16話 プレゼント
だめですね、自分が考えたより進行が遅すぎる・・・
本当なら今回で以前の魔法の解説をしようと思いましたのに。
それと、おそらくまたみなさんの予想通りのことしか起こせませんでした。
どうも日常の描写はテンプレに頼り気味です・・・
何とかせねば
どうか、生暖かい目で見守ってください
「ここで昼にしますか。
レオンそろそろ帰って来たか~?」
「すみませんごめんなさいもうしわけないもうしませんゆるしてくださいもうむりですおうちにかえしてください・・・・・・・・・」
「ダメみたいだな。
2人とも少しやり過ぎだよ、これじゃあ会話もままならんじゃないか。」
「うう、すみません・・・
で、でも兄さんをこんなにさせる原因になったのはあなたじゃないですか!」
「そ、そうですよ!
私たちはあなたの策略に嵌っただけです!
まあ、確かにやったのは私たちですが・・・」
「そうですよレイさん。
今回は結果的にここまでのことになってしまった元凶はあなたなんですからたまには反省してください。
まあ過ぎたことを言ってもしょうがないですけど。」
「それについてはすまんな、正直ここまでするとは思わなかった。
だが、これは性分だからこれからも止める気はない。」
今俺たちは昼食を食べようとある店の前にいた。
いたのだが、まだレオンが帰還できずにいる。
俺が想像していたよりもずっとハードに責められたようで、さっきから虚ろな瞳でぶつぶつと何かを呟いている。
ちなみに、さっきのことは適当にお茶を濁してごまかしておいた。
話の内容については一切触れていない。
「仕方ない、ちょっと強引にでも目を覚ましてもらおう。」
そういい、俺は袋から丸薬を取り出し、レオンの口に放り込んだ。
瞬間、レオンは覚醒した。
「げほっごほっ!
なんだ、口の中がすごいことに!?」
これは俺が森の植物でつくった気付け薬で、魔法を使い過ぎた時これを飲めば元気とまではいかないまでも動ける程度には気力が回復する代物だ。
これをつくれるようになってからは魔法の使いすぎによる命の危機が減った。
いや、気力が回復というよりは、味で気を紛らわすというのが正しいか。
効き目の分、味もすごいからな。
「レイ、お前さっきはよくも・・・!!」
意識がはっきりした途端に、当然のことだが怒りを向けてくる。
「まあ、落ち着け。
ほら水だ、しっかり口の中を濯いでおけよ。
これから昼食だからな。」
「ん、ああ、ありがと。」
素直に受け取るレオン。
もとから恨みを根に持つような性格ではないからなこいつは。
「さっきは悪かったな、いくら煽ったからとはいえここまでするとは思わなかった。
お前の言うとおり人の感情とは理屈ではなかったようだ、教えてくれてありがとう。
あとちゃんと誤解だと説明しておいたし、お前への埋め合わせも考えてあるから許してくれ。」
何か言われる前にあらかじめ怒りの原因になりそうな要素を潰し、さらに感謝の意まで伝える。
レオンもここまで言われれば何も言えないらしく、苦い顔をしている。
「分かった・・・
その埋め合わせってのはちゃんと俺にとって良いことなんだろうな。
もう変なことになるのはごめんだぞ。」
どこか諦めたようにそう言って来た。
「正確に言えば、お前自身に何かをするわけではないんだがな。
だけどちゃんとお前も喜ぶことだから心配しなくていい。」
訳が分からないという表情をするなか、クルスは悪戯が成功するのを楽しみにする少年のような笑みを浮かべる。
そして全員で店の中に入る。
中は清潔で、それなりに繁盛している様子だ。
あちこちで店員を呼ぶ声が聞こえる。
内装は向こうのレストランと似通っていて、魔法を使った照明らしきものもある。
俺たちは窓際の席に座り、それぞれ注文をした。
俺は名前ではどんなものか分からないので、適当に無難なものをクルスに頼んでもらった。
2分ほどで料理がきた。
早えぇ。
どう料理したのか非常に気になるが、気にしてもしょうがない。
料理を食べながら、マナー違反でない程度に会話をする。
「今更だが、ルルとクルスは戦えるのか?
それと君らの武器は何なんだ?
明日の依頼前に武器買わんといけないし。」
「僕らもそれなりには戦えますよ。
ランクでいえばDの上位ぐらいです。
僕は戦いは嫌いでしたが、家の方針として仕込まれてるんです。」
「もともと私たちの家は武官として栄えていた家ですから、戦えるように教え込まれるんですよ。
並みの冒険者には引けをとらない自信があります。」
ほう、新しい事実が尽きないな。
それにしてもこの年で大人と渡り合えるのか、よく考えたらCで一流だから普通の冒険者はDがせいぜいだよな。
しかしクルスの今のセリフ、今は戦いは嫌いじゃないのか?
