22.宝玉
フウカが無事にFランクに昇格した後、今度は俺のSランクの依頼達成報告をしに来ていた。
まぁ以前に狩った火龍の遺体を提出するだけだけど。
ギルド本部・2階
「お疲れ様ですイフトさん、フウカ様」
2階担当となったギルドの受付嬢ミラさんが出迎えてくれた。
「ほら、依頼達成の報告してきなさいよ」
「お、おう」
今日1日でいつしたの?ってかなり問い詰められた結果、俺はフウカにだけ以前火龍に襲われて撃退した事をきちんと伝えた。
フウカは呆れていたけど何故か納得してくれた。
「イフトだからね、今更驚かないわ」
みたいな感じだった。
いやいや、毒竜の時くらいしか俺の強さ知らないだろ!とはツッコまなかった。
「Sランクになっても依頼達成速度は健在の様ですね」
「はは、まぁ」
いや〜照れる照れる。
「それで、納品はどうしましょうか?」
「それでしたら、裏にある倉庫で出して下さい。どうせイフトさんですから剥ぎ取りなどせずそのまま持って来るだろうと」
見透かされてた。
恥ずかしい。
「じゃあ俺、納品してきますね」
「はい、私は依頼完了の手続きをしておきますね」
まだ納品してもいないのに、いいのだろうか?
まぁ速く済むからいいけど。
俺は1人で倉庫まで行った。
その間フウカは2階で待っておくそうだ。
♢視点変更
ギルド本部2階。
そこには現在、フウカと受付カウンターで仕事をしているミラの姿しかなかった。
「随分信用しているんですね、イフトの事」
「イフトさんはこれまで依頼に失敗した事がありません。依頼達成の速さも既に他のSランクの方達を超えております」
フウカは少しだけ面白くなさそうな顔をした。
反対にミラは余裕そうに微笑みながらテキパキと仕事をこなしていた。
「ふふ、大丈夫ですよ。イフトさんとはただの冒険者と受付嬢の関係ですから」
「わ、私は別に…」
「それに私は年下は基本範囲外なので大丈夫ですよ」
「だから私はべつに…」
「ここだけの話ですが」
「?」
「イフトさん、かなりおモテになるので手を出すなら早い方がいいですよ」
「な!?」
「本人は全く気づいておりませんがね」
「……」
♢視点変更
「ただいま〜」
「イ、イフトいつからそこに!?」
「いつって、今だよ」
「そ、そう…随分早かったわね」
「そりゃ、火龍の遺体出して帰ってくるだけだから直ぐに決まってんだろ」
「そ、そうよね…ハハ」
「あ、ミラさんこれ。納品完了の書類です」
「はい、承りました。報酬を用意するので少々お待ち下さい」
ミラさんは数分後には書類をまとめ完遂していた。
さすが仕事が出来る人は違う。
ザックはミラさんに釣り合うだろうか?
「え、こんなに?」
「報酬額は見なかったのですか?」
いや、見た。
見たが…これがSランクか。
初Sランクの報酬は文字通り桁違いだった。
1000万ドラを超えていた。
「Sランクの依頼はそれこそ命懸けですからね。これくらいは妥当ですよ」
「ハハ、ですよね〜」
苦笑いしか出なかった。
「それとSランクの方への報酬は基本これくらいはするので、お金を出し入れ出来る魔道具の購入をお勧めします」
「魔道具?」
「はい、正確には口座魔術と呼ばれる特殊な魔術です。ある魔術師の方が作られた、お金だけを出し入れ出来る術式が組まれた魔道具で、少々値段は張りますが便利なのでSランク以上の方は全員お持ちになっております」
「なら、買っとくかな」
この世界でのお金はお札だ。
細かく細工がされているとは言え、簡単に言ったらただの紙切れだ。
それを判別して出し入れ出来る魔術か…凄いなその魔術師。
かさばらない財布ってところか。
「これは『宝玉』?」
「左様です、正確には宝玉のカケラを小さく丸く加工したものです。その口座術式はどの宝玉にも書き込めるので、色は選び放題です。おまけに収納したお金は数字で表示されますので、とても便利ですよ」
「確かに」
確かにとは言ったが…
いい買い物をしたのか?
値段が高すぎてよく分からない。
「便利だと思うわよ。帝国の貴族も、私も持ってるしね。購入時の契約で仮に無くしたり盗まれても本人以外にはお金を出せないしね」
「そいつは便利だな、なら買ってよかったか」
「まぁ宝玉自体が高いからそれを売る連中もいるけどね」
「そいつは…最悪だな」
既に火龍で稼いだお金から宝玉代を差し引かれたお金が入ってる。
後で残りも全部入れてみよう。
幾らあれば豪邸が建てられるだろうか?
うーん、1億? 10億? 100億ドラ位か?
そうだな。
100億ドラ、それ目指すか。
どうせなら凄いの建てたい。
余れば家具も買えるしな。
道のりは遠いが頑張るか。
♢
翌日、朝食後
俺は自分の土地のど真ん中に立っていた。
うん。
全然足りない。
あれから残りの金も宝玉に入れたが、100億ドラ?
全然足りない。
目標金額を下げるか?
いや、ダメだ。
妥協してどうする。
一度決めた事だ、最後までやり遂げよう。
例え、何年かかっても…
「ほらイフト、今日は私のFランクに付き合ってくれるんでしょ! 早く行くわよ」
「おー」
俺とフウカは今日もギルドへ足を運ぶ。
「フウカの宝玉は何色?」
「私の? 私は赤色よ。かっこいいでしょ。イフトは? (といっても今は私の口座止められてるから使えないんだけどね)」
「俺? 俺のはこれ」
「桃色…」
「な、なんだよ…」
「…イフト、あんたモテないでしょ?」
「な、な、なんでそんな、い、いや別に俺は…」
「慌てすぎ。どうせ今だに初恋拗らせてるんでしょ?」
「わ、悪いかよ!」
「ううん、別に〜」




