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妖精計画〜鬼の子と桃の花〜  作者: 洗井 熊
第1章 Sランク
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2.死氷山アイスバーン


 翌日、俺は朝早くからギルドに顔を出した。

 ザックの奴はまだ寝てる。昨日の事が余程嬉しかったのだろう。

 まぁデートまでまだ数日あるし慌てて服やデート場所を決めさせるのもよくない。落ち着いて決めて欲しいものだ。



「おはようございます」

「おはようございます、イフト様」


 ギルドの受付嬢へ挨拶する。

 ミラさんではないが、目の前にいる受付嬢さんも綺麗な人だ。と言うか受付嬢さんは綺麗な人しかいない。



「ただいまミラの方をお呼びいたしますね」

「あ、いえ…今日は個人で来たのでミラさんでなくて構いません」


 俺とザックはとあるクランに所属しており、そのクランに所属しているメンバーの対応をミラさんがしている訳だ。

 クランとは簡単に言ったらチームみたいなものだ。だが今日はクランではなく個人として来ているので受付嬢さんは誰でもいい。



「それでしたら、本日はどの様な御用件でしょうか…ランクA冒険者、『鬼髪』のイフト様」


 受付嬢のお姉さんは先程より更に畏まった。

 それもその筈、俺はクランどころか冒険者全体の中でもかなりの地位にいる。


 ランクとは、強さの目安みたいなものだ。

 どれだけ高難度の依頼を達成したかとか、どれだけ強い魔物を討伐したかとか、他にもあるがそれらを総合してギルドから認定された証だ。


 最低ランクはGで、そこからFEDCBAの順に上がっていく。Aランクより上は英雄と呼ばれる領域で、SランクとSSランクがある。

 その更に上もあるが、現在SSランクより上の冒険者はいない。つまり実質俺は上から3番目の実力者という事になる。



「ギルド長がイフト様にSランク昇級試験を受ける様にと仰られておりましたが…」

「いえ、俺の実力ではまだまだです。昇級試験はまたの機会にします」


 ギルド長やクランリーダーから早くSランクになれと何度も催促がきている。

 だがならない。だって Sランクとかめんどくさそうだし。



「畏まりました」

「今日は死氷山アイスバーンに関する依頼があればと思って来ました」


「アイスバーンに関する依頼は…現在2件あります。『氷結の花3種の採集』と『氷猿ブリザルの討伐』がありますが…」

「では両方とも受けます」


「畏まりました、ではその様に手配しておきます」

「あ、北方行きのゲート使用許可証もお願いします」


「畏まりました。因みにですがSランクになれば東西南北自由にゲートを使用出来ますよ」

「はは、考えておきます」


 受付嬢のお姉さんはペコリとお辞儀するとそのまま手続きを手早く済ませてくれた。



「さてと、行きますか」


 俺はここ数年で取得した『収納魔法』を発動して片刃の剣を取り出し腰に装着した。

 愛刀『火鬼丸』。

 特に使う予定もないが、依頼前に装備するのがクセになっていた。


 俺は魔法と魔術の両方を使える。

 魔法は詠唱や術式なんていらない便利なもので習得難易度が高い。

 魔術は術式を理解出来れば誰でも発動できる代わりに、詠唱や術式が必要で、頭がいい人ほど難しい魔術を扱える。


 因みにだが、この世界で魔法を使える人間を俺以外に見たことがない。もしかしたらいるのかもしれない。みんなも隠してるのかもしれない。

 だが、誰もが魔術を使う。だから俺は魔法を魔術だと嘘をついてる。

 本当は簡単な火魔術しか使えないのだが、魔法を魔術だと言ってるせいで頭がいいと周りからは思われてる。




「おい、あれ…」

「ああ、鬼髪だ」

「さっき聞こえたけど、死氷山に1人で行くとかAランクはやっぱすげぇな」

「俺なら5分で死ぬ自信があるぜ」


 等々、ギルドにいた連中が好き勝手話すのが聞こえる。

 死氷山のレベルが低いわけではないが、俺の火魔法とは相性がいいから俺的にはそこらの依頼より断然楽なのだ。


 俺はギルドを後にし、ゲートのある北門広場へと向かった。





【ゲート】


 人や物資を一瞬で目的地へと転移させる魔術。その高難度の術式を巨大な水晶へと書き込み、水晶と水晶を繋ぎ、それを可能にした。

 この転移魔術を開発し、特許をとった魔術師は一代で莫大な富を築いたそうだ。


 俺は先程申請したゲート使用許可証を門番的な人へ見せ北の街へと飛んだ。





【北の街】


 俺がさっきまでいた国、『ザムスガル王国』の王都とは違い、北の街はまだ雪が残っている。

 季節は春だが死氷山が近くにあるせいか春でも雪が降る。俺はそのまま北の街から出て、更に北へと向かった。


 途中で何度も防寒具を着ろだの、防寒具を売ってくる輩がいたが、『鬼髪』の名を出すと皆それ以上は言わなかった。

 2年前の『俺と氷竜の戦い』は、皆んなの記憶にまだ新しいようだ。


 北の街を出て人がいないのを確認すると、俺は『転移魔法』を発動した。

 ゲート? 水晶?


