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異世界の愚か『もの』 ~世界よ変われ~  作者: ahahaha
デルト王国 ~望んだ望まぬ名声~
35/84

35話 決闘(笑)

さあ、貴族さん最初から最後までフルボッコの回です

これずっとやりたかったんですよねー、やっと書けて満足です

学校そっちのけでさっさと書いてしまいました・・・

反省


あと、武器の名前は、感想に多かったアレにしたかったんですが、著作権に引っ掛かりそうだったんで、自作のものにしてもらいました



・・・やりすぎてないか心配ですね

喧々囂々、非難の嵐。

野次がそこら中から聞こえてくる。

しかし、そんなことを気にする俺ではない。


「き、貴様は、まさか本気でそれで戦おうと言うのか・・・?」


糞野郎が顔を引き攣らせながら、怒りで震える声で聞いてくる。


「当然じゃないですか。

 これは我が家に伝わる家宝、『聖剣 ダーウィンコーン』です。」


「それのどこが家宝だ!

 しかも無駄に気取ったような名前まで付けて!」


「日夜大地の恵みを受けて素晴らしく製錬されたこのフォルム。

 そして恵みの雨により育まれたこの瑞々しい緑の羽衣。

 聖剣と呼ぶにふさわしいではありませんか。」


「婉曲にいっただけで要するにただの野菜なのではないか!」


「武器にもなり、しかも有事の際は食料にもなるという兵隊垂涎の逸品です。

 これさえあれば戦争にわざわざかさばる兵糧を持っていく必要がなくなるのですよ?

 どこがただのダイコンだというのですか。」


「その言い方ではダイコンだと認めてるぞ!?」


「大自然の力をご覧あれ。」


「人の話を聞け、上手いことを言ったつもりか!?

 そもそもそれで私をどうするというのだ!?」


「貴方をおいしく料理して差し上げます。」


「ぐう・・・!」


「おや、今のは上手いことを言ってましたか。」


「うるさい!!!」


俺の挑発の数々に、怒りで完全に我を失いつつある糞。

いい感じになってきたので、笑いを必死で噛み殺しながらとどめの一撃を放つ。


「そう怒らないでくださいな。

 悪かったですって、ちゃんと別の武器も用意してますから。」


困った弟に言い聞かせるかのような口調で告げる。

相手はもともと怒りでどうにかなりそうになっているところにその口調で語られたことで、血管が切れるんじゃないかと俺が心配するほど顔をしかめたが、何とか耐えていた。


「それならば早くそれを出せ!

 もう待てんぞ!」


「せっかちですねえ。

 えーと確かこの辺に・・・あ、あったあった。」


そう言って俺は再度袋をまさぐると、武器その2を取り出す。


「・・・・・・・・・(ギャラリー)」


それを見て観客たちはどんな反応をしたらいいのか困ったような表情を見せ、糞は怒りで顔を、血塗れになったかのように真っ赤に染めた。




「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ゴボウ。(観客A)」




誰かがようやくそれだけを絞り出した。

そう、俺が取り出したのは1.4mほどの長さのゴボウである。

明らかに袋に入る大きさではなかったのに、周りの人間でそれを突っ込む者はいない。

いや、突っ込める者はいない、の間違いか、あまりの展開にそれどころではない様子だ。


「名付けて、家宝『魔槍 ゴンボー』」


見た目が似てるんで、棍棒とかけてみました。

名付けてと言ってる時点で分かるように、もう家宝でもなんでもないことを隠す気はない。

そもそも信じてる者など皆無だったろうが。

しかしこの世界の食べ物はどれも色がおかしかったんだが、何故この2つは向こうと変わらないんだろう?




「審判、開始の合図を!

 今すぐ私を虚仮にしたことを後悔させてやる!!!」


「は、はい!

 始め!」


審判が焦ったように開始の合図を告げる。


「その身で償え!

