042_二人だけのクリスマス・イブ
今回は凄く楽でした。 とことん蒼主体で軽い内容だから。
巷では異常気象等と騒がれているが、過去の地球史をみれば、億年単位のデータを
読み解けば、ここ数百年が稀に見る程の安定期だっただけだ。 その安定が終息に
向かっているだけなのかも知れない。 なんてことを考えてしまった今朝の寒さよ。
雪まみれになったスキー合宿から戻った日に、あまりの暖かさに驚かされた大阪。
それが・・・三日間寝込んだけでこの寒さだ。 しかも昨日迄は暖かかったらしい。
「蒼君、体調もまだ万全では無いのですから・・・そろそろ戻りましょうね?」
俺は今、暫くぶりのわんこ成分補給の為に、散歩のメッカ千代池公園に来ている。
それなのに誰にも会えなかったのだ。 時刻が中途半端だったのか? 厳しい寒さ
を避けた為なのかは判らないが。 ともかく誰にも会えずがっかりしているのだ。
「ぐるっと一周する」 「駄目です。 また悪くなったらどうするんですか?」
俺に甘い沢瀬だが・・・駄目だった。 昨日迄の暖かさなら話も変わっただろうが。
「さぁケーキ屋さんに寄って、それから家に帰りますよ」
仕方ないので沢瀬に従うことにする。 でないとお手て繋いでモードで連行される
ことになるからだ。 流石にそれは辛い。 一応とはいえ男子高校生なのだから。
男子高校生なんだけど・・・ショーウィンドウに映る姿は女子二人組なんだよな。
それも、行動派の姉に連れ回される内気な妹って感じ。 残念なことに俺が妹だ。
・・・・・・・・・
おまけに病み上がりの時くらいは、ズボンを穿かせて貰えるかと思っていたのに、
沢瀬のチョイスはもこもこなガーリーファッションだ。 いつの間に買ったんだ?
・・・・・・・・・
本当に・・・不思議なことに俺のクローゼットは、買った筈の服が自然消滅して、
その代わりに買った覚えのない服が増え続けるという、謎空間になっているのだ。
・・・まぁ、どうでもいいことだがな。 着る服が無いよりはマシだろ?
・・・・・・・・・
・・・それにしても、洋菓子だ。
洋菓子店・・・和菓子派の俺が滅多に足を踏み入れない領域、ケーキ教団の聖域に
俺たちは立ち入ろうとしている。 立ちはだかるのは生クリームの高い壁。 匂い
がキツくて、扉を開けた途端に気分が悪くなりそうだ。 ということで入店拒否。
「私が受け取ってきますので、蒼君はここで待っていて下さいね?
わんこが通りかかっても、決して付いて行っちゃあ駄目ですよ?」
沢瀬が余計なことを言う。 それを言われたら、付いていけなくなるではないか!
・・・・・・・・・
それにしてもクリスマスケーキか・・・年に一度の受難、という程でも無いけど、
・・・やはり生クリームがちょっと苦手、何で大きなホールケーキに拘るんだか?
・・・・・・・・・
かなり以前に聞いた時には『 雰囲気の問題です! 』なんてことを云われたけど。
実は未だに納得出来てなかったりする。 何でクリスマスだからって特別なんだ?
・・・喰えば一緒じゃん。 なんて、言わないけどさ。 沢瀬・・・怒るし。
・・・ホント、何でクリスマスだからって特別扱いするんだろ?
・・・・・・・・・
「お待たせしました~」 出て来た沢瀬に大きな箱を渡される。 俺が持つのか?
