14話 恋とは?
講習忙しい・・・
今回の終わり方、これでいいのか悩みましたがこれにしました
どうかよろしくお願いします
―――side セフィリア
お爺様には困ったものだ。
普段はネストキーパーとしての役割を厳格に果たす尊敬すべき人物。
でも私のことになると途端に甘くなってしまう。
職権乱用で私の職場を勝手に都合のいいように造り換えてしまうなんて。
本当に困ったものだ・・・
お爺様も何も初めからこうだったわけではない。
始めはちゃんと私にも、そして両親にも厳しく接していた。
変わったのは1年前、両親が他界してしまってからだ。
その事実はお爺様にとって相当なショックだったらしい。
それからしばらくは仕事も手に付いていなかった。
一週間ほどして、ようやく立ち直ったときにはすでにこうなっていた。
以前その理由を聞いてみると、あっさりと教えてくれた。
「儂はあの2人に厳しく接するばかりで何も与えてやることができなかった。
きっと儂のことを恨んでいるだろうよ・・・
それが心残りでならんのだ。」
誰もが想像できるような、単純な理由。
だけどそうであるからこそ、純粋な後悔の念を感じることが出来た。
その思いを代わりに向けられる私としてはたまったものではないのだが・・・
といっても無碍に出来るようなものでもなく、その気持ちは嬉しいので、強くいうことはできない。
そんなわけで、この状況に適応することに決めた。
周りのネストの職員や、利用する人たちも同じ方向に決めたようで、徐々に気にする人はいなくなっていった。
すると、新たな問題が起きた。
まあ、問題とも言えない些細なことだけれども。
退屈なのだ。
お爺様の過保護のせいでせっかくCランクにまでなっていたのに依頼は受けられなく、仮に受けられたとしても下位のランクのものばかり。
訓練は欠かさずに勘は鈍らないようにしていたが、それを活かす場がないことはつまらない。
受付の仕事もいろんな人と会えるから嫌いではないのだが、私としては体を動かす方が性に合っているし、このまま続くようなら流石に黙っていられないし直訴しよう。
そう決意しながら今日も受付をする。
すると、ネストに5人の男女が入ってきた。
長短の金銀の髪。
顔の造形も綺麗の一言しか出てこないほど端正で、不思議な一体感が漂う4人だった。
冒険者は比較的ではあるが粗暴な人間が多く、美形な人は少ない。
そんな環境なのだから、この4人が注目を集めたのは当然だろう。
容姿に自信のあった私でも少し見惚れてしまったくらいなのだから。
だが最後の、中央にいる1人はよく分からない。
魔獣の皮から作ったと思われる見たことのない意匠の黒い服装。
顔は端正であるが周りの人たちほどではなく、普通なら目立たないはずだ。
しかし彼は埋もれてしまうことはなく、それどころかその服装が相まって独特の存在感を放ち、視線を集めてさえいる。
その存在感を一言で言うなら、『異質』
そこにいる存在が、自分たちと同じ存在であると感じながら、まるで違うものを見ているかのような『異質』さが同時に感じられる。
彼ら、いや、彼は私の前まで来て質問をしてきた。
どうやら冒険者の登録をしに来たようだった。
それからは普通に受付としての対応をし、説明と手続きを済ませた。
途中、する必要のない『二つ名』の説明を何故かしてしまったが、その程度であれば問題になることもない。
それからの展開は大問題だったが・・・
素材の売却をしたいと言って差し出してきた袋に入っていたのは、Bランクでもなければ倒せない強力な魔獣のものばかり。
それだけであればまだ良かったのだが、その中には例の「危険域」固有のものが少なからず含まれていた。
ここまでのこととなれば私の一存で決めるわけにはいかず、お爺・・・ネストキーパーを呼んできた。
