046_秋帆のお宝
重戦車斎藤と蒼の名探偵(?)ぶりが発揮される?
推理小説を読んだことが無い作者が無謀に挑む
謎解きパート・・・期待はしない方がいいです。
作者は推理物と恋愛物には全く興味が無いので。
更に言えば真面なプロットが無い成行任せだし。
045の後編的な内容なので、連続投稿とします。
以降は基本土曜日投稿で、内容次第では連投に。
連投時は都度告知、告知が無ければ土曜更新で。
裏手の森の奥深く、ひっそりと隠される様に存在した洞穴に噂に聞いた熊が居た。
・・・実際には洞穴でなくて、人工的に造られた隠し部屋だったが。
・・・そして熊でなくて、熊に間違えられても仕方がない斎藤だが。
「 お前、なんつー恰好してんのよ?」 「 おぉっ⁉ カッコよくないか?」
斎藤は上下ジャージ姿に、マタギが着る様なキガワを羽織っていた。 焦げ茶単色
で熊の頭部を模したフードが付いた物。 上半身だけなら熊の着ぐるみにも見える。
「 これさ、スキー合宿で泊ったホテルで売ってたんだ。 カッコいいから買った 」
知ってる。 悪目立ちしてたから覚えてる。 買う奴がいるとは思わんかったが。
まさかこれを欲しいとか、カッコいいとか思う様な奴がいるとは思わんかったが。
「 見た目はともかく、防寒性と水弾きには優れた逸品だ 」 山田の解説が入る。
サバイバル山田の眼鏡に適うのなら、優れたアウトドア用品だろうと思うのだが。
斎藤が着るとなぁ・・・ある意味似合い過ぎていてヤバいというか、色々危険だ。
「 お前、それを着て四つん這いで動き回ってたろ? 熊を見たという噂があるぞ 」
「 失礼な、俺の何処が熊に見える⁉ 」 「 いや、あたしらも熊だと思ったから 」
斎藤は俺の言葉を否定したい様だが、知らない誰かさんが斎藤は熊説を擁護する。
誰かさんたちは全部で四人、ギリースーツや迷彩服を着ている。 変な人なのか?
「 君は確かF組の兎田さんだね、此処で何を? 」 変な人代表を伊藤が知ってた。
◇ ◇ ◇
彼女たちはサバイバルゲーム部を自称する変人さんだった。 何故自称かと言えば
学校未承認だから。 ゲームで使うエアガンが18禁だから許可出来ないらしい。
『 エアガンだけじゃない、こいつは電動だ! 』という細かな拘りが変人らしい。
で、その変人さん達が人目を避けて、森の奥深くでサバイバルゲームというごっこ
遊びを楽しんでいたら、偶然此処の扉を発見したらしいのだ。 でも鍵が掛かって
いて開けられなかったそうで、変人代表さんが斎藤を頼った事が騒動に繋がった。
何故変人代表さんは斎藤を頼ったのか? クラスが同じというだけではないのだ。
実は斎藤、見た目こそ熊だが、その頭脳には様々な雑学が詰まっているのだ。
その雑学の余禄だけで、試験で毎回十位以内を確保している程の秀才なのだ。
そして斎藤のおかげで第一の扉は開かれたが、第二の扉で行き詰まっているとか。
「 此処に連れて来られた時、直ぐに《 本を読む少女 》にヒントがあると思った 」
当然過ぎる斎藤の発言に、俺は変人軍団の様子を窺う。 気付かなかったの? と。
「 いや、あたしらは図書館なんか使わないし・・・ 」 そういうことらしい。
残念なことにこれが現代の風潮だろう。 図書館でなくPC付きの学習室利用の方が
多いらしいのだ。 ネット情報がどれ程不完全な、いい加減なものかを考えもせず
に、手軽さ重視でネットから情報を得ようとする行為が主流になりつつあるのだ。
・・・インテリジェンスの崩壊。 これが人類文化停滞の最大要因になっている。
真面な言動が理解出来ないから否定する。 否定だらけのポピュリズムが正常進化
にブレーキを掛けるのだ。 ・・・いかん、思考が飛躍した。 え、と鍵の話だ。
「 やっぱ、表紙の飾り文字?」 「 そう、ごちゃごちゃし過ぎて不自然に感じた 」
斎藤も少女が読んでいる本の表紙が気になった様だ。 本のタイトルに飾り文字が
使われること自体は珍しくないが、読めない程にごちゃごちゃするのは不自然だ。
・・・・・・・・・
俺は複数のお薦めタイトルを重ね合わせた結果かな? と思って観ていたのだが。
どうやら違った。 この隠し部屋に入るヒントとなる謎掛け文だったらしいのだ。
