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038_三竦み?・・・俺、帰ってもいいんじゃね?

冬だというのに珍しく、10日近く寝込むことなく過ごせています。

こんなの本当にいつ以来だろ? 土日は寝込んで当然だったのに。


『 二十歳まで生きられない 』・・・なんて表現は少し曖昧過ぎないだろうか?



・・・そういった表現しか出来ないのは判っていた。



そんな言い方だと、二十歳近くまでなら何とかなると考えてしまうではないか!



・・・それはただの、自己優先的な願望でしかない。



いきなり『 半年から持って一年 』なんて云われたら驚くしかないではないか!



・・・予測される未来から目を逸らしていただけだ。



『 心臓がもう限界に近い 』なんて、今迄一言の警告すらなかったではないか!



・・・心臓に高負荷を掛けることを選んだのは俺だ。



まだ十七にもなっていないのに、それなのに後一年も生きられないというのか?



・・・諦めろ。 それが俺の寿命だったという事だ。



やりたいことは山程あるのに。 やれるだけの自信もあるのに。 時間だけが無い。



・・・そうだな。 でも仕方のない事だ。 考えよう。



残された時間で、せめてひとつだけでも出来ることはないか? よく考えてみよう。



泣き言なんか言ってる暇はない。 先ずは何が出来るか? そして何をしたいか?

考えて考えて考え抜いて、絞り込む。 絞り込んだたったひとつを、やり遂げる!



・・・・・・・・・



・・・絞り込むって、どうやって? どれも有用なのに、どれも必要な事なのに?


何を基準に絞り込むんだ? どれもやりたい事なのに? 時間が掛かる事なのに?


・・・それを考えるのか? 考えて考えて考え抜く行為に、時間を消費するのか?


・・・考える時間が無駄じゃね? おまけに、無茶苦茶面倒くさそうなんじゃね?


・・・いっそ、先着順で良くね? 最初に誘われた相手に従う形で選んで良くね?



・・・・・・・・・



我ながら適当過ぎないだろうか? でもまぁ、それでいっか。 仕方ないもんね。



・・・・・・・・・



まさか、最初に誘ってきたのが酒辺だったなんて・・・全く予想してなかったな。



・・・生徒会は予想してたんだけどね。 勿論、何をするかも考えていたけどね。



・・・・・・・・・



でもまぁ、この年で終活を開始なんてねぇ・・・ツイてないわな。 うん、残念。



・・・・・・・・・



・・・ホント、残念。



・・・・・・・・・



・・・・・・・・・残念過ぎるよ。




   ◇ ◇ ◇




目を覚ましたら・・・涙が零れていた。 でも夢の世界のことだからノーカンだな。

現実世界で泣かなければそれでいい。 俺は現実世界で泣かないと決めたのだから。


・・・多分、そうだった筈。 まぁ、そういうことでいいだろう。 だからセーフ!

沢瀬もまだ目を覚ましていないから、ダブルセーフ! でも何で丸出しなんだろ?

ネグリジェの前が(はだ)けてノーブラおっぱい丸出しなんよ。 何で紐が(ほど)けてんだ?


まぁ、どうでもいいけどな。 室内は寒くないし。 多分風邪引かないだろうし。


問題はノーブラだな。 俺には形が崩れるからとナイトブラを着けさせるくせに、

俺よりデカいお前が着け忘れてどうするんよ? たまに抜けるんだよな、こいつ。




   ◇ ◇ ◇




朝から沢瀬の機嫌が悪い。 ぱっと見はいつも通りなのだが、俺だから判るのだ。


・・・沢瀬との付き合いが長い俺だから判るのだ。


「沢瀬先輩、朝から御機嫌斜めですね。 やはり何もなかったのですか?」


・・・田辺も判ったか? 意外と鋭いな。 あと、何もなかったって何だ?


「由佳理ちゃぁん、蒼にとってキスやハグなんかはただのスキンシップなの。

 あの程度じゃあねぇ・・・落ちるどころか、多分気付いてもいないわよぉ 」


・・・姉ちゃんが適当なことを言っている。


俺だって沢瀬にキスとかハグされたことには、ちゃんと気付いていたっつーの!!