「武器なら普通の場合、レオンが大剣か槍、私が剣かナイフ、ルルがレイピアを2本、クルスが弓を使います。」
「補足するなら俺は母国で一部隊の隊長を務めていたし、エルスに至っては平和ボケしてた国とはいえ最強の魔導士の1人だったからな。
ランクではCの上位とBの中位といったところだ。
どちらが上かは言わなくても分かるだろ?」
レオン、本当に気のいいやつだ。
自分より上のものを素直にたてることができるとはね、簡単なようで難しいことなのに。
というかかなり強いんじゃないかこの一団は?
武器もばらけてるし、ランクも上の方だ、これはかなり運が良かった。
「俺たちは言ったわけだが、お前は何なんだ?」
「まあ待て、ここで血腥い話をしなくてもいいだろ、自分で振っておいてなんだがな。
今は来たものを冷めないうちに食べる方を優先しよう。」
俺の戦い方の説明は少なからずきついものになるので、そう言っていったん切り上げる。
「そうですね、せっかくの出来立てなんですから。
レイさんこのパンにこのスープをつけて食べるとおいしいですよ。」
「へえ、そういう食べ方か。
教えてくれてありがとうクルス。
ん、なんかカレーみたいな味だな、普通にうまい。
・・・色は青だが。」
青って自然界にあまりない色だから、向こうの人間には食欲がなくなる色だって聞いたな。
なんとなく毒が入っているようなイメージを受けるらしい。
こっちでは違うようで、みんな普通に食べてる。
そう言う俺も何故かそんなに抵抗なく食べれてるが。
「レイ様、こちらの炒め物もおいしいですよ。
召し上がってくださいな。」
「いや、それは君が注文したものだろう。
俺の料理もちゃんとあるから自分で食べてくれ。」
「む、レイさん、それだけでは栄養バランスが悪いですからこちらのサラダも食べてください。」
「人の話を聞いていたのか・・・?
それにサラダではないがちゃんと野菜も―」
「むむ、レイ様の注文したものは量が少ないんです。
男性ならばもっと食べないとダメですよ。」
「この目の前に大皿が4皿もある状態でそんなことを言われるとは思わなかった。
同じ男のレオンが大皿2皿の状態で俺に言うのは―」
「いいですから食べなさい!(女性)」
「さっきから何なんだ2人とも!
性格が変わってないか!?」
どういうことだ!?
なんか性格が変わるような要素があったのか!?
「いや~、この2人少しずつだが元に戻りつつあるようだな、クルス。
俺は嬉しいよ。」
「ええ、敗戦してからは2人とも元気がなくなってましたからね。
レイさんに会ってからは元気にはなったんですが、元のお転婆っぷりはありませんでしたし。
今回は感情的になったが故の一時的なものでしょうが、それでも元の2人を見れたのはとても嬉しいものですね。」
・・・ああなるほど、元からこうだったんだな。
つまりこれから段々慣れていけばこういうことがどんどん増えていくというわけか。
はっはっは、
・・・逃げたい
そうして食事を終えた。
なかなかに味は良かったし、料理の見た目も良く、これからも通おうと思えるほどだった。
・・・量が適量であればな。
まあ、これは店の責任ではなく女性陣のせいだから筋違いか。
結果として俺は2人の押しに耐え切れず、言われるがままに勧められたものを食べる羽目になってしまった。
俺って実は押しに弱かったんだな、新発見だ。
「いやはや、よく持ったなお前、俺なら途中で確実にトイレに直行してたぞ。
それに傍から見れば痴話喧嘩にしか見えなかったからな、周りの男の敵意も浴びてたし、俺の溜飲も下げさせてもらったよ。
本当にご苦労だった。」
そうにやけながら話しかけてくるレオン。
・・・今回はいいか、さっきのしっぺ返しだと思えば腹も立たないし。
「闘気」を腹の部分に集中させて内臓機能を強化、さらに「魔法」で食べ物の「消化」、「吸収」を促進させる。
改めてこの世界特有の力をありがたく思う。
「ルルにエルス、これどうぞ。」
だいぶ調子が良くなってから、2つの包装された包みを手渡す。
2人は不思議そうにしながらも受け取った。
「あの、これは一体?」
「・・・え、分からないのか?」
「?、はい。
何なんでしょうレイさん?」
おいおい、普通は分かるもんじゃないのかこういうのは。
女性はこういうのに鋭いと聞いたんだが、俺の一方的な思い込みだったのかね?
「何って、2人へのプレゼントなんだが。
要らんかったか?」
「・・・・・・・・・ええええええぇぇぇぇ!!??(2人)」
「おや、そんなに驚くことかね。」
「いきなり脈絡もなくこんなことされたら誰でもそんな反応しますよ。
分かってて言わないでください。」
「・・・クルス、あまり察しが良すぎると嫌われるぞ?
主に俺に。」
驚く2人を眺めて軽く楽しんでいたが、クルスに水を差されてしまった。
しかし、ここで2人が見せた反応は完全に予想外だった。
「も、申し訳ありませんでした!(女性)」
「・・・・・・は?」
何故謝る、2人とも。
「さっきのは一時の気の迷いだったんです!
