28話 目的
今回会話が異常に多いです
関東で1人暮らしを始めて、初めて「G」を見ました。
駄目ですね、あれ。
大丈夫だと思ってた自分を殴ってやりたい・・・
鳥肌が立ちました
「結局のところ、私への報酬は金貨13枚ということでよろしいのでしょうか?」
「うむ。
しかし、最終的にはお主の要求を飲む羽目になったな。
ネストキーパーとしては、少々情けないものだ。」
「何言ってるんですか。
私のさっきのあれ、私は「偽装」魔法と呼んでいるのですが、あれの情報の価値が金貨3枚分と釣り合うわけがないでしょう。
本当なら金貨1000枚は上乗せして頂きたいですね。」
「・・・本当のことだと思えてしまうところが恐ろしいな・・・
あれがあれば、余程のヘマや無茶をしない限りどんな犯罪だろうと成功してしまう。
王侯貴族が知ったら地の果てまでお主を追い続けるぞ、己の敵を消すのに利用するために。
そんな情報を知らせるとは・・・
始末するつもりなのか、儂らを?」
「っ!」
最終的な確認をしている時にディック殿がそう言い、セフィリアさんが表情を硬くし、震える。
これさえあれば、殺した後の手間を無視して自分たちを始末することが出来るのだから、無理もない。
「そんなことをしてどうするんですか。
私はこれを背景と同化して見えなくなって、ルルとエルス、それとセフィリアさんの着替えを覗くことにしか使ってませんよ?」
「・・・・・・」
空気が凍る。
「いやですねえ、冗談ですよ?」
「当たり前だ(です)!!(全員)」
一斉に突っ込まれる。
女性陣は3人とも顔を真っ赤にしていた。
「それならもっと速く突っ込んでください。
焦りました、もしかしたら私がそんなことをするような人間だと思われてるのかと。」
「お主が言うとすべてが冗談に聞こえんのだ・・・」
「いきなりそんなことを言われれば誰でも返答に困るっつーの・・・」
「僕でもなんて答えたらいいのか迷いましたよ・・・」
口ぐちに言われる。
女性陣の反応が無かったので、見てみたら、「私もういろいろと駄目ね・・・嬉しいと思ってしまったわ・・・」「・・・エルスさん私もです。」「そうなの・・・仲間がいてくれて心強いわ、ありがとう。」「いえ・・・」「あ、あなたたちは全く・・・」などと呟き合っていた。
仲良くなってくれて良かったよ。
「それにですね、別に貴方がこのことをばらしても全く問題ありませんし。」
「?」
「見つかりたくなかったら顔を隠せばいいだけですからね、大した手間ではありません。
それに・・・」
俺の顔に自然と笑みが浮かぶ。
「いざとなれば、自分から嫌いな貴族のもとに私は身を寄せればいいんです。」
「嫌い?
好きな貴族じゃなくてか?」
「ああそうだ、レオン。
お前なら自分の敵となりそうな奴が、俺という決戦兵器級の生き物を手に入れたらどうする?」
「そりゃあ、そいつを何とかしてた、お・・・す・・・」
「ははは、そういうことだよ。
面倒なことになれば嫌いな馬鹿貴族のもとに自分から行って、俺がここにいるということをばらし、そいつが別の貴族たちに潰されるのを待てばいい。
それを何度か続ければ、俺を手に入れることは何の利益にもなりはしないと全員が分かって、俺はもう追われることを気にすることもなくなり、さらに嫌いな貴族をいくつか潰すこともでき、実に都合がいい結果になるわけだ。
しかも、その時は潰す側の連中にも少なくない被害が出る。
貴族なんて、我々平民を見下してる人間が大半ですからね。
面白いと思いませんか?、皆さん。」
その問いに答える者はいなかった。
俺はわざとらしく溜息を吐き、言う。
「いやですねえ、冗談ですよ?」
こんどはその言葉を信じるものは誰もいなかった。
「ところで、お主にはまだ聞きたいことがあるのだが。」
落ち着いて、皆で茶を飲んでいると、そう切り出された。
待っていた言葉だったので、一歩進んだ返答をする。
「待っていましたよその言葉を。
今回の依頼の異常さの原因を何だと考えてるのか、でしょうか?」
「可愛げがないな。
その通りだ。」
苦笑しているディック殿。
俺はただ、答えのみを単純に答えた。
「他国の陰謀。」
「なっ!?(レオン、長以外)」
俺の言葉に、若者3人が愕然とする。
長はやはり予想していたようで、驚いてはいない。
「ふむ、そう答える理由は?」
「金貨1枚。」
「は?」
「ただで聞こうって言うんですか?
