表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界の愚か『もの』 ~世界よ変われ~  作者: ahahaha
デルト王国 ~望んだ望まぬ名声~
40/84

40話 『憑き人』

今回はこの物語の「魔法」、「闘気」に並んで重要になる「憑き人」についての解説になります


長くなりそうだったので分割しました、今回短めです

これから文化祭の時期ですので、更新が遅めになるかもしれません

出来るだけ、5日以内に出そうとは思いますが

我ながらずるい聞き方だと思う。

予め正直に答えるという言質をとってからこんなことを聞いてるのだから。

しかも、恋心まで利用して。

好きな相手の前で、前言を翻すことなど並の人間にはまず無理。

そんなことをしたら嫌われるのではないかという危機感がその人を襲う。

ルルは逃げ道を塞がれ、答える以外に道が無い。

そしてその答えは。


「・・・何故、お気付きになったのでしょうか。」


遠回しな肯定だった。

その表情には諦めが見て取れる。


「以前君が戦ってるのを見ていたら、「岩餓鬼(ロックゴブリン)」の動きが不自然に止まった場面があった。

 魔力も感じなかったし初めはただの偶然かと思ったんだが、それでも頭の片隅に留めて置いてたんだよ。

 そして本を見てたら『憑き人』に関しての記述を見つけて、その力の内容がぴったり当てはまるものだったからそうじゃないかと考えた。」


「ふう・・・。

 あの場面でそこまでじっくり見ている余裕があるとは思いませんでしたし、慣れない実戦だったので身の危険を感じて咄嗟に使ってしまったのですが、駄目でしたか。」


質問に正直に答えると、弱弱しい笑みを浮かべながらそう返された。


「確かに普通の人間であれば気付かない一瞬のことだったからな。

 相手が悪かっただけだろ。

 現に、俺よりも近くに居たレオンたちに気付かれなかったのだから。」


「兄さんの場合はあの人が鈍いだけだと思いますけどね。」


「確かにな。

 さて―――」


軽く笑い合ったところで本題に入る。


「手っ取り早く済まそうか。

 君の力は何だ?」


「・・・『束縛』です。

 条件は「対象を視認する」こと。

 目を向け、相手を縛りたいと望めば数秒ほど動きを止められます。

 まあ力の差がありすぎますと効かなかったりもしますが。」


大方想像通りの力だ。

だが、条件が思ったよりもずっと軽い。


「ほう。

 言っては何だが相当強力だな。

 何より条件が想像以上に軽い。

 1対1の場面であれば、余程の差が無い限り無敵だ。」


これはかなり酷い言葉だ。

力の強さにより、苦しむことが多い彼女たちにとっては。

それでも言わずにはいられなかった。

目の前の敵のみに集中すればいい決闘において、これ以上のアドバンテージはないだろう。

後は動けないところを斬ればいいのだから。


「ええ、とても強い力です。

 他人を怯えさせるくらいに。」


予想通り、ルルはその力を疎んでいるようだが。


「だろうな。

 人は良く知らないものを遠ざける。

 それが自分に害成せそうなものならば尚更だ。」




『憑き人』とは、不可思議な力を持った人間たちの総称。

発動してる時に外見が、まるで何かが憑りついてるかのように感じることからそう名付けれられたとか。

力の種類は多様で、1つとして同じものはないという。

ただ不可思議な現象を起こすだけなら、「固有魔法」も同じなのだが、そこには決定的な差がある。

『憑き人』の力は体質、つまり力の使用によるデメリットが基本存在しない。

「固有魔法」に限らず、「魔法」は「魔力」である「精神力」を、「闘気」は「体力」を、それぞれ消耗する。

これにより、無制限に行使できる力ではない有限の力となっている。

しかし、『憑き人』の力にはそれが無い。

無制限とまではいかず、それぞれになにかしらの戒律のようなものが存在するようなのだが、言ってしまえばそれだけのこと。

「魔法」よりも遥かに優秀な力と言える。


―――そしてそれ故、迫害を受ける


その力を人々は恐れ、排斥した。

『憑き人』たちはばれてしまえば最期、世界から追われ次々と処刑されていった。

たとえ、どれほど清廉潔白な人間だろうと、その宿命から逃れられなかった。

酷いところでは年端もいかない子供が、仲の良かったはずの親を殺すことすらあったそうだ。

しかもその子供は世間に賞賛された、その年であの悪魔を殺すなどなんと素晴らしい者だ、と。

その子供は、その後で親すら殺す悪魔の子として処刑されたそうだが。

まんま、向こうの「魔女狩り」のようなことが行われたという。


ここまで迫害が進んだことには、当然理由が存在する。

『憑き人』の力は、人に仇成すものしか存在しないのだ。

ルルの「束縛」も然り。

人の自由を縛り、自由にすることが出来る。

それを人が恐れるのも当然だろう。

だが、それだけならばまだ良かった。

それだけならば、素手でも武器を持った人間程度の認識しかされなかっただろうが、あることが彼らの運命を決定づけた。

