17話 武器屋
はい、進行が遅いので更新速度を次話だけ上げることにしました
次は今日の夜、遅くとも明日には投稿します
それでようやく物語の下準備が終わりますので
今回さらっと4人の名前が出てきますが、なんか考えすぎてルルとレオンが変な名前になってるかもしれません
これは変だと思いましたらすぐに無難な名前に変えますのでご指摘願います
「お礼ならそこの誰かさんにも言ってくれ。
そいつが気づかせてくれなかったらそれを贈ることも、ましてやまともに君らと向き合うことも無かったろうから。」
そう説明した後で、2人から感謝されたレオンはものすごく締まらない笑みを浮かべて喜びを現していた。
この時気づいたことだがこいつは兄馬鹿だったようだ。
もっと説明すべきことはあったのだが、レオンのことをあまりグダグダと言ってもしょうがないので割愛。
そして食事を終えた俺たちは装備を整えるために武器屋を探すことにした。
したのだが、
「たくさんあるな・・・」
思わずそう呟く俺。
この通りは冒険者たちのための店が多くあるようだが、あまりにも多すぎる。
どれがいい店なのかさっぱりだ。
「迷ってもしょうがないしテキトウなところに入ればいいだろ。」
「馬鹿は黙ってろ、喋るな。」
あまりにも考え無しの発言に対して、つい脊髄反射で暴言を吐いてしまった。
傷ついているレオンが見えたが、さっきまでの浮かれようが今の言葉でやっと治まったようなのでむしろ助かった。
だが説明ぐらいはしておこう。
「武器っていうのは総じて単価が高いだろ。
そういったものを扱う店は、儲けの方を優先しようとする人間が多くなりやすい。
例えば偽物を売りつけるとか、無駄にぼったくられるとかな。
俺は武器については詳しくないから、良心的な店主がいる店でないとまずいんだよ。」
説明すると皆納得していた。
まあしかし、悩んでいるだけでは何も変わらないのも事実、レオンの言うとおり適当に入るのもいいか。
騙そうとしてきたら出ればいいだけだし。
「だが悩むだけでもしょうがないのも確かだし、テキトウに入るか。」
「おい、お前さっきの俺に対する言葉は何だったんだ?」
「お前はただ漠然と何処でも同じだと思って言ったんだろうが。
俺の話を聞いた後で、そんなことしたらどうなるか分からないとでも言うのか?」
「すみませんでした。」
「分かればいい。
じゃ、まずはあそこに行ってみるか。」
そして行動を始めた。
―――3時間後
「想像以上に強欲な野郎が多いな。」
そういう結果だった。
「本当ですね・・・
僕はまた人の醜さを思い知らされました。」
「俺でも分かるぐらいに金を寄越せって全身で叫んでる奴らだったな。
よくあれで商売が成り立つものだ、逆に感心させられたぞ。」
「・・・・・・(女性陣)」
本当にな。
女性2人に至っては疲れ切って言葉もないようだ。
大体の連中に粘つくような視線で見られていたから仕方ない。
そういった輩はさっと今後に噂になるなどの支障がでない程度に脅しておいた。
ちなみにさっきのレオンの疑問はある意味では当然のこととも言えるんだよな。
「すまないな、考えが足りなかったようだ。
少し休もうか?、2人とも。」
「いえ、これぐらいなら大丈夫です。
逃げてる最中はもっと酷い時もあったんですから。」
「そうですよ。
慣れるものではありませんが、問題はありません。」
強がりなんだろうが、本人がこう言ってる以上他人がとやかく言う問題ではないか。
その言葉に甘えさせてもらって、まだ動くとしよう。
「そうか・・・
しかしこれ以上無駄に時間をかけるわけにもいかんよな。
どうしたものか。」
もう夕方だからな、そろそろ宿も探さなくてはならない。
「ネストの人、いっそのことネストキーパー様に聞いてみたらどうでしょう?