そんな世の中甘くないですよ。」
「う、だが、儂が独断で出せる金はお主の報酬で精々だぞ。」
「おや、そうなんですか。
それじゃあ・・・」
そこで、悩む振りをしてから、本命の条件を提示する。
「貴方の所有する書物、資料、文献、あらゆる紙媒体の情報源全てを閲覧させて頂きたい。」
「それはっ!?」
「レイさん!?
分かってて言っているのですか、それがどういうことか!?」
そう言うと驚愕された。
しょうがないことだが。
この条件だと、ネストの経営を根幹から揺るがすような情報も提示しなければならない。
支出や収入なんかの情報の価値は、使う者が使えばとんでもないほど跳ね上がる。
これでは、ネストを潰すことと同義なのだ。
だから、すぐに前言を翻す。
「では、貴方たちネストに関係するもの以外の情報源全てで結構です。
それならどうです。」
そういうとあからさまにホッとする2人。
「初めに重い要求を提示し、後でそれよりも軽い本命の要求をする。
お主は詐欺師か?
それだけではそこまでの譲歩はできんな。」
この人にはあっさりとばれてしまっていたが。
まあ、成功すれば儲けもの程度にしか考えてはいなかったが。
だから、こちらも本当の条件を提示する。
「私の今回の件についての考察、そして予想される犯人、最後に貴方たちの直近の危機について。
これでもまだ足りないと言いますか?」
「!?(レオン以外)」
そう言うと誰もが固まる。
レオンにはあらかじめすべて言っておいたので、こいつは驚いていない。
「・・・いや、足りなくなどない。」
「それでは、交渉成立ですね。
あ、言っておきますがこれから話す内容はすべて私個人の意見です。
これを鵜呑みにすることは無いようにお願いします。」
「分かった。」
「・・・分かりました。」
「君らも聞いておけよ。
勉強になるだろうから。」
「は、はい。(3人)」
長、セフィリアさん、仲間が頷いたところで話し出す。
「まず、今回の件での分かりやすい一番目立つ異常な点は、言うまでもなく土地に合わない、しかも桁外れに強い魔獣の出現です。」
「そうですね、本来ならあんな場所に「岩砕竜」が、ましてや「星銀竜」がいるわけがありませんから。」
「ですがセフィリアさん、そのことに隠れていて分かり難いんですがもう一つおかしさで言えば負けていない要素があるんですよ。
なんだと思います?」
「え?
・・・分かりません・・・」
少し考えていたが、そう答えた。
ディック殿が代わりに答える。
「・・・ネストが人命に関わる事態にも関わらず、6か月も「岩餓鬼」を放置していたことだ。」
「!、確かにそうですね。
ですが、それは一応職員のミスで・・・、っ!!」
「気付かれたようで何よりです。
恐らくその職員は、気付かなかったのではなく気付けなかったのでしょうね。」
「それってまさか!?」
驚いたように、エルスが言う。
こっちも気付いたようだ。
「ふむ、エルスはやはり頭がいいな。
その通り、誰かが意図的に隠していたのだろう。
ネストにも、住民にもばれないようにことを進められる、実に手際のいいやつだよ。」
「ですがそれですと・・・、!、成程、だから他国の陰謀とおっしゃったのですね。」
「ルルの想像通りだろうな。」
「どういうことですか?」
クルスが首を傾げながら言う。
「つまりだなクルス。
それだけのことが出来るほどの力を持ったものが、一個人だと思うか?