魔獣にも、似たような力を持つものが存在するのだ。

それは極一部にすぎないのだが、確かに存在する。

さて、果たしてそんな存在が居たら、彼らはどうみられるか。


―――『憑き人』は魔獣が化けた存在ではないのか


そんな考えが、あっという間に広まった。

それにより、ずっと彼らは迫害と弾圧を受けてきた。

今は見つかってもすぐに処刑とまではいかないし、大分穏やかになってはいる。

それでもその歴史は人々の意識に歪みを与えていった。

彼らに対する恐れはいまだに根強く残っている。

『憑き人』はいまだに深い闇の中に居るのだ。




「はっきり仰いますね、貴方は。

 そこまで面と向かって言われると傷つく気持ちにもなれません。」


苦笑しながら言ってくるルル。

その顔には、何かをこらえているように見える。


「君の場合は、変に取り繕うよりもこう言った方が堪えないだろう?

 それに下手に取り繕うのは俺の趣味ではない。

 あ、ここ後で重要だから覚えておくといい。」


俺は木に縁りかかりながら気楽に告げる。

すると、ルルが俯いた。


「・・・んで・・・・・・すか・・・」


そして何事かを呟く。

それは俺でも聞き取れないほど微かなものだった。

そして顔を両手で押さえ、今度ははっきりと言う。


「何で、気付いてしまったんですか・・・」


「・・・・・・」


黙って聞く。


「私は貴方に嫌われたくないのに!

 あんなこと(・・・・・)はもう嫌なのに!

 どうして貴方は私の力に気付いてしまったんですか!」


すすり泣く声がする。


「こんなに貴方が好きなのに・・・!

 これじゃあ私は貴方に嫌われるんじゃないかと疑ってしまう!

 そんなの、嫌、なのに・・・!」


「必要なことだったんでね。

 君らとの関係を保っていくためには。」


彼女に近づく。


「酷いですよ、こんなの・・・!

 苦しいです・・・

 辛いです・・・

 痛いです・・・」


ルルをそっと抱きしめる。


「壊れそうですよ・・・心が・・・」


そのまましばらくの間、そのままでいた。

ルルが落ち着きを取り戻すまで。









「やはりというか、過去に何かあったんだな。」


未だ俺の胸に顔をうずめていたが、泣き止む程度には回復したようなので話しかける。


「・・・・・・・・・ええ。」


かなりの沈黙の後、そう答えた。

予想はついていた。

レオンが知らなかったことがその理由。

以前それとなく聞いてみたが、奴は微塵も反応しなかった。

あの直情径行な生き物がごまかせるわけも無し、つまりルルは兄にも隠していたことになる。

そして、最も接する時間の多いレオンが知らないというのはおかしい。

人は何かを支えにして生きようとする。

家族はその対象として最適な存在だ。

そして、子供のころにはさらに輪を掛けて何かに頼ろうとするものだ。

それなのに、ルルは家族にすら教えなかった。

それはなぜか。

教えられなかったと考えるべきだろう。

その原因となりえるもので最も可能性が高いのは恐怖。

あれだけ溺愛されてるレオンにすら頼ることが出来ず、嫌われてしまうと考える恐怖。

過去に何かあった結果、そのような考えに至ったと考えるのは自然だろう。

そう考えてたところに、先ほどの「あんなこと」と言う言葉、もう間違い無い。


「貴方がこのことを知ったところで、どうも思わない人だというのは分かってました。

 でも、どうしても知られたら嫌われてしまうのではないかという恐怖が先行してしまうんです。

 それで、言い出せませんでした・・・」


「それは別に悪いことではないな。

 気にすることじゃない。」


このような知られたくない秘密を言うような場合、親密な関係であることは何の救いにもならない。

むしろ親密であればあるほど恐怖は増える。

信頼してるからこその、拒絶された時の恐怖。

それが人を縛り付け、言い出せなくさせる。

だから、別に言い出せなかったことを怒るつもりはなかった。


「・・・お聞きしたいことがあるんですが、よろしいでしょうか?」


「何だ。」


ルルの質問に、了承の意を込めた言葉を口にする。

そして、ルルは震えた声で聞いてきた。




「私は・・・う、『化け物』、なのでしょうか?」




途中でつまりながら、必死に紡いだその言葉に俺は答えを返さなかった。

とりあえず情報が少なすぎるので、どうしようもない。

だから聞く。


「何故そんなことを聞く?」


「・・・昔話をしなければなりませんが、よろしいですか?」


「ああ。」


そして彼女は、彼女の『事件』を語り出す。


「私には、5歳のころ友達が居ました。

 テールという名の男の子です。

 その頃は私も活発で、人見知りではありませんでした。

 貴族の家系だっただけに友達の少ない私の数少ない友人。

 性格も優しかったので、直ぐに仲良くなれました。

 クルスよりも仲が良かったです。」


「その頃はまだ、力を発現してなかったのか?」


俺がそう聞くと首肯した。


(と言うことは、『憑き人』は遺伝ではなく突然変異体なのか?

