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異世界の愚か『もの』 ~世界よ変われ~  作者: ahahaha
行動開始 ~純粋な愚か者の願い~
30/84

30話 黒幕

総合評価13000突破、皆様ありがとうございます!

ですが、10月からは大学が始まるので更新頻度が下がると思います

申し訳ありません・・・



あと、次の話はこれから数日後の話となります


不覚だ。

最後の予想外の言葉に硬直してしまった、あんな言葉にあれだけ心乱されるとは。

これからはその辺にも気を付けるようにしよう。

だが、今の問題はそこではない。


「・・・さっきから何なんだ君らは。」


そう言うと、ますます笑みを深くする4人。

なにがそんなに楽しいのか。


「貴方が動揺するところなんて滅多に見れませんからね。

 分かっていたことですけど、人間なんだと再確認出来て嬉しいんですよ。

 もっとも、それだけじゃありませんけど。」


クルスの言葉に、どういうことなのか分からないでいると、ルルが補足する。


「はい。

 私たち以外にも貴方が優しいということを分かってくれる人が出てきたことが嬉しいんです。

 貴方は勘違いされるように動いてますからそれでいいんでしょうけど、私たちとしてはそれが不満だったんです。」


「なるほどね。」


それで全員が頬を緩ませていると。

確かに俺は誤解されるように行動していたから、そうなるのも無理はない。

だが、ちゃんと狙ってやってることなので、これでこれから動きにくくならなければいいが。

そんなことを考えていたら、エルスが表情を暗くしていた。


「それに、「仲間」と呼んでくれたこともあります。

 私はあんなことをしてしまったのに、それでもそう呼ばれるんですから。

 ・・・申し訳ない気持ちもありますが・・・いたっ」


不本意な発言が飛んできたので、エルスをはたく。

軽く涙目になっていた、思ったより力が強かったようだ。


「いつまで済んだことを気にしている。

 それについてはもういい、それよりもこれからを見ろ。

 申し訳ないと思うのなら、言葉に出さずに黙って君が成したいと思ったことの糧にしろ。

 過去は囚われるものではなく、乗り越えるものだ。

 強くなりたいのならそれを忘れずにいることだ、分かったか?」


「あ、・・・はい!」


一瞬キョトンとした後、素直な笑みを浮かべる。

これでようやく吹っ切れたようだ。


「ところで、何で俺だけにいろいろと教えてくれるんだ?

 まさか、ただの嫌がらせじゃないだろうな、3人の嫉妬を俺に向けるっていう。」


すると、今度はレオンが当然の疑問を口にする。

いつもなら「当然だ。」と答えるところなんだが。


「「友人」だからだが。」


ここはひねらずに直球で答えることにした。

すると、全員が固まる。


「「友達」は対等だ。

 だから俺の考えてることで、共有すべきだと思った考えを話させてもらった。

 何かまずかったか?」


そう言ってレオンの方を向くと、目頭を押さえて蹲っていた。

今回はそんな気はなかったんだが、面白いからいいか。


「そうなると、僕たちは貴方に信用されていないということでしょうか・・・?」


すると悲しそうな声が聞こえてきた。

周りを見てみると、3人が同じような悲しみの表情を浮かべていた。


「そういうことではない。

 だが、あくまで今の君らの立場は「従者」なんだ。

 そうなると、確証のないことは言えない。

 今回は下手したら他人の人生に関わるようなことだから、尚更だ。」


説明はしたが、納得しきってはいない様子。

だから言葉を付け加える。


「つまり、これからの付き合い次第ということだ。

 もしかしたら、「友達」どころか「弟子」や「恋人」なんかにもなるかもな。

 頑張れ。」


「そうなんですか!?」


「あう・・・」


「が、頑張ります!」


上からクルス、エルス、ルルの言葉。

3人ともあっさりと機嫌を良くした。

何とも扱いやすい。


(とはいえ、嘘というわけでもない。

 もしそうなったら、色々と覚悟をしなければならないな。

 特に、「恋人」となると。)


