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032_長崎にて_全員集合編

あけましておめでとうございます。 今年も宜しくお付き合い願います。


身体を壊して会社を辞めたおかげで、何年ぶりかに寝込んでいない状態で

正月を迎えることが出来そうですが、まだまだ働ける状態には戻りません。

せめて日帰り旅行に行きたいと、思える程度には回復したいのですけどね。


それ以前に、なかなか止まってくれない咳をどうにかしないとなぁ・・・。


あと、次回からはまた普通に土曜日更新になります。 今回だけ特別です。


1/1: おかしな改行になったので、(もてあそ)んでの処で、ルビを外しました。

19時20分、羽田発長崎行きの最終便に無事乗り込んだ女子二人組の表情は実に

対照的だ。 若い方は満面の笑顔で、年上の方は終始神妙な面持ちを崩さない。


若い方の名を安城(あんじょう)メイといい、現在若手№1と評価されている人気のアイドルで

年上の方は彼女の専属マネージャーである瑞城美和(たまきみわ)、芸能プロダクション最大手

のひとつ、ハーキュリーエージェンシーきっての切れ者と噂される彼女が、何故

メイの専属を務めているかというと、メイは才能も豊かだが、問題も山程抱える

という難物件であるからだ。 具体的には能天気で勝手気儘に動き回るガチレズ。


「あー、早く美倉先輩に会いたいなぁ ♡ あと8時間ちょいの辛抱かぁ!」


等と、今この場に於いても、瑞城の気苦労も知らずに、能天気な発言を繰り出す。

五月蠅いという程では無いから問題無いと聞き流してはいるが・・・本当は疲労

感が酷くて、注意しようという気にもなれない。 そういう事情だったりする。


( 子供は、ただ前しか見ない・・・若いって・・・羨ましいわね。 )