・・・いや、持つけどさ。 だったらショートケーキの方が、いや、何でもない。
これ、ホントにケーキなの? なんて思う程に大きな箱を抱える俺と、撮る沢瀬。
・・・まぁ、そんなことはどうでもいいけどさ。
◇ ◇ ◇
切っ掛けは昂輝の母ちゃんが亡くなったことだった。 確か小3の時だな。
忙しい親父さんと二人きりになった昂輝を、クリスマスパーティに誘った。
昂輝の親父さんはクリスマスどころではない忙しさだから。 家と同じで。
姉ちゃんを入れて三人のパーティに、クッキー片手の沢瀬が乱入して来た。
沢瀬、初の手作りクッキー『美味しくない』と言ったら、二人に殴られた。
姉ちゃんと沢瀬の二人に殴られた。 昂輝に『お前馬鹿か?』と云われた。
それ以来、俺たち四人一緒のクリスマスパーティは恒例行事になっている。
中二の時なんか入院中だったにも関わらず、病室でのパーティを強行した。
でも今年は姉ちゃんが居ない。 三年一緒だった田辺も居ない。 二人共軽井沢だ。
軽井沢でインフルが流行、冬の新作に遅れを発生させない為のサークル総動員だ。
デジタルだからオンラインで出来そうなものだが、その場の雰囲気が大切らしい。
サークル全員による一体感が大切らしいのだ。 俺にはよく判らんがそうらしい。
・・・・・・・・・
そういうことで今年は姉ちゃんと田辺が欠席。 代わりに五十嵐と伊藤とにやこた
の四人が参加になった。五十嵐には『何で去年は誘ってくれなかった⁉』と文句を
云われた。『普通は家族でするんだろ?』と答えたら『美倉らしい』と云われた。
・・・・・・・・・
そもそもが、仁宮さんからの質問があったから四人が参加することになったのだ。
『お姉様、クリスマスにご予定はありますか?』という映研部室内での一言から。
・・・ところで『美倉らしい』とはどういう意味だ? 今更だが気になって来た。
「クリスマスパーティって、イコール・ホームパーティだと思っていたのだが?」
『・・・どうしてそれを僕に電話で聞いてくるの?』 「いや、常識人だから?」
高梁には『 それは小学生迄か、せいぜいが中学生迄じゃないかな?』と云われた。
『 高校生だと友達同士が多いんじゃないかな? それ以上は人それぞれ?』とも。
・・・・・・・・・
成程、つまり俺のパーティ対応能力は小学生並という意味なのか。
でもパーティなんか、基本どうでもいいから低くても問題無いな。
ということは気にする必要は無いという事だ。 その上アップデートまで出来た。
やはり持つべきは常識人の友達だな。 それも同属性だと最高だ。
本当に俺の周りは常識力の低い奴が多いから、色々と頼りになる。
「蒼く~ん、電話が済みましたら、食器の準備を手伝って下さいね」 「へ~い」
◇ ◇ ◇
テーブルに皿を並べていくと妙な事に気が付いた。 一枚多いのだ。 逆播州か?
「あっ、そうそう、小田部さんから、江澄さんも加えていいかと連絡頂いたので、
OKしておきました。 豊川さんには追加を連絡済みなので問題ありませんよ 」
沢瀬の言葉に納得する。 江澄さんは忙しい叔母さんと二人暮らしと聞いている。
昂輝同様にクリスマスパーティどころではないのだろう。 彼女の参加は歓迎だ。
・・・・・・・・・
『 僕の両親はイブがプロポーズ記念日でね。 毎年二人で仲良くデートだよ 』
伊藤は毎年塾でイブを過ごしていたらしい。 伊藤にとって塾は交流の場なのだ。
『 最近妙に若い男が増えたのよね。 半ばお見合い候補の展示会って感じだから、
正直言ってうんざり。 でっ、美倉のとこはいい避難場所になってくれるのよ!
