031_長崎にて_ぶらり観光編
咳と発熱が酷くなり2日寝込みました。
多分は毎年恒例のインフルエンザかと。
掃除や洗濯くらいは普通に出来るので、
別に大したことは無いんですけどね。
それで、ついでにインフルネタを適当にぶっこんでやろうとしたら
出番の少ない筈の№2さん、早くも二度目の出番になってしまった。
あと、1月1日に長崎編の続きを投稿しようと考えています。
長崎の名物料理といわれても正直ピンとこなかったが、実際に食べたら解かった。
名物と呼べるものが無いのだ。 目の前の卓袱料理なんかただの寄せ集めである。
トルコライスも同じく寄せ集めだし、ちゃんぽんだって具沢山な煮込みラーメン。
・・・・・・・・・
まぁちゃんぽんや皿うどんは、長崎が発祥だから長崎名物だと謂えなくもないが、
最早完全に全国何処でも食べられる料理になっているから、態々長崎迄来て・・・
感が否めないし、そもそもボリューミーな料理に対して俺は関心を持てないのだ。
そんな理由で夕食開始早々に、俺はテーブルから目を逸らすことになった。
在り来たりの料理が並んだだけのテーブルには、疲労感しか感じないのだ。
「今日はいつも以上に食べないのね?」 「昼に食べ過ぎたからね」
僅か三口に心配した姉ちゃんには悪いが、正直これ以上は食べる気がしない。
どうせこの後にデザートも食べるだろうし、それを考えたら必要なカロリーを
満たせるのではないかと思う。 今日一日口にしたものから考えて、ビタミン
摂取が足りていないと感じるが、朝食をサラダメインにすれば大丈夫だろう。
・・・・・・・・・
それにしても・・・明日以降もこんな退屈な食事が続くのだろうか?
・・・・・・・・・
もう長崎名物なんか求めずに、いつも通りの食事にしようと思った。
◇ ◇ ◇
長崎初日、俺と沢瀬には映画用のロケハンという目的があるが、姉ちゃんと田辺は
どうするのだろう? 二人とも、ノートPCだけは持って来ているようなんだけど?
「私は仕事を終わらせているから、のんびり蒼と観光よ」 「私も観光です!」
ということだった。 確かにロケハンとはいったが、俺たちの目的はどのシーンを
何処で撮ろうかと、考えながら名所を巡るだけだから、殆ど観光みたいなものだ。
というわけで朝食後は全員で観光。 ルートは姉ちゃんと沢瀬で決定済みらしい。
既に三日分のハイヤーも姉ちゃんが確保済み、今日明日がミニバンで大人数が予想
される明後日はマイクロバス。 先ずはホテルに近い稲佐山山頂展望台を目指す。
「・・・結構人が居るな」 「ここで撮影をするなら、早朝でないと無理ですね」
「 「 「 「 ・・・・・・・・・ 」 」 」 」
当り前のことだが有名観光地になると平日でも観光客が多い。・・・迂闊だった。
自由行動日をフルに使って長崎でロケをしましょうよ⁉ という五十嵐の提案には
思わぬ落とし穴があったのだ。 てか、予想しなかった俺たちが素人なだけだが。
「観光客全員をエキストラとして雇えば、何とでもなるだろうけど・・・」
「蒼君、その何でもお金で解決しようとする発想はどうかと思いますよ?」
沢瀬に怒られた。 自分でも駄目だろうとは思っていたが。 長崎ロケは諦める?
もしくは人通りが少なくて、尚且つ長崎らしさを感じられる様な処を探してみる?
「いえ、編集する時間はたっぷりありますから、画像処理でなんとかしましょう」
何故か沢瀬がやる気満々だ。 早朝でないと無理です発言は何だったのだろう?
なんてツッコんだりしたら睨まれるだろう。 俺にだって学習能力はあるのだ。
展望台から市街を一望した後はロープウェイで山を下り、クルマで諏訪神社へと。
神社参拝後は路面電車で、眼鏡橋のある中島川公園に向かうという予定なのだが。
「相変わらず、境内には足を踏み入れないのですね?」 「無神論者だからな」
「蒼は昔からそういった頑固なところがあるから・・・でも無理強いは駄目よ」
映画の中に、主人公が参拝するシーンを入れたがっている沢瀬と、寺や神社の境内
に入ることを拒む俺との間で一悶着が発生した。 信仰しない宗教の神域には足を
踏み入れない。 これは俺なりの宗教に対する礼儀なのだが、イマイチ評判が悪い。
「当然、教会にも入って貰えませんよね?」 「うん、無理なものは無理だから」
「・・・仕方ないですね、判りました。 それではデータ編集で何とか処理する
ことにしますが、映像内だけなら神社や教会に入ることにOKを頂けますか?」
そういうことになった。 沢瀬には悪いが俺は真面目に宗教を研究しているのだ。
だから実在する宗教や信仰に対しては、最大限誠実でありたいと思っているのだ。
まぁ願っているではなくて、思っている程度だがな。 これが無神論者の限界だ。
俺が無神論者な理由? そんなもん決まっているだろ?
もし神なんて野郎がいたら、思いっ切り打ん殴ってやりたくなるからだよ。
◇ ◇ ◇
中島川公園を散策した後は、再び路面電車を使って出島に向かう。 流石にここは
ロケには使えないと全員の意見が