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ルーティン

 ルーティンは私に自信をくれる。これがなければ私は一日中肩を落として生活を、流れる時間に乗せて終わるのを待つ機械的な作業として捉えて過ごしてしまう。

 きっかり六時三十分に鳴った目覚まし時計を3コール目で左手を上げノールックで止める。右手で無精髭になる若駒を撫でると私は伸びをして状態をおこす。反動でベッドのコイルが鳴くと外から何かしらの鳥の鳴き声が聞こえるのを待つ。大抵は雀だが、たまにカラスが鳴く。どれだけ待っても聞こえない時は隣人の物音で済ましたことがある。以前顔見知りの隣人の奥さんの旦那さんが蒸発したと噂で聞いた時、人間も飛ぶものだとした。外でカラスが鳴いた。今日はレアな日だと胸を躍らせて右手に向かって足を放り出した。スリッパを履くのは必ず左足からだ。

 ルーティンを大事にしろとテレビに出ている競泳選手がいったのをみて、私は馬鹿馬鹿しいと思った。その選手はキャップを被りゴーグルをはめた後にシリコンキャップを付け、全て外し、付け直すのだ。それこそが彼のルーティンであり、彼が至高のパフォーマンスをした日にしていた決まり事なのだ。

 しかし私はルーティンを大事にしてしまっている。その水泳選手のように至高なパフォーマンス、いわせてみれば人生という壮大な規模の中の一瞬に私は期待し続けているのだ。

 洗面所に向かい顔を洗う。まずは左目を左手で擦りめやにを落とす。して右側も同様に、しかし左手で洗う。口に水を含みうがいをし、吐き出さずに顔全体に水をかけて流れるのに合わせて口から泥を吐く。引き出しを足で開けてハンドタオルを首にかけて顔を拭い、ドライヤーで水気を与えるように濡れたタオルで撫でていく。生乾きのタオルをタオル掛けに、昨日のタオルを洗濯機に入れた。

 トイレにはいる時にもルーティンはある。便座は手前から円を書くように拭いて、ウォシュレットの洗浄ボタンを押すして用を足す。トイレのタオルは一週間に一度変えるとか決めている。

 ルーティンには穴があることを知ったからだ。ルーティンをした時、しなかった時、主に後者において結果が出ないことに不思議はないが、結果が出てしまった時、私は日常の中に潜むルーティンを見逃していることになるのだ。故に、私は一週間に一度、主に火曜日にルーティンを否定する日を用意している。その中に隠れているルーティンは、捨てルーティン以外のどれかということになり、捨てルーティンの日を使い本物のルーティンを探すのだ。また、ルーティンには犠牲が付き物であり、排他的ルーティンによって真のルーティンが真価を発揮するのだ。

 私は洗面台で手を洗い歯ブラシを口にした。歯磨き粉は一回使い捨ての量が少ないものを一度に全部使用している。ルーティンを発揮した日に、歯磨き粉は底を尽きたように残り香を吐き捨てたのだ。それにならっている。また、両手で挟むように歯ブラシを持ち、バーテンダーのように歯を磨いている。

 他にもルーティンがある。朝食はカレーライスをスパイスから作る、朝昼兼用でカレーを食べ、マウスウォッシュをしてからまた歯を磨く、もちろん両手で。靴は両足同時に、ドアは左の逆手、右足から外へ出てノールックで鍵を閉める。

 ルーティンは大事にすべきだ。自分を変えた日の中にあったはずのものを、私たちは盲目的に信じて従っている。

 私家を出て思い出した。鍵を閉めていなかったのだ。家に帰ると鍵は閉まっていた。肩を落として歩く私の前に風に運ばれた馬券がひらりと落ちた。

 東京4rダート1400馬単2-15,16,18。調べてぞっとした。当たっているではないか。それも配当はかなりつく。

 私は家に扉の方を向いた。鍵を閉め忘れたと思い家に帰るも閉まっていたという状況。これは新たなルーティンだ。

 しかしどうだろうか。私はどれがルーティンなのか分からなくなってしまっている。

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