「 拡大したら判ったんだ! 片仮名の文章を重ね合わせた結果だということが 」
普段から興奮し易い斎藤だが、約四割増しで興奮している。 発情期の熊みたい。
「 そしてその文章が、宝物庫の存在と入り方を示唆するものだということが! 」
「 「 「 「 「 「 「 宝物庫ぉっ⁉ 」 」 」 」 」 」 」
・・・成程、本当に母ちゃんらしい話だな。
◇ ◇ ◇
「 えぇ⁉ 《 本を読む少女 》って、美倉のお袋さんが描いた絵だったのか⁉ 」
「 うん、間違いなく。 家にも何枚か母ちゃんの絵があるし、帝山学園には
全部で三枚母ちゃんの絵が飾られてるよ。 他の二枚にはサインもあるし 」
《 本を読む少女 》にはサインが入ってないけど、間違いなく母ちゃんの絵だ。
タッチや色使いが母ちゃんの絵そのものだから。 態々母ちゃんの絵を真似る
理由も無いだろうし。 何より宝探しなんて、完全に母ちゃんの趣味だからな。
「 スゲー、美倉のお袋さんのお宝なら、とんでもないモンが出るんじゃないか!」
斎藤が激しく興奮するから宥めることにする。 あまり期待は出来ないと伝えて。
「 母ちゃんは高校卒業後、直ぐに家を出て自力で大学進学、卒業後は起業・・・
つまり高校在学中の個人資産は、高校卒業後の資金に変わっただろうからな 」
俺の言葉に沢瀬以外の、母ちゃんを知らない面々は揃って驚きの表情を浮かべる。
実際、母ちゃんの人生で一番凄いのが、高校卒業から始まる激動の七年間なのだ。
「 そうか、そういう事情なら・・・でも資産と呼べない程度のお宝くらいは? 」
「 それは絶対に有る。 母ちゃんは無い物を探させるような悪ふざけはしない 」
・・・・・・・・・
「 で、宝探しを自力で完遂したいなら、俺たちは帰ることにするがどうする? 」
案内役の山田に俺と伊藤、そしてにやこたと何故か片桐・・・何でか判んないけど
こいつは俺に懐いている? 最後はカメラマンに徹している沢瀬で合わせて七人。
「 正直お手上げだった。 協力してくれると助かる 」
・・・俺たち七人は、斎藤たちの宝探しに協力することになった。
◇ ◇ ◇
『 ワガイサンヲチエアルモノニアタエン 我が遺産を知恵ある者に与えん
モトメルモノハフタツノモンヲヒラケ 求める者は二つの門を開け
マズハチノメグミカラカギヲモトメヨ 先ずは地の恵みから鍵を求めよ
カギヲモチリュウヲシズメレバヒラク 鍵を以ち龍を鎮めれば開く
ツギハテンノメグミトトキヲメグラン 次は天の恵みと時を巡らん
サイジハカテトトモニアリハジマラン 祭事は糧と共に有り始まらん
タダトキハモドランコトヲカクゴセヨ ただ時は戻らんことを覚悟せよ 』
「 表紙の解読は11月末に終わって、一つ目の扉は冬休み前に開いた。
そして二つ目の扉の開け方も推測出来ているのだが、最終的な処で
行き詰まっている・・・祭事は糧の行の意味が読み解けてないんだ 」
斎藤は言葉と共に第一の鍵を長テーブルの上に置いた。 この長テーブルとか
パイプ椅子とかカンテラとかの調度品は斎藤たちが持ち込んだもので、元々は
何も置かれていない、がらんどうの空間だったそうだ。 ただ第二の扉の鍵に
なるだろう七本の、軽さから多分はアルミと思われる棒が転がっていただけで。
この棒が鍵になるだろうと推測できる理由は、部屋の壁に丁度七つの、棒が丁度
入る程度の穴が四方の壁にあるからだ。 多分はそこに間違いなく差し込む事で、
最後の扉が開くのだろうが、どの穴にどの棒を入れて良いのかが判らないそうだ。
俺はテーブルの上の鍵を、次に七本の棒を眺めてみる。
斎藤の説明では端面中央に横棒一本が刻まれた棒が二本あり、中央の横棒上に丸が
一個刻まれた棒が一本、刀の画が刻まれた棒が二本、アルファベットのQに見える
文字の棒も二本ある。 刀の二本の内、一本の端部は一部が大きく削られている。
そして説明にはなかった要素として、全ての棒に端部丸め加工を施されているが、
ほんの少しだけ丸め部分に45度面取り加工を追加施行されている。 多分は追加
加工された45度面取りが、上下左右いずれかの方向を示すのだろうと思われる。
最後に一番気になったのが、削り出し一体物でなく括れた部分でセパレート構造
になっていることだ。 嵌め合いになっているが、力が掛かれば分かれるかも?