てか、起きてる時にキスとかハグとかされて、気付かない人間なんか居ないだろ?


・・・寝てる時なら気付かないだろうけどさ。


そもそも何で、キスとかハグされるだけでベッドから落ちると? どんな寸劇(コント)よ?


「何もなかった訳ではありませんよ。 蒼君とは予定通りに()()()()()をしました」


・・・そう、俺は沢瀬に大切な話、お願いをした。 沢瀬なら出来ると考えている

のだが、かなりの精神的負担になっていたのかも? でも大丈夫、サポート体制は

俺に任せておけ。 伝手を最大限に利用して、最高のスタッフを揃える予定だから。


「それにこの程度は、蒼君と付き合っていたら当然の事なので気にもなりません」


・・・・・・・・・


・・・すっげえ不機嫌そう!!


沢瀬に過重労働を押付ける気なんかは・・・これっぽっちも無いんだけどな?


どうやったら機嫌を直して貰えるかな? 学校で五十嵐にでも聞いてみるか?




   ◇ ◇ ◇




俺は昨夜のことを五十嵐に話してみた。 俺が沢瀬に大切な頼み事をしたこと。

快く了承して貰ったこと。 その後、沢瀬が俺に痴漢紛いの行為に及んだこと。

沢瀬だったら何をされても嫌じゃないので、気にせずに寝入ったことを話した。


そして、朝起きたら沢瀬がおっぱい丸出しで何故か不機嫌になっていたことも。


・・・そしたらこうだ。


「百パーセント美倉が悪い!」 五十嵐に聞いてみた結果がコレ。

「流石に沢瀬が可哀想かな?」 伊藤にも聞いてみた結果がコレ。

「仕方ない、蒼はこんな奴だ」 昂輝にはこんなことを言われた。


「ちょ、その反応はおかしくね? まだ何を頼んだか言ってないじゃん!」


「 「 「 頼み事の、内容以前の問題だ!!! 」 」 」


・・・そうなのか? まっ、三人が言うならそういうことでいっか。


「解かった。 沢瀬には後で謝っておく」 「 「 「 謝るなぁ!!! 」 」 」


判んないことを言うなぁ・・・じゃあどうすればいいのよ?



・・・・・・・・・



三人には盛大なため息を吐かれた・・・ため息を吐きたいのはこっちだよ!



最後に『蒼は蒼のままでいい』と、昂輝に云われた言葉だけが救いだった。




   ◇ ◇ ◇




常識人に聞いてみた。


「美倉・・・何て言えばいいのか、僕にも判んないんだけど・・・そうだねぇ、

 忘れた方がいい・かな? 特に沢瀬さんにはこの話題を美倉から振らない方

 がいいと思う。 彼女から振られた場合は、素直に解からないと答えるしか

 ・・・ちなみにこの質問を他の人にもした? 藤堂や五十嵐さん達以外で? 」


「中根」 「あちゃあ!・・・何か、言ってた?」 「無言だった」 「だよね」


「美倉は判ってなさそうだから忠告だけど、この話はもう誰にもしちゃ駄目だよ」


「 ? ・・・解かった? そうする?」 「 疑問形は止めようね・・・はぁ 」


高梁にもため息を吐かれた。 やっぱり男子には女子の事は判らないという事か。


・・・・・・・・・


でも、忘れてもいいかも知んないな。 沢瀬が不機嫌になる事なんか珍しくないし。

今回はたまたまおっぱい丸出しという、珍現象があったから気になっただけだし。


・・・デカおっぱいの圧力に負けて、寝衣(ねい)の紐が解けただけなのかも知んないし。


・・・・・・・・・


・・・うん、全く気にする必要が無い気がしてきた。


すっきりしたから、教室に戻ってお昼寝タイムだな。




   ◇ ◇ ◇




放課後は映研部でだらだらと過ごす。 不思議なことに沢瀬の機嫌が戻っていた。

いつもの事と言えばいつもの事だが。 女子ってホント、気紛れよね。 秋の空。

てか、もう12月だから秋じゃないな。 でも寒くは無いから感覚的には秋だよね。


・・・そんなことを考えていたら昂輝から電話だ。 どしたんね? ・・・何⁉

・・・神坂(みさか)! て、誰だっけ? ・・・あっ、最強君ね。 最強君がどしたの?


