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ようこそ現実へ
息吹が全く感じられない大地。
食い尽くされてしまって緑はなく、昆虫まで息絶えた。
青空はとうに塗りつぶされて、湿気がこもる。
太陽は身を焦がし、熱気と共に立ち込める不快な臭い。
透明の僅かな一滴のために同胞たちは倒れ伏す。
踏みつけられても罵られても立ち上がって、立ち上がって。
今は彼らの背中を見送ることだけしか、できない。
唐突に、顔に刺激が走った。
急に世界が遠ざかっていく。
浮上する感覚。
暗闇から白い闇へ。
口には鉄の味。
背中は広く焼け付くような痛み。
手には鋭い痛み。
耳には垂れ落ちる液体の音。
「眠るのは終いだ。さっさとアジトを教えろ」
生臭い息。
いつのまにか気を失っていたのか。
身じろぐと、また手首が痛んだ。
きつく縛られた手鎖が音をたてる。
「何を笑ってやがる? とうとうイッちまったか?」
本当に、気が狂ってしまえば楽だったのに。
怯え暮らしながら、目的もないままに飼われているのと。
仲間に裏切られながら、拷問に耐えるのと。
どっちが生きているのだろう。
ああ、まったく。
現実もひどいな。