009_水着回だと⁉
田辺が余計なことをしなければ、多分3000文字くらいに収まったかも。
田辺:何処でも使える利便性と制御不能な不便性を兼ね備えた自然発生型キャラ。
マジでこいつ、当初の予定に無かったくせに突如乱入してきた謎キャラです。
「 嫌だよ。 海なんか行きたくないし、水着なんか要らない 」
取り敢えず、自己の主張を試みる。 多分無駄だと、思いながらも。
「あー・・・そんなこと言うなら、お姉ちゃん、襲っちやうけど? いいの?」
「おぅ! 姉ちゃんに襲われるなら本望だぜ! さぁ、掛かってこいやあ!」
「ふーん・・・お姉ちゃんになら、襲われてもいいんだ?」
にやりと笑みを浮かべながら立ち上がる姉ちゃん・・・まさか! 本気か⁉
と、警戒したが姉ちゃんは自室へと退いていった。 あれっ⁉ 諦めたの?
姉ちゃんが服飾系の買い物を諦めたこと等、過去にあっただろうか?
そんなことを考えながらも視線をモニターに戻す。
本当にとんでもない面子が揃っているなぁ・・・それなのに、絶対メジャー受け
しそうにないストーリーと静か過ぎる演出。 深みしか感じさせない地味な良作。
映画に夢中になっていたら、戻って来た姉ちゃんが背後から絡み付いてきた。
そして、右手に持っているモノを俺に見せつけて来る。
「これ・ディルドっていうんだけど・・・蒼ちゃんは使ったことある?」
「・・・俺は無い・けど・・・姉ちゃんはあるの?」
「無いわよ。 でも、今から、蒼ちゃんに、使っちゃおうかな・と・・・」
当初の予想通りに、姉ちゃんと水着を買いに行くことになった。
まぁ、水着だろ? 着せ替え遊びも、1時間くらいで終わるだろう。
・・・姉ちゃんと二人だけなら。
もし、二人だけじゃなかったら?
そのときはもう・・・成行きに任せるしかない。
◇ ◇ ◇
ということで成り行きに任せた結果、何故かホテルのプールでナンパされてます。
さすがにこういった場所だと、頭も財布も軽そうな奴は寄ってこないが、何故か
頭も財布も詰まったような奴に限って、俺様感を隠そうともしない。 不愉快な。
「あー、俺・・・連れが居るんですけど?」
「そうかい? でも、さっきからずっと独りだったよね? 君みたいな美人
を放っておくなんて、いったいどんな奴だろうと気になって観てたんだよ」
「・・・もうすぐ来る筈だから」
「ホントに? じゃあ、一緒に彼氏を待つことにしよう。 僕のことは
気にしないで、ただのナンパ除けの案山子と思ってくれればいいからね」
そう言って、ホワイトニングばっちりな歯をみせる案山子・・・キモいわ。
ちなみに、目の前の案山子、財布はともかく、頭は空っぽっぽい。
いくら泳ぐ気はないからつーても、プールでデイトナは無いだろう。
プールってのは素肌の露出が多い場所なんだぞ。 そんなゴツイ時計、
もし誰かに当たったりしたら、相手の肌を傷付けかねないだろうが!
ロレ見せたいばかりに当然の配慮を忘れるような馬鹿だと、自分から
喧伝してるようなものだという自覚が無いのだから、どうしようもない。
・・・それに経済力を誇示したいなら、ロレじゃ駄目な。
ロレなんか、リーマンが頑張れば買えるレベルのモノなんだから。
最低でも雲上ブランド着けろや。 て、それも解かってないようだが。
・・・まぁ、この案山子君、頭が軽い分俺様感が弱めなのが救いかも。
それはそうと・・・そろそろ出番だぞ。 彼氏くん!
「 蒼・・・そいつ、誰? 」 「 ひっ!? 」
不機嫌そうに登場した、190cm、100kgのイケメン大男に案山子君が蒼褪める。
そりゃあ昂輝も不機嫌になるわ。 こんな、美人局紛いのことをさせられたら。
でもそれが、結果的により一層案山子君を怯えさせることになってるんだよな。
「 昂輝ぃ・・・こいつぅ、さっきからしつこくってぇ・・・ 」
と、俺も駄目押しをする。 実際しつこくてキモかったんだわ、こいつは。
「 そうか (ギロリ!) ・・・ 」 「 ひえっ! す・すみませんしたぁ!! 」
案山子君、慌てて逃げて、焦って転んでやんの。 デイトナ、無事だといいな。
「・・・蒼、お前、楽しんでないか?」 「楽しまなきゃ、やってらんねーよ!」
「 ・・・それもそうか 」 「 ・・・仕方ねーよ、お互い姉ちゃんには逆らえん 」
・・・ところで、何で俺たちはこんなことをやっているのか?