レイ様があんなことになるなんて思いませんでした、ですからどうかお許しください!」
「今更言い訳するのも見苦しいと思われるかもしれませんが私もです!
ですからこのような恐ろしいものをお渡しにならないでください!」
「どんな勘違いをしてるんだ君らは!?
仕返しという意味でのプレゼントでは断じてなく、あくまで一般的な意味でのプレゼントだ!
だから落ち着いてくれ!」
まさかそんな意味で取られるとは。
そんな風に取られるような行動をしたことは・・・たくさんあるな、うん。
だが実際にやったのはレオンだけなんだけどな、それ以外の人間にも普通にやるとでも思われているんだろうか?
だとしたら結構くるな・・・
2人はしばらく時間を要したが、なんとか落ち着いてくれた。
「プ、プレゼントですか?
しかし私は何か感謝されるようなことをした覚えはありませんが・・・
ルルは何か思い当たる?」
「いえ、私にも覚えがありません。
レイさん何故いきなりこんなものを私たちに?」
不思議そうにそう言われたので、素直に説明する。
「今まで俺は親切な人で親しくなりそうな人間は遠ざけるようにしてたんで、君たちにも同じようにしてたんだよ。
だけどさっきそれが間違いだと誰かさんに気づかされたんでね。
それに伴って、今までの行動が君らを傷つけてしまったんじゃないかと思ったんだ。
それのお詫びだよ。」
そう説明すると2人が色めき立つ。
「そんなことはありませんよ!
そもそも私はそのことに気づいて居ませんでしたから、あなたに傷つけられたなんてことは全くありませんでした!」
「私もです。
というか私はむしろその考えの方に傷つきました。
私たちはあなたに救われてこの上なく感謝してるんです。
その程度で私たちが傷つくと思われていたなんて心外です。」
エルスが声を荒げて、ルルが頬を膨らませて、怒ったような声音で言う。
まったく、本当にいい人たちだな、俺なんかと一緒でいいのかと思ってしまうね・・・
さっきのレオンのおかげで本気でそう思ったりはしないが。
でも、これは俺の個人的なけじめなので、受け取ってもらわないと困る。
「おや?
それではそれは要らなかったか。
俺なんかの贈り物はどうやらお呼びでなかったようだな、悪いことをした。」
「え!?
い、いえそんなことは絶対に、断じて、完膚なきまでにないです!
ですが、特に何かしたわけでもないのにこんなものをもらうわけにはいきません!」
「えと、レイさんから何かを直接頂けるなんて嬉しくてたまらないことですが、エルスさんの言うとおりです!
こういうのは何かをした見返りとして頂くものですので、おいそれともらうわけには参りませんよ!」
ニヤニヤと笑いながら意地悪く言ってやると、2人は慌てた様子であたふたし始める。
予想通りの可愛らしい反応をしてくれる。
言葉にしたら事態の収拾がつかなくなるから言わないが。
そこで俺は微笑みながら、柔らかく告げる。
「君らがどう思おうと俺の知ったことじゃない。
これは俺がやりたいからやるんだ、誰にも文句な言わせはしない。
だから、俺の為だと思っておとなしく貰ってくれ。
てか貰え、拒否権はない。」
予想通り遠慮してきたので、声音とは真逆の横暴そのものの言葉で強制的に従わせる。
2人は喜びと戸惑いが等分に窺える妙な表情を浮かべていた。
喜びの方が大きいようだからいいだろ。
「一応2人に合いそうなものを選びはしたんだがな、実際どうなのかは分からないんだ。
ちょっと開けて着けてみてくれ。」
「え、ここでですか?」
「ああ、早い段階なら一応返品が効くそうだ。
万が一似合わなかったらさっさと返したいんでね。」
「そんなこと私たちは気にしない、と言っても無駄なんでしょうね。
分かりました。」
うん、この2人も段々と俺の性格が分かってきたようで何よりだ。
そうしてそれぞれがネックレスを身に着ける。
エルスに渡したのは、十字架型の宝石があしらわれた美しさが際立つデザインのもの
ルルに渡したのは、複雑な花の形をした宝石があしらわれた可愛らしさが際立つデザインのもの
どちらも2人の雰囲気に合っていて、思わずため息が出そうなとても絵になる光景だった。
「はあ~、予想してはいたが実際に見るとここまで違うものなんだな。
こんなに似合うとは思わなかった。」
「そうですね、姉様もルルも良くお似合いですよ。
僕もレイさんに何か頂きたいものです。」
思わず感嘆の溜息をもらすと、満面の笑みを湛えたクルスが追従してくれる。
隠し事が成功したということも手伝っているのだろう、本当に嬉しそうだ。
ちなみにレオンは事態の進行についていけずボケッとしていた。
ホントに普段は役に立たねえなこの馬鹿。
そしてネックレスを付けた2人は言葉では言い表せないほどの喜色を顕わし、
「ありがとうございます!」
赤面しながら満開の花のような笑みでそう言った。
余裕がありましたら評価をお願いします!