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異世界の愚か『もの』 ~世界よ変われ~  作者: ahahaha
初めての異世界 ~楽しき満たされぬ日々~
13/84

13話 利害関係成立

とうとう日間1位達成!!

そして週間4位

月間38位

まさか初めて一週間でここまでいくとは


これからもよろしくお願いします!


書き直しました

できるだけ違和感ないように頑張ったんでよろしくお願いします

「セフィリアから聞いたぞ。

 これを持って来たのはお主で間違いないのだな?」


責任者は、がっしりした体格で長身の老齢の人物だった。

青い長い髭をもち短髪で、年齢に合わぬ鋭い眼光を持っている。

雰囲気で分かる。

強者、いや、古強者だな。

単純な強さだけでなく、長年の経験に裏打ちされた戦いの嗅覚までも持つ人物。

・・・警戒しておこう、俺の方が強さは上でも、同程度に重要な戦いの瞬間の判断力では劣る


「確かにこの素材を持って来たのは私です。

 しかし、セフィリアとは?」


「この娘だ。

 儂の孫娘で、このネストの幹部の一人でもある。

 そして儂はディックという。

 このネストの主、ネストキーパーを務めている。」


ほう、この人たちはそんな名前だったのか。

しかしこの老人の孫を見る目、一目で分かるな。

爺馬鹿だ。

まあ今は置いておこう。

しかし、ネストキーパー(巣の守り手)か、なかなかに的を射た命名だな。


「幹部の方でしたか。

 私は令、この4人の主人をやっています。

 あなた方の右手から、レオン、ルル、エルス、クルスです。

 お見知りおきください。

 しかし幹部の方自らが何故受付を?」


「儂が気に入る人間でないとこのネストでは働けないようにしているのだよ。

 まったく、最近は骨のある人間がいないせいで人手が足りん・・・」


口ではそう言っているが、これはあれだな。


「なるほど。

 私はてっきりあなたが孫娘に言い寄る人間から遠ざけるために幹部の地位を与え、さらに人員の削減をしているのかと思ってました。

 まあそんな職権乱用をネストの長ともあろう方がするはずがありませんよね。」


不自然なまでに綺麗な笑顔をつくり語りかける。

そして老人は苦虫を噛み潰したような、女性は恥ずかしさを耐えるような表情を浮かべる。

周りでこちらの様子を伺っていたものも笑いをかみ殺しているし、やはり当たっていたか。


「食えん男よ・・・

 それで、いろいろと聞きたいことがある。

 嘘を吐かず、正直に答えろ。」


老人の言葉に不機嫌の色が混じり威圧感が増した。

逆効果だったようだ。

ついからかいたくなってやってしまった。

だが反省はしていない。


「ははは

 ただの戯れですよ、そんなに怒らないでください。

 それに、別にそう威圧しなくても私は嘘など吐きませんよ?」


ディック殿と反対に俺は悪戯が成功した子供のような心境でご機嫌なのだ。

その程度の威圧では微動だにしない。

その代わりにさらに不機嫌になった人はいたが・・・


「ちっ、短刀直入に聞く。

 何故今日冒険者になったばかりにも関わらず、「魔の森」の魔獣の素材を持っている?」


「何だと!?」

「「危険域」から生きて帰ってきたというのか!?」

「馬鹿を言うな、あの年で不可能だ。」

「そうだ、大方誰かが狩ったのを名声の為に買ったんだろうよ。」


「魔の森」の単語に周りの人間が1人残らず驚愕の声を上げる。

だがやはり懐疑的な意見ばかりだ。

まあいくら実力主義とはいえ、こんな若造を自分たちより強いと認めるのは難しいだろう。


「森の近くを通っているとき、この4人が盗賊に襲われているのを助けたんです。

 その時にでた大量の血の匂いに惹かれて森の魔物が襲って来たんですよ。

 あの時は正直死ぬかと思いましたね・・・」


遠い目をしてそう説明した。

嘘であるが事実も含まれている話である以上、表情を作るのも比較的楽だ。


「よくまあそんな底の浅い嘘を吐けるな。

 魔獣を倒す実力があるのかという疑問もあるがこの際おいておこう。

 今の問題は、森の中に侵入したということだ。」


まあ、当然これで済むほど簡単な相手でないよな・・・


「侵入ですか?

 冒険者は基本自由と聞きましたが、それなのにダメなので?