そんなことを考えてしまう程に瑞城は疲れてしまっている。 確かに昨日は長崎

で今日は東京、そして夜にはまた長崎に移動なのだから結構なハードスケジュール

だが、人気アイドルのマネージャーなら普通にある事だから慣れている筈なのに。


・・・それでも嘗てない程の、酷い疲労感を覚えてしまっている。


それは瑞城の疲労が精神的なもの、それも滅多に経験しないレベルのものだから。


アラサーと呼ばれる年になった今日まで、生まれてから一度も経験したことが無い

レベルの重圧に悩まされているからだ。 原因を作った馬鹿を呪い殺したいと思う、

そんな剣呑なことを考えてしまう程に、昨日の一件に追い詰められているからだ。


美倉茜という、決して不興を買ってはいけない相手の不興を買ってしまったから。


明日に予定している、彼女との話し合い次第で会社の命運が決まってしまうから。


芸能プロダクション最大手とはいえ、あの十二支会の姫の前では吹けば飛ぶような

軽い、ちっぽけな羽虫の様な存在でしかない。 目障りとでも思われたら最後だ。


・・・そんな最悪の事態にはならないと思うが。


調査部からは筋を通す人物だと、十分に話し合える相手だとの報告を受けている。

だが怒らせたら本当に怖いのは、そんな人物、真面目に筋を通す人物の方なのだ。


・・・・・・・・・


そしてあの場に居たから判っている。 彼女が相当に激しい怒りを覚えていたと。

完全に道理を無視した今井の愚行と、結果的に黙認していた私の無責任に対して。


あの場で(ただ)一人今井を制止出来る立場にありながら、何もしなかった私に対して、

私の無責任な行動に対して、激しい怒りを覚えていたことが、判っているからこそ

ただで済む筈等ないと、覚悟するしかない。 こちらには全く理が無いのだから。


・・・せめて、私の首ひとつで済めばいいのだが。


もしくは、私と今回の仕事に関わった役員の首だけで済めばいいのだが。


・・・・・・・・・


・・・それでもやっぱり考えてしまう。


・・・何でこんなことになったのかと。




   ◇ ◇ ◇




今井の馬鹿は、頭は悪いが顔だけは良かった。 そして実家が太かった。

昔は性格も良かった。 それは多分挫折を知らなかったからだと思うが。


・・・馬鹿でお調子者だったけれど、本当に気持ちのいい奴だったんだ。


今ではただの黒歴史だけど、あの屈託のなさに憧れていたこともあった。


だから菊池氏に紹介されたのが今井と判った時は、純粋に嬉しく感じた。

調査部からの資料にも目を通した。 いい仕事をしていると感じられた。


今井も頑張っているんだなぁと、嬉しくなって安心した。 油断だった。


初めて一緒に仕事をする相手に対して、あまりにも用心が足らなかった。

今井と別れてから10年・・・あそこまで変わっていたとは思わなかった。


・・・・・・・・・


・・・いきなりメイを抱かせろと、(たわ)けた要求をするとは思わなかった。


『九州財界の重鎮、菊池氏との関係を取り持ってやるからメイを抱かせろ』


・・・馬鹿だったけれど、それでもこんなことを言う奴じゃあなかった。


菊池氏との縁は確かに惜しいが、この馬鹿とは二度と組むまいと思った。

会社に連絡して今井の会社の再調査を依頼した。 上手に縁を切る為に。


そして・・・場合によっては、今井を脅して利用する為に。


・・・・・・・・・


そうしたら、出るわ・出るわの・・・お馬鹿のオンパレード。


何もしない方が、余程に建設的だといえるレベルの仕事ぶり。


いい仕事をしていたのは、全て金に飽かせて集めたスタッフだけだった。

そのお金の出処は実家だし、仕事の出処も実家。 つまりは親の脛齧り。


・・・それでも集めたスタッフだけは一流だった。 そう、だった。 過去形。

折角集めたスタッフも、要らぬ口出しをする素人に嫌気をさしては辞めていく。


・・・ただそれの繰り返し。 ただ今回は真面なスタッフが揃わなかっただけ。

ただ今回は、馬鹿が直接に指揮を執ることになってしまった。 ただそれだけ。


だがそれが・・・怒らせてはいけない人物を、怒らせることになってしまった。


今井の馬鹿は完全に破滅だが、それは別に構わない。 寧ろ業界的には望ましい。


問題は今井への嫌悪感から、今井との接触を極力避けた為に、結果的に私が今井の

馬鹿を助長してしまったことだ。 そして馬鹿の失敗も想定の上で、それを助ける

ことで菊池氏の心証を良くしよう等と、浅ましい考えを持って動いていたことだ。


・・・私のそんな浅はかな考え等、あの怪物は確実に見透かしていたことだろう。


・・・・・・・・・


「・・・最悪だ!」 


本当に最悪のタイミングだった。


あれ以上悪いタイミングは無いだろうという時に、あの怪物と遭遇してしまった。


全くに、弁明のしようも無いタイミングで、顔を合わせることになってしまった。


「最悪って・・・瑞城さん、何かあったんですか?」 「 ( えっ⁉ ) 」


メイちゃんが驚き顔で聞いてくる。 ・・・ひょっとして、口に出ちゃってた?


「ごめんなさい、うっかり口にしちゃってた? どんなことを言ってたかしら?」


「最悪だ、って言ってましたよ?」 「えっと、友達・・・相手の名前とかは?」


「それは何も」 「そう、それなら忘れてくれない? プライベートな事だから」


「・・・それはいいんだけど、昨日から瑞城さん、ちょっと変じゃないですか?」


メイちゃんが心配そうに聞いてくる・・・駄目だ、子供に心配をさせてしまった。

既に事は起きたのだ。 今更うじうじ悩んでどうする! 今は最善を尽くすのみ。


・・・取り敢えずは、メイちゃんを安心させなければ。


「そう・・・変だった? そうね、変だったでしょうね。 久ぶりに落ち込んで

 いたから。 それもしばらく経験しなかったくらい、落ち込んでしまったから。

 ・・・覚えてるでしょ、昨日の馬鹿社長。 彼は高校時代の同級生だったのよ」


「えっ⁉ あの馬鹿・じゃ、すみません「いいのよ・・・本当に馬鹿なんだから」


「・・・・・・」 「でも昔は気持ちのいい、周りから好かれる馬鹿だったのよ」


今私が考えることは、やるべきことは、この子たちの未来を守ることだけ。


「それがたった10年で、何であんなに変わっちゃったのかな? とか思ったらね。

 あの頃の今井君は何処に行っちゃたのかな? なんて思ったりしたらね・・・」


幸い社長が昨日の中に九州入りしてくれたおかげで、菊池会長は謝罪を受け入れて

くれたし、美倉女史への取り成し迄約束してくれたという。 この成果は大きい。


「瑞城さん、今井って・・・名前出ちゃいましたよ?」

「そうね、だから忘れて。 私もあの頃の思い出を忘れることにするから。

 輝いていた頃のあいつ・・・を、忘れることにするから・・・」


何が有っても、この子たちの輝きだけは護り抜く。 私がやることはそれだけだ。


たとえその結果、あの頃の・・・馬鹿と語り合った夢を捨てることになろうとも。


この子たちを、私と馬鹿の仕出かした失敗に巻き込むことだけは、絶対にしない!




