004_人体は低温に弱い?
蒼は毎月の様に寝込みます。2~3日で済むこともあれば、1週間寝込むことも。
大抵は免疫力の低さが原因の風邪ですが、簡単に重症化して1週間程寝込みます。
咳風邪の場合は気管支炎も発症する為大変です。
で、作中の体温低下は年に数回程度、年に一回程度に減った喘息の発作と並んで
症状が重い、しんどい状態です。
それで、その病弱描写ですが書いても楽しいものじゃなく、
多分読んでも面白くないでしょう。
ということで、以降は病弱描写は最低限に控えようと思っています。
今回書いたのは、蒼がどんな日常生活を強いられているのか?
を一度は書いておこうと思ったからです。
ちなみに蒼の病弱描写は、ほぼ作者のそれを反映させたものです。
・・・今朝の体温33.7℃。
俺の平熱はちょっと低めで35.0℃くらい・・・差分マイナス1.3℃。
たった1.3℃。 たかだか1.3℃。
なのに・・・むっちゃしんどい。
うん・・・むっちゃしんどい・・・体温が下がった日は。
先ず頭・・・重くて痛い。
時折生じる、原因不明の片頭痛よりは・・・ずっとマシだけど。
インフルで40℃の熱を出した時よりは、ずっと酷い。
そんで・・・気分も悪い。 世界が軽く回ってる。 酒に酔うってこんなん?
お酒・・・呑んだことないから解からないけど?
吐き気は・・・微妙。 あるのか? ないのか?
口を開ければ、うえぇっ、て声が出そうになる・・・だけ。
乗り物酔いに似て・・・似ているけどちょっと違う。 そんな感じ。
発熱時には無い、低体温時の特徴・・・手足の鈍い痛み。 肩や股関節も少し。
発熱時の痺れるような感覚でなくて・・・痛み。 差し込む様な、抉る様な。
筋肉痛とは違った、冷たい痛み。 強いて言えば点滴お替り三杯目の時の痛み。
長時間点滴を続けた時の、冷たさの後に来る、鈍い痛み。 あれに似ている。
強い我慢が必要・・・という程でもないけど・・・手足に力が入らない。
寝返りすらままならない・・・まるで、丸太。
・・・痛くて苦しいのに丸太。
・・・・・・・・・
・・・だからあの時も・・・抵抗出来なかった。 諦めた。
・・・( 糞親父の野郎 )・・・
くそっ! ・・・嫌なことを思い出した。
・・・さっき見た夢のせいだ。 多分。
・・・・・・・・・
体調を崩すと・・・変な夢を見る。
だいたいが、嫌な夢。 怖い夢。 寂しい夢。 悲しい夢。
そして・・・忘れたい記憶。
・・・・・・・・・
しんどくて、自由に動けない時くらい、楽しい夢を見たいのに。
・・・ままならないものだ。
そんな時に限って夢をコントロール出来ない。
自由に空を飛び回ったり、自動車より速く駆けたりしたいのに。
・・・夢の中でも丸太のままだ。
されるがまま、無抵抗、それなのに感情だけを持った丸太。
無力過ぎて嫌になる。
・・・・・・・・・
さっき目が覚めた。 というか、なんとか覚醒した。
なんとか嫌な夢から逃げることが出来た。
だからまだ眠い。 頭がぼーっとしたまま。
うつらうつらと・・・また、夢の世界に誘われそうだ。
だが眠るわけにはいかない。 嫌な夢の続きを見そうだから
例え夢でも・・・二度と糞親父に抱かれてやる気はない!
ということで、頑張って身を起こす。 しかし倒れた。 リトライ!
・・・また倒れた。 あれだな、モチベーション不足。
明確な目標が無いと、人間は簡単に努力が出来ない生き物だから。
目標は・・・眠らないこと。 カフェイン・・・は無理だな。 手元にない。
有っても許容出来る状態じゃない。 今、そんなものを腹に入れたら・・・。
・・・・・・・・・
そうだ! 京都、じゃなくて、トイレに行こう!
朝行ってから・・・既に5時間経過、その間スポドリを200mlくらい飲んでる。
そろそろ行っておいた方が良い頃合い・・・もよおしてからじゃ危ないからね。
目標:漏らさない! よし、モチベーションOK!
上半身起動! 先ずは身体を起こしつつ下半身を旋回・・・旋回OK!
次は脚を下ろして床に設置・・・設置OK! スリッパは・・・今日はいいか。
よし・・・後はこのまま立ち上がるだけだが・・・くっ⁉ 失敗した!
だがベッドからの脱出には成功! このまま扉に向かって匍匐前進! GOGO!
扉に到着! 一旦休憩を挟みたい処だが、もう少し頑張って身体をくの字に。
その状態で背中を扉に当て、腕力を利用して寝返り開始・・・座り姿勢OK!