なんといってもうちの母さんは大の美倉推し・・・というか殆どファンだから』
・・・旧家のお嬢様は大変だと思った。 五十嵐もしょーもない苦労をしてるなぁ。
にやこたは単純に俺とパーティをしたいと言っていた。 真偽の程は不明だけど
・・・言葉通りと考えるなら、俺とパーティしたい派が沢瀬を含めて三人になる。
残る四人はそれぞれの事情があって、パーティどころではないということになる。
俺と姉ちゃんは、クリスマスなんかに興味が無かった。 昂輝とのパーティ迄は。
・・・人・それぞれ?・か?・・・
・・・高梁の云った『人それぞれ?』とは何か違う気がする。 ニュアンス的に。
・・・・・・・・・
たかがクリスマス、されどクリスマス。 奥が深いのか、そんなものはないのか?
まぁ、どうでもいいことだな。・・・どう考えても、大した意味等見当たらない。
多分は、仲間内で騒ぎたいが為の、ただの口実なのだろう? クリスマスなんか。
・・・・・・・・・
そうか。 クリスマスを口実にたまには贅沢をしたい、そんな需要が多いからか。
成程、だからクリスマスは特別でなければならないのか? 特別を演出するのか?
・・・・・・・・・
・・・やはり俺は恵まれ過ぎている。 こんな簡単な事に思考を必要とする程に。
毎日美味しいものを食べて、欲しいものは直ぐに買えて、清潔で暖かな家が有る。
・・・その幸運を、当たり前に感じてしまう程に、俺は恵まれ過ぎているのだな?
・・・・・・だから、これ以上は望むべきではない。
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・!? 冷たっ!!!
両頬を刺すような感覚に驚いたら、両手に冷えた缶ドリンクを持った沢瀬が居た。
「ホント、蒼君はちょっと目を離したら、落ち込んだり居眠ったりするんだから!
そろそろ皆が来る時間ですよ。 顔でも洗って、目を覚まして来て下さいね!」
沢瀬からの教育的指導が入った。 しっかりしなさいという事だ!
やはり姉ちゃんの不在が大きい。 だから直ぐに気が緩むのだな?
よし! こうなったら、「 ジャージに着替えて、気合の入れ直しだ!!」
・・・当然に却下された。
◇ ◇ ◇
「 「 お姉様! 素敵!! 最高です!!! 」 」
にやこたからの大絶賛! 沢瀬に気合を入れられてしまった結果だ。
「お前らも何か言え!」 俺も開き直るしかない。 昂輝たちに発言を求める。
「あんた、ガチで性別検査が必要なんじゃない?」 うっせー! 放っとけや!
「あ・いや、ホント・凄く・似合って・る・よネ」 ・・・何で片言なんだ?
「似合ってはいるが、少し目の毒だな、特に胸が」 谷間好きらしい感想だな。
「 ・・・(( ェㇿぃ ))・・・」 まさか、江澄さんが一番辛辣だったとは⁉
うん、概ねエロいという評価だな。 完全に予想通り、そして沢瀬の狙い通り。
その・・・沢瀬がエロさを狙った、俺のパーティー仕様の衣装なのだが・・・
まさかのカクテルドレス、しかもワンショルダーのマーメイドだ。 胸の処に
大胆過ぎる斜めのカット。 これ大丈夫か? すぐにポロリしそうなんだけど?
・・・・・・・・・
ホント、何でこんなエロ可愛いドレスが、俺のクローゼットに実在してるんだか?
・・・・・・・・・
・・・どう考えても沢瀬の仕業だろうけどさ。 自分好みの服を俺に着せる為に。
そのくせ自分は割と普通のワンピースなのよ。 ちょっとエロいかなって感じの。
他も全員カジュアルなのに、何故か俺だけフォーマルなドレスなの。 何でかな?
・・・考えるまでもない。 沢瀬の好みに付き合わされただけだ。
でっ、沢瀬チョイスのドレスの評判はにやこたは大絶賛。 昂輝はむっつり絶賛。
伊藤はよく判んないけど、五十嵐と江澄さんの反応は微妙か? 可も不可もなく?
・・・違うの? とてもよく似合っていると思ったの? ただ、浮き過ぎなだけ?