レイ様なら情報を聞き出せると思いますが。」
「それも考えたんだが、まだ「魔の森」の件の借りが残ってる段階でまた借りをつくるのは好ましくないんだよ。
負い目があるといろいろと面倒だ。」
あの人はあくどい要求をしないとは思うが、まだ会って数時間でしかないのだ、良好な関係が築けないうちは、警戒を緩めてこちらから歩み寄るべきではない。
そんなことを考えていると、レオンがどこか一点を凝視していることに気づく。
「どうしたレオン、美人でもいたのか?」
「ん、最初はそうだったんだが今はあの店が、ってすまなかった謝るからそんな目で見ないでくれルル!」
冗談で言ってみたら本当にそうだった。
そんなレオンを蔑むような目でみるルル。
しかし、呆れながらも俺はさっきのあの店という言葉の方が気になった。
「レオン、気になることがあるなら言ってくれ。」
「え?
いや、だがただふっと気になっただけだから別に・・・」
「お前の場合は頭で考えてもろくな考えが出るわけがないんだ。
その勘のほうがいつもの猿知恵よりもよっぽど頼りになる。」
「猿知恵・・・
俺のいつもの発言は猿知恵・・・」
ショックを受けてしまった、今回はからかう気はなかったんだが。
そっちの方が酷いか。
「あのなレオン、それと皆、別に自分が薦めた店の中に入って店主が強欲だったときのことは気にしなくていいんだよ。
ある意味ではああいう反応されて当たり前なんだから。」
「?、どういうことですか?」
「レオン、お前さっきこれでよく商売が成り立つな、て疑問に思ってただろ。」
「そうだが?」
「別にあれらの店の店主は誰も彼もからあんなぼったくろうとしているわけではない。
その手のことに詳しそうな人間に対してはちゃんと真面目に商売しているだろうさ。
別に根は悪い人間ではないんだよ。
エルスやルルに嫌らしい目を向けてきた奴らは別だが。」
「え?
ですが私たちは現にこうなってますが?」
「店からすれば生計を成り立たせるための商売なんだぞ。
そんな彼らにとって俺たちは相場もよく分からない格好の獲物だ。
そんな連中を見て、蓄えを少しでも得る為に騙そうとするのは人として当然の心理だよ。
これは別に人として悪いとか良いとかいう以前での問題なんだ。」
そう説明すると、皆は納得の色を浮かべるが同時に苦い顔になった。
「そういうことですか・・・
しかしそうなりますと、私たちが良心的な店主の方に巡り合う確率はかなり低いことになりますね・・・」
「ルルの言うとおり。
だからレオン、その勘でこれはと思ったという店を教えてくれ。」
「は!?
何故そこでその話に戻るんだ?」
「こういうのは勘で行動した方がいろいろと上手くいくものなんだよ。
特にお前のような感性が鋭い人間ではその傾向が強いからな。」
「・・・あれだ。」
どこか釈然としない様子を見せるが、素直に教えてくれた。
その店は目立たないところに建っている、真新しい店舗だった。
小さめで、建てられてから1年も経っていないと見える。
店の前には植え込みがあり、花が咲いている。
素朴な美しさが感じられる白い花だ。
「へえ、武器屋で花を植えてるなんて珍しいな。
女性が経営してるのかね?」
俺が抱いた印象はその程度だったのだが、皆は違ったようだ。
「姉様、あの花はもしかして・・・?」
「ええ、恐らくは間違いないわね、なぜデルトに・・・」
この姉弟は驚いたように、
「エミリヤの花、ですね。」
「やはりそうなのか。
その手のに疎い俺でもあれは分かるぞ。」
この兄妹は不思議そうに花を見ていた。
どうやら彼らには馴染みの深い花らしい。
「ふむ、どういう花なんだ?」
興味を引かれたので聞いてみる。
「私たちの国で国花だったものなんです。
と言っても今ではもうだいぶ減ってしまっていて、もう一部の貴族の家でしか育てられていなかったんですが。」
「私たちの家でもあの花は育てていました。
占領されてしまった今では、もう残っていないと思いますが・・・」