心の中で、自分の言葉の責任について考える。

もしそのような関係の人間が出来るとなると、覚悟を決めておく必要がある。

発言には、責任が伴うものなのだから。


「ん?、ルル、何だ?」


そこで、ルルがこちらを見ていることに気付く。

少しためらっている様子だったが、口を開く。


「あの、さっきから何を気にしていらっしゃるのですか?」


自分が考え事をしていることを気付かれたことに驚く。


「察しがいいな、その通りだ。

 ・・・ふむ、これなら話してもいいだろう。」


目を瞑って気配察知を全開にする。

どうやら、半径2km以内で自分たちに特別な注意を払っているものはいないようだ。

辺りが夕方で人どおりが多いせいで、彼らの美貌が目立たなくなってるおかげだろう。

歩きながら、彼らと向き直る。


「さっきの会話では話さなかった可能性について考えていた。」


そう言うと、全員が首を傾げる。


「一番厄介な可能性を考慮しておくのが俺の癖でね。

 それだったら面倒だなー、と。」


「それって一体・・・?」


エルスが問う。


「黒幕が、デルト王国自身だった場合。」


「ええっ!?」


「それは無いですよレイさん!」


「そうですよ。

 それでデルトに何の得があるというんですか?」


「ただ他の国との仲を悪くするだけだろ。

 そんなことしないって。」


クルスが驚愕し、ルルが否定し、エルスが疑問を投げかけ、レオンが纏める。

大きな声が上がったために、視線が集まるがすぐに離れていった。

その反応も無理ない、まともな考え方の人間ならばありえないことだからだ。

とりあえず、利点について説明する。


「国が崩壊する。

 それが利点だ。」


全員に何とも言えない顔をされる。

なので、解説を加えることにする。


「どこの国だろうと、1人は破滅願望を持つ馬鹿はいるものだ。

 そいつがそれなりの権力を持っていて、今回のことをしでかした。

 一応辻褄はあってるだろ?」


「それは合ってるのは辻褄だけで、ただの妄想ですよ?

 絶対にありえませんて。」


ルルに呆れたように返される。

そうだよな。

だから、問題なのはもう1つの場合だ。


「その通り。

 だからこれはまず無視して構わない。

 問題なのはこっちだ、国の上層部に裏切り者がいる可能性。」


この可能性に、皆は動きを止めて表情を暗くした。


「・・・どうした?

 そんなに気にするほどのものか?」


「・・・俺たちの国、クリミルはまさにそんな感じで滅んだからな。」


「腐った屑貴族たちのせいで、私たちの国は亡びました・・・

 裏切りとは違いますが、いえ、むしろ裏切りより性質が悪いかもしれませんね。

 会議の場で、誰も建設的な意見を述べなかったんですから。」


「仕方ないですよ。

 屑には屑の考え方しか出来ないんですから。

 それにあれらはほとんどが殺されたと聞いています。

 いい気味ですね、まったく。」


「・・・・・・」


レオンが苦々しげに、エルスが悔しそうに、クルスが爽快そうに、そう言い、ルルは無言で身体を怒りで震わせていた。


(どれだけ酷い連中だったんだか。

 クルスにさえここまで言わせるとは。)