仮にもネストなんだぞ、自由を重んじ、実力のある者が集う場。
当然その職員だって平均以上の能力が求められる。」
「仮にもは余計だ。」
「確かに無理ですね。
それこそ国でもない限りは。
成程、納得です。」
俺がそう説明すると、長が不機嫌そうに、クルスが納得したという風に言う。
「恐らく、あいつらはあの場で成長の時間を稼がれていたのだろう。
何とも気の長い話だな。
しかし、実際のところはいろんな意味で成功寸前のところまで行っていた。」
「ふむ、しかし、お主の言う2体の魔獣がなんの為に育てられていたのかは予想できているのか?」
この爺、分かってて言ってやがる。
「貴方でも分かってるでしょうに。
成長し、ゴブリンという餌がなくなれば、連中は近場で食料があるこの街に来ます。
そして、この街は近くに「魔の森」があり、しかもそれは連中がいた岩場とは正反対の位置。
森に常に注意を割いている以上、連中に気付くのは遅れます。
それならば、例え失敗して、連中が先に暴走したとしてもそれなりの打撃を与えることが出来ます。」
「・・・お主、さっきから妙なもの言いをしておるな。」
俺の言い回しに気付いた長が聞いてきた。
「ふむ、そうですね、これは最後に言おうと思ってたわけですが、まあいいでしょう。」
長の耳元に行き、囁く。
「っっっ!!!???」
説明を聞いた途端、顔色をなくすディック殿。
「とまあ、これが貴方たちの直近の危機です。
ま、あと1、2か月ほどはあるでしょうが。」
「なんだ!?、なんなのだ、お前は!?
何故そんなことが分かる!?
何故そんなことが言える!?
お前は、お前は・・・!?」
混乱して、脈絡のない言葉でまくしたててくる。
「お、お爺さ・・・、ネストキーパー様、落ち着いてください!」
レイさん、一体何を言ったのですか貴方は!?」
「それは後で彼から直接聞いてください。
貴方まで混乱されては話が進まなくなります。
まあ、私がこのことを知っているのは、私が「魔の森」に入り浸ってたからですけどね。」
本当は入り浸るどころではなく、住んでいたわけだが。
そう言い捨てると、直ぐに黙り込んでくれた。
「それで、その陰謀を仕掛けてきた国家ですが、これについては私はこの世界の地理を知らないので何とも言えませんね。
当たりを付けてはいますが。
というわけで、地図を見せて頂きたいのですが?」
「・・・分かった。
セフィリア、頼む。」
流石、直ぐに立ち直った長が地図を取らせに向かわせた。
「は、はい。」
「へえ、立ち直るのが早いですね。」
「誰のせいだと思っている!?」
「犯人。」
そう答えると、予想外の言葉だったらしくさらに驚く。
「な!?、お前はその件まで人為的なものだというのか!?」
「偶然にしては、時期が良すぎます。
偶然が重なった時は、それは偶然ではなく必然だと考えるべきなんですよ。
ちなみにその件と今回の件の犯人は、同じ人間なのか、同じ組織に属している別人なのかまでは想像がつきませんが。」
「そこまで分かっていたら、儂はお主を人間扱いすることは一生ないだろうよ。」
「ま、そうですね。」
なかなかに不名誉な物言いだったが、確かにその通りなので受け入れる。
「あの、私たちには教えて頂けないんでしょうか?」
「気になって仕方がないです・・・」
「エルスもルルも聞いたら何も考えられなくなるだろうから、後で教えるよ。
レオンが。」
「俺かよ!?」
「お前だ。
教えたんだからできるだろ?」
「そりゃ、あの時大体のことを聞いたから・・・て、何故お前たちはそんな目で俺を見ている?」
「ずるいです。(3人)」
レオンを半眼で睨みつける仲間3人。
「いや、俺が聞いたんじゃなく、こいつが勝手に言ってき―」
「それがずるいんです。(3人)」
「・・・・・・・・・ごめんなさい。」
ものすごく納得していなさそうだったが、迫力に負けて謝るレオン。
「お待たせしました、・・・て何やってるんですか。」
そんな時にセフィリアさんが、地図を持って帰って来た。
「何でもいいじゃないですか。
これがこの世界か・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ああ、やっぱりね。」
ざっと目を通してみると、予想通りここから南にあの国があった。
「想像していた通りだったのですか?