 愚か者が!」


そう言って、かなりの速さで、そして無駄のない動作で槍を繰り出してくる。

闘気での槍の強化も、光ってはいるがなかなかと見える。


   ガキィィン


「あー、愚か者って点は否定できませんね。

 自覚してますから。」


「は?(相手含む全員)」


俺はそれをじっくりと見物しながら、闘気を送ったダイコンを前に出した。

その位置には高速で槍が迫っていたので、そのまま事態が進行した結果。


ダイコンにより金属の槍が受け止められるという、世にも奇妙な光景が展開された。


「は?・・・え?、これは・・・え?」


「おーい。

 呆けてる場合ですかー?」


事態についてこれず、ただただ呆然とする奴に、俺は綺麗な笑みを作って言う。


「とりあえず、歯ぁ食い縛れや。」


そして左手のごぼうで槍を払いのけ、ダイコンを振りかぶる。


「これぞ、大自然の力!」


そう叫んで思いっきり振り抜いた。


   ゴッッッ!!!


ダイコンが空気を切り裂く音と、鈍器で殴ったような音が響く。

哀れ、奴は左側頭部に直撃を受け、錐揉み描いて吹き飛んだ。


「ぎゃあああぁぁぁ!!!???(男衆)」


そして男たちが集まっていた一角に直撃し、野太い悲鳴が上がる。

大体20mは飛んだだろうか、まあ死人は出ていないだろう。


「たーまやー。

 ん?、これは違うか?

 ま、いいか。」


今の状況を作り出した俺に、それとダイコンに視線が集まる。

比較的に近くで観戦していたディック殿とセフィリアさん、そしてレオンたちも俺を見ていた。

と言っても、初めて俺の非常識さを目の当たりにした2人は目を大きく見開き、見慣れてきている仲間3人は呆れたように見ている、という違いはあったが。


「が!?、は、ぐ・・あ・・・!」


「おお、起きた起きた。

 いやーよかった、これで終わったらどうしようかと思ってたんですよ。」


糞野郎は苦悶の声を上げ、ふらふらとしているがしっかりと立ち上がりこちらに歩いてきた。


(・・・あれ?

 そう言えばコイツの名前って何だっけ?)


一瞬そんな考えが頭をよぎるが、気にする価値もないことだったので頭のごみ箱に投げ捨てる。


「何だそれは・・・!

 何故私の槍を受け止められる、これは堅さだけで言えば最高の部類に入る「剛銀」製だぞ!?

 それがたかが食物ごときに!?」


混乱しているのだろう、そんな聞いたところで何の得にもならないことを、決闘の最中に聞いてくるという愚行を行う糞。

その問いを俺は鼻で笑ってやった。

まあどうせだから答えておこうか。

と言っても決して親切心などではなく、相手に俺との差を教えてやるためだったが。


「逆に聞こうか。

 何故食物、この場合は植物か、が金属より劣っているなんて思ったんだ?」


「そんなものは常し―――」


「常識とは何だ?

 戦いという生死を分けるような事態に常識がどれだけの影響力を持っているというのだ?

 そもそも、常識が絶対のものだとでも思っているのか?

 だとしたら貴様は愚かを通り越して哀れだな。」


「貴様!」


「常識など俺にとっては何の価値もない。

 己の行動を制限し、可能性を縛り付けるただの鎖だ。

 そんなものに縋らなくては生きていけないほど、何かを頼りにしなくては生きていけないほど、お前は、そして人は弱い存在か?」


「そ、そんなことはない・・・!」


「・・・ふむ、話が脱線してしまっていたな。

 質問に答えよう。

 理由は単純、闘気の使用による硬度・強度の上昇。

 ただそれだけだ。」


俺がそう答えると、今度は周りから非難ではなく否定の言葉が飛び交う。


「馬鹿を言うな、それなら私だってしている。

 そもそも元の硬さで圧倒的に植物が負けてるんだ、同じ強化をしたところで結果が変わることは無い。

 それが―――」


「それが常識、そう言いたいのか?」


俺がそう言うと、糞と奴の意見に賛意を示していたものが黙り込む。

さっき俺が言っていた言葉を思い出したのだろう。


「そもそも、闘気とは生命力を物体に干渉できるようエネルギー化したものだ。

 これがどういうことを意味するか分かるか?