その話の内容にある違和感を覚えたが、もう済んだことだったので無視する。

そして、レオン以外の3人を抱きしめる。


「わわっ!」


「レイ様!?」


「い、いきなりなんですか!?」


慌てる3人に微笑みながら言葉をかける。


「そんなに気にするな。

 君らは今俺の仲間なんだ、そんなクズどものことは忘れろ。

 そして、そんな奴らを思い出して腹を立てるよりだったらこれからを存分に楽しめ。

 そのためだったら、できるだけの協力はする。

 だから、そんな悲しそうな顔をするな。」


「・・・はい。(3人)」


3人とも少し目が潤んでいたが、泣くことは無かった。

なので話を戻す。


「この考えの場合厄介なのは、裏に大きな存在がいるということだ。

 しかもその人物にとっては、一国と天秤にかけたとしてもそっちが大事な、途方もなく巨大な存在。

 その場合、そいつはこの国をためらいなく滅ぼすだろう。

 さらに厄介なのは、その黒幕が国ではなく組織だった場合だ。

 その場合は組織の特定すらできず、ただやられっぱなしになる可能性が高い。

 さらに、国をどうこうできるほどの力を持っているならば、多数の国家間で大きな力を保持しているとみて間違いない。

 他の国でもすでに大きな影響力を持っていることだろう。

 どうだ、どれだけ厄介か理解できたか。」


そう問いかけると、皆神妙な顔付きで頷いた。


「だが、それは可能性としては低いんじゃないのか?」


「そりゃそうだ。

 それほど巨大な存在がそうポンポンいたら世界なんかとっくに終わってる。

 最初に言っただろ、あくまで「一番厄介な可能性」だと。

 だから、それほど気にする必要はない。」


そういうと、あからさまにホッとする皆。


(だが、可能性は0ではない・・・)


それを口に出したりはしなかったが。


「ところでレイさん、覚えてますか?」


「?、何をだ?」


クルスが突然問いかけてきた。


「忘れたとは言わせませんよ?

 僕の頼みを1つ聞いてくれると言ったじゃないですか。」


「ああ、そのことか。」


確かに言ったな、あのトカゲさん改め「星銀竜」と戦う前に。

その場の勢いみたいなものだったが、もちろん約束は果たす。


「ああ、構わん。

 何が願いだ?」


俺はてっきり、戦い方を教えて欲しいとか、弟子にして欲しいとか、その手のものだと思っていた。

だが、クルスの頼みは完全に予想外のものだった。


「にいさま、と呼ばせてください。」


「・・・は?(俺含めた4人)」


思わず、俺でもポカンとしてしまった。

ただ呼び方を変えたいだけ?


「いや、それなら別に頼みを使わなくてもいいぞ。

 ふつうに呼べばいいだろ。」


「え、いいんですか?

 そんなこと言っちゃって。」


なんだろう、クルスの後ろに黒い尻尾が幻視できる。


「む・・・、ああ、構わん。

 だから、願いは別のことにしたほうがいいんじゃないか?」


(なんだろうな、取り返しのつかないことを言ってしまったような気がする。)


そんなことを思ったが、時すでに遅し。

もう言質を与えてしまった。

クルスは黒い笑みを浮かべて言ってきた。


「そうですか、では、私たちに戦い方を教えて頂けませんか、義兄様(・・・)。」


「・・・なあ、今君はどんな字を使った?

 背筋に悪寒が走ったんだが。」


しかも、レオンは笑いを必死に堪え、エルスとルルは顔を真っ赤にしている。


「やはり、貴方は色恋に関することではその頭脳は上手く働かないんですね。

 ご想像にお任せしますよ、僕がどんな字を使ったのかは。

 まあ、後ろの2人の様子を見れば分かると思いますが。」


「・・・ああ、そういういこと。

 やってくれたな、クルス・・・」


ここでようやく意味に気付く俺。

つまり、彼は姉の援護射撃をするためにその呼び方をしたかったと。


(ホント、気付くのが遅いぞ俺。

 どれだけ時間かかってんだ。)


まあ、もうそうなってしまったものはしょうがない。

これからなんとかして慣れるようにしよう。


「分かった、君はこれからそれで呼べ。

 それと、戦い方については明日、ディック殿から本を見せてもらう時に皆に教えるよ。

 俺のやり方はまず知識から入るんで、な!」


最後の掛け声とともに、堪えることを止めて爆笑していたレオンを、持っていた袋で上から叩き潰す。

中身はあれの素材、つまり金属。

それを思いっきり叩きつけたのだ、まず無事では済まない。

さらにかなり派手な音がしたせいで、仲間はおろか、周囲の人間も残らず退いていた。

音から中身が金属だと気付いたようだ。

泣き出している子供もいる。


「ふう、すっきりした。」


そして外道な発言をする俺に、一斉に非難の視線が集まる。

だが気にしない。


「おい、早く起きろ。

 音の割にはあまり効いてはいないだろ。」


そう言うと、レオンが何事もなかったかのようにあっさりと立ち上がる。

驚く人々。


「・・・なんだそれ?

