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異世界の愚か『もの』 ~世界よ変われ~  作者: ahahaha
デルト王国 ~望んだ望まぬ名声~
46/84

46話 改革への扉

遅くなった上に、話が謁見直前に・・・

しかもかなり短い・・・


次は3日以内に投稿するので、どうかお許しください!!!


12/11 20:00  大幅改稿

誰かに揺すられるのを感じ、目を覚ます。


「おはようございます、レイさん。

 もう朝ですよ。

 あの人との待ち合わせに行きませんと。」


かなり近くに、微笑みをたたえたセフィリアさんの顔がある。

その顔は、何かを期待しているようだった。

多くの男、いや、女性でも見惚れてしまいそうなその顔を見ることができた俺は、幸福なのかもしれない。

そんなことを寝起きで鈍くなった頭で考えながら、呼びかけられて開けた目を再び閉じる。

そして、いつもの通り自分の身体を精査する。

損傷皆無。

疲労感無し。

思考安定。

心拍数正常。

結論、異常無し。

寝起きではあるが、すでに頭のぼやけも無くなったことを確認し、目を開けて身体を起こす。


「おはようございます。

 早いですね貴女は。」


すっと一息で立ち上がり、身体を伸ばしながら言う。


「・・・私はネストの仕事があるので、朝早く起きるのは慣れてますから。

 それにしても貴方は寝起きでぼんやりすることが無いんですね。

 もういつも通りの油断のない顔になってます。

 せっかく貴方の寝ぼけた顔が見られるんじゃないかと期待していたのに。」


拗ねたような顔をしながらそう言われた。

大方、寝起きで俺の油断した顔を見て、それをからかいの種にしたかったのだろう。

これがこの人の面白いところで、彼女は俺にただ弄られるのではなく、隙あらば弄り返そうとしてくるのだ。

尤も、9割方失敗しているのだが。

だが、気の合う友人のようなそんなやり取りはとても楽しい。


「まあ、それも慣れですよ。

 私の場合は気を抜けば死ぬ環境に長くいたせいで、いつの間にかこんなんになってしまいました。

 寝起きに隙なんか見せてたら私はここにはいません。」


「どんな環境ですか。

 でも、それですと私に起こされてる時点で危険なのでは?

 そんな環境では、私が手が届くほどの距離に行っても起きれなかったら、死んでしまうと思いますが。」


その疑問に俺は真顔で答える。


「いいんですよ、貴女が相手ですから。

 私は信用していない人間や魔獣が半径5m以内にきたら起きるようになってますし、不意打ちなんかされた時は身体が自動的に迎撃します。」


「・・・とんでもないですね。」


非常に微妙な顔をされた。

しかも半径5mというのは、街の中のため設定を狭めているからである。

本気になれば、半径100m以内に侵入したあらゆる動物を察知して起き上がれる。

まあ今はどうでもいいことだな。


「さて、それでは行きましょうか。

 彼女らを待たせても悪いですからね。」


「はい。」


上着を着て、魔法で作った水で顔を洗い、立てかけていた《アロンダイト》を背負い宿を後にする。









「おはようございます、奥さん。」


「おはようございます。」


「あ!、お兄さんとお姉さん!

 おはよう!」


「こら、失礼だからやめなさい!

 す、すみません・・・」


挨拶をしたら、子供が駆け寄ってきて俺の足にしがみついてきた。

それをみて母親が叱り、子供はふて腐れていた。


「別に構いませんよ。

 それでどうでしたか?」


別に嫌ではないので、子供の頭を撫でながら聞く。

少年は目を細めて気持ちよさそうにする。

なんだか猫みたいだ。


「あ、はい。

 こちらです。」


「どうも。

 ・・・・・・・・・・・・・ほー。

 相当集まりましたねこれは。」


「そ、そうですね。

 これ、ざっと見ても2000人分はありますよ。」


渡された紙は、渡した時の枚数よりずっと枚数が増えており、びっしりと名前が書き込まれている。

普通は一晩でここまで集められないので、セフィリアさんも口に手を当てて驚いている。


「ええ、私でも信じられないくらい集まりました。

 皆さん驚くほど好意的に書いてくれたんです。

 ものがものですのに。」


彼女も心底不思議そうに呟いている。

しかし俺としては、確かにここまで行くとは思っていなかったが、ある程度はいくだろうと思っていたから不思議ではなかった。

そのために昨日あんなことをしたのだから。


「成程成程。

 それで、これで何人分なので?」


今のところ、自分の思い通りに事が進んでいることを確認したところで肝心なところを聞く。

そして、彼女は相当ためらった後で質問に答えた。


「・・・・・・・・・・さ、3000人分です・・・」


「さ!?