私にとって驚愕のやり取りが始まった。
かなりの威圧感を放つ長を笑って受け流し、からかいさえする青年。
長の追求を飄々と受け流し、自論を語り迷わせる。
挙句の果てに、話の内容から察するに暗に取引まで提案していたらしい。
ネストキーパー相手に信じられない胆力だ。
そして長の出した結論は、問題を問わないかわりにこちらの依頼を受けてもらいたいというもの。
この青年は、自分の要求を認めさせてしまったのだ。
それだけでもすごいことだが、その後の出来事は私の想像を超えていた。
長が依頼にネスト配下の冒険者を同伴させるという旨を言うと、話を聞いていた彼らが声を上げて反発してきた。
実力を見る為に間違いなく討伐系の依頼になるだろうから、よく知らない人間と組みたくないのは当然だろう。
そうして青年に詰め寄り始める彼ら。
次の瞬間に私の背中に悪寒が走った。
青年が邪悪そのものの笑みを浮かべていたのだ。
見た周りの人が1人残らず引くほどの恐怖を与える、そんな笑み。
その後の魔法と合わせて、青年への周りの人の恐怖はより強固なものとなる。
襲いかかって来た3人の男を容易く受け流し、前置きをしてから彼は魔法を使ったらしい。
らしいというのは、音も、光も、その他あらゆる前兆が無かったからだ。
それなのに男の内2人が突然奇声を上げて倒れ伏す。
なにもかもが不明の魔法だった。
そして残った1人は・・・あそこを蹴られて撃沈した。
女の身の私にはよく分からないが、その反応から相当の痛みらしいことが分かる。
周りの男たちも、長を含めて全員が思わずといった様子で股間を押えていた。
何をしたのか、何が起きたのかも分からないという恐怖
何をしたのかがはっきりと分かる、容赦のなさへの恐怖
青年はネストの空気を完全に支配したまま、ネストを出て行った。
私は恐れを感じながらも、等分の興味を彼らへと抱いていた。
「長、先ほどの条件で本当によかったんですか?
確かに国に追求されたとしても言い逃れは容易いでしょうけど、それでもしつこかった場合の迷惑は馬鹿に出来ませんよ?」
「問題ないさ。
そもそも「危険域」の立ち入りを制限しているのは建前以上の意味はない。
あまり知られていないことだが、毎年資格のない人間が多く無断で侵入している。
まあ、帰ってくる者はないに等しいのだがな。
さっきあたかも問題であるかのように語ったのは、からかってきたあの若造が頭にきて脅かしてやろうと思ったからだ。
・・・まったく意味は無かったが。」
「それじゃあ、あの5人は結局のところほぼ無意味な依頼を引き受けさせられたということですか。」
世の中とはそういった騙しあいが蔓延るものだと分かってはいるが、なんだかそういうにはやっぱり好きになれない。
「まあ結果としてはそう見えるか。
だがあやつはそれを知ったとしても気にすることはないだろうよ。
あやつはこの依頼を受けることで、自分たちの有用性を証明しこれからの活動を楽に進めたいという思惑もあったようだからの。
まったく、ここまで深くものごとを考えられるだけで貴重な存在だというのに、実力もありそう、敵にはしたくない男だな・・・」
そう言い長は倒れている3人を見やる。
その意見には激しく同意だった。
「私もそう思います。
どんな魔法だったら人をこんな状態に出来るのでしょう、少なくとも4属性魔法ではありえませんよね。」
「恐らく、固有魔法だと思うのだが・・・
少なくとも儂の知識の中には存在しない代物だな。」
この言葉には驚かされた。
長・・・もういいや。
お爺様は長年の経験から、そこらの学者と比較にならないほどの知識を持つ。
この人に分からないとなると、王都の専門の学者でもないと無理だろう。
「儂としてはその魔法以上にあの冷静さが恐ろしく感じたがな。
あれだけの目・・・、恐らく尋常の人生を送ってはいないだろう。」