   ◇ ◇ ◇




「それで、明日の早朝から、CM撮影なんかをすることになっちゃったの?」


五十嵐が、驚いた! といった表情をみせている。 実際に驚いているのだろう。

無理もない・・・俺だって驚いているからな。 普通の高校生が、旅先でいきなり

企業のCM撮影に巻き込まれること等、先ず無いと言ってもいいことだろうから。


「そういうことだから明日の朝は、俺たちがホテルに戻って来てから行動開始

 にしようと思っているんだけど? 多分8時過ぎには戻って来れると思うから」


「私たちもCM撮影の現場に同行することは出来ないの?」 「いいけど暇だぞ?」


「いいじゃない、プロの撮影がどんなものか見てみたいし、グラバー園迄の往復

 が無駄だし、上手くいけばCM撮影に便乗して無人のグラバー園を使えるのよ 」


「五十嵐さんの言葉にも一理ありますね。 明日は全員で早朝出発としましょう」


ということで、山田を除く映研部2年生一同は朝5時にホテルを出ることになった。


「昂輝は、一応山田にも声を掛けといてくれる?」

「解かった。 ところで、中根や高梁が一緒に行ってもいいか?」

「いいけど・・・何であの二人が?」

「中根は映画撮影に興味があったみたいだし、高梁は妹が安城のファンらしい」


全く予想してなかったことだが、俺としては何の問題も無い。 マイクロバスには

まだ余裕があるし、何よりもあの二人は、映研部の誰よりも常識人だから安心だ。


でも、もし中根や高梁も一緒に行動してくれるなら・・・


「中根と高梁が一緒に来てくれそうだったら、エキストラをしてくれるなら、

 食事とおやつは好きなものを食べ放題だから、って云っておいてくれる?」


これで強面の悪党役と、無茶なスタント担当と、山田(スタント)監視役(おもり)、ALLゲットだぜ!

判ってるな昂輝! 間違っても山田と斎藤を二人だけで連れて来るんじゃないぞ!


・・・世話係の伊藤が、無茶苦茶大変なことになるからな。




   ◇ ◇ ◇




「俺、ロケ弁って喰うの初めてだ」 「うむ、なかなか美味いな」 「あぁ」


帝山学園三大マッチョが、揃って朝の5時からロケ弁をバクバクと喰らっている。

弁当一つにでも性格は表れる。 斎藤は積極的で、中根は慎重で、昂輝は不愛想。


山田はマイクロバスの屋根に正座して黙食している。 行儀がいいのか悪いのか?


・・・・・・・・・


ロケ弁とはいったが何のことはない、朝食の代わりにホテルに用意して貰った普通

の弁当なのだが・・・まさか、現地に着いた早々から食べ始めることになるとは。


尤も、この連中が撮影準備に忙しい現場に居た処で、邪魔にしかならないからな。

バスの中や屋根で、大人しく弁当を喰っていた方が周りの迷惑にならなくていい。


「じゃあ、撮影開始前には声を掛けるから」 伊藤の言葉に四人が頷く。


弁当を喰っている四人以外は、用事が有るから撮影現場に向かう。


俺はメイク他の準備があるし、五十嵐はプロのメイク術を見たいと言っている。

沢瀬はいつも通り俺の撮影で、姉ちゃんは打合せがあるから先に現場に行った。

高梁はメイちゃんにサインを貰う為、姉ちゃんに付いていったし八鹿はおまけ。


おまけといえば、田辺は俺に付いてきている。


「姉ちゃんに付いていかなくていいの?」 「大人の打ち合わせだそうです」


つまりは、田辺には聞かせたくない話をするということだ。


一昨日の不始末の件に関しては、CM撮影後に話し合うと聞いているから、

今回のCM撮影に於ける打合せに(かこつ)けて、事前の様子見といった処だろう。


「美倉先ぱ~い、こっち、こっち!」


撮影現場であるグラバー園に着いたら、メイちゃんが元気に手を振っていた。

この子に、かなり強引に誘われて、CMの相手役を務めることになったのだが、

不思議なくらいに反対意見がなかった。 完全に、通りすがりの素人なのに?