・・・・・・・・・
「 成程ね、そういうことか 」 『 もう判ったのか⁉ 』
俺の呟きに斎藤が驚きの声を上げる。
「 判ったよ、多分は全てが 」 だが俺の洞察力が優れているという訳ではない。
「 で、どうする? 答えかヒントか? どっちを云えばいい? 」
俺には《 母ちゃんを知ってる 》というアドバンテージがあるだけのことなのだ。
◇ ◇ ◇
斎藤たちは答えを求めた。 誰かが答えに辿り着いた以上、それを追う必要は無い
ということだ。 何というか、アレだな、初登頂に拘る登山家の論理。 謎は最初
に解くことにこそ価値が有るという事だ。 答えを言おうとしたら沢瀬が制止。
「 どうせなら最初から・・・飾り文字の解読の処から説明しましょう 」
カメラを構えての発言だからその意図は明白。 『 それはいい! 』と同意の声が
多く挙がるので付き合うことにする。 『 面倒だなぁ・・・ 』と、思い乍らも。
「 そうだな、先ずは飾り文字に関しては想像でしかないけど、多分各仮名文字は
色を変えて描かれていたのだと思う。 それで文字順は色温度で決まっていた
んじゃないかな? 実際はどうだったの? 」 「 凄いな、美倉の推測通りだ 」
「 そして行順は表紙に描かれた七つの文字順なんでしょ? 」 「 その通りだ 」
俺の確認を斎藤は共に肯定した。 まぁ簡単な技法だから正解して当然だろうな。
「 ということで飾り文字の解読は終了、次は各行毎の解析になるけど、一行目と
二行目は文字通りの内容で解析不要、唯一気になるのは遺産という表現だけど、
これは母ちゃんが独立して改姓する前、旧姓時代の所有物という意味だろう 」
「 次は三行目、地の恵みという言葉から考えられるものは、例えば大地そのもの
だったり、大地で育てられる作物だったり、地中の鉱物だったりと様々なもの
が考えられるが、宝探しという目的に適うのは大地、というか土地、そこから
掘り出せという意味になる。 問題は何処を探せばいいのか?だけど、ヒント
は鍵という単語になる。 鍵から連想されるのは花火で、花火から連想される
彼岸花の群生地を探せば何かが見つかると思う。 で、実際はどうだったの?」
「 やっぱ美倉はすげぇな! 完全にお前の読み通りだわ 」「 ちょっと待ったぁ!」
俺の推測を速攻で斎藤が肯定。 したところで、変人代表さんが待ったを掛けた。
・・・何か変なとこあったか?
「 何で鍵で花火を連想して、花火で彼岸花を連想するんだ? どんな理由だ? 」
・・・そこか。
「 お前は説明しなかったの? 」 「 聞かれなかったからな 」 「 成程・・・ 」
「 どうして斎藤が彼岸花の群生地を探したのか・・・疑問に思わなかったの? 」
質問に質問で返すことになるけど、気になったので変人代表さんに確認してみる。
此処に一番近いのは山百合の群生地、次が水仙、その次は何だったか忘れたけど、
彼岸花の群生地は結構離れている。 無作為で探す様な場所ではないと思うのだが?
「 てっきり絵の中に、彼岸花が描かれていたものと思っていた 」
・・・そういうことか。 ホント、完全に斎藤頼みだったのね。 仕方ないなぁ。
面倒だけど説明するしかない。 沢瀬も手をぐるぐる回しているし。 急かすな!
