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妖精計画〜鬼の子と桃の花〜  作者: 洗井 熊
第1章 Sランク
12/15

12.スロッカスの沼地


 数日後。

 俺は今、ザムスガル王国の東の村『ナナイの村』に来ている。


 村といってもアルムド帝国に最も近いこの村には一応の防護柵はある。数里に渡って設置されてはいるが、実際に攻撃を受ければ簡単に破られるものだけど。

 まぁ基本的に王国はどの国とも友好関係を結べているので、魔物除け程度しか活躍はしていない。


 それよりも、毒竜はその討伐難度よりも、後処理の方が大変なのである。なので、村長から小さな小屋を借りている。

 簡易風呂がある程度の本当に簡易な小屋だ。この村に冒険者が来る理由は基本的に毒竜絡みだから、この村もそれ用に空き小屋を幾つか用意しているのだ。


 毒竜は数が多いが基本的に自分達の縄張りから出る事はないし、強さも火竜と同程度か若干下だ。ランクB〜A程度の任務だ。


 本当に厄介なのは毒竜ではなく、スロッカスの沼地自体なのだ。

 ヘドロの様な沼に、毒に汚染された草木や、毒を扱う他の魔物達の多さ。むかし一度だけ沼の入り口付近まで来たことがあるが、それでも最悪だったのだ。


 全部焼き払おうかと思った。しかし、ここでしか採れない貴重な素材があるのも確かなのだ。毒は一転すると薬になるらしく、薬師にとっては宝の山だとか。



「ホント最悪だ」


 俺はこの前購入した防具を身に纏いながら愚痴っていた。マントを着て、マスクをし、手袋を嵌め、長靴を履いた。

 すぐに汚れを落とせる様、風呂と大量の水の用意は出来ている。あと洗浄用具もだ。


 毒竜ついでにもう1つ依頼も受けておいた。毒竜の肝5つの納品クエストだ。ザックの分を合わせて計6頭の毒竜を狩らなければならない。

 何故受けたか?

 誰も受けないから報酬がいいのだ。それでも誰も受けたがらない。


 最後にゴーグルを装着した。



「さて、行きますか」


 俺は小屋を後にした。





 【スロッカスの沼地】

 一度来た事があるのでナナイの村を出てすぐに転移で沼地の入り口まで来た。そこはまだギリギリ毒に汚染されていない草木があった。



「うへ〜…相変わらず最悪だな」


 俺が今いる場所より、スロッカスの沼地は窪地になっている。眼前には沼地が広がっていた。

 何色か分からないような色々混ざった色の土に、紫の毒沼、おまけに汚染され濁った色の僅かな草木。


 魔物も何匹か発見した。

 ポイズンスネークに、ポイズンスパイダーに、ポイズンスライムに、ポイズン…

 ポイズンがつく魔物しかいない。



「でもやっぱこれ便利だな」


 先日習得した鑑定魔法『火相』。

 物や人の名前を見ることが出来、その名前が浮き出てくるのだ。

 草木や沼に隠れている魔物の上にも表示されるので不意打ちは喰らいにくくなった。凄く便利だ。

 難点は少し目が痛くなる事くらいだ。火を司る魔法だからか、少し焼ける様な痛さだ。



「さてと、毒竜は…」


 お、いた。遠くの方で直接は見えないが、空中に名前が表示されている。

 ここから攻撃したら当たるだろうか?



「火魔術ファイヤーアロー」


 俺は毒竜の名前が表示されてる場所目掛けて矢の形をした火魔術を放った。

 ファイヤーボールより威力は劣るが、その分遠くまで放てるのが利点だ。



 数秒後



「あ、当たった」


 ファイヤーアローを放った場所に『毒竜(焼死)』と表示された。



「これ、めちゃくちゃ便利だな」

「さてと、行きますか」


 俺は先ず一頭目の毒竜から肝を剥ぎ取る為、沼地へと降りていった。

 グジュリ。

 沼地に降りると嫌な泥を踏んだ音がよく聞こえた。



「悪いな火鬼丸、久しぶりの活躍が毒竜の剥ぎ取りで…」


 俺は愛剣を手に持ち、剣に謝りながら、狩った毒竜の元へとゆっくりと歩いていった。




♢視点変更




 【アルムド帝国】


 アルムド帝国とは、ザムスガル王国の東に位置する大国である。

 そんなザムスガル王国との国境には横に長く、上に高い強固な防壁がなされていた。

 その防壁につけられている普段は使われることのない誰も知らない小さな扉が開かれた。



「う、くさっ…」


 そこは、スロッカスの沼地が目と鼻の先にある森の端。

 そんな森へ足を踏み入れたのは、フードを被り顔を隠す1人の少女。



「でも我慢我慢。王都まで行けたら流石に追手は来ないだろうし」


 少女は鼻を軽くつまみながら沼地へと足を踏み入れた。

 グジュリ。

 泥を踏む嫌な音。



「くさ…い…」


 少女はほんの一瞬、足を踏み入れた事を後悔した。

 引き返そうか…そう頭をよぎった。



「ううん、私は…絶対に、冒険者になるんだから…!」


 覚悟が揺らいだ事を一瞬恥じた。


 少女はグジュリグジュリと一歩一歩力強くゆっくりと歩き出した。

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