 つまり、もともと生命体に存在するものを外に出しただけ、ということだ。」


「・・・それがどうした。

 そんなこと、子供だって知っている。」


奴がそう言うと、周りからも当然だ、という声が上がる。

この世界には魔獣という実に分かりやすい脅威が存在する。

人は生きるための最小限の条件として、身体能力で圧倒的に勝る魔獣に打ち勝つ術が必要だった。

それが「闘気」、そして「魔法」。

この世界では、このどちらかを習得しなければまともに生きていくことが出来ない。

もちろんすべての民間人が戦えるわけではないのだが、そう言う環境だということもあり、その2つについての知識は学び舎でなくとも親などから徹底的に教え込まれるらしい。

だからわざわざ確認せずとも、知らない人間は滅多に存在しない。




―――だが、得てして「知る」と「理解」は違うものだということを、分かっている者はいないのだ




だから俺はそのことを嘲笑う。

自分の知ることが世界のすべてと思い込んでいる愚者を。


「違うんだなー、それが。

 それは「知っている」というだけで「理解」ではない。

 お前は10あるものを1知っただけで満足しているだけだ。」


「馬鹿にしているのか・・・!」


幾分落ち着きを取り戻しているようで怒鳴ったりはもうしてこないが、怒ってはいるようだ。


「してるさ。

 そのことを知っているのに、闘気の「親和性」が生命体の方が圧倒的に高いと言うことを「理解」出来ていないのだからな。」


「親和性、だと?」


完全に予想外の言葉だったようで、素っ頓狂な声を上げる。


「闘気はもともと、生命体に存在するものだ。

 つまり金属のような非生命体よりも、植物のような生命体のほうが、闘気を込められる量が圧倒的に多くなるのは自明のことだと思うが?」


「な!?」


俺の言葉に辺りがどよめく。

誰もこのことに気付いていなかったらしい。

それも当然。

わざわざ軟らかいものに大量の闘気を込めるよりも、もともと硬いものに闘気を込めた方が普通は効率がいいからだ。

だが、それで固定観念として定着してしまえば、それは成長の可能性を消してしまう。

人は何時だって、試行錯誤の末に新しいものを生み出してきた。

その未来を、消してしまっていることに気付いていた者はいなかったようだ。


「だ、だが、大量の闘気を送り込んでしまえばそんな脆いものなど許容量を簡単に超えて壊れてしまうではないか!?」


それもまた事実。

植物は脆い。

そんなものに闘気を無理やり詰め込んでしまえば、その送り込まれた物体は崩壊してしまう。

それもまた、「常識」であった。


「お前はあることを忘れているな。」


「何?」


「我々人間の身体が闘気を全開にしたときのその量は、その許容量の比ではない。

 しかし、人の身体は植物などよりも脆く軟らかいぞ?

 何故身体を保っていられると思ってたんだ?」


その俺の問いに、黙り込んでしまう。

人は体内の闘気を全開にして、疲労の極致に達することはあっても身体が壊れることは無い。

この男はそれが何故か深く考えたことは無かったらしい。


「答えは、人は無意識の内に体内の闘気を循環させているからだ。

 あたかも心臓から送り出される血液のように。

 闘気はただ送り込むだけでは、風船に延々と空気を送り続けるようなものなのだ。

 そんなことをすれば簡単に割れてしまう。

 しかし、循環させればそんなことは無くなる。

 その結果がさっきの光景ということだな。」


「そんなことが・・・」


唖然とすることしかできていない。

しかし随分と話し込んでしまったな、そろそろ再開するとしよう。

そう思い、俺はダイコンの先を相手に向けて、意地悪気な笑みを浮かべる。


「さて、話はもう終わりだ。

 来いよ、格の違いを教えてやる。

 食物にズタボロにされるという、実に屈辱的な方法で、ね?」









俺の話で呆気に取られていたギャラリーがその言葉で我に返り、辺りが再び喧騒に包まれる。


「くそっ!」


その中で先に動いたのは相手。

まあ俺は今能動的に動く気はないから仕方がない。

さっきの会話の最中、ずっと体力の回復に努めていたようで、その速度は始めの突きと比べて遜色ない。

まあ、俺は知っていて見逃していたわけだが。

それを俺は左手のゴボウで易々と受け流す。

槍は俺の左目を掠るかどうかギリギリのところを通り過ぎて行った。

そのまま俺は右手のダイコンで腹を突く。


「うおあ!?」


それを身を捻ることで辛うじて躱すが、今度はゴボウがその顔面を突きで狙う。

これも頭を捻り躱す。

そのまま転がるようにして俺から距離を取り、顔を上げて槍を俺に向けて構え、


―――一瞬で目の前まで来た俺にダイコンで腹を突かれる。


「がほっ!?」


立ち上がろうとしたのにすぐさま再び地面を転がる。

それを追い、ゴボウで顔を狙って突きまくる。

それを転がり続けて必死に躱し続ける糞野郎。

突く度に地面に綺麗な細い穴が空く。


「どうした?