「 えーと、日本で花火文化が定着したのは江戸時代の話なんだけど、そこで重要
な、中心となったのが鍵屋という花火師集団だったんだ。 他にも玉家という
のもあったけど、これも鍵屋からの暖簾分け、つまり関係者だったということ。
ちなみに玉家さんは失火事件で取り潰されたけど、鍵屋さんは今も残っている。
ということで、鍵屋は日本の花火史そのものともいえる存在。 だから鍵から
花火に繋がったりする。 あと、花火が彼岸花というのは、彼岸花はその花の
色や形から火、炎、火事が連想され、不吉な花と考えられてたりもするんだよ。
火が連想される花・・・火の花だから花火。 ただの言葉遊びになるけどね 」
「 だから斎藤も彼岸花の群生地を探したんだろ? 」 「 美倉の推理通りだぜ! 」
変人代表さんも納得したのか、何度も首肯している。 ということで次へと進む。
「 四行目の解析に移るけど、ここのポイントは《 龍を鎮めれば 》の処になる。
それを説明する前に、全員テーブルに置かれている鍵と錠前を見て貰いたい。
直ぐにその特徴に気付くと思うけど、鍵は円筒状のパイプにつまみが付いて
いるというだけの形状で山も溝も無い。 シリンダー部、鍵を差し込む穴の方
も同様で溝も何もない。 鍵を差し込んで回しても、手応えも無く空回りする
だけだ。 ここで《 龍を鎮める 》行為が必要になって来る。 古来より龍は
川、則ち水を神格化した存在なんだ。 つまり龍を鎮めるというのは水を静か
にさせる、動かなくする、流体を固体に変える、水を凍らせるという事だよ 」
「 鍵とシリンダー部で、熱膨張率が大きく異なる素材を使っているのだと思う。
鍵を押し込んだ状態で水を流し込み、その状態で固定した後にドライアイス
か何かで凍らせたら鍵が開いた・・・違うかな? 」 「 流石、その通りだ!」
「 五行目は簡単、天の恵みで考えられるのは太陽か雨だけど、状況から太陽に
絞り込むことが出来る。 太陽と時を巡る、時則ち時間を周る、時間で回る
いえば時計、太陽は東から昇るから、部屋の中心から見て真東の穴を起点に、
時計回りに棒を差し込んでいけばいい。 斎藤もそう考えているんだろ? 」
「 あぁ、その通りなんだが、棒を差し込む順番が判らなくて悩んでいるんだ 」
「 その順番が六行目なんだけど、先に最後の行を説明する。 これは単純に
やり直しは効かない、手当たり次第に試すというやり方は出来ないという
警告だ。 実際に棒は括れた処で分割出来る構想になっているから、一度
差し込んだら抜けない、抜いたら先の方だけが穴の中に残る可能性がある。
斎藤はその可能性があるから、手当たり次第に試すことが出来ないんだろ 」
「 全くもってその通り。 ただの脅しの可能性もあるが、そうでない可能性
もあるから、怖くて試す気にはなれないし、きちんと謎解きをしたいしな 」
「 とうことで六行目の解析を始めるな。 実はこの行に対する最大のヒント
は、学園内に飾られている残り二枚の絵になるんだよ。 斎藤はその二枚
が何処にあるか知ってる? 色使いとタッチで判断出来ると思うけど? 」
「 いや、絵には造詣が浅くてな、色使いとかタッチとかは見分けが付かん 」
斎藤の言葉に納得する。 もし他の二枚の絵を確認出来ていたなら、
とっくに謎は解けていただろうから。 それ程簡単な事だったのだ。
「 そうか、一応絵についても説明するけど、一枚は音楽堂の《 ヴァイオリン
を弾く少女 》で、もう一枚はカフェにある《 水辺の風景 》、共にローマ字
でAKIHOとサインがあり、横には数字が書かれている。 一方が1979で他方
が1112、作品番号と思われているようだけど、実はそうじゃないんだよね 」
「 ・・・そんじゃあ六行目の解析に戻るけど、祭事は祭時でもあるんだ。 祭りを
いつ行うか? 祭りって大抵秋だからね。 特に糧、作物の収穫時期に合わせる
のなら。 そして祭りに関わる作物の代表が米、つまり稲穂、秋の稲穂でAKIHO
になるんだ。 AKIHOが始まらんというのは、俺の母ちゃんの誕生日、1979年
11月12日。 そう、残り二枚に書かれていた数字1979と1112は作品番号では