・・・・・・・・・


素人っぽさを売りにしているCMもあるらしいから、多分そういうことだろう。


ここで一旦三手に別れる。 俺と五十嵐はメイク用のテントに向かい、伊藤と沢瀬

は映画撮影用の現場確認、田辺は高梁たちと合流して、予定確認を兼ねた雑談だ。

メイちゃんもCM撮影後はフリーになるらしくて、俺たちに同行する予定なのだ。




   ◇ ◇ ◇




メイクと着替えに40分近く掛かってしまった。 素人っぽさを演出するならもっと

お手軽に済ませた方が良くはないだろうか? これじゃあまるで女優じゃないか?


という俺の意見はテント内の全員にスルーされた。 CMがこけても俺は知らん!


テントから出た瞬間、この場の全員から注目されたのは、ずぶの素人であることが

知られているからだろう。 でも及第点は貰った様で皆が静かに作業に戻っていく。


小さく「嘘だろ」とか「マジか」といった呟きも聞こえてくるが、スルー一択だ。

素人のカメラ映りなんか俺の知ったことではない。 CM撮影成功の是非を含めて。


撮影開始までの15分間を過ごす為に、休憩所に案内される。 ヒーターが暖かい。

そこには姉ちゃんや、姉ちゃんと話していただろう大人たちも集まっていた。


「蒼、こちらが監督の萩原さんよ」 と、急遽変更になった監督さんを紹介される。

監督だけでなく、制作会社そのものを変更したらしい。 現場で作業していた全員

の手際が前の連中とはまるで違っていたから、相当優秀な人員を揃えたのだろう。


「初めまして、美倉蒼です。 全くの初心者ですが宜しくお願いします」

「こちらこそ初めまして、萩原省吾だ。 十分に経験豊富なスタッフを揃えている

 から、万全のサポートを期待してくれていい。 緊張せずに、気楽にやってくれ」


この監督さんも前回の馬鹿とは大違いのようだ。

というかアレは、正気を疑うレベルで酷過ぎた。


この場に居る大人の中でも、顔色の悪いのがアレの関係者ということなのだろう。

次々と紹介をされる中に、長崎市長や市議会の議長も居た。 市の幹部や議員迄が

アレと癒着して、若いタレントを弄んでいたという、呆れた事実に蒼褪(あおざ)めている。


「アレの家族は居ないの?」 「連中の処分は、今日の会議の後だよ」


馬鹿の実家、今井興産グループの関係者が居ないことを疑問に感じたが、どうやら

彼らは、話し合いへの参加すら許されない立場にあるようだ。 既に処分扱いだと

ダンディな永遠の年上キラー、菊りんおじさんが悪い笑顔を浮かべて云ってくる。


「いやぁ、茜ちゃんもだけど、蒼ちゃんも美人になったもんだなぁ。

 こりゃあ50年後が楽しみだ! 俺もせいぜい長生きをしないとな!!」


菊りんの年上好きは幾つになっても変わらないらしい。 だったら50年後にも同じ

科白を口にするんじゃなかろうか? てか、何歳まで生きるつもりだ、年増好き!


「菊りんおじさん・・・ひょっとして暇なの? おじさんが顔を出す程の事?」


「別に暇じゃあないさ! だがな、可愛い蒼ちゃんがこの九州の地で、どこぞの

 馬の骨にちょっかいを掛けられたとあっちゃあ、俺も放ってはおけんからな!