・・・・・・・・・


・・・俺に会いに来たらしい。 何よ? リターンマッチなんかしないよ!


そんで道場で待っているらしい。 スルーしても構わないと昂輝は言った。

ただ、何度でもやって来そうだとも言った。 スルーする意味ないじゃん。


・・・仕方ないなぁ。




   ◇ ◇ ◇




「何の用が有って来た!」 アポ無しで来るような、礼儀知らずにはこれで十分。


しかし最強君、俺の《 帰れ!》という態度を、意にも介さない無神経ぶりを示す。

さてはこいつ・・・場の空気を読めない天然だな! 俺は最強君の正体を看破した。


俺の言葉に怯むどころか、喜びの表情を浮かべてゆっくりと俺の方に歩いて来る。


「君に一目惚れした! 俺と付き合って貰えないか!」 アポ無しのアホだった。


道場内が騒然とした。 あと、あんたらは何? 新聞部? そう、特ダネなんだ?

取材? お断りよ。 相手してたらキリがなさそうだからね。 最強君への返答?


「お断り致します! 蒼君には私が居ますので!」 沢瀬が代返してくれたみたい。


「大歓迎です! 皆で蒼先輩を押し倒しましょう!」 あっ、こいつは無視してね。


田辺の言葉にも道場内が騒然とする。 もう少しマシだと思われていたのだろう。

でも大丈夫、こいつはきちんと《 待て!》が出来るから。 発言程危険じゃない。


「私たちのお姉様を押し倒すなんて・・・そのようなことは絶対に許しません!

 私たちがお姉様をお守りします! お姉様は安心して私たちにお任せ下さい 」


・・・私たちのお姉様か? 俺は安心してにやこたに任せても良いのだろうか?

なんてことを考えている内に、銘々が好き勝手な主張を繰り広げ始める始末だ。



・・・俺を無視して。



最強君は俺とのカップル成立を希望。 沢瀬に却下されても諦める気配がない。

沢瀬は俺の独占を主張して誰にも譲る気が無い。 田辺の主張は論外に過ぎる。

にやこたの主張が一番妥当と思えるのだが、時折感じられる沢瀬臭が気になる。

沢瀬と同じ主張を、タッグを組んで展開しているだけに思える処があるんだよ。


・・・・・・・・・


とにかくそんな内容の話し合い? 口論? を、俺抜きで熱く繰り広げている。


・・・・・・・・・


・・・ひょっとして、俺、帰ってもいいんじゃね? えっ、駄目? やっぱり?


・・・・・・・・・


一番重要なのは、俺がはっきりと自分の意見を主張することですか? だよねー。


俺の主張か・・・今日の処はノーカン、全て忘れてリスタート。 駄目だろうな?


・・・試しに言ってみるか? 駄目だった。 フルボッコ! 真面目だったのに?


もっとよく考えてから発言する様にと、強く云われた。 よく考える様な事なの?

カップルとして付き合うとか? 押し倒すとか? どうでもいいことじゃないの?


・・・どうでもよくないことらしい。 そこが解かんないんだよ。 どうしろと?


・・・判ったよ。 真面目に考えるよ。 面倒だけど。



・・・・・・・・・



・・・少し整理しよう。


・・・気が付けば、最強君なんか問題にならないくらいの事態に発展していた?


・・・何でこうなった?


答え:最強君がアポ無しで来たから。


・・・もっとよく考える。 なんて、面倒だよね。 適当でいいっしょ。


答え:最強君が居なくなったら今まで通り、万々歳。


・・・よし!