 俺には必要ない。





【死氷山アイスバーン】


 北の街から歩いて1日はかかるが、俺は一瞬で辿り着いた。雪は降っているがポツリポツリで、吹雪いてはいなかった。



「これなら楽に終わりそうだな」


 俺は適当に歩いて先ずは氷結の花を探すことにした。





 1時間後。とりあえず採集クエストは終了した。


 ・氷結の花『アイスローズ』×4

 ・氷結の花『アイスカーネーション』×5

 ・氷結の花『アイスコスモス』×2

 ・氷結の花『アイスリンドウ』×3


 季節感は全くないがよしとしよう。

 しかし、こうして改めてみると相変わらず綺麗だ。氷なのか花なのかよく分からないが、儚い感じが美しさを際立たせるのだろうか?



「うーん、折角ならローズだけじゃなく4輪ともプレゼントするか」


 ミラさんがどれが1番好みか分からないし、どれも綺麗だから問題ないと思う。

 多分…



「あとは…」


 氷猿ブリザルか。

 群れで行動し本来は極めて獰猛な魔物。

 山の長だった氷竜がいなくなって活動的になってるそうなので、大変申し訳なく思っている。


 頭もいいブリザルは簡単には人を襲わない。獲物が自分達より弱いと判断したその時は躊躇なく襲ってくる。

 この山に来て一時間、俺が襲われてないということは、まだ俺の強さを測りきれてないということ。

 だがそれを悠長に待つつもりはない。


 俺は採集した氷結の花を収納魔法でしまった。



「火魔術ヒート」


 俺の周りを熱さが囲むと一瞬で熱波が広がっていった。攻撃力はないに等しいが、辺り一帯の雪は一瞬で溶け、そこらに咲いてた夏でも溶けない氷結の花も僅かに溶け亀裂が入る。



「どれどれ」


 熱波を攻撃されたと捉えた氷猿ブリザルの群れが姿を表した。

 その表情は怒りに満ちていた。

 まぁそりゃそうだな。相手からしたら火鉢を一瞬当てられたようなものだ。



「1、2、3……40匹くらいか?」


 数えるのを止めた。

 今数えても意味ない。どうせ一瞬で終わる。

ブリザルは一斉に襲いかかってくる。

 2メートルもある巨大な猿の群れが襲い掛かってくるが、俺は手を翳してこう呟いた。



「火魔術フレイム」


 中級の火魔術。下級の火魔術しか使えない俺が唯一使える中級の魔術だ。

 威力を高めたファイヤーボールとさほど変わらないが範囲が段違いだ。群れを攻撃するのに向いてる。


 ブリザルの群れは一瞬で燃え尽きた。だがちゃんと手加減はした。全て体の一部が残る程度には威力を抑えてる。


 ブリザル達の残った頭部を収納魔法でしまう。



「さてと、依頼は終わったし後は…」


 俺は久々にアレをすることにした。





「精霊さん、精霊さん、遊びましょ」


 とある精霊をこの世界に具現化させるただ唯一の詠唱魔法。

 勿論、ただの人が言ったところで何も起こらない。とある理由で俺だから出来る魔法だ。


 そんな事を考えていたら無数の小さな光の粒が現れ一ヶ所に集まり出した。



「やっほー、久しぶり」

「ああ」


 無数の光の粒は、拳大の大きさになると人間みたく挨拶してきた。

 こいつは人間の言葉で表すなら『火遊びの精霊』というらしい。

 こいつ自身には何の力もないが、こいつはあらゆる精霊を呼び出す事が出来る。


 そしてこいつの召喚主は、その呼び出された精霊と契約出来ると魔法を習得出来るのだ。


 つまり、魔法=精霊なのだ。



「それじゃあ今日は何して遊ぼうかな?」

「なんでもいいよ」


「『灯火』はだいぶ前にやったし〜、前々回は『火炉』だったから…」


 灯火は、火を司る転移魔法の精霊。

 火炉は、火を司る収納魔法の精霊。

 火天は、火を司る火遊びの精霊。


 この3つ以外にあともう2つの精霊、計5体の精霊と契約している。


 普段、魔物を攻撃する際に使う火魔術。

 5体の火の精霊、つまり5つの契約火魔法。

 そして、俺が本来持ってる俺自身の魔法。


 俺はこの3つを使い分けつつ、全て魔術だと偽っている。



「そうだ、今回は『消火』にしよう!」

「了解」





「ふー」

「お疲れ様、楽しかったね?」


「ああ、楽しかったな」

「ふふ、また遊ぼうね」


 火遊びの精霊はそのまま霧散する様に姿を消した。

 俺はその場に座り込んだ。



「いてて、ったく、毎回毎回遊びじゃ済まされないだろ」


 精霊との契約は命懸けだ。

 魔法1つを使えるようになる代償と考えれば等価だろうが、それでも本当に毎回死にそうになる。


 因みに火遊びの最後の挨拶で、楽しくなかったと答えると物凄く機嫌を悪くする。どんなに死にそうになっても楽しかったと答えなければいけない。

 そう絶対に…。



「さてと、帰るか」


 今回習得した魔法は『消火』。

 他者の火を無効化する事が出来る。これは火を操る者の天敵だ。

 どこかで試してみたい。



「うーん、次の依頼は火竜討伐でもしてみるか?」


 過去に、風竜と氷竜と雷竜は討伐したから火竜を討伐したら4種目。

 5種の竜を討伐すると『竜殺し』の称号を与えられる。

 竜殺しは、試験免除で強制 Sランクとなる。



「いや、取り敢えず保留だな…」


 俺は転移魔法で死氷山アイスバーンを後にした。

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