よし! ここで一旦休憩。 作戦はほぼ順調に進行中。
だが、まだ油断するなぁ・・・油断したら座ってても寝るからな。
小休止で気力を回復してから往路後半戦の開始になる。
先ず右手を伸ばしてノブを掴み、左手で左膝を押して脚力をサポート、身体をドア
に押し当て、滑り上がる様に立つという計画だったが、小休憩のおかげで思考力が
復活、より簡単な移動法に気付くことになった。
匍匐前進だけで進めば、立ち上がらなくともトイレに行ける。
その事実に気付いて僅かに安堵、立ち上がらずに済むというのはかなり楽なのだ。
しかも壁にもたれ掛かりながらよろよろ歩くより、匍匐前進の方が僅かに速い。
まぁ、匍匐前進というよりは団栗ころころと言った方が適格な動きではあるが。
ともかく、少しばかり楽な移動法の発見に、少しばかりの喜びを覚えた。
◇ ◇ ◇
シャー、ですよ。 シャー。 ジャーじゃなくて。
お前、そこから出るの? って感じな。 下痢の最終進化形。
普通の下痢と違うのは腹痛を伴わないこと。
痛みは無いけど冷たさがある。 胃腸が凍り付いたかのような。 そんな感じ。
そう、俺、只今トイレに御籠り中。 トイレっていいよね。 妙に落ち着く。
徳栄軒信玄公の気持ちも少し解かるわ。 ということで信玄公モードならぬ
ちょっぴりおセンチモードで思考するのは自身の変化。
・・・・・・・・・
俺、以前より下痢し易くなってないかい? ・・・絶対なってるよね?
糞親父にやられた時も決壊しなかったし。 絶食指示なんか昔は無かったし。
記憶にある限り・・・初めての最終進化は去年。 高校生になってから。
高校入学前後の違いで思い付くのは食事量。 筋肉を付ける為頑張って増やした。
お腹を壊さないギリギリを狙っているが、それが負担になっていたのだろうか?
等と考えていたら、稼働限界が・・・うえぇっ、気持ち悪い。
あー・・・また世界が回り始めたよ。 おまけに揺れも加わって来た。
お座りは30分が限界かなぁ・・・ベッドは遠いし・・・もう廊下で寝るか?
でも、廊下で寝てるところを姉ちゃんに見つかったら、絶対に怒られるよなぁ。
夕方まで帰れないって言ってたけど・・・確実に目覚めるとも思えないし・・・
やっぱり頑張って自分の部屋に戻るか・・・でも折角トイレまで来たのになぁ。
・・・そうだ! リビングがあった! トイレに近いしソファもある。
カーペットもふかふかだから・・・姉ちゃんも文句は言うまい。
よーし!リビングにレッツゴー!! て・・・う・うえぇっ。 気分悪!
ごろごろすりすりリビングへ。 何気に柔道の練習が役立つ移動法だな。
筋肉は付かなかったが、この移動法が身に付いただけでも成功だろうか?
リビングでの選択肢は二つ。 寝心地のソファか手触りの床か?
昇るのが面倒だからもう床でいいだろ? カーペットも十分柔らかいし。
そして、ソファに置かれたクッションを利用して簡易おっぱいを作成する。
大きめのクッションを並べれば、姉ちゃんのおっぱいの代わりになるかと思った
のだが・・・全然ならんかった。 柔らかさも弾力も全く別物。
でも無いよりはマシだろうと、簡易おっぱいに頭を押し付けてみる。
姉ちゃんのおっぱいにこれをすると、なんとなく頭痛が和らぐ気がするのだが、
簡易おっぱいにはそんな機能は付加されていないようだ。 残念。
そして、多分、悪夢を見ないようにするフィルタリング機能も無いだろう。
所詮は市販の工業製品ということだ。 せいぜいが抱き枕代わり。
姉ちゃんのおっぱいは唯一無二。 代わりなんて望み得ないものなのだ。
しばらく時間を置いたし、ベッドじゃなくて床だから、あの夢の続きは無い筈。
そう思うしかない。 ホントは寝たくないけどもう限界。
諦めて、クッションを抱き抱える。 睡魔め! 来るなら来い!
いや・・・とっくの昔に来てたけどね。 もう落城寸前。 切腹一歩手前。
姉ちゃんの おっぱい恋し 夢枕 ・・・辞世の句か?
ホント・・・なんで姉ちゃん、今日は休めなかったのかなぁ。
無茶な我儘だっていうことくらいは・・・解かっているんだけどさぁ。
でも、身体が弱っている時に、心まで弱る様な夢は見たくないんだよ。
いや、マジよ。
しんどい時の、唯一の癒しが、姉ちゃんの添い寝。
・・・男子高校生が女子大生に添い寝して貰ってますが何か?