 と、と言うことは金貨3、枚・・・!」


額が額なだけに、言いづらそうにしている女性と、顔を引き攣らせるセフィリアさん。


「ではこれで。

 ご苦労様でした。」


「・・・・・・(2人)」


そんな2人を後目に、周りを警戒しながらあっさりと金貨3枚を差し出す。

すると固まってしまう2人。

そして、正気に返った彼女が聞いてきた。


「あ、あの、本当に頂いてもよろしいのでしょうか?」


「貴方のおかげで、実に手間が省けましたからね。

 私からすればこれだけ払うに値することをしてくれたんです。

 ですから素直にもらってください。

 お子さんのこともあるんですし。」


女手1人で子供を育てるのは、難しい。

不可能と言ってもいいほどに。

危険の多いこの世界では尚更だ。

こういえばこの人ももう受け取るしかない。

この額は俺にとっては本当に正当な報酬だったので、早く受け取ってもらいたいのでこう言った。

それに高報酬を出す、こうすることで「獲物」を見つけることもできた。

決して、同情の末の結果ではない。

だから。


「あ・・・ありがと・・・ございます・・・」


泣かれるのは予想外だった。


「私、これからもうどうしていいのか分からなくて・・・

 もう身体を売って稼ごうかと思い詰めていたくらいなんです。

 本当にありがとう・・・!」


いきなりの展開に、一瞬だけ思考が停止してしまう。

こっちは彼女を出汁にしようとしてるのだから、俺でもバツの悪さを感じてしまう。

すぐに正気に戻り、心配そうに母を見ている少年のこともあり、涙を流す彼女に対処する。


「まあ落ち着いてください。

 泣かれてはこちらも返答に困ります。」


泣かれては話もままならないので、まずは泣き止まさせることにする。

まだ話は終わっていないのだから。

しかしなかなか泣き止んでくれず、困っていたら隣から助け舟が出された。


「ほら、子供が見ていますよ。

 貴女がそんなことでは彼が心配してしまいます。

 ですから落ち着いて、泣き止んでください。」


「っ!」


その言葉に女性ははっとし、少年を見て彼が泣きそうな顔で自分の服を掴んでいることに初めて気が付く。

すると深呼吸を繰り返して、見る見るうちに自制心を取り戻していく。

ほんの1分ほどで、そこには心労が無くなったためか、会った当初より血色のいい美しい女性がいた。


(子を思う母の想い、か。

 ああいう場では、ああいうのが効果的なのだな。

 ・・・親にとって子供とは、それほど大切なものなのか。)


その様子を見て感心しながらも、自分の『母』もそうだったのだろうかと考える。

だが、例によって答えなどない問いかけだったのですぐに止めた。


「す、すみません。

 お見苦しいところをお見せしました。」


「いえいえ。

 貴方の境遇なら無理もないことです。

 もし困ったことがありましたら、ルッソのネストまで連絡をください。

 同じ女として、出来る限り力になります。」


申し訳なさそうに謝罪する女性と、笑顔で返すセフィリアさん。

セフィリアさんの的確なフォローのお蔭で、場の空気が正常に戻る。

彼女を連れてきて良かったと改めて思う、もしエルスやルルだったら、経験が足りずにあそこまでうまくやれなかっただろう。

落ち着いたところで、2つ目の目的を果たすことにする。


「ところで奥さん。

 貴方から見てオルダインはどのような人間ですか?」


「え?」


いきなりの質問のために、首を傾げられる。

しかし、少し考えた後に、答えてくれた。


「そう、ですね。

 可哀想な方、と。」


「?、どういうことですか?