なくて誕生日なんだ。 大体作品番号にしては数字も開きも大き過ぎるだろ?」
「 ・・・それって、美倉のお袋さんは、此処の謎解きの為だけに三枚の絵を
描いたってことなのか? そしてそれをバラバラの場所に飾らせていると?」
斎藤が驚き半分、呆れ半分といった表情で訊ねて来る。 三枚ともなかなかの大作
だから制作時間もそれなりに掛かったと思う。 全て謎解き遊びの為に描いたのだ。
・・・そりゃあ驚きもするだろうし、呆れもする。 そしてそれが俺の母ちゃんだ。
◇ ◇ ◇
「 飾られた場所は、多分題材に合った場所が選ばれただけだろうと思うけど、
絵を描いた目的が謎解き遊びの為なのは確かだと思う。 そういう人だよ 」
「 それで最後の謎は七本の棒だけどヒントは漢数字の二にある。 真ん中の
棒一本の上に丸の画は漢数字の二をイメージしているんだ。 それで丸の
直上部に45度面取りが有るから、面取り側が棒の上側ということになる 」
「 それとアルファベットのQは数字の9、刀は11、西向く士という言葉通り。
西向く士は・・・ひょっとして知らない人居る? 説明が必要だったり? 」
知ってる筈の沢瀬が『 説明しろ 』というフリップを掲げる。 いつ用意したの?
「 えっと、西向く士っていうのはカレンダーの小の月、一ヶ月が30日以下の月、
2月、4月、6月、9月、11月を語呂合わせにしたもので、11月は漢数字の十と
一を縦に並べたら武士の士、士になるから刀の棒が11だと判断出来るんだ 」
「 それで刀の画の二本だけど、一本にある大きな削り込みの位置に注目なんだ。
45度面取り位置を揃えて比較したら、左下の部分を削ってることになるだろ?
これは士の左下を削り取ることになり、その結果が漢数字の七になるんだよ 」
「 そして最後の最後、二本の一だけどこれも順番が有るんだ。 意地悪なことに。
二が漢数字だから一も漢数字と考え易いんだけど、45度面取りを上と考えたら
縦棒が、つまりローマ数字かアラビア数字の1が正解だ。 でも二本にも違いが
あって面取り位置が違っている。 コレも時計回りで回転させて、1979年の
最初の1が真上に面取りがある棒、12日の1が時計回りに45度傾いた1になる。
この面取り位置の角度違いに関しては、Qの二本も同じだと考えていいだろう。
あとは1・9・7・傾いた9・11・傾いた1・2の順番に棒を差し入れたら完成よ」
・・・・・・・・・
・・・あー、疲れた。 一週間分とは言わないけど、三日分は話をした気がする。
・・・後は斎藤たちにお任せだわ。
◇ ◇ ◇
二つ目の扉は開いた。 帰ろうとしたら斎藤に捕まってしまった。 解放してよ。
・・・・・・・・・
・・・無理だった。 一番手柄の俺抜きで宝物庫に立ち入ること等出来ないらしい。
斎藤はそんな具合に義理堅い処が有る。 真面目なんだよね。 そんで強引なのよ。
・・・・・・・・・
でもねぇ、面白さに負けて・・・つい、謎解きをしちゃったんだけどね。
解いてから気付いたのよ。 母ちゃんの、やんちゃ時代のお宝なんだと!
・・・見るのがちょっと怖い。 身内だからね。
それなのに、ぐいぐい引かれて、細い通路を歩かされる羽目に成っちゃったのよ。
そんな俺の心情に気付いてるのは沢瀬ただひとり。 すっごい笑顔を浮かべてる。
・・・・・・・・・
でも不思議よね。 さっきの部屋もだけど天井に電気が点いてるのよ。 明々と。
・・・・・・・・・
・・・何処から電気を引いてるんだろ? やっぱ、学校の電気を盗んでるのかな?
ひょっとしたら、学園の隠し施設だとか?・・・なんてことはないだろうしなぁ。
・・・・・・・・・
・・・まぁいいか、後で母ちゃんに確認するとしよう。
◇ ◇ ◇
50m程の細長い通路の先に鍵の掛かっていない扉が有り、その先が宝物庫だった。
そこに有ったのは・・・。
「 すげぇ、これ3Jガンだぜ! これも! これもだ! どんだけ有るんだ!! 」
大量のモデルガンとエアガンが、整然と展示されていた。 キャプション付きで。
変人軍団一同揃って大興奮! 特にエアガンを見て興奮していた!! 何でなん?
