスに遅れると母が怒鳴っている。
僕は、もう行かなければならない。
最後に、ストーカーは存在する。
お時間を割いて、最後まで読んで下さり、ありがとうございました。
季節外れでごめんなさい。