 私が聞く限りでは、傲慢で暴力的な人という印象しかありませんでしたが。」


世間の評価とはまったく違ったその言葉に、セフィリアさんから疑問の声が上がる。

それを受け、女性が説明を始める。


「確かに私も昨日まではそう思ってたんです。

 ですが、昨日署名を集めてる時に聞いたことも踏まえるとそう思えなくなってしまって。」


そこで悲痛な表情を浮かべる。


「続きを。」


続きを促すと、従ってくれた。


「私が聞いた話で伝聞になるのですが、あの人は、名家の長男として生まれ、将来を期待されていたそうなんです。

 そのため、多くの人間が彼に近づき、取り入ろうとした。

 でもそれも、4年後にオルトバーン様が生まれてしまうと狂ってしまった。

 人格、才能、容姿、およそ人として重要な部分がことごとくその弟よりも劣っていることが分かると、周囲の人間は手のひらを返したようにオルトバーン様にすり寄っていった。

 決して才能が無いわけではないのに、弟に劣る、ただそれだけで無能者の烙印を押されてしまった。

 酷いのは、そのような時に力になるべきはずのサイデンハルト当主夫妻様たちも同様であったということです。

 いつも弟ばかりを構い、兄を蔑ろにし、15歳のころには会話することすら碌になくなってしまったとか。

 そりゃあ歪みもしますよね、親の愛情を受けなければならない子供のころにそれが無く、代わりに聞いたのは周囲の嘲りだけ、なんて。」


「そんなことが・・・」


話を聞いて、セフィリアさんが驚きながらも悲しそうに返す。


(成程。

 ならやっぱり、この言葉にしようか。)


俺は特に何も感じることなく、止めの一言を考えていた。


「そうですか、ありがとうございます。

 長々と時間をおとりしてすみませんでした。」


「いえ、貴方から頂いた御恩に比べれば。

 本当にありがとうございました。」


「少年。

 達者でなー。」


「さようなら~。」


お互いに笑顔で別れの挨拶をする。

そして、昨日のように帰っていく2人を見送る。


「・・・さてと。」


「え?、どこに行くのですか?」


歩き出そうとすると、呼び止められる。


「トイレですが何か?」


それに対し、意地の悪い笑みを浮かべて平然と嘘を吐く。


「あ・・・す、すみません!」


「ここで待っててくださいな。

 すぐに終わらせますから。」


恥ずかしげに返す彼女を置いて、俺は路地を走る。

そしてあちらから十分離れて見えなくなり、先ほどの親子を視界に捉える。


―――下卑た笑みを浮かべる男2人組、「獲物」もまた


「やあやあ、お2人さん。

 少しお時間頂いてよろしいかな?」


「ん?、てめえさっきのボンボンか。」


「おいおい、俺たちはこれからお仕事なんだよ。

 坊ちゃんは家返って親に甘えてろ。」


俺がそう尋ねると、こちらを見てそうテキトウに返してくる。

だが、その言葉で1つ分かった。

どうやらコイツ等、俺をどこぞの貴族の子息と勘違いしているようだ。

大金を渡した俺ではなく、渡されたあっちを狙ったのはそれが狙いか。

貴族に手をだして報復を受けたら堪らないからな。


「お仕事ねえ。

 一般人から金巻き上げるのが仕事だとでもいうのかクズども。」


冷たい目でそう吐き捨てる。

コイツらは、昨日から俺たちのことを見ていた。

正確には、昨日俺たちが路地裏で話してる時に、そこにいた片方がもう片方を呼んできたのだ。

そして、俺の出す報酬の話を聞いたところで、横取りする算段を立てていた。

大金が稼げそうということで、コイツ等は大層楽しそうにしていた。

まあ、俺には丸聞こえだったんだが。

と言うわけで、悪いとは思ったがあの親子にはちょっと囮になってもらっていたのだ。

尤も、危害が加えられそうになったら本気でやるつもりだったが。


「・・・ちっ、ばれてんのかよ。」


「まあいいだろ。

 ここは人どおりも少ねえし、コイツ1人くらいならどうにも出来る。」


俺の殺意にすら反応しないところを見るにただのチンピラレベルらしい。


「そうだな。

 さっさと殺して身ぐるみ剥いで、あの女を追うか。

 早く犯したくてたまらねえ。」


「ああ。

 子持ちってところが逆にそそるよな。

 子供の前で気丈に振る舞いながらも喘ぎ声を上げる女。

 いいね~、クク。」


そしてさらに胸糞悪い会話を続ける汚物ども。


「俺が先でいいか?