 兄妹のレオンも力を持ってはいないようだったし。

 ある日突然恐ろしい力を手に入れる、怖いものだ。)


いきなり力が発現するのなら、慣れていなく暴走してしまうことも十分に考えられる。

危険視される理由が、また1つ理解できた。

ルルは言葉を続ける。


「当時はいつも、彼とともに遊んでましたね。

 彼は平民でしたが、貴族子息の私相手でも臆さず会話してくれたので一緒に居て楽しかった。

 こっそり屋敷を抜け出して、一緒に野原を探索することが日課でした。」


「今の君では考えられないことだな。

 そんなやんちゃな時があったとは。」


茶かすように口にしてみるが、それに言葉を返す元気もないようだった。

なので、これ以降はしばらく黙って聞くことにする。


「その時、色々と約束したりもしたんですよ。

 最初はずっと友達でいよう。

 中には将来結婚するというのもありましたね。」


「・・・・・・・・・」


(何だろうなこの釈然としない気持ちは。)


何となく不愉快になった。

彼女に恋愛感情は持っていないと断言できるが、他の人間にちょっかいを出されて軽い嫉妬を覚えるくらいは大事だと思ってるようだ。


―――『  』と重ねてしまってる部分もあるのだろうが


「そのことが兄さんにばれた時は、あの人を止めるのが大変でした。

 一般人に剣を持ち出して対抗しようとしたんですから。

 何とか一発殴るだけで治めることが出来ました。」


(よくやったレオン。)


レオンを密かに賞賛する。


「そんなある日のことです。

 いつものように野原に出て遊んでいるたのですが、気が付いたら行ってはいけないと言われている場所に出てしまっていたんです。

 そこは崖もありますし、何より弱いとはいえ魔獣が出てくることから立ち入りを禁止されてました。

 私たちはすぐに帰ろうとしたのですがもう手遅れ。

 目の前に「餓鬼(ゴブリン)」が現れて、私たちは必死に逃げました。」


たかが「餓鬼(ゴブリン)」と言えど、年端もいかない子供にとっては脅威以外の何物でもない。

逃げるのは当然の選択だろう。


「その末に崖に追い込まれてしまい、もう駄目だと思いせめてテールだけでもと。

 敵を睨み付けてそう強く願った・・・」


(それが―――)


「力を初めて使った瞬間。」


俺の考えていたことを、ルルが補完した。


「動きが止まった魔獣を、私は無我夢中で崖に突き落とした。

 その目論見は成功し、何とか落とせたました。

 そして、好きな男の子を助けられたという喜びを抱いてテールを見たら・・・」


「・・・恐怖の視線を向けていた、か。」


言いたくないことだろうと思い、俺が言葉を継いだ。


「私が恐る恐る近づくと、彼は後ずさっていった。

 そして、こう、言った・・・」


次の言葉を、必死になって紡ごうとしている。

そしてより強く俺の胸に顔を押し付けて言う。




「『来るな「化け物」!』と・・・」




「・・・約束を破った上にそれか。

 クズが。」


子供だろうとなんだろうと俺にとっては関係ない。

子供だからと言って、罪が消えることなどない。

だから、心の底からの憎しみを籠めてそのガキを吐き捨ててやった。

だがそこで疑問が浮かぶ。


「つまり、「それ」は君が『憑き人』だと知ったということではないのか?

 何故レオンに伝わってないんだ?」


子供は何かあったらすぐに頼る人に伝えるものだ。

そうなれば、高確率でレオンまで話が及ぶと思うのだが。


「簡単ですよ。」


今にも消えてしまいそうな笑みを浮かべて言う。


「テールは崖から落ちて死んだんです。

 そのすぐ後に。

 私から逃げようとパニックになって、崖の方に走って行った・・・」


「・・・救いが無い話だな。」


助けようとした人に怖がられ、そして助けたと思ったら自分の目の前で死なれた。

ただ怖がられるよりも、ただ目の前で死なれるよりも、ずっと堪える話だ。


(それをこの子は、今までため込んでいたのか。

 誰にも打ち明けられず。)


今目の前にそのガキが居たら、最上の苦しみを与えて殺してやりたい。


「レイさん、教えてください・・・!」


泣きながら、再度聞いてくる。


「私は、「化け物」なんですか!?

 「人」とともにいてはいけない存在なんですか!?

 今まで誰も、『憑き人(わたし)』の存在を認めてはくれなかった!

 『憑き人』についてどう思うかと聞いたら、誰もが、誰もが・・・!」


今まで、一体どれだけ辛い思いをしてきたのだろう。

この小さな身体で。


「教えてください・・・!

 私は『化け物』なんですか!?」


俺はその問いに答える。









「まあ君がそう思うんならそうなんじゃね?」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・軽い!?」


答えたら長い沈黙の末、突っ込まれた。

「だから下手に取り繕うのは俺の趣味ではない」って予め言ったのに。

思ったことをそのまま口にするんだよな、俺は。





―――さて、君のその悩みを軽くするとしますか



面白いと思ってくだされば、是非評価を


今回こんな終わりですみません

ちゃんと次につながるんで、待ってください

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