それは、俺の何気ない一言から始まった。
◇ ◇ ◇
「姉ちゃん、今日の昼めしどうする? 俺の当番日だけど?」
「んー、何か、ビールに合うものがいいわね」 「昼間っからビール?」
「昼間だからビールなのよ。 そうねぇ・・・唐揚げ? 餃子? 焼きそば?
・・・焼きそばかぁ?・・・海の家で焼きそばにビール・・・最高かも?」
「そう! 海の家の焼きそばにビール! 去年は海に行ってないから。
今年こそ、海の家で焼きそばにビールよ! あと唐揚げもセットで!」
「いや、今日の昼めしの話だから。 焼きそばと唐揚げ、玉将でいい?」
「何を言ってるのよ! 先ずは水着でしょ! 水着を買いに行くわよ!!
食事なんか適当に外で済ませばいいわ! 蒼、今すぐ準備しなさい!!」
のんびりまったりの休日が、いつのまにかバタバタキャンキャンな買い物デーに
変貌してしまった。 参加メンバーは俺たち姉弟の他、いつもの三人に櫻崎先輩。
水着の為だけに3時間、ちなみに俺の分は8枚で他は知らん。 みんな買ってた。
その後、中華テーブルを回しながら姉ちゃんが呟いた。『 早く着せたいわね 』
試着で散々見たじゃんか! という俺の意見は完全に無視されて今がある。
「・・・それで、何で俺や伊藤がここに呼ばれた?」
「反応を見る為と、虫除けの為と聞いたけど・・・美人局は聞いてなかった」
「・・・だろうな」 「ちなみに美人局は田辺の後出し」 「田辺が何を?」
『 蒼先輩が、今日一日で何人にナンパされるかみんなで賭けませんか! 』
「そうか・・・田辺だな」 「うん、田辺だ」 「ところで、何を賭けた?」
「最上階のスイートを二人から三人に変更した」 「宿泊するのか?」
「俺、男子更衣室も女子更衣室も使えないじゃん」 「成程、更衣室代わりか」
「茜さんらしいな」 「うん、姉ちゃんらしい」
更衣室代わりに一泊三人分で140万、姉ちゃんらしいと五十嵐が呆れていた。
俺としちゃあ、最終的な目的が海の家の焼きそばだということに呆れている。
その後も、ナンパされる度に場所を移動しては、俺はひとりでナンパ待ち、他は
隠れて観察&スマホで撮影、昂輝はストレスで不機嫌さを増しては強面力を強化。
ひたすらそれの繰り返し・・・いい加減誰か止めろよ! とはとても言えない。
だって姉ちゃんはノリノリで、他の女子はスイート狙いで鬼気迫るって感じだし。
こういう時の女子って無敵だからね。 俺たちじゃあどうにも出来んわ。
特に伊藤なんかは終始挙動不審だし。
まぁ、挙動不審になるのも解かるけどな。
姉ちゃんを筆頭に、沢瀬も五十嵐も田辺も顔面偏差値はむっちゃ高いし。
姉ちゃんはメロン級、沢瀬は夏みかん級、田辺はロリなのにリンゴ級だし。
櫻崎先輩だって伊藤以上の挙動不審ささえ無かったら、完全に宝ジェNヌだし。
圧倒的な水着美女,水着美少女に囲まれれば、いくらイケメンでもメンタル凡人な
伊藤が平常心を保てるわけがない。 メンタル戦車な昂輝は平気だろうが。
・・・・・・・・・
結局、高校生的タイムリミットな19時までイベントは継続され、
「やったー! 来てる! 来てるよ! 今日の私! 来てますよぉ!!」
テンションが常に変態している櫻崎先輩が、まさかの的中となった。
まぁ、完全に当てずっぽうだろうが。 だって15時から19時までの
たった4時間だぜ。 それで20人もナンパして来ると思うか?