 と言いますか、そもそも私はさっき森に入ったなんて言ってませんよ。」


「「危険域」に限っては国の管轄なので別なのだよ。

 中の強大な魔獣が、馬鹿がちょっかいを出したせいで飛び出してきたらたまらんからな。

 そして奥深くに入ったこと関しては、証拠があるので言い逃れはできんぞ。」


「ほう、証拠ですか。

 それはいったいなんなんでしょう。」


いつのまにか辺りには重い緊張感が漂っていた。

ネストのなかの人間はこの老人と俺が対等に話していることに、全員が困惑を露わにした。

仲間衆はすらすらと流れるように嘘を吐き、そして臆することなく会話を続ける俺に感心しているようだ。


「簡単だ、この袋の中に「刃虎(ザンタイガー)」の素材があった。

 あれは森の奥深くでしか確認されていないBランクの上位相当の魔獣であり、しかもあの森の固有種でそれ以外の場での目撃情報は存在しない。

 お前か、もしくは誰かが中に侵入したことは確実だ。」


本人はこれで俺が落ちると考えているのだろう。

勝ち誇った笑みを浮かべる。


「ふふふ」


その発言に対して俺は微笑みを返す。


「何が可笑しい?」


「いえ、貴方は凄い人だと思いまして。

 魔獣について大変お詳しいようですね。」


「?、どういうことだ?」


「あなたの今の言葉は、魔獣について知り尽くしていないと出てこないものですから。」


何を言っているのか分からないという表情を浮かべるディック殿に、俺の意見を述べる。


「魔獣は今でも研究があまり進んでいなく、詳しい生態がわかっていません。

 そうであるのにあなたは「刃虎」の生態を断言することが出来た。

 魔獣の中でも強力で、特に謎の多い種であるにも関わらず、ね。」


「む・・・

 だが過去の例を見るに、お前の言うような状況になることはないはずだが?」


「過去はあくまで過去に過ぎませんよ。

 これから何が起こるかなど、確実なことを言える人間はいません。

 ましてや「刃虎」は生き物で、自分の意志を持ち自由に動きます。

 偶然森の奥から出てきていて、濃い血の匂いに誘われて出てくることが無いと断言することができますか?」


もっともらしいことを言ってはいるが、俺の言葉は詭弁に過ぎない。

もちろん、嘘などではなくむしろ真実であるが、これはあくまでそんなこともあるな、という程度のものしか相手に与えることはない。

だが、そう思わせることは重要だ。

人は可能性を与えられると、いくらありえないことだと思っていてもそれを完全に否定することは難しい。

ディック殿の考えに、ほんの少しでも不信感を与えることが目的だ。

どうやら成功したようで、少し迷いを浮かべた。


「なるほど、お主は頭も回るようだな。

 そんな返し方をされるとは思わなかったぞ。

 だが、そこまで頭が回るのであれば分かっているだろう?それは儂の意見のほかに道があることを示す以上の意味はない。

 しかも、その道は儂の意見と比べて前例という道しるべがなく遥かに狭い道だ。」


ああ、その通りだ。

だから俺はあなたに期待しているんですよ?


