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妖精計画〜鬼の子と桃の花〜  作者: 洗井 熊
第1章 Sランク
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4.王者の剣

【次の日】


 俺は自分の所属しているクランの本拠地に顔を出した。


「あ、おはようございます」

「お疲れ様ですイフトさん」

「久しぶりっすね」


「おはよう」



【クラン『王者の剣(キングブレイド)』】



 それが俺の所属しているクランだ。

 在籍者30名程度で人数的には大手クランよりは少数である。

 だがクランリーダーが今のリーダー・アイリスに代わってから飛ぶ鳥を落とす勢いで急成長中のクランだ。

 今のクランは年功序列ではなく、完全実力主義だ。だから年下の俺にもランクが低い人達は敬語で挨拶してくる。

 ザックは例外だけど。



「アイリスさんは?」

「リーダーならいつもの執務室っすよ」


 アイリスさんの所在を確認すると、建物の2階へと上がった。





コンコン



「入れ」

「失礼しまーす」


「来たかイフト」

「まぁちょっと話したい事があって」


「座れ、お茶でも出そう」

「うっす」


 俺は促されるままソファへと腰掛けた。

 アイリスさんは自分でお茶菓子を準備し、テーブルへ置くと、テーブルを挟んで俺の向かい側へと座った。



「それで話とは?」



 冒険者ランクS・『王剣』のアイリス。

 それがこの人だ。

 二つ名通り、まさしく王剣。王位継承権は低いが紛れもなく王族。


 ザムスガル王の第五王女、『アイリス・フール・ザムスガル』。


 詳しくは省くが色々理由があってクランのリーダーなんかをしている。

 性格はさばさばしており、姫様って感じはしない。言葉遣いは、貫禄はあるが上品ではない。あと、攻撃的だ。



「火竜討伐任務と、もう一件についてっす」

「ふむ。では火竜討伐の件から聞こうか」


「火竜討伐には参加します。5頭くらい倒せばいいっすか?」

「そうだな。まぁ1頭でも十分だが、お前が倒せるなら好きなだけ倒せ。火竜は繁殖期に入って頻繁に村や町を襲い始めている。討伐隊は火竜の縄張り『ドラッセン渓谷』にて50頭の火竜の討伐が目標だ」


「結構多いっすね」

「火龍か…群れに長でもいるのだろう。50頭も倒せば討伐隊を組まなくても対処出来る様になるだろう。詳しい決行日時は追って連絡する」


「了解っす」

「それで、もう一件は?」


「水竜か土竜、木竜なんかの目撃情報はありませんか?」


 アイリスさんは勢いよく立ち上がった。俺は動じる事なくお茶を啜る。



「ようやくSランクになる気になったか」

「まぁ試験は面倒なんで、竜種討伐でサクッとなれたらなぁと」


「ふふ、五竜討伐による『竜殺し』の称号か。普通は属性の違う五竜を1人で討伐出来る者など中々いないがな」

「たまたまっす」


「これで我がクランのSランク冒険者は、私を入れて4人になるな」

「まだ気が早いっすよ。それで目撃情報はありますか?」


「そうだな。その3種の竜は強さよりも発見の困難さにある。なんせ、水や土、木に紛れて生息しているからな」

「同じ理由で海竜もですね」


「それなら、毒竜なんかどうだ? あれらはスロッカスの沼地に生息している。火の魔術を使うお前なら全て焼き払って終わるんじゃないか?」

「スロッカスの沼地っすか…あそこ臭いんすよね。相性的には木竜が良いんですけど…」


「ならギルドを通して探してみるか。見つからなかったら諦めて毒竜にしておけ」

「う、了解っす」


 俺はお茶菓子を少し摘んでからクラン本拠地を後にした。





「さてと」


 差し当たって火竜討伐の準備だな。後は他竜種発見の連絡を待つだけだ。

 毒竜は勘弁したい。

 強さではなく、生息地がだ。おまけにあそこは帝国との境目でもある。あまり長居はしたくないとこだ。



「1週間後か〜…あ!」


 1週間後って、丁度ザックとミラさんのデートの日だ。少し心配だが、服も場所も決めておいたし、まぁ大丈夫だろう。





1週間後


 俺は街の南門のゲートへと向かった。そこが大規模任務・火竜討伐隊の集合場所だからだ。


 ザックは朝早くに俺と一緒に決めた勝負服でバシッと身なりを整えてミラさんとの待ち合わせ場所へ向かった。

 少し羨ましい。こっちは火竜討伐なのに、あっちは女性とデート。


 くそ!



「おはようにゃ〜イフト」

「あれ? ニャコナさん、おはようございます」


 集合場所に見知った顔があった。

 猫人族、『遊撃』のニャコナさんだ。俺と同じクラン『王者の剣』に所属している、冒険者ランクSの大先輩だ。

 今日も耳と尻尾がモフモフしてそうだ。



「どうしたんですか? ニャコナさんも火竜討伐に参加するんですか?」

「そうにゃ〜、アイリスにゃんに頼まれたのにゃ〜」


 俺は他のクランの人達を見回した。



「他のクランからも2人程Sランクが参加されてますね。保険かな?」

「そうみたいにゃ〜、うちを入れて3人Sランクが保護者代わりにゃ」


 火竜討伐は毎年何名か死者が出るし、間違って打ち損じると、怒った火竜が余計に村々を襲う。

 もしくは火龍の存在。その為の保険か。



「まぁイフトなら大丈夫だと思うけどにゃ、お調子者のザックはいないしにゃ〜」

「はは、そうですね。ザックはミラさんとデートに行きましたよ」


「うわ、無謀にゃ〜。ミラにゃんは夢魔(サキュバス)族のクォーターだからザックは遊ばれて終わるにゃ〜」

「そうだったんすね」


 だから毎回付き合う男が変わるのか。ザック頑張れ!



「お、時間にゃ。イフトも頑張ったら後で魚定食奢るにゃ」

「ありがとうございます」


 ニャコナさんは手をヒラヒラさせながら、他のSランク冒険者の元へ向かった。



「さてと、やりますか」


 俺は頬を叩いて、集中した。




「集合!」


 火竜討伐隊の隊長が集合をかける。

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