「名前に人名が付いているのは、あの花が建国した人物にちなんで名付けられたからだそうだ。
建国者がエミリヤと言う名前だったらしい。」
なるほどな、確かにそんな花がこの街にあるのはおかしい。
詳しくは聞いてないが恐らくこの国が彼らの国を潰したのだろうからな。
どうやらレオンがこの店が気になったのは、そのせいもあったようだ。
しかしそんな数少ない花が今ここにあるということは、
「まさか、君らに係わりのある者が経営しているのか?」
少ないながらも、決してありえない話ではない。
そう思ってうっかり喋ってしまったのだが、意外と皆の反応は薄かった。
もしかしたら希望を持った彼らが突撃してしまうのではないかと思ったが、杞憂だったようだ。
―――ある馬鹿は違ったようだが
「ちょっとレオンさん、落ち着いてください!」
「兄さん、そんなことはまずありえませんよ!」
「ああもう、猪突猛進は変わってなかったのね!」
はい、皆さんの発言から分かりますように、馬鹿が突進して行きました。
「追いかけるぞ、冷静さが欠けた今のあいつでは問題を起こしかねん。
またしても元凶の俺が言うことではないのだが。」
「気にしないでくださいあれが馬鹿なだけですから。(3人)」
そんな言葉を交わしながら全員で店へ走る。
奴はとうとう、クルス、ルル、エルスにも馬鹿と公式認定された。
「・・・・・・・・・(4人)」
何だこれは。
今俺たちの前には驚いて固まっているレオンと、土下座している老人がいる。
老人は必死に何かを喋っているが、涙と驚きのせいで言葉になっていない。
レオンはそれをただ呆然と眺めている。
もう一度言おう、何なんだこれは。
「レオン、その人は誰なんだ?」
一番の疑問をとりあえず尋ねる。
だが硬直しているこの状態では何も答えられないようだ。
仕方ないので他の仲間に聞こうと顔を向けると、こちらも固まっていた。
「なんだこの店。
客が石化する魔法でも仕掛けられてるのか?」
俺が半ばそんなことを本気で信じかけていると、我を取り戻したルルが叫んだ。
「マーカスさん、何故こんなところに!?
クリミルで構えていた店はどうしたんですか!?」
「ルルライン様!?
それにエルセルス様にクルセルス様まで!
ああ、レオステッド様だけではなくあなた方も生きておられたのですか・・・!」
こちらの面々に気づいた老人がさらに号泣し始める。
人ってこんなに涙を流せるんだ、と思うくらいの泣きっぷりだ。
「君らが隠してた本名、思いっきり喋っちゃってるなこのご老人。」
そんな俺の呟きは、泣き声にかき消されて誰の耳にも届かなかった。
動揺の極致にいた皆がようやく落ち着いてから、状況の整理を始めた。
「私はマーカスといい、レオステッド様とエルセルス様たちの家に武器を卸していた者です。
それに加え、皆様の訓練教官も務めていましたのでよくお会いしていました。」
そうマーカス殿が語る。
ちなみに俺と彼らの関係はすでにレオンたちが教えてある。
かなり嬉しそうに皆で仲良く話していた。
奴隷にされかけたというところで泣き、俺に助けられたというところで嬉しくて泣き、とかなり骨が折れたようだが。
感情を素直に表す人なんだな。
俺は邪魔をしないように枠から外れて、微笑みながらそれを眺めていた。
話を纏めるとこういうことらしい。
マーカス殿は彼らの父、アルセル殿とゼフィールド殿が処刑されたことを知った。
大恩ある彼らを母国の貴族に殺されたこの人は散々泣いた果てに、そのような国で生きていく気を無くし、あてつけのような気持ちで敵国であるデルトへ向かったのだという。
そしてこの街に流れ着き、持ってきていた品と財産を使って武器屋を開いたのだそうだ。
花については、皆の家にそのままにしていては滅茶苦茶にされてしまうかもしれないので、密かに持ち出したのだそうだ。
よくこの国が受け入れたな、と聞いたら、どうもデルトという国は宣戦布告無しで戦争を仕掛けた割りに略奪などの非人道的な行為を行わず、避難民の受け入れにも寛容だったらしい。
