5.ドラッセン渓谷
【ドラッセン渓谷】
ここは火竜が縄張りにしている住処だ。
澄んだ川が流れており絶景ではあるが、人が足を踏み入れていい場所ではない。
「それでは先程話した通り、各々火竜を討伐したら、角や牙、爪など、討伐した火竜の一部を回収。討伐数が50頭に到達したら任務完了だ。速やかに撤退する。討伐隊本部はここに設置しているから、何かあればすぐに報告しろ、以上だ!」
討伐隊の隊長である、他 Sランクの人が最後の号令をかけた。
それを皮切りに、各々編成隊を組んで渓谷の奥地へと進んでいった。
ニャコナさんを含む3名のSランク者と補給部隊、救護隊なんかはここで待機だ。
「行きますか」
俺も奥地へと進んだ。
♢
数時間後
「これで、9体目! ファイヤーボール!」
真っ直ぐ放つ火の火球が火竜を燃やす。
「! まだいたか!」
別の火竜が現れる。恐らく番いだろう。火竜は火のブレスを放つ。
「火魔法ゼロフレイム」
新たに習得した『消火』の魔法。火竜の放つブレスは一瞬にして霧散した。
火竜の必殺技だが、ついに俺に当たる事は無かった。
「ファイヤーソード!」
俺の手に握られてる愛刀・火鬼丸から火が伸びると剣の形を形成し、そして上空にいる火竜目掛けて腕を降るった。
火竜の首は一刀両断され、地面へと墜落した。
「これで10頭か。俺的にはノルマは達成したかな」
俺は一度報告のため、討伐隊の本部へ戻ることにした。勿論討伐した火竜は収納魔法『火炉』の中へ丸ごと収納した。
部位の剥ぎ取りは面倒なので、あとでギルドの人にやってもらおう。
♢
「お疲れにゃ〜イフト」
「あ、お疲れ様です」
本部にて休憩しているとニャコナさんが話しかけてきた。
「1人で火竜10頭か〜、流石イフトにゃ」
「そうですか?」
「出たにゃ。イフトの『何かやっちゃいました?』。それ聞くのも久しぶりにゃ」
「いや、まだ言ってませんよ」
「同じことだ」
「あ、ファルガさん」
すると、クラン『銀狼の牙』、『衝撃』のファルガさんが声をかけてきた。
ファルガさんもニャコナさんと同じSランクのベテランだ。
ファルガさんは『狼人族』で、『猫人族』のニャコナさんと同じ獣人と呼ばれる人種だ。
因みに夢魔族のミラさんは見た目は人に近いが、亜人と呼ばれる人種になる。
「にゃにゃ、ファルガ何しに来たにゃ!」
「お前ではない、鬼髪に声をかけただけだ」
ふしゃーとニャコナさんはファルガさんを威嚇する。2人は犬猿の仲ならぬ、狼猫の仲?で依頼でも度々衝突する程だ。
まぁ俺からしたら喧嘩する程…ってやつだ。
「全く…お前程の奴がAランクなのは、『王者の剣』の層が厚いからと思っていたが、やる気が無かっただけと知った時は怒りに震えたぞ」
「はは、すみません」
返す言葉もない。
「おまけに竜種を探してるそうだな」
「まぁそうですね。 Sランク昇級試験はめんどくさいんで。さくっと竜殺しで Sランクになろうかと」
「全く、同じクランの奴なら叱ってるところだぞ」
「にゃにゃ、イフトはいつもアイリスにゃんに叱られてるにゃ」
「いつもじゃないですよ」
多分…
「Sランク冒険者は10数名程しかいないんだ…さっさとなれ」
「10名しかいないのに火竜討伐に3名来たんすね?」
「数年前の『虹竜』で Sランクが沢山死んだから今は育成期間にゃ」
「俺が冒険者になる前ですね」
「どうだ? 鬼髪の火魔術で虹竜は倒せそうか?」
「いやいや、虹竜ってSS案件ですよね? 俺Aランクですよ。火龍ならまだしも虹竜なんて無理でしょ」
「火龍もSランク案件だにゃ。今のイフトには無理だにゃ」
「いやいや、こう見えて俺だって結構やりますよ。火龍なら頑張ればなんとか…」
「いや強さ的な意味じゃにゃくて、Aランクじゃ普通にSランクの依頼を受けれないにゃ」
「…そりゃそうですね」
そんな他愛のない話をしていると、俺たちに近づいてくる影があった。
「イフト、申し訳ないがもう少しだけ火竜を狩ってきてくれ」
もう1人の Sランク、今回の任務の総責任者、『激昂』のザムドさんが声をかけてきた。ザムドさんは王都最強のクラン『十六夜天魔』のメンバーだ。
「ザムドさん、お疲れ様です。まだ討伐数達成しないんすか?」
「本来は数日がかりのつもりだったのだが、今回のメンバーは優秀でな。お前があと数頭狩ってくれたら今日中に済みそうなんだ。お前が大丈夫なら狩ってきてくれないか?」
夕暮れまでまだ時間がある。それまでに済めば今日中には帰れそうだ。ザックの事も気になるし今日帰れるのなら帰りたい。
「分かりました。もし帰れなかったら明日の朝まで待って下さい」
「了解した。昼になっても戻らなければ何かあったと判断して捜索隊を出すぞ」
「なら渓谷の東の方で狩りをするので、何かあればそこを探して下さい」
「分かった、ノルマは6頭だ。それで済むはずだ」
割と多かった。まぁ多分大丈夫だろう。
「気をつけて行ってくるにゃ〜」
「はい」
「戻ってきたら追加報酬で竜種の情報をくれてやる」
「ありがとうございます、ファルガさん。毒竜の情報ならいらないんで」
「…」
「すまんな」
「大丈夫っす、ザムドさん」
そう言って俺は渓谷の奥地へと再度入って行った。