・・・うん、それは判ってたよ。 目を逸らしていただけで。 そう、追い打ち。
そういうことだから、俺、着替えてもいいか? 賛成の人は挙手をお願いします。
・・・・・・・・・
・・・ゼロだった。 まぁ、気にしても仕方ないな。
◇ ◇ ◇
パーティといってもアレだ。 高校生が集まって飲み食いするだけのただの集い。
だから至ってカジュアル。 俺のフォーマル姿なんかはただの余興。 好き放題。
適当に食べて飲んで、そこそこに腹が満ちた後は、銘々が自由勝手に遊び始める。
最初は遊戯室でビリヤードやらダーツやらで遊んでいた五十嵐たちも、結局はTV
の前に集結してゲーム大会に移行する。 俺は最初からリビングでごろごろりだ。
沢瀬がもの凄く残念そうに見ていたが、ドレスを着せたのはお前だ! 俺は無罪。
・・・・・・・・・
結局はゲーム班と駄弁り班に別れたが、何故か伊藤もこっちに来た。 多分は自分
以外は全員女子というのがキツかったのだろう。 少しは俺の気持ちを理解した?
駄弁り班は文字通り無駄話ばかりだが、昂輝が俺の胸をちらちら見てくるのが少し
面白かった。 おっぱい好きの昂輝には、俺程度のおっぱいさえも魅力なようだ。
腕を取り、押付けて揶揄っていたら沢瀬の強制停止が入った。 そして怒られた。
「そういうのは私にして下さい!」 「いえ、私の方にお願いします!」
何故か仁宮さんも緊急参戦して来た。 おっぱい好きなのかな?
・・・でもお前ら二人共、ちゃんとおっぱいを持ってるじゃん!
持ってない相手だからこそ、揶揄い甲斐もあるってもんじゃん!
「 「 おっぱいの無い相手には、やっちゃあ駄目です!! 」 」
二人にハモられた・・・常識人に確認してみる。
『美倉ぁ・・・何をやってるんだよぉ・・・』 常識人は何故かお疲れの様だ。
・・・お疲れの常識人は答えを示した。 どうやら沢瀬たちの言う通りらしい。
『揶揄い過ぎたら、最後には押し倒されるんだからね!』とか言って怒られた。
・・・・・・・・・
・・・昂輝は安全牌だと思うんだけどなぁ?
きちんと押し倒したい相手が居るんだから。
・・・・・・・・・
よし! もうひとりの常識人、中根に相談だ! 「それは止めてあげて下さい」
・・・沢瀬に止められた。 昂輝も首を振っている。 止めろということだろう。
・・・・・・・・・
・・・まっ、いっか。 気にしても仕方ない。
・・・そんな感じで夜になり、お開きになった。 泊って行けば?
『お姉様がそう仰るなら・・・』と泊まる気満々に見えたにやこたを、
五十嵐と伊藤が引き摺るようにして・・・そして全員が帰って行った。
◇ ◇ ◇
結局、今夜は沢瀬と二人きりになった。 少し寂しいのは姉ちゃんが居ないから。
二人一緒に風呂に入って・・・あれ? パジャマじゃなくてバスローブなのか?
「 今日の寝衣は?」 「・・・今日は、ふ・二人共・・・裸で・寝ましょう!」
確かに裸で寝るのが一番快適だ、という話を聞いたこともある。 それを実践か?
「そんじゃ、おやすみ・・・すぅ・・・」 「 ・・・( えっ⁉ )・・・ 」
「 ・・・ 」 「 ・・・・・・( ええええぇぇぇっ⁉ )・・・・・・ 」
◇ ◇ ◇
12月25日、クリスマス・・・朝から、沢瀬の機嫌が無茶苦茶悪い。
何でかな?・・・ホント、女子って難しいわ!
アップデート:ポンコツ力をアップデートしてもなぁ・・・。
同属性 :男の娘で陰キャで少しコミュ障。 相変わらず蒼は天然失礼。
逆播州か :播州皿屋敷で検索して下さい。