 軍部の名門、槍のサイデンハルトが得意の突きで完全に負けているじゃないか?」


「だ、黙れ!」


俺が突きばかり多用しているのは、相手の得意分野で思いっきり打ち負かしてやるため。

案の定、糞野郎は実にそそられる屈辱の表情を浮かべる。

そのまましばらく遊んでいたが、そろそろ次の遊びをするために動きを止める。

相手は自分が全く相手にされていないことに気付いたようで、血が流れるほど唇を噛みしめている。


「貴様は本当にGランカーなのか!?」


「当然。

 ほら証拠だってありますよー。」


そう言って俺は、新しく手に入れたカードを投げて渡す。

それを見て、本当だと知った奴は俺に乱暴にカードを叩きつけるように返してきた。


「調子に乗るなよ!

 さっきは油断していたせいであんなことになったが、一度体制を立て直してしまえばこっちのものだ。

 本当の槍捌きを見せてやる・・・!」


(ははは、油断ね。

 まあ今はいいか、後で追い詰めるネタが増えたし。)


「槍捌きって・・・

 俺の使ってるものはゴボウなんだが?」


「あ、確かに。(ギャラリー)」


俺のその言葉に、ギャラリーは納得する。

それを聞いて今度は羞恥で真っ赤になる糞野郎。

まったく、コロコロと顔色を変えて忙しいやつだ。


「うるさい!」


今度はさっきまでの大振りではなく、コンパクトに槍を振る。

流石に今までので学習したらしい。

大振りでは俺は捉えられない。

身体を逸らし、捻り、跳び、避け続ける。

その様子に段々調子を取り戻してきたらしい、表情に自信を取り戻す。


「どうだ、これがサイデンハルトの槍だ!」


「へえ、そうなのか。

 しかしそうだとするなら―――」


そして相手の調子が上がったところで俺は、その表情を壊すために動く。


   ガンッ


「―――随分と軽いな。」


「そ、んな・・・」


俺の行ったことに、相手は信じられないといった様子で呆然と呟き、周囲は息を呑む。


ゴボウの先端で、槍の穂先を受け止めているのだ。


因みにこんな芸当ができたのは、このゴボウが先端を直角に切り落としていて面になっているからである。

まあそれでも普通は出来ないが。


「うあああああ!!??」


ほとんど錯乱状態になりながら、高速で槍を連続で突いてくる。

しかし、その速度は並ではない。

俺の感覚から言っても、それなり(・・・・)に速いと言えるものだった。

しかし所詮それなり。

俺はさっきと同様に、ゴボウの先端でその突きを受け続ける。

辺りに、速すぎてほとんど繋がっている衝突音が響く。

その様子を周囲の人間はただ見守っていた。

理由は単純。




戦っているのが野菜と槍なので、どんな反応をすればいいのか分からないのだ




それも当然と言える。

いくら名勝負に見えても、片方が野菜という非常識極まり無いもので戦っているのだ。

これで困惑しない方がおかしい。

それは相手も同じ。

その表情に、大きな屈辱が見てとれる。

同時に、少量の恐怖もあったが。


(そろそろゴボウの出番はお終いかね?)


そう思い、俺は演出としてゴボウが弾かれた風を装い未練なく手放す。

相手はもう、どんな小さな勝機でももう見逃したくないのだろう、焦りから大振りの一撃を繰り出してくる。


「悪手だね。」


俺はそう呟き、ダイコンを構えてその身で受け流す。

そのまま直進し、先端で胸を打つ。


「かっっっ!?」


肺を一撃したので、相手の口から空気が漏れる音がした。

三度転がる糞野郎。


そのまましばらく寝転んでいる奴を、俺は欠伸をしながら立ち上がるのをゆっくり待つ。

そのままどのくらいたったか、おそらく数分だろう、奴が立ち上がる。

どう見ても、その様子は疲労困憊だったが。

まあ、これから今度は満身創痍になってもらう予定だが。


「もうしばらく休んだ方がいいんじゃないのか?