最終統計:ナンパ回数12回、3人組1組、2人組6組、単独5人、計20人。
誰だって30分に1回とか、20分に1回とか、15分に1回とか、回数を予想して
そのまま人数に変換するだろ、普通。 まさか2人組が一番多いなんて考えるか?
2人や3人で1人をナンパして、成功したらどうするつもりだったんだ?
「もちろん3Pや4Pですね!」 「お前は少し黙れ」
田辺脳は無視でいいとして、ナンパ野郎の考えがイマイチ解からん。
同じ男として! ・・・何だ? みんな、何でそんな目で俺を見るんだ?
なぁ伊藤、沢瀬も・・・何でみんな目を逸らすんだよ?
「蒼先輩、そんな恰好で同じ男なんて言っても、お釈迦様でも全否定しますよ」
「そうね、蒼・・・来年になれば、2人組や3人組の割合がもっと増えるわよ」
田辺の相変わらずな例えに、姉ちゃんの予言めいた予測。
どちらも、ろくなもんじゃねぇ! という点では一致している。
「あんたは無自覚だから解からないでしょうけど、あんたをナンパするってのは
かなりハードルが高いことなの。 あんたに釣り合う男かどうか? 並の男なら
尻込みするか、数を頼むかになるわ。 今日、あんたに一人でナンパしてきた
連中を思い出しなさい。 余程の自信家か馬鹿かのどっちかだったでしょ?」
・・・成程、確かに姉ちゃんの言う通りひとりで声を掛けて来たのは、馬鹿か
胸糞野郎ばかりだったな。 ちっ、興味が無さ過ぎて一番肝心な観察と分析を
怠っていたか! たかがナンパと思っていたが、なかなか奥が深いじゃないか。
もっとも、俺に釣り合うとか云われても、何を釣り合わせるのかがよく判らん。
それに一番肝心なことには一切触れられていない。そこが一番知りたいのだが。
「何で来年になるとチームナンパが増えるのさ?」
「あんたの《 女 》に、より一層磨きがかかるからに決まってるでしょ」
「師匠! そこは女ではなく、男の娘の間違いではないでしょうか⁉」
「瑠香! 作家なら言葉の意味をもっと深く嚙み締めなさいと云ってるでしょ!
男の娘という言葉は、男の中に《 女 》を内包することで生まれるものなの。
男の娘に磨きをかけたら、蒼のポンコツに迄磨きをかけることになるでしょ?」
「成程! 蒼先輩の男の部分に迄磨きをかければ、より一層ポンコツになる⁉
ですが、超美形ポンコツ受けというキャラクターこそが蒼先輩の魅力では?」
「確かにそうだけど、制御不能にまでポンコツになると大変でしょ?」
「あー、そうですね。 師匠は蒼先輩の飼い主ですもんね」 「保護者よ」
・・・なんというか、えらい謂われようだな。 俺ってそんなにか?
これでも中学、高校と試験じゃいつも首席だし、筋肉こそないが黒帯なんだが?
「蒼、お前の凄さは、みんな解かっている」 昂輝、お前って奴は・・・
「でも美倉って、男を感じる要素が無いのよね?」 五十嵐、貴様って奴は・・・
「はい! 蒼君はとても素敵で可愛い女の子です」 沢瀬・・・何でそうなった?
「いや、美倉は男子トイレとか使ってるし」 伊藤、それは悪手だぞ・・・
「ハァッハッハッハッハァァ! 私は知っている! 美倉蒼君!