戦後の内政も圧政を行うこともなく、民はむしろデルトに感謝すらしているようだ。
支配したにも関わらず、民と僅か半年で信頼関係すら築きあげているとは、デルトの王とはどんな人間なのかかなり興味が湧いた。
「ところで、この国で彼らの正体がばれるのはやはり不味いことなのだろうか?」
レオンたちを見ながら聞く。
それに対する答えは意外にもかなり都合のいいものだった。
「いえ、レオン様方は父君たちの善政の甲斐もあり、元領民からの信頼が厚いためデルトの粛清の対象外となっています。
仮に正体が知れても騒ぎにはなるでしょうが命に係わるようなことはないはずです。
件の奴隷商人についても、恐らく表沙汰にならないように売ろうとしていたのでしょう。
まったく、あなたが殺していなければ私が八つ裂きにしましたものを・・・」
かなり本気の殺意を込めながらそう教えてくれた。
恐らく冗談でもなんでもなく、ただの事実を語っているだけなのだろうな。
目に迷いが一切ない。
それにしても、これはアルセル殿とゼフィールド殿には感謝しなくてはな・・・
これでこれからの最大の不安要素が消えた。
だが、それを過信したりはしない方がいいか、これからもなるべく隠すようにしよう。
それと、花のことだがそもそも知っている人間がほとんどいないので、店の前に植えてても問題無いのだそうだ。
しかし、いきなり皆の情報がこんなに手に入るとはな。
これからゆっくり聞いていこうと思ってたんだが。
まあむしろありがたいからいいか。
「ありがとうマーカス殿、貴重な情報が得られた。
それとここにきた目的何だが、彼らに合う武器が欲しいんだ。
見繕ってくれないか?」
彼らの戦い方を知らない俺が手伝うよりも、戦い方を教えたこの人が手伝ったほうがいいだろう。
そう言うと、マーカス殿は心底嬉しそうに微笑んだ。
「この店に来られたからにはそうでしょうね。
分かりました、お安いご用です。
まさかまた、皆さまに私の店の装備を使っていただけるとは・・・!」
「マーカス、いい加減に泣くのは止めてくれ・・・」
また泣きそうになったのでレオンが呆れたように言った。
他の皆も苦笑している。
「と言いましても、皆さまがお扱いになる武器についてはアルセル様とゼフィールド様からお預かりしているものがありますので、私の店の武器は必要ないのですけどね。」
「んなっ!?」
「父がそのようなものを?」
「初耳です、父様は僕が戦いが嫌いなのを分かってくれていましたから今までもそういうことはあ
りませんでしたし。」
「私たちに渡すよう言われていたのですか?」
「そうです。
あの御二方が処刑される寸前に、もしも会うようなことがあったら渡して欲しい、と。
最後まで皆さまのことをご心配されていました・・・」
その言葉に皆が涙ぐむ。
そしてマーカス殿は店の奥に引っ込むと、袋を4つ持ってやって来た。
「これらです。
ざっと見てみましたが、どれもいいものでしたよ。」
そして袋から出てきたのは、昼に皆が言っていた自分の得意とする武器たち。
全長がレオンの身長ほどもある、鋭い輝きを放つ銀色の大剣
軽さを重視し、だがその分の威力を十分に補えるであろう切れ味を持つと一目で分かる剣とナイフ
美麗な装飾が施されているが、華美ではなく力強さが感じられる2本のレイピア
質素な外見であっても決して貧相には見えない強靭そうな弓
どれもが値打ちものだとすぐに分かる。
「それと、こちらも渡されました。
恐らくは御2人とも、自分がああなることを理解していたのでしょう・・・」
そう言い2通の手紙を差し出す。
皆はそれを読むと、
「・・・・・・・・・」
何も言わず、だが嗚咽を漏らし、静かに泣く。
まるで誰かを悼むように。
片や、奴隷から逃れ、漠然と逃げてきた結果。
片や、ただのあてつけで、テキトウに落ち延び先を探した結果。
そして奇跡的とも言える偶然の再会を果たし、父からの最期の贈り物を受け取ることが出来た。
人の、いや、家族の情とはこのような奇跡を起こす力があるのだろうか。