「儂の一存でお主が問題を起こしたかどうかが決まるわけだ・・・

 まったく、初めはさっさと処断してしまおうかと思っていたのだがここまで有望そうな若造だとは思わなかった。

 生意気にも儂の器量と人柄を試していたようだしの。」


そう言い、ディック殿は苦笑を浮かべた。

どうやら、俺がなにを欲しているのか正確に察してくれたようだ。

さすがネストキーパー、話が分かる。




俺は仲間の話から、「魔の森」で得た素材の処分が難しいことを知った。

強力な個体から得られるものは当然珍しいので、市場に出れば騒ぎになる。

しかも立ち入ることが出来る人間が限られている「危険域」産であればなおさらである上、ばれれば罪になることもありえる。

だが、俺たちは早めに資金を集めたかった。

それには素材を何とかして売るのが一番手っ取り早い。

そこで俺が考えたのが、ネストの主を頼ること。

そもそも俺の使う、武器、薬、その他のあらゆる所持品は「魔の森」製なので隠すことは不可能だ。

ならばいっそのこと、自分からばらしてしまおうと考えた。

もちろん策が無かったわけでもない。

一施設の長ともあれば、その器量は高いだろう。

普通の施設であれば権力により腐った人間の可能性もあるが、自由人気質の冒険者であればそんな人間を長と認めるはずがない。


俺たちが、捕まえるよりは事実を隠してしまい、利用する方が好都合であることを示す


そのために、このようなやり取りを行ったのだ。

選択肢を増やし、罪とするか不問とするか自由に選べる状況を作り上げた。

これで、長は俺たちを不問にして警備などに追求されたとしても躱すことできる。

あり得ないと思っても完全に否定できない以上、高い地位もあり深く追求されることはない。

ここまでの会話で、この老人は俺の求めることを理解している。

そして、目の前の若造が頭の回る有用そうな存在であることも。

あとはこの人の器量と人柄次第。

器量が大きければ、誰も喜ばず何の意味もない罪を与えるよりも、ここに喜ぶ人間のいる実利を優先するだろう。

自由人の冒険者らしい人柄であれば、罪を隠すことをそれほど気にすることはない。

まあ、もし都合の悪いようになったら逃げるだけだから、別にいいんだが・・・




そしてその結果は、


「くっくっく・・・

 お主は一体どのような人生を送ってきたのだか。

 分かった、この件はなかったことにする。

 素材に対する報酬を用意しよう。

 まあ、想像してると思うが条件付きでな。」


そりゃそうだ。

有用だと考えれば利用するのが当然、それを承知したうえで持ちかけたのだからな。


「分かりました。

 条件とは?」


「いきなり決めたことだ、まだ決めてはいない。

 まあ恐らく、そこのネスト直属の男たちとの共同依頼になるだろう。

 まずは実力を見なければどうしようもないからな。」


ディック殿が視線を向けた方には、3人の男がいた。

すると、その男たちが色めき立つ。


「な、長!

 それは困りますよ!」

「ああ、俺たちに初心者の手ほどきをしろというのか?」

「足手まといが増えるのはごめんだぞ。」


これまたテンプレだな・・・

あと、レオン以外の皆、そんな敵意をむき出しにするな。

顔が怖いぞ。

済ました顔で立っているレオンを見習え。

その視線に気を悪くしたのか、3人が詰め寄る。


「どうした、従者と違いお前は何もやり返さないのか?」


そう言い睨みつけてきた男に対して、おれは俯く。

男たちはこれを見て、俺が怖がっていると考えているようだ、気配に優越感が感じられる。

だが、こいつらは気づくべきだった、俺の横顔を見た者が1人残らず身を引いていることに。


俺の口元は綺麗な三日月型に吊り上っていた


なんとまあ都合がいい。

ここで力を見せられる生贄を用意してくれるとは。

こいつらと同じ考えをここにいるほとんどの人間が持っているはずだ。

ここで1つ、俺に恐怖を抱いてもらうとしよう。

その意見を変えてもらうには、それが一番手っ取り早い。


俺が顔を上げると、男たちは顔に恐怖をのぞかせる。


「エルス、ルル、クルス、下がっててくれ。

 これから使うのは目標以外に害を与えることはあり得ないが、念のためだ。」


「はい、分かりました。(レオン以外)」


「・・・ほんとお前は俺に厳しいよな。

 前から聞いてみたかったんだが、お前は俺をどう思っているんだ?」


「リッパな(おとこ)。」


「すごいな。

 本来なら褒め言葉のはずなのに馬鹿にされているようにようにしか感じられない。

 お前に会ってから俺はいつも言葉の奥深さに感心させられてるよ。」


おお、成長したなレオン。

無意識とはいえまさか、からかいに対して皮肉で返すという高度な技法を用いるとは思わなかったぞ。


「お、お前!

 俺たちを無視してんじゃねえよ!」


まあ、いいじゃないか、話ぐらい。

それだけお前らの猶予が増えるんだから。

無視されたという事実と、俺の態度に混乱していたのか、男の一人がいきなり殴りかかって来たので、その力に逆らわずにその男を流れるような動きで捕まえて転ばす。

俺の行動と仲間がやられたことに反応し攻撃して来た他の2人もまた。

盗賊どもとは比べものにならないほど速かったが、さして問題にはならなかった。


「長、一応聞いておきますがここでやり返しても問題になったりしませんよね?」


「ああ、知っての通り自由人気質だからな。

 当事者以外に被害を与えるようなことがなければ問題ない。」


「では、今からお返しさせて頂きます。」


そう前置きして、男たちの方に向き直る。

そして俺は、こういった時のために以前から用意していた魔法を使う。


「あがごヴぁじゅぐででば!!??」


意味不明の音を口から垂れ流しながら崩れ落ちる2人の男。

白目を剥き、口から泡を吹き出し、痙攣を繰り返す。

そして残った男には、


「~~~~~~!?」


男の急所を蹴り上げて対処する。

潰してはいないが、痛みは相当だろう。

俺が作り上げた状況に恐怖する人々。

まあ、当然誰も死んではいない。


未知の魔法により生み出された酷い有様の男

急所を躊躇いなく蹴り上げた容赦のなさ


それで恐怖を与えるに十分だからだ。

未知というのは怖いものだ、何が原因かも不明、引き起こされた結果も不明。

知らないという事実は様々な憶測、推測、妄想を呼び、恐怖をどんどん引き立ててくれる。


「では、ネストキーパー様、私たちはこれで。

 明日また訪れさせていただきます。

 それまでにはそこの人たちも回復するはずですので。

 行こう、皆。」


「あ、ああ。

 分かった、それまでに何を依頼するのか考えておく・・・」


困惑しながら答えるディック殿を置き去りにして、顔を引きつらせる4人を連れてネストを後にする。




最後に見たのは、興味深そうにこちらを見ているセフィリアさんだった。




いつも評価して頂きありがとうございます!

これからもお願いします

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