君にはちんKOがあることをぉ!! そう、私だけは知っているぞぉ!!!」
櫻崎先輩・・・変な薬とかやってませんか? 後それ、多分全員知ってますから。
五十嵐と伊藤以外には、しっかり見られてますから。 ・・・てか、近いです。
何で人の腰に手を回して抱き抱えようとするんですか? 顔が近過ぎます。
「蒼君・・・今宵こそ君の童貞を頂く。もう誰にも邪魔は 「 するぞ、コラ! 」
「茜先輩、いいじゃないですか、私も18になったんだし蒼 「 蒼はまだ16歳だ 」
・・・櫻崎先輩、昔から全然変わらないなぁ・・・俺、この人と同じ部屋嫌。
「姉ちゃん、俺、着替えたら家に帰るわ」 「そう? じゃあ私も帰ろうかしら」
「せ。先輩⁉ スイートは⁉」 「支払いは済ませておくから好きにしなさい」
「ちょっと! 私独り? 独りきりなの? あの部屋で⁉」
櫻崎先輩が少し寂しそうだから、田辺に付き合ってやるか聞いてみたら
「私はスイートよりも師匠の家に泊めて貰います」 「好きになさい」
「あっ、私もいいですか?」(五) 「いいわよ」
「えと・・・私もお願いできますか?」(沢) 「もちろん」
「私も先輩の家の方がいいです!」 「あんたは此処に泊まりなさい。命令ね」
「 ええええええええええええっっっ!!! 」
何故だか三人共、執着していた筈のスイート泊を選ばなかった。
それほどに、櫻崎先輩と一緒に泊まることが嫌だったのだろう。
櫻崎先輩もこれを機に、少しは真人間に厚生して欲しいものだ。
それにしても田辺はやっぱり田辺だ。 後輩なら普通は気を遣うものだろうに。
まぁ、櫻崎先輩と姉ちゃんなら、普通は姉ちゃんを選ぶな。
あと、ついでに昂輝と伊藤も誘った。
部屋数は十分だし、なにより今回、こいつらあまりな扱いだったから。
昂輝に『久しぶりに一緒に寝るか?』と聞いたら全力で拒否られた。
・・・俺、寝相は悪くないのに?
代わりに沢瀬と田辺が一緒に寝ると言い出した。 お前ら、少しは危機感を持て。
そしたら、『お前が言うな!』と、フルボッコ。 何でだ?
だって俺は男で、沢瀬と田辺は女よ! 俺の発言、至極常識的でしょ?
「あんたは存在そのものが常識的じゃないのよ」
五十嵐の発言はともかく、結局押し切られて三人で寝ることになった。
姉ちゃんも、伊藤も何も言わない。
俺は疲れていたから、ベッドに入ったらすぐ寝た。 二人に挟まれて。
何か俺を挟んで、会話が飛び交っていたように思う。
作中で蒼が視聴を想定している作品は《 タップス 》です。
茜の収入源は投資です。エリートリーマン10人分の年収があります。
投資で会社を運営し、その会社の役員報酬がその数字になっています。
あと両親から姉弟二人の生活費(父親からは養育費)として年2億円。
蒼の個人資産も茜が管理運用しています。その元金はなんと百億超。
蒼がレイプされた件で茜が毟り取った慰謝料です。多過ぎる様にも
思えますが、体調を崩している時にレイプされ心臓発作を起こして
死にかけたことが、巨額な慰謝料の要因になっています。
中身は庶民派ですが、めっちゃセレブな姉弟ということです。
ちなみに蒼の時計は実用性と着け心地で、エコワンの皮ベルトモデル。
エクワンじゃないですよ。 二針の薄型光発電クォーツモデルです。
尚、姉弟の両親は共に実業家で年2憶円は全く苦にならない数字です。
ちなみに両親ですが、父親の下半身のだらしなさが原因で離婚済み。
ですが、家族としては破綻しても、ひととしては割と良好な関係です。
あと、糞親父を少しだけ弁護しますが、蒼が病床時に浮かべる苦悶顔は、
慣れている茜が『弟の悶え顔、糞やべえ!』と感じる程の破壊力を持ちます。
庇護欲を劇的に刺激し、その上で色気が天元突破。並の人間なら簡単に理性を
破壊されるので、昂輝や沢瀬にも二人きりになる見舞いを禁じている程です。
そんな状態の蒼を、年に数回顔を合わすだけの、性的モラルは無いに近い
絶倫男が見舞った結果、理性が一気に吹き飛ばされた。 そういうことです。
父親本人も猛省したから、当時の自己資産全ての譲渡を快諾しました。
五十嵐は例えるなら大判阿闍梨餅かな? いい例えが浮かびません。
ちなみに比較結果は以下の通り、蒼は平均的なサイズです。
茜 > 沢瀬 > 櫻崎 > 鹿原 > 田辺 > 蒼 > 酒辺 > 五十嵐
男の娘の解釈は茜の持論です。 一般論も調べましたが、曖昧というか
何というか、正直言って微妙過ぎる纏め方をされている様に思えました。