見た目的には変人さん達の持っているモノの方が、リアルでカッコいいと思うが?
・・・・・・・・・
・・・威力が違うらしかった。 2006年の銃刀法改正で、エアガンの出力が大きく
抑えられたのだとか。 出力が違えば有効射程距離が、サバイバルゲームの戦術性
が大きく変わるのだという。 成程ね・・・変人さん達の大興奮にも納得だけど。
「 これで明日からのゲームが大きく変わる! 」 「 駄目だよ、変わんないから 」
興奮状態の変人軍団に説明する。 例え昔は合法だったモノでも、今現在に違法な
モノは使えないと。 所持するだけでも違法になると。 処分する必要があると。
「 「 「 「 そんなあぁぁっ!!!! 」 」 」 」
こればかりはどうしようもないのだ。 昔は合法だった。 その時代に入手した。
が認められるなら、合法時代に入手した日本刀や覚せい剤がALL OKになるのだ。
業者さんを呼んで、違法なモノは処分して貰うことにした。
「 それで残ったモノは、斎藤たちで好きに分配したらいいと思うよ 」
俺たちは、モデルガンにもエアガンにも興味は無いから。 山田は例外かな?
さっきから、旧日本軍の三八式歩兵銃にやたらと執着しているように見える。
「 山田はそれが欲しいの? 」 「 いや、おそらくだが・・・コレは本物だ 」
「 「 「 「 「 「 「 本物おぉっ⁉ 」 」 」 」 」 」 」
「 他にも本物っぽいモノがいくつかあるな・・・正直俺には判断しかねるが 」
・・・・・・・・・
信頼出来る業者さんを呼んで、違法なモノは処分して貰うことにした。
・・・・・・・・・
思っていたより安心出来るお宝だったと、安堵出来たのは一瞬だった。
・・・・・・・・・
女子高生時代の母ちゃん・・・ホント、何をやってくれてるのよ?
◇ ◇ ◇
「 あー、そういえばそんなモノもあったわねぇ 」 「 そういえば・じゃないよ!」
夜、母ちゃんに電話を掛けた。 あっけらかんとしたものだった。 忘れてたとか。
そして聞きたかったことを確認した。 お宝以上にお宝置き場の方が立派だった。
立派過ぎたのだ。 到底女子高生が造れるような代物では無かった。 アレは何⁉
「 ママの曽御爺様が造った御蔵の隠し財物庫よ。 曽御爺様は日清・日露の結果
から、間違いなく日本は米国と戦争になり、都市は壊滅的に破壊されると予想
したの。 その時の復興資金を貯めておくための秘密貯蔵庫があの場所なのよ。
秘密にしておかないと、軍部に接収されて無駄に遣われていたでしょうからね。
御爺様の行った大阪復興の資金は、あの財物庫に蓄えられていたものなのよ 」
「 ちょっとだけ残っていた分は、ママが使っちゃったけどね。 ちなみにあそこ
のことは兄さんも父さんも知らないわ。 御爺様はママだけに教えてくれたの 」
・・・とのことだった。 御蔵の当代と先代はポンコツだけど、それ以前の当主は
傑物揃いだったようだ。 当然だな。 藩閥や軍部との繋がり無しに四井・四菱に
匹敵する大財閥を僅か三代,六十年で創り上げた人達なのだから。 後北条みたい。
あと、盗電疑惑の件だけど、形式的には盗電だった。 ただ帝山学園の電気代は、
昔は御蔵が、現在は美倉が受け持っているので実質問題は無い。 と言っていた。
変人さん :趣味云々が関係する話ではなく、蒼の兎田さん達の第一印象が
《 変わった人 》だから変人さん呼びです。 無自覚失礼な渾名。
彼岸花の群生地:帝山学園のパンフレットに28種の花の群生地が紹介されており、
そのうちひとつが彼岸花であることは、知る人ぞ知る事実です。
ちなみに斎藤が四つん這いになったのは、此処を探している時。
後北条 :戦国時代関東三国志の一角、関東の雄・北条家のことです。
謎解きパートの種明かしがかったるかった。 もう謎解きなんか書かぬと決めた。
考えるのは凄く楽だったんだけど、楽だっただけに文字数の多さが煩わしかった。




