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たどり着く場所なんて何処でもいいから
黒い影に向かって、手を差し出す。
冷え切ってしまった手を取りながら、一目散に駆け出した。
さあ、愛の逃避行といこうじゃないか。
なんて、彼の軽口に思わず口元緩ませながら。
どこに行きましょうか?
彼はさあ、と返す。
行きたいところはありますか?
やっぱり、さあと返す。
じゃあ何にも希望はないんですか、と苛立ち紛れに聞いてみたら。
小さな声であるさ、と呟かれた。
走るのはやめずに、続きを促そうと彼の顔を振り返る。
どこだっていい、何日かかってもいい。
お前がいる場所なら。
その言葉に、私は耐え切れず足を止めた。
恐らく胸に湧き上がったのは愛しいという感情なのだろう。
腕の中で彼が苦しいと怒り出すまで、あと七秒。