 碌に動けそうにないみたいだし。

 いっそのこともう降参したら?」


一応、善意から忠告してやる。

まあ当然、その答えは。


「黙れ、降参などという生き恥をさらしてたまるか・・・!」


これだった。

俺はこれ見よがしに溜息を吐く。

そしてダイコンを構える。

いつも通りに、白い身と葉の境ではなく、身の方を持ち葉の方を前にする。


「はあ!」


「よ。」


   ピシィッ


という乾いた音と、槍が地面に落ちる音が響く。


「う、お、ああああ・・・!」


相手は両手を押えて悶絶していた。

俺が葉で手を打ったのである。

手は、ズタズタになり血が流れていた。

たかがダイコンの葉と侮るなかれ、闘気で強化した葉は下手な鞭より遥かに丈夫な存在である。

さらに、ダイコンの葉はギザギザしているので、おろし金のような効果も発揮する。


(これが本当のダイコンおろし、とか考えてみたり。)


そんなくだらないことはさっさと忘れ、とりあえず奴の身体めがけて一振り。


「~~~~~~~~~!!!???」


もはや声すら出せない痛みらしい。

騎士と言われていた癖に、鎧を付けていなかったことで身体は一振りで傷だらけになった。

そのまま俯き続けている奴。


「・・・おや?」


気付くのが遅れてしまったが、コイツ、息を整えている。

そして身体のどの部分が動くのかゆっくりと確認しているようだ。

そしてその点検が終わった瞬間。


「ぐううおあああああっっ!!!!」


(速い!)


俺が本気でそう思うほどの勢いで、裂帛の気合いで以って打ち込んでくる。

もはや、先のことを考えていないのだろう、身体と槍が眩しいほど輝いている。

まだこれほどの体力が残っていたとは驚きだ。

俺はダイコンに循環させている闘気を加速させ、硬度を一気に高める。


「ずああああああ!!!」


今日初めての叫びを上げ、相手と相対する。

そして身体が交差し―――


   キイィィィイン


甲高い音を響かせ、槍が砕け散った。

俺のダイコンも、ごっそりと抉れてしまっていたが。

そして、相手は呆然と折れた槍を眺めている。

傍から見れば、かなりシリアスな光景だろうが。


(やはり野菜ってのが全部ぶち壊してるよなー。)


俺は苦笑しながらそう思う。

自分が望んだ結果なので、後悔はしていないが。


(さて、これで身体的にヤルのはもういいだろ。

 それにコイツのチンケなプライドも粉々にできただろうし。)




―――最後の段取りに向かうとしよう




「納得できるか・・・!」


「おや?」


突然何かを言ってくる糞野郎。


「納得できるかと言ったんだ!

 決闘の場に食物を持ってくるような、ダイコンとゴボウを持ってくるようなふざけた男に、セフィリアさんを渡せというのか!?」


実際、完全な八つ当たりであるが、それは事実でもある。

俺はコイツを精神的に参らせるために、野菜などと言う誰が見ても明らかにふざけていると分かる術を取ったのだから。




―――それは、コイツにこういうことを言わせるためでもあったので、完全に俺の思惑通りになっているのだが




「そんなふざけた男に、こんなことをして人を貶めるような男に、愛する人を幸せにできるわけがない!

 おい、お前はセフィリアさんを幸せにできるのか!?

 私にはその自信がある!

 必ず幸せにしてみせる!

 お前は、が、ふ!?」


皆まで言わせる前に、俺はその首を捻り上げていた。


(ああ、駄目だ。

 こういうことを言わせるために俺はコイツを焚き付けるようなことをずっとしてきていたのに、やはり腹が立つ。

 どうしても、その言葉を許容することが出来ない。)


自分の思惑通りに進んでいたのだ、ついさっきまでは。

だが、先ほどの言葉に俺は頭が熱せられたこのような怒りを感じていた。


「ク、ふ、ははハ・・・」


意図せず不気味な笑い声と笑みが漏れてしまう。















「糞野郎、幸せに『する』だと?

 貴様はそれがどれだけ傲慢で非道な言葉か分かってて言っているのか・・・?」




―――さあ、最後の仕上げといこう




―――この男を改心させるのだ




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