約束だよ、もう嘘はつかないで
一緒に夕陽を見たあの日、君のその一言に誓ったというのに。
最後の最後に、何でこうなってしまうんだろう。
嘘つきで、どうしようもなくて。
そうでもしないと生きていけなくて。
自分の気持ちを隠すことばかりに長けていって。
だってそうじゃないとやっていけないもの。
誰かからの関心なんて鬱陶しいし、誰かへ興味を持つことも面倒くさい。
だから、何かあったときは嘘をつくんだ。
すぐに繋がりを断ち切れるように。
未練を残さないように。
息苦しいこの人たちからすぐに逃れるため。
私はスパイだ。
この世に身を潜め、目をつけられないためにひっそりと生きる。
誰かに悟られちゃいけない。
心を乱されてもいけない。
だから、全てを素通りさせるんだ。
何にも残さないため。
そんな私に、貴方は一つだけ約束させた。
――嘘はつかないで。
頷いたあの日から、貴方とだけの世界は広がって。
全てを取り込みながらも世界は崩れないのだと知って。
ああ、何だか愛せそうだと思ったのに。
嘘をついていたのは貴方だったの?
悲しそうに微笑む貴方に、私も真似をする。
初めてのその表情に微かに驚いた貴方へ、
痛む胸に気づかない振りをして、一気に引き金を引いた。