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やわらかな花びら
軽やかにかける少女の頭に、ひらり 花びらが舞い降りた。
思わず立ち止まる。
どうしたの、お父さん。
そんな一言が幾重にも重なって、木霊となる。
何でもないよと答えながら、並木道を歩き出す。
ゆっくりと花びらが舞い降りていく中、幾年も越えて時を見つめる美しい女がいた。
近づいていく。
気づかない。
女は私を見つめた。
一瞬だけ微笑んだような気がした。
けれど私は通り過ぎ、そんな私に女は話しかけようともしなかった。
また歩いていくと、見知った女がいた。
あなた、と語りかける女。
私が名を呼ぶと嬉しそうに歩いてきた。
指輪が光る。
手をつないだ彼女に向かって心の中で謝ろう。
思い出の中にいるあの女性を想うだけでも罪だというのなら。