人間ですか、あなたは本当に。」
この人もなかなかに失礼なことを言ってくれる。
「祖父と同じようなことを仰いますね。
あの魔獣、私はサムスさんから南に生息するものと聞いたんですが?」
首肯する長。
もう分かってることだが、念のために続けて聞く。
「この地図で言うと、もしかしてその生息域って・・・」
「・・・エリュシオンだ。」
エリュシオン公国。
魔法の先端国で、戦士気質のデルトとはかなり仲が悪い。
エリュシオンの民はデルトの民を、戦いしか出来ない野蛮人と見下し、デルトの民はエリュシオンの民を、自分たちが居なくては戦争で魔法を使う時間が稼げず碌に戦うこともできない役立たずと軽蔑しているそうだ。
何とも分かりやすい対立構造だな。
「なるほど、あそこなら納得ですね、姉様。」
「そうかしら?」
「え?、あの国ならばこのようなことをしてくるのも納得ですけど?
デルト嫌いで有名ですし。」
クルスの発言にエルスが疑問を唱え、ルルが不思議そうに言う。
俺はエルスが分かっていることに満足しながら言う。
「エルスは分かってるようだな。
クルス、ルル、確かにあの国はこの国が嫌いだから、大抵の人間はこれを聞いたらそう思うだろうな。
だが、今回は嫌いだからこそありえない。」
「え?」
「どういうことですか?」
これには、エルスが代わりに答えてくれた。
「嫌いということは、それだけ理解をしているということでもあるのよ?
そりゃあ、よくも知らないのにただ嫌いだ、っていう愚か者もたまにいるけど、少なくともあの国はそうではないわ。
エリュシオンは単体では戦争で生き残れるような国ではないのよ。
魔法を主体で使うのに、詠唱の時間をカバーできるだけの戦士の数を確保出来ていないの。
だから、デルトが居なくなっては困るのよあの国は。」
「そんな国なのに生き残れているのは、ベグニスの脅威があるからだろう。
デルトとしては、さっさとエリュシオンなんて国は滅ぼしてしまいたい、と考えてることも十分に考えられるが、デルトだけではあの国に対抗できるだけの数が無い。
だから、魔法という圧倒的な力を自分たちも確保しておく必要があるわけだ。
それがエリュシオン。
つまり、デルトとエリュシオンという2国は、互いに互いを嫌い合っていながら依存し合ってもいる、とてつもなく面倒な関係にあるんだよ。」
エルスの後を継いで、そう説明する。
2人は仕切りに頷いていた。
「なるほど、それでは確かにエリュシオンではありえませんね。」
「個人で何かをやってきた、という可能性は残りますが、ネストに干渉できるような人間はそうとうな大貴族でしょうし、それならば国のしがらみに密接に関わってるはず。
国が無関係、ということはない。
よってエリュシオンは白、そういうわけですか。」
「ルル、君もなかなか深いところまで考えられたんだな。」
「貴方と一緒に居れば誰でも少なからず影響を受けますよ。」
予想外に的確なルルの分析に驚いてそう言うと、苦笑しながらそう返された。
「そうなりますと、考えられるのは・・・」
セフィリアさんがそう言い、
「ベグニス、だな。」
ディック殿が継いだ。
「でしょうね。
デルトとエリュシオンが仲たがいをして一番喜ぶのはそこ。
他の2大国は、同盟にて戦力を依存している2大国が争いあうことを良しとするはずがない。
もしそんなことをして片方が潰れてしまえば、次は自分なんですから。」
「そうだろうな。」
まあ、ここまではこの人も予想できたことだろう。
「ですが、ディック殿。
私は非常に気になることがあるんですよ。
貴方は気付いていますか?」
「む?、なんだそれは。」
ああ、やはり気付いていなかったか。
「貴方の欠点はその常識でものを考えてしまうことですね。
それさえなければ私は手も足も出なかったでしょう。
こっちとしては都合がいいですが。」
「・・・む?、なんだそれは。」
この爺、同じ言葉を繰り返してごまかしてきやがった。
しかしごまかすということは自覚していたんだな。