 前はお前が先にやっただろ。」


「ああ、あのブスか。

 まああんなのでも1回は1回だからしゃあねえな。」


「あ、まずっ!?」


しまった。

あまりに下衆な会話に耐えられなくて、ついやってしまった。

まあ俺は悪くないよね?


「あ?」


「何だ、怖いのかお前?」


声を上げた俺に、馬鹿にしたように声をかけてくる。


(うわー、本当にバカだ。

 気付いてねえよ。)


―――自分たちの右腕が消えているにも関わらず


・・・まあいいか。

俺の中でこれらはもう、殺すことは決定している。

あとは聞きたかったことが聞ければ、それでいい。


「お前らの後ろに居る奴の名前。

 それだけ教えてくれれば楽にしてやるがどうだ?」


昨日コイツ等の会話の中で聞いた、ボスについて。

襲撃できれば資金調達にちょうど良さそうなんだよな。

犯罪組織だったらそこそこ金ため込んでいるだろうから、金貨3枚程度あっさりと取り返せるだろう。




事が済むまで、10秒もかからなかった









「お待たせしてすみません。」


「いえ、大丈夫です。

 ところでレイさん、貴方は今日大丈夫なんですか?」



処理が終わって、組織の上に関する僅かな情報を得てから元の場所に戻る。

流石にあんな三下では、大した情報を持ってはいなかった。

まあ、断片から伝っていけばいつかたどり着けるだろうからいいか。


そんなことよりも、今はセフィリアさんの質問だ。

大丈夫ですか、というのは、さっきの話を聞いて俺が情に流されてはいないのか、と言うことだろう。


「別にどうとも。

 することは変わりませんよ。」


「ですが―」


「セフィリアさん、貴女のその、あのクズが可哀想だという考え、それはあれに苦しめられてきた人たちへの侮辱です。

 止めた方がいい。」


セフィリアさんの言葉にかぶせるように、はっきりと言い切る。

驚く彼女にそのまま続ける。



「あのクズの過去に何があろうとも、それが現在、あれが身勝手な行いをしていい理由になどなりません。

 確かにあれには人格が曲がるだけの理由があった。

 それはいいでしょう。

 ですが、あれはそれを発散する先をなんの関係もない民へと向けた。

 それはあれが、自分より弱いものならば何をしてもいいというふざけたことを考えた末のもの。

 その考えに至ったのは他の何でもない、あれだけの責任だ。

 故にあれはその反動をうける、ただそれだけのこと。」


「・・・・・・・・・」


彼女は何も言わず、ただ俺を見ていた。



クズはクズ。

理由、原因の有無など関係ない。

俺たちは、今を生きているのだから。

そして、今を脅かす「もの」があるならば。





叩きつぶすのみ









昼になり、城へとたどり着く。

城に比例する巨大な城門の前に居た守衛に止められたが、名前を出し、しばらくして本人かどうか確認できる人物が来て保障されると、直ぐに丁寧な動作で迎え入れられた。

謁見の間へと向かう前の道を、その人物と会話しながら歩く。


「変わりないですか、オルト殿。」


そう聞くと、丹精な顔が微笑みを浮かべる。

すこしだけ苦笑が混じった笑みを。


「ああ、私は元気さ。

 と言っても、昨日は少し疲れたがな。」


「何かあったんで?」


そう聞くと、やれやれと頭を振りながら理由を説明してくれる。


「君には言ってもだれだか分からないだろうが、兄上が酷く荒れていてね。

 誰彼かまわず、今にも襲い掛かって来そうな雰囲気だった。

 不思議と手は出さなかったんだがな。

 それでも、家の者が怯えてしまっていて、収拾がなかなかつかなかったんだよ。」


「へー、そりゃ大変だ。」


ニヤリ、と笑みを浮かべながら俺はそう言い、計画通りことが進んでいることに嬉しくなる。

セフィリアさんの顔は引き攣っていたが。