「ええ、私も肝が冷えました。
人はあそこまで冷たくなれるのですね・・・
しかし、あんないろいろと奇妙な人が何故今まで誰にも知られることなく生きてこれたのでしょうか。
普通なら間違いなく噂になりますよね?」
そう疑問を口にするが、それが答えの出ない問いであることは理解している。
「それに関しては、以前自分でもよく分からないと言っていたぞ。
なんでも記憶が欠けているんだと。」
「ひゃう!?」
そう思っていたら突然答えが返ってきた。
驚いてそちらに顔を向けると、
「あ、あなた、帰ったんではなかったんですか?」
さっき見た、銀髪の青年が受付の前に立っていた。
お爺様も予想外だった、というか気づいていなかったようで驚いていた。
「いやぁ、あいつに報酬受け取りに行ってくれって頼まれてな。
なんでも楽しんだせいで忘れていたとかで。
まったく、いい加減あいつには自重してほしいものだ。」
楽しんだというのはあの3人のことなのだろう。
しかしこの人、平然と主人の悪口を言っているがいいのだろうか。
「記憶がない・・・ですか、何とも嘘くさいですね。
まあ、それはおいときまして、そんなに公然と主人の悪口を言って聞かれたらどうするんですか?」
「どうもしないよ。
あいつがこの程度のことを気にするはずが無いからな。
・・・弄るネタにはされるだろうが。
なにより、あいつは人使いが俺限定で荒い。
この程度の愚痴ぐらい言わせてもらわないと割に合わん。」
そう言い溜息を吐く彼。
だがその顔には悲壮感は欠片も無く、むしろ楽しそうですらあった。
「おっしゃっていることと、表情がかみ合っていないようですが、どういうことでしょう?
あなたは、あの人をどう思っているのですか?」
「人格破綻者。」
「・・・・・・・・・」
あっさりと、微塵の躊躇いも見せず、人として最低ランクの汚名を着せる彼。
この場合、悪いのはそう思わせるあの人なのか、それともこんな酷い呼び方をしたこの男なのか。
「だが、そうでありながら俺たちの恩人でもある。
しかも、一生かかっても返せないような大きなものだ。
それだけのただ冷酷な人間なら話は早かったんだが、生憎とあいつはそんな簡単なやつじゃないからな。」
私が不思議そうな顔をすると、彼は説明してくれた。
「あいつは確かに恐ろしい。
眉ひとつ動かさずに、まるで作業のように人を殺せるんだからな。
だが、同時に酷く義理堅く、仲間思いな一面もあったりするんだ。
俺たちはその面に救われた。
挙句、突然泣きそうなほど辛い顔をしたりする。
ただの人外かと思えば、いきなり弱った人間の顔をするんだぜ?
あんなことされて、あいつをただ冷酷だと思える人間は少ないだろうよ。
まあ、俺たち従者4人は例外なくあいつのことが好きだからそう思えるのかもしれないが。」
「そうなんですか・・・」
私たちを震え上がらせたあの人、彼をここまで信頼させるあの人、どちらが本物なのか・・・
あるいは、どちらもだろうか。
「無駄話はそれぐらいにしておけ。
お主は金を受け取りに来たのだろうが、本来の目的を疎かにするでない。」
お爺様に窘められてしまった。
確かに仕事中だというのに相当話し込んでいた。
それだけ興味を抱いていたということだろうか。
それにたいして、彼が予想外の答えを返す。
「ああ、実はこれもついでで頼まれていたことでな。
適当に会話して、あんたら2人の反応からあいつに対してどんな感情を抱いているのか見てきてくれってな。」
なんとまあ、まだ考えを巡らせていたとは。
「ここまでくると、驚きよりも呆れが先に来ますね・・・」
「まったくだ・・・
さっきの金をもらうのを忘れていたというのも、狙っていたように思えてくるな。」
「まあそんな気にするなって。
いちいち気にしていたら身が持たないぞ?