 本当に金属なのか?」


驚いているレオンに満足する。


「面白いだろ?

 俺の知る限り金属の中で一番硬いのに、この特性のおかげでお前は気絶すらしなかったわけだ。

 これならば、いい武器が造れると思わないか?」


「ああ、確かにな。

 となると、これからお前はマーカスのところに行くのか?

 あそこには鍛冶場があるからな。」


「そういうこと。

 君らはこれから自由に動いてくれ。

 金は渡しとくから、買い物でもしているといい。」


そうして俺は袋から金貨1枚を取り出して、袋をレオンに渡す。

女性陣は俺に何か言おうとしていたが、クルスに止められていた。

それだけならばいいのだが、クルスが女性陣と会話するにつれて、どんどん女性陣の顔が輝いていく。


(君は今度は何を企んでいる・・・?)


嫌な予感しかしないが、俺としては折れたナイフの代用を早く用意しなければならない。

後ろ髪引かれる思いがしながらも、その場を後にしてマーカス殿の武器屋へ向かう。









―――side ???




月を眺めていた。

書類仕事の最中に見ると、心が洗われるような心地よさがある。

書類の束の重圧からしばし解放されて和んでいると、ノックの音に現実に引き戻された。


「入ってくれ。」


「失礼します。」


私が許可すると、若い男が入ってくる。

金髪の髪を短く切りそろえた、隙のない痩身の男。

私が活動を始めた当初から共に歩んできた、腹心の1人だ。


「?、どうした。」


男の顔には、私でなければ気付けないほどの微かな、悔しさが伺えた。

この男ならば、この程度の表情の変化でさえ驚きに値する。

なにせ、老若男女100人を眉1つ動かさず皆殺しにできるほど冷酷なのだから。


「・・・私が中心となって動いていた、デルト王国での計画に支障が発生しました。

 ルッソの街攻略のために用意していた強力な魔獣が、10日前に討伐されたそうです。

 これが詳細になります。」


差し出された書類を受け取りながら、苦笑する。

成程、不機嫌にもなるだろう。

こいつは計画通りにいかないことを、異常に気にするからな。

しかし、それを読むと私は驚愕した。


「・・・あれらを1人で仕留めたというのか?

 「岩砕竜(ブレイクリザード)」だけならともかく、あれが居たというのに。」


素直な感想を口にする。

「岩砕竜」だけならば、難しいがBの中位程度の実力を持つものならば、急な遭遇でもなんとか倒せるだろう。

だが、もう一体はそんな生易しいものではない。

あれは例えAランカーであっても、相性が悪ければ手も足も出ないこともある。

その硬さはあらゆる攻撃を弾き、その力は一撃で地形を変える。

星銀竜(ストラリザード)」とは、その知能の低さからランクこそBではあるが、下手なAランクの魔獣より余程脅威的な怪物なのだ。

それを1人で倒すなど、とても信じられるものではない。

しかも。


「それを為したのがただのGランカーだと・・・

 悪い冗談にも程がある。」


(最高)(最低)が倒すなど、どんな夢物語だ。

だが、我々の諜報員の優秀さは私が一番良く知っている。

間違いではないのだろう。


「それを読んだところ、実際に倒したところを見てはいないようですが、その前に見せた実際の実力と、周囲に他にそれを為せそうな者が存在していないことからしてまず間違いないと判断したそうですね。

