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時が傷を癒すまで
いつも気丈なあの人が。
まるで泣き叫ぶように、体を縮めて震えていた。
全てを手玉に取るような、憎たらしい瞳をしたあの人が。
言い返す気力さえないようだ。
触るな、と伸ばしかけた手を弾かれる。
けれど気づいたように、不安気に見返す瞳を見て、壊れ物のようにそっと抱きしめた。
心音が聞こえる。
僅かだけど、体温もある。
ああ、この人は。
確かに生きている。
もう少しこのままでいさせてくれ、とあの人は言った。
もちろん、と耳元で囁く。
暫くすると随分と落ち着いてきた。
もういいかもしれないと思って、背中に回した腕を緩めようとする。
震えた声が俺を引き止めた。
お願いだから。
もう少しだけ、もう少しでいいからと。
いいですよ。
そこまで脅えるなら、あなたが眠れるまでこうしていましょう。
あなたの傷が癒えるまで。
あなたの望むままに。