それにおおよそ好意的な意見なようで良かった。
もしなにかしらの陰謀でも巡らせているようだったら・・・」
そこで彼は言葉を切った。
気になって仕方がない。
「ようだったら?」
「こう言えって言われた。
『ご想像にお任せします。』」
「・・・分かった。
あやつに、儂らがお前と敵対することはない。と伝えてくれ。
セフィリア、金の支払いを。」
「はい。」
苦笑しながらそう答える彼に、お爺様はそう返した。
どうするかを明確にせず、相手に想像させることで不安を煽る。
効果的な手段だ。
私がお金を渡すと彼は礼を言い、今度こそネストを去っていった。
それからしばらくするとお爺様がいきなり笑い出した。
「くっくっく、は~はっはっは!!
まったく面白い若造だ!
久しぶりの見込みのある新入りだ、出来れば徹底的に鍛えてやりたいものよ!」
「お、お爺様・・・?」
どうやらあの人のことが気に入ってしまったらしい。
最近しなくなった地獄の特訓メニューを呟いている。
ここまでお爺様が誰かを気に入るのは数年振りだ。
かくいう私も、彼に対する興味が膨らんでいるのを感じていた。
―――side out
「お、帰ってきたな。」
レオンがこちらに走ってくる。
今俺たちは通路の端で適当に談笑していた。
「待たせた。
それなりに話が弾んでしまってな。
ほら、これが金だ。」
そう言いながら、袋を手渡してくる。
「ありがと。
お、結構重いな、入っているのは・・・金貨5枚に銀貨50枚か。
なかなかのものになったな。」
向こう換算で約550万。
普通に暮らすなら平民が月銀貨10枚だとして、4年は暮らせる額だ。
といっても、
「確かにそうだが、冒険者なら武器なんかが要るからな。
高いものは金貨数枚するものもあるから油断したら直ぐにスッカラカンだ。」
だろうな。
まあ、これだけあれば準備資金として足りるだろうからいいだろう。
「それで、長とセフィリアさんの反応はどうだった?」
「おおよそ好意的だな。
ネストキーパーからは「儂らはお前と敵対することはない。」という言葉までくれたぞ。
セフィリアさんはお前に対する興味を深めている様子だった。」
「ほう、それは上々。
これで目的が達成できたな。」
これで当面の問題が無くなった。
そう考えていると2人が不機嫌になっていた。
「レイ様、ネストキーパー様はともかく何故セフィリアさんまで気にするのですか・・・?」
「本当です・・・
あの人が気になるのですか?」
言葉は落ち着いているが、トゲが見え隠れしている。
「まあ気にはなるな。」
そう答えると2人の顔が目に見えて青くなった。
この反応ってやっぱりそういうことなのか・・・?
深刻な事態になる前にフォローを入れる。
「あくまで興味の対象としてだがな。
あれだけの振る舞いをしたのに終始こちらに興味を向けていたんだ。
気になったっておかしくないだろ。」
「うう、そうかもしれませんが・・・
分かりましたよ、納得します・・・」
「でも、何故あんなことをしたんですか?
下手をしたら敵に回る人がいるかもしれませんし、確実にあそこの人たちの心象を悪くしましたよ。
レイ様は気になさらないでしょうが。」
納得したと口では言っても内心納得していないのだろう、まだ少々トゲを感じる。
気にしない気にしない・・・
「あの程度で敵対するような人間なら、俺のこの先の行動で間違いなく何かしら仕掛けて来るだろうさ。
今の内に敵に回ってくれた方が、まだ俺たちのことについてほとんど知られていないから対処もし易い。
それにあの場ではああした方が、後で楽になるからな。
その分初めは面倒になるだろうが。」
「心象悪くした方が都合が良いんですか?」
「クルス、これは俺がよく使う手でな。
「落として上げる」ってのは結構効果的なんだ。
その逆もな。」
皆が首を傾げている。
まあ、彼らにはまだ理解できまい。
「しかし、あの魔法は何だったんだ?