 秋帆さんや元隆の野郎に申し訳が立たん!! というわけだ! がはははっ」


この場の大人の中で、菊りん一人が楽しそうに笑っている。 普段から笑顔を心掛

けているというが、多分今日は本心からの笑顔だろう。 何といっても労せずして

今井興産グループ二十社を、支配下に収めることになったのだから。 姉ちゃんが

ちょっと派手に、怒ったふりをしただけで。 馬鹿が勝手に転んだというだけで。


・・・それにしてもあの馬鹿は本当に酷かった。


あれだけ周りに迷惑を掛けておきながら、呼び出した姉ちゃんに詫びる言葉の一つ

もなく、姉ちゃんに話し掛ける前に俺を口説き出したのだから、誰もが怒る以前に

呆れて声を失ったものだ。 完全に思考力と判断力が崩壊していた。 理解不能。


そしてやっていたことも理解不能レベル。 実家を巻き込んだ壮絶な自爆テロだ。

地方の名家と議員、そして役所幹部の癒着は珍しくも無い事だが、それに混ぜては

いけない人身売買擬きのセクハラ迄混ぜてしまったのだから、手の施し様がない。


例の撮影に穴をあけたタレントさんも、枕営業嫌さに仮病を使ったのだそうだ。


MSSの情報部が・・・たった2時間で調べ出して来た。


そこからはもう、芋づる式に、驚く程簡単に馬鹿のやらかしが明らかになった。


新人タレントを餌にした議会や役所との癒着と、相互的な利益供与の黒い関係。


・・・事が全て公になれば今井だけじゃない。 多分市長も議長も辞職だろう。


菊りんの側で、真剣な表情を保っているメイちゃんの事務所の人たちも同様だ。


あまりにも悪質で、あまりにも大衆受けしそうなスキャンダル。


「はぁっ」 ため息が出そうだ・・・じゃなくて出てしまった。


「監督さん・・・そろそろ撮影の時間では?」

「そうだな、それじゃあ私たちはこれで失礼しますよ」


俺と監督さん、二人だけが休憩用のテントを出た。 CM撮影開始だ。


メイちゃんの事務所の件は、昨日の中に頼んでいるから大丈夫だろう。


鞭は十分に効力を発したのだから、次は飴だと姉ちゃんに頼んだから。


欲望と保身に塗れた大人たちの中で、一角だけにあった清涼な空気感。


誰よりも真摯に臨んでいた、あの二人には望ましい結果になるだろう。


・・・・・・・・・


それにしても、これから7時半までのCM撮影の後は、16箇所でのロケの開始か。


・・・かなりキツイ一日になりそうだな。




   ◇ ◇ ◇




・・・会議は終わった。 望み得る最良の結果と共に。


私事(わたくしごと)ながら、うちの蒼から可愛い後輩の所属事務所には、咎め等無き様頼まれ

 ておりますので、先ずはその旨をお伝えした上で会議を進めたいと思います 』


という開始第一声の段階で安堵し、全身の力が抜け落ちてしまったのだが・・・

茜女史の説明が続けられるにつれて、内容の酷さに驚愕させられることになった。


・・・私たちが想定していた、今井個人のスキャンダルレベルの話では無かった。


政治と行政と企業、地元の名士が揃った、最低最悪な癒着問題が明らかにされた。


そりゃあ、市長や市議会の議長、九州財界の重鎮迄が参加することになった訳だ。


・・・最終的には市長と議長が並んで、あの場の全員に対して土下座する始末だ。


・・・確かに口外出来る内容ではなかった。 あまりにも酷過ぎて。 醜悪過ぎて。


本当に・・・会社が助かった! なんて、素直に喜べなくなる様な酷い話だった。


「・・・社長、まだ羽田便がありますが、どうされますか?」


「・・・僕は無理。 今日は絶対に無理。 今日は今から呑むからね?」


「私も御相伴に与って宜しいでしょうか?」 「うん、与って! てかお願い!」


・・・多分、帰りは明日の昼以降になるだろう。

十二支会 :蒼の両親が中心となって立ち上げた企業家集団。 構成員十二人全員

      の干支が異なることが集団名の由来。 旧財閥集団と財界を二分する。

      僅か20年で日本のGNP半分に影響力を持つようになった財界の巨竜。


元隆の野郎 :久喜(くき)元隆(もとたか)、茜と蒼の父親で久喜グループ総帥。 超級の美人好き。


書いてて思った。 元旦に投稿していい内容なのか? でもこれが成り行き任せ!

元々映画撮影を書く筈だった長崎編が、映画撮影前に終了するという不思議展開。




   ◇ ◇ ◇




「実はメイちゃんに聞きたいことがあったんだ」

「はい! 何でしょうか? ( 美倉先輩が私に関心を持ってくれている♪ ) 」

「多田井さんって、誰?」 「・・・はいっ?」


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