因みに、オルト殿が来たのはグランドを知る人間が彼とオルハウストしかいなく、その中で地位が低い方に向かわせようということになったからだ。

オルハウストは既に、謁見の間に居るらしい。

そのまましばらくの間、テキトウに談笑しながら20分ほど歩くと、馬車が通れそうなくらいの大きさで立派な装飾が施された扉にたどり着く。


「済まないが、ここで君たちが持っている武器の類はその箱の中へ納めてくれ。

 あとでちゃんと返す。」


その扉の前に立ちふさがり、衛兵が持っている箱を指してそう口にする。

その顔は真剣そのもので、反論は許さないと語っている。


「すり替え、とかもしないんでしょうね?」


念のために聞く。

俺の使っている武器は、色々と秘匿しなければならない技術が使われている。

それらは他の人間に使えるようなものではないが、万が一ということもありうる。


「私が保障する。

 我が家名にかけて、そのようなことは断じて行わせない。

 たとえ王が相手だろうと。」


そう言った顔に嘘は感じられない。

しかも、家名という貴族が命と同列に扱うものを引き合いにだしたのだ。

これを出した以上、裏切りはまずないと考えていい。

それを信じ、武装解除することにした。


先ずは、《アロンダイト》を布をかぶせたまま壁に立てかける。

そして、ゆったりとした上着の裏に仕込んでいた《グリモワール》を箱の中にジャラジャラと入れる。

そのあとで、両腕の肘下にベルトを巻いて固定していたナイフを左腕から3本、右腕から3本抜き出す。

次に、同様にしてひざ下の部分に固定していたナイフを両足から3本づつの6本。

最後に、背中に固定していたナイフを2本。

計14本のナイフを抜き出し終えたころには、誰しも顔を引き攣らせていた。


「君は武器商人か・・・?」


オルト殿のこの言葉が、この場の人間の言いたいことを代弁していただろう。

特に深い意味は無く、ただ投げナイフとして使うために持っていただけなんだが。


その後、軽くボディチェックをすることになったのだが、ここでもひと悶着。


「・・・・・・・・・・・・(全員)」


上着を脱いで、ズボンのベルトに差していたものを見て、誰もが言葉を失う。

セフィリアさんは顔を背け、私は何も見ていない、何も知らない、とでも言いたそうにしている。

衛兵さんは腰のものを見て俺の顔を見てを数回繰り返し、最後に救いを求めるようにオルト殿を見る。

そしてそのオルト殿は、過去のことを思いだしたのか顔を真っ青にしていた。

それでも流石と言うべきか、恐らく軽くトラウマにもなっているだろうにそれに負けず聞いてきた。


「き、君。

 それは一体なんの真似だい?」


「え?、ただの・・ですが?」


恐々と効いてくる彼に、誰が見ても当たり前のことを言う。


「違う、そんなことを言いたいんじゃないよ!

 とにかくそれは没収・・・」


没収する、と言おうとしたんだろうが、それが出来ないことに気付き頭を抱える。

当然だ、没収していいのは「武器」なんだから。


「・・・・・・分かった。

 それでいい・・・」


今にも倒れてしまいそうな彼に心の中で合掌しながらホッと一息つく。

腰のものに気を取られたおかげで、懐の銃を気に掛ける人間が誰もいなかったからだ。

あれは、人目にさらしたくない。

計画とか戦略からではなく、ただ心情的に。

そして気分を切り替え、深呼吸を1つ。

そして扉に手を掛ける。




これはいうなれば前哨戦だ。

世界を変えられるかどうかの。

国1つ変えられずに、世界を変えられるなど出来るはずがない。

これから行われるのは、そのための儀式。

絶対に失敗は許されない。









さあ始めよう




序章の決闘から始まった、この国の物語の本章を









この国の新たなページが、今、開かれた



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