 我々の人員の報告でなければ、私は信じられませんでした。」


「私もだ。

 しかしそれが事実である以上はどう言ってもしょうがないか。

 それにある意味良かったともいえる。」


私が笑みを浮かべると、追従してくれる。


「そうですね。

 あれは今回の策を補強するためのものでしかありません。

 残りの2つ(・・)は依然として順調に進行しております。

 近いうちに、成ることでしょう。」


私はその答えに、満足げに頷く。


「そうだな。

 それに、これが失敗したことで、大国間の仲が悪くなることも十分に考えられる。

 今回の犯人として我々ではなく、エリュシオンとベグニスが挙げられて、双方と険悪な関係になってくれれば申し分ない。」


今回の件が失敗して、エリュシオンやベグニスが犯人として挙げられることはあっても、我々が挙げられることは絶対にない。

どの国も、誰も、我々を知らないのだから。

これからのことを考えたら、むしろこれで良かったとさえ言える。

大国が争ってくれれば、それだけ動きやすくなる。


「・・・そうですね。」


だが、この男は不満そうだ。

これさえなければもっと活躍できるだろうに。

だが、それがいいところでもあるので、直すことはしない。


「それで、この・・・レイという男のその後はどうなってるのだ?

 監視しているのだろう。」


当然「はい」と答えると思っていて、この問いは形式的なものにすぎなかったのだが、予想外な答えが返ってきた。


「それが、監視出来ないそうです。」


「・・・は?」


「しない」、ではなく「出来ない」。

監視なんて防げるようなものではないのだから、言ってる意味が分からない。


「監視しようとすると必ず目が合い声をかけてきて、ひどく遠回しに脅してくるそうなのです。

 むきになって、1kmほど離れた状態から見失うこと前提で監視した場合でも同様だったとか。」


「・・・・・・」


言葉がでない。

どこの化け物だそいつは。

というかそれでは、ばれてるということではないか。


「しかし、どうやらばれているというわけではなく、依頼を受けた時の3人を徹底的に警戒しているだけのようなのです。

 証拠に、その者だけではなく3人すべてに対して同じことをしているようですから。」


と思ったら、まさにそのことを教えてくれた。


「・・・その方が余計に恐ろしいがな。

 つまりその男は、監視されているのではなく監視しているということではないか。

 しかも同時に3人も。」


そんなことが出来る「人間」が居るのだろうか?

居たとして、どんなことをすればそんなことが可能になるのか。


「あいつはその辺りのことはしっかりしてますからね。

 まず、ばれてるということは無いでしょう。

 ばれたとしても、「憑き人」としての力でどうにかすると思います。」


それはそうなのだが・・・


「確かにそうだ。

 だが、あの男は精神面に問題がありすぎる。

 この前など、力を使って何をしたか忘れたのか?」


あの男のしでかしたことは、とても人間がすることではない。


「ただ、一国を滅ぼしただけでしょう。

 それにすでにあそこは末期でした。

 別に滅んで困るような国ではありません。」


「・・・その通りではある。

 だが、その動機が異常なのだ。

 どこの世界に女1人(・・・)を手に入れるためにその国を滅ぼす奴がいる。

 奴を放っておいたら次に何をしでかすか分からんぞ。」


ただ1人の人間を手に入れるために、その人間の所属する国を滅ぼす。

それをあの男はなんのためらいもなくやったのだ。

その結果、あの国では約7000の死者がでた。

犠牲を容認する人格だと自覚してはいるが、私でも流石にそれを許せるほど冷酷ではない。

我々の最終目的を考えれば尚更だ。

その点は流石にこの男も理解してはいるようで、何も言わずに黙っている。

ただ、それは良心からではなく、私へ与える印象を考えた結果のようだが。


「まあ、デルトでの計画はもうすぐ成るのだ、今更不確定要素が出てきたところで問題ない。

 その男を警戒する必要はあるだろうが、考えすぎることはあるまい。」


「・・・そうですね。

 では次の報告ですが、スルスで妙な動きがあるようです。」


「妙?」


「はい。

 報告では―」









―――結果から言えば、この時の私はレイという男を甘く見すぎていた


そのことを理解するのは、ずっと先の話。

奴が、顔を自由に変えられることを知ったときだった。

余裕があり、面白いと思ってくだされば、是非評価を

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