「この考えってつまり、どこかの国、もしくはそこに所属する個人が、「魔獣を操る術」を持ってるということになりますよね。」
「なっ!?(レオン以外)」
一斉に驚き、顔色をなくす。
魔獣は一般的に人間などよりもはるかに強大な生物だそれをもし戦力として保持できるようになれば、この世界の勢力図が塗り替えられてもおかしくない。
「・・・確かにその通りだ。
どの国が黒幕だったとしても、あの岩場まで魔獣を連れて行ったということだからな。
こんなことにも気付けないとは・・・」
少々落ち込み気味の長。
「そう気にすることもないでしょう。
実在してそれが魔法だとしても、恐らくはまだ試作の段階でしょうから。
もし完成していたら、とっくにどこかの国が戦争を始めて投入してます。」
俺はそんなに深刻に考えてはいない。
まだ実戦配備には時間があるだろうし、もし使用されたとしても、その時は操られた魔獣に俺の「目的」の生贄となってもらえるからだ。
「確かにな、気にしてもしょうがないことだ。
それで、犯人の件なんだが・・・」
長が気を取り直してそう切り出す。
俺はそれに答える前に、また4人を真空の防音壁で包む。
「その件は、私とレオン、そして貴方の3人だけの頭にとどめておくようにお願いします。
さらに、これは多分に私の妄想が入っている話です。
それでも、よろしいですか?」
真剣な表情でそう語りかける。
長もまた真剣な表情で頷いた。
そして俺は、自分の「妄想話」を語った。
5分後、長は顔を真っ青にしてうなだれていた。
「ははっ、成程、確かに妄想だ・・・
だが、何故か筋が通っている。
そう思えてしまう。
信じようと感じてしまう。」
そして天井を仰ぐ。
「なんだそれは・・・
儂の今までの信用はなんだったんだ。
あいつは!、あいつらは!!
儂を・・・ムぐっ!?」
少々危なくなってきたので、手持ちの精神安定作用のある丸薬を口にねじ込む。
「落ち着かれましたか?」
「ああ・・・
見苦しいところを見せた。」
そうは言うがやはり元気がない。
(無理もない、か。
俺でもいまだに半信半疑のようなものだが、これが事実だとすればかなり不味い。
色んな意味で。)
「彼らを出しますよ。
さっきのことは他言無用です。
それと、奴には手は出さないでくださいね。
私の勘違いの線も十分にありますから。」
「そうだな。
よし、もう大丈夫だ。」
(本当に大丈夫見たいだ。
とんでもない精神力だな。)
もう血色も元に戻り、はた目には何の異常もなくなった長に敬意を抱きながら、風の壁を解く。
「・・・・・・」
怒ってるようだ。
それもかなり。
4人とも、背景がぶれて見える。
「まあ落ち着け。
蔑ろにした分、後で構ってやるから。」
そういうと、渋々ながら席に着く。
何を言っても無駄だと察してくれたみたいだ。
「それでは、話も終わりましたね。
ディック殿、準備も必要でしょうし、約束は明日果たしてください。
それでは。」
そう言い席を立とうとする。
さっき座ったばかりで、直ぐに立つことになったことにまた不満そうな表情をする3人。
(レオンは今回あまり出番なかったな。
あらかじめ大体教えてたから当然だが。)
そんなことを考えていると、
「待ってくれんか、レイ。」
長に呼び止められた。
しかも、名前で。
驚きながらも聞く。
「・・・何でしょうか?」
「最後に1つだけ聞きたいことがある。
答えたくなければ答えなくても構わない。」
真剣なその表情と声に、俺も厳粛な気持ちになり座る。
「お主の目的はなんなのだ。
お主は、何のために動いている。
お主ほどの人間が、何の当てもなくぶらぶらと歩いているはずがない。
どうか、教えてはくれまいか。」
沈黙。
何の音もしなくなる。
俺は、茶がなくなってたので、新しく淹れ直し、それを飲む。
そして、器を手でもてあそびながら、なんでもないことのように言う。
「現在の世界の、・・・・・・・・・・・・・・・『破滅』。」
余裕があり、面白いと思ってくだされば、是非評価を