   ◇ ◇ ◇




蒼は全然熟考とはいえない熟考の末、結論に至った。


・・・どう考えても『よし!』ではない。 なのに『よし!』と結論付けたのは、

蒼がとことん恋愛には関心が無いからだ。 そして今週の多忙さに疲れたからだ。


引退試合があった日曜日から休み無し、加えて連日続いた取材やらCMを観た感想

やらに振り回されて、普段の週より遥かに疲労が酷かったのだ。 ようやく休める

と思った金曜日の放課後になって予想外のこの騒ぎ。 精神的にも体力的にも限界

に達したのだ。 それが為の思考放棄だ。 恋愛なんか本当にどうでもいいのだ。


・・・要するに自棄(やけ)になったのだ。


・・・自棄になった結果の発言がコレ。


「最強! 貴様、次の五輪で金メダルを獲れ! 絶対に金メダルだ!! それ迄

 は恋愛なんかに(うつつ)を抜かすな! 金メダルを手土産に再び俺の前に姿を見せろ!

 ・・・その時は、出来る限りの・・・最大限の希望に応えることを約束しよう 」


神坂は蒼の言葉を都合よく誤解した。


『貴方は目標だった五輪での金メダル獲得に邁進して下さい。

 私は貴方が望みを叶える迄、納得出来る時迄待っています 』


流石はお(つむ)に曇りなき爽やか君と謂わんばかりの能天気で。 自己中心な天然で。

とことん自分の望み通りに誤解した。 そして、その幸福感を胸に帰って行った。


「有難う蒼さん! 俺は絶対に、五輪の金メダルを手に君の許に戻って来るから!

 約束する! 絶対に金メダルと共に戻って来ると約束するから待っててくれ! 」


という、どこまでもお目出度い科白を残して。


・・・・・・・・・


そして神坂以外の者・・・蒼の(したた)かさを知る者は思った。


体よく厄介払いをしたな。 と、騒ぎの中心を追い払うことで収拾を図ったなと。


『最大限の希望に応える』という、言葉の前にしっかりと『出来る限り』という

言葉を入れ込んでいる強かさに、蒼の腹黒さと計算高さがしっかりと伺えると。


・・・・・・・・・


実際のところ、蒼はそこ迄考えてなかったし、考えるような余裕も無かった。

ただ先延ばしをしただけだ。 五輪の年迄生きていられないことを考慮して。


・・・そのことを察することが出来たのは、ここでは昂輝と沢瀬の二人のみ。

両者の胸の内は複雑だった。 昂輝は五輪迄は持たない蒼との未来を想って。


沢瀬は昨夜のことを考えて。 昨夜はかなり思い切って迫ったつもりだったが、

完全にスルーされてしまったと。 蒼はホントに何処まで鈍感なのだろうかと?

小学5~6年に想定していた蒼の恋愛精神年齢を、小学2~3年に迄下方修正する

必要があるだろうと。 ・・・その年齢だと真面な恋愛感情等期待出来ないと。


そんな軽い絶望感を覚えながらも、明日の予定を考える。

予定しているサプライズで、蒼をどう虐めてやろうかと。


・・・・・・・・・


・・・心に残らない程度、少し嫌がる程度の小さな虐め。


蒼の酷い鈍感ぶりには、どうしても虐めて返すことを考えてしまうのだ。

その僅かばかりの嗜虐心が生む笑顔を浮かべて、蒼に言葉を掛けるのだ。


「蒼君、そろそろ部活終了の時間ですから、帰り支度を整えましょう。

 そして今夜は大作映画を観て、明日は一緒に寝坊しちゃいましょう 」


「おう!」 蒼の純真な笑顔が、少しだけ忌々しいと沢瀬は思った。


・・・本当に、いつまでも子供なんだから。




   ◇ ◇ ◇




後日・・・神坂はロス五輪の舞台で重量級の金メダルを獲得することになる。

早世した恋人(勘違い)への深い想いと、彼女と交わした約束を胸に秘めて。


「 蒼さん、見てくれているかい? 俺は君との約束を守ることが出来たよ 」


その言葉を載せられた新聞を読んだ○○が、何とも言えない表情を見せたという。

心臓に高負荷  :身体が弱いと、普通の部活や仕事でも心臓を壊したりします。


どんな寸劇(コント)だ? :こんな寸劇(コント)だ! いや、ホントに蒼は恋愛には無関心なんです。


あちゃあ!   :中根は蒼に惚れています。 柔道部で知らないのは蒼くらい。


大作映画    :想定作品は《 シンドラーのリスト 》です。

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