姉弟だからいいじゃん。 えっ⁉ 姉弟だから駄目ですか?
いいんだよ。 俺はシスコンで姉ちゃんは女装少年好きのBL好き。
WINWINの関係だから・・・添い寝くらいいいんだよ。
解かったぁ⁉ じゃあ俺・・・もう・・・寝て・・・
◇ ◇ ◇
何処だ、ここ?
眼下に広がるのは雲海。 俺は崖の端に置かれているベンチに座っている。
まるでギアナ高地のテーブルマウンテン。 少なくとも日本にはない光景。
夢・・・寂しいタイプの夢か。 寂しいのは独りだから。 しかも音も無い。
こんな広大な風景の中で、独りポツンとベンチに座っているだけだからだろう。
案の定動かない身体を感じながら、見ている夢を分析していく。
だって他にすることが無いし。 雲しかないから風景も面白味がないし。
身体の不調は・・・感じるな。 手足の痛みは激しく、頭は重いが痛みは乏しい。
そして酷く寒い。 高地だから、ではなく毛布を掛けずに寝たからだろう。
リビングに毛布・・・いや寝袋を常備しておくべきだろうか?
まぁ、凍死は無いだろうから多分問題無い。 ・・・と思う。
ところで何で雲海なのだろう? こんな白くて、清らかなだけの寂しい世界。
首は動くから右を見る。 広がる台地に舗装された道路が延々と延びて居る。
左側は土地も道路も僅かに進んだところで途切れていて、その先に空が見える。
台地は右側が低く、左側に向かって緩い昇り勾配になっていて頂点が近い。
・・・嫌なものを見せられている気がする。
まるで、お前の寿命はもうすぐ先に迄近付いていると云われているようだ。
人が忘れようと・・・目を逸らそうとしている現実を。
俺自身の身体が、その痛みが、その苦しさが、自覚を促してくる。
うっせーわ!
云われなくても解かってるつーの!
放っとけよ!
好きにさせろっての!
くそっ! やっぱり・・・嫌な夢を見る。
姉ちゃんのおっぱいが無いからだな。
・・・俺って、どこまでシスコンなんだろ?
いいけどさ。
姉ちゃん・・・好きだし。
◇ ◇ ◇
目が覚めたらベッドの中に居た。 何で? 無意識に移動した?
等ということは無く、傍らに昂輝が佇んでいた。
「茜さんから頼まれた。 出来るだけ早くに見舞ってやってくれと」
( ひとり? )
「いや、沢瀬と五十嵐と伊藤と・・・田辺は勝手に付いてきた」
微かに田辺のソプラノが聞こえる・・・多分リビングだろう。
「茜さんは7時過ぎになるらしい。 俺と沢瀬は茜さんが戻るまで居るから」
( いや・・・悪いから )
時計を見たらまだ4時。 今日は火曜日だから皆部活をサボったのだろう。
「具合の悪い時くらい遠慮するな。 友達だろ?」
本当にこいつの声は耳触りがいい。 声だけで惚れそうだ。
「今、お茶を用意しているが・・・飲めるか?」 ( 白湯で )
「リビング? それとも、持ってこようか?」 ( リビング )
そして俺はお姫様だっこをされる。 今更恥ずかしがる関係でもない。
多分、ベッドに運んで来た時にもされている。
一度やり返してやろうと思っているが、未だ機会がない。
・・・そんな機会、無いに越したことは無いのだろうが。
何で、俺ばかりがお姫様だっこをされなきゃならんのか?
そんな、考えても仕方の無い事を考える。 弱気になっている証拠だ。
はあっ・・・弱気だ。 だから変な夢を見る。
だけど、まぁ、しょうがない。 心は身体に引き摺られるものだから。
人間とは、そういう生き物なのだから。
本当に体温34℃以下は体温40℃より何倍も苦しいです。
実際の症状的には体温低下でなく、体温調整不調と言った状態です。
家で寝ている時には低温だったが、病院往復の2時間で39℃まで上昇。
2時間くらい寝たら34℃台にまで下がる、といった具合です。
「自律神経の問題かなぁ?」が医師の弁ですが、結構珍しいようです。
ところで、作者のようにインフルで40℃の発熱なんか全然平気だぜぃ!
な、御同類(寝込んでばかりのポンコツ)はどの程度いるのでしょうか?
千人にひとりくらい? それとも1万人にひとりくらい?
あと、トイレの話・・・少し下品でしたね。 すみませんでした。
部活ですが、教師側の都合で水曜日と日曜日は部活禁止日になっています。
耳障り:聞こえの悪い場合、耳触り:聞こえの良い場合
どちらもみみざわり、日本語(漢字変換)って難しいですね。