まったく前兆がないだけならともかく、何が起きたのかも分からないってのはおかしいぞ。」
当然の疑問。
「それはこれからの用事が済んで、落ち着いてから説明するさ。
とりあえずまずはこの店な。」
俺たちの前にあるのは洋服店。
しかし俺たちは冒険者だ、一般の店で買えるような服では強度が足りない。
仲間が怪訝な顔をする。
「エルスとルルは下着とか必要なものを買ってくるといい。
俺ら男衆はここで邪魔にならないように待ってる。」
「っっっ!!??(2人)」
そう言い、俺の直接的なもの言いに赤面する2人に銀貨20枚を渡す。
相場が分からないので大目に渡しておく。
「で、でもそんなものにお金をかけるわけには―」
「俺にとっては2人がまともな服装をしてないって方が精神衛生上悪い。
そんなこと気にしてないでさっさと行って必要なものを買ってこい。
主人としての命令。」
「・・・分かりました。
それではお言葉に甘えさせていただきます。」
「はい!
レイさん、いつもありがとうございます。」
皆まで言わせず強権を発動する。
そうすると2人は慣れてきたのか、素直に従ってくれた。
いくら口では言っても気になっていたんだろうな。
そして男3人が取り残された。
「俺もああいう風に扱ってほしいものだな。」
「何を言っている。
お前は今ああ扱われたら間違いなく気持ち悪いと感じるぞ。
もうこの扱いで慣れているからな。」
「・・・確かにその通りだな。
だがこうも扱いに差があるとやはりな。」
「お前は俺の中じゃ・・・いや、これは今言うべきではないか。
まあ扱いに関してはあの2人とクルスは大事だと思っているからな。」
「大事、ですか。」
レオンと話しているとクルスが呟いた。
そちらに顔を向けると真剣な顔をしていた。
「レイさん、前から気になってたことがあるんですがよろしいでしょうか?」
「奇遇だな、クルス。
俺もこいつに聞きたいことがあったんだ。
恐らく内容も同じだろう。」
「・・・なんだ?」
ある程度予測をして置き、そう答える。
「お前は妹(姉さん)のことをどう思ってるんだ(ですか)?」
ふむ、やはりそれか。
「仲間、と言いたいところだがそういう答えは望んでいないんだろうな。」
「ああ、正直な話いろいろと鋭いお前が気づいてないことがおかしくてならない。
2人がお前のことを好きなのは明白だからな。」
「2人が自覚しているかは分かりませんがね、特に姉さんは。
しかし、あなたが気づかないふりをしているのには理由があるんでしょうか。」
「おや、クルスは気づいていたのか。
なかなか巧妙に隠せてると思っていたんだが。」
「え、わかってたの?」
「お前、さっき自分で気づいてないのはおかしいと言っていただろうに。」
この馬鹿はともかく、クルスはすごい。
素直に賞賛した。
「・・・それで、何故誤魔化していたんだ?」
「そう不機嫌になるな。
確かに始めは素直に分からなかったし、確信したのはその後少ししてからで、しかも隠そうとしていたからな。
気づかなくても無理ない。」
しかし、この2人に俺が誤魔化していた理由を説明して理解してもらえるだろうか。
「質問中に質問をするのはいいことじゃないが、今は勘弁してくれ。
2人に聞きたいことがある。」
それを聞き、2人が顔を引き締める。
「「恋」って何なんだろうな。」
「へ?」
予想外の質問に間抜けな声を上げる。
「俺はさ、恋心が理解できないんだ。
「親愛」は暖かい、「友愛」は大切だ、だが「恋愛」は理解できない。
それがどんなものなのか、どんな感情なのか・・・」
俺の問いかけに返答することなく、2人はただ聞いている。
「そんな人間がまともに恋愛をできると思うか?
俺はそうは思わない。」
「つまり、お前はそれが理由で気づかない振りをしていたのか?」
「そういうことだ。
こんな人間を好きになっても無意味だと思ってな。
気づかない振りをしていればいつか新しい恋を見つけられるだろうし。」
そう言い俺はこの話を終わらせる。
クルスは何を言っていいのか分からないのだろう。
あたふたとするばかりで言葉になっていない。
そして俺は中に入った2人を待つべく立っていると、
レオンに渾身の力で殴られた