第23歩 土の中から
遠い昔の出来事です。
その家の便所は離れにありました。
用を足すのには一旦、外に出て離れた所にある便所に行く事になる。
便所は木造で便槽はセメント造りの物が土の中に埋まっていた。
夜、用を足しに行くと物音がする。
便所から
―ゴン、ゴン、ゴン、ゴンと何かが鳴り響く。
そのうち収まらないかと思ったが音は毎晩の様に鳴る。
家人たちは気味が悪く音の原因解明のため木造の便所は解体され
便槽を空にして大工さんの手で酒と塩で清められ、
さらに消毒を施し一週間置かれた後、便槽が壊され撤去された。
だが夜になると、また音がするので
翌日、穴を掘ると一斗缶が出てきた。
蓋を開けてみると、なんと人骨が入っていた。
発見した大工さんが中を探ると少し遺留品も収められていた。
『どうして、こんな所に・・・』
家人と相談の上
『警察に届け出たほうが良かろう』と云う事になり
警察が捜査をはじめた。
遺留品から何年も前に捜索願が出されていた女性の骨と特定され殺人事件に発展、犯人が特定されたが兵隊さんで、その時、既に戦場で亡くなっていたのだという。
その後、お骨は縁者らにより手厚く供養され戒名が付き発見された場所には丸い石が置かれ御花と線香が供えられた。
以降、あのゴンゴンという音は二度と鳴る事は無かったと云う。
事情はわからない。
ただ悲しく、やりり切れないような事件があったのは事実。
私はその現場あたりを見に行ったことがある。
昼間に行ったが歩いている人がほとんどいないような静かな街並みだった。
1950年代から1960年くらいまでは
旅館・ホテル・料亭・居酒屋・定食屋・雑貨店・メガネ店・時計店などが
そこかしこにあって長屋なども多く、人が沢山住んでいた地域だった。
いかに栄えていた地域だったかと想像される街並みだった。