ただの偶然と言うには無理のあるこの状況を見て、俺は天井を、いや空を仰ぐ。
「・・・家族、か。
俺には二重の意味でもう絶対に手に入らないものだな。
なあ、『父』と『母』殿、そして・・・よ。」
込められた感情が先ほどのものとはまったく違うその呟きは、今度も誰の耳に届くことはなかった
その言葉を向けた相手にも
その後、気を取り直して、防具やその他様々な旅に必要なものを揃えた。
武器屋と言うが、実際には旅に必要なものを大体扱っている総合商店のようなものみたいだな。
「これでいくらになりますか?」
「そんな、皆さまから御代を頂くわけには―」
「マーカス殿、その言葉は思いやりではなく侮辱に等しいものだ。
それ以上言ってはならない。」
俺の言葉に凍りつく。
「あなたの気持ちが嘘偽りなく彼らを心配しているのは分かる。
だが、もはや家が無くなった今、彼らは只のあなたと対等の人に過ぎない。
そうなった以上、世間の生活に慣れていかなくてはならないんだ。
何かをもらう代わりにこちらからも何かを手渡す、そんな社会の基本中の基本を蔑ろにし、好意にただ甘えるようでは話にならない。
預かっていた武器を渡してくれただけだからそちらはまだいいにしても、商品をただでもらうようなことがあってはならないのです。」
マーカス殿は目を見開いて驚き、そして微笑みを返してくれた。
「ええ、ええ。
まったくあなたの言うとおりです。
この度の私の無礼、どうかお許しください。
では、占めて金貨3枚になります。」
「これで。」
こちらも微笑みながら金貨3枚を手渡す。
これで今日の消費は、エルスとルルの衣類=銀貨11枚、昼食=銅貨40枚、贈り物=金貨1枚、装備他=金貨3枚、の占めて金4と銀11と銅40の向こう換算で411万4千円。
よって残金は金1と銀38と銅60の、138万6千円。
だいぶ使ったが、これでもう装備に金を使うことはあまりないだろうからいいだろ。
「ではマーカス、またお会いしましょう。
それまでに体調を崩したりしないでくださいね。」
「そうだぞ、もう年なんだから無理するなよ。」
「今度また、武器の指南をしてくださいね。
あなたの教え方はお上手ですから。」
「その時は僕もお願いします。」
そう言い、出入り口に向かう。
「おや、エルセルス様とルルライン様はレイ殿に教えて頂いた方が宜しいのではないですか?」
「うっ・・・(女性陣)」
「ははは、痛いところを突かれたな2人とも。」
「まあ、かなり分かりやすいですから無理ないですね。」
マーカス殿からからかい交じりに痛撃を受けて赤面した2人が、レオンとクルスから笑われてさらに顔を赤くする。
足早に店を出ていく2人を追いかけ彼らも出ていく。
だが、俺は店を出る一歩手前で止まる。
「そんなに分かりやすいのですか、あの2人は?」
「ええ、その手に疎い私が断言できるほどに。
ですが、相手があなたのような人で良かったと私は思います。
安心して任せることが出来ますから。
恐らくはアルセル様とゼフィールド様も同じことをおっしゃるでしょう。」
「・・・・・・俺にそんなことが出来ますかね。
実の家族すら救えなかった俺に。」
「!、・・・あなたがそのことを悔いてらっしゃるのでしたら必ずや。」
後ろ向きで会話を交わす俺。
後悔か、確かにしている。
だがその内容はあなたが思っているような高尚なものでは断じてない。
「前置きはこれくらいにしますよ。
本題に入ります。」
「決して前置きにできるほど軽い内容ではなかったと思いますが・・・
なんでしょう。」
「皆の父親たち、アルセル殿とゼフィールド殿ですが。」
「・・・はい。」
「実際に処刑される現場を見た者はいるのですか?」
「いえ、だれも見ていません。
ある日いきなり処刑したという報告が国中に広まったのです。」
「・・・そうですか。
また、装備が必要になったらここへ来ます。」
・・・誰も証人がいない処刑者、か
気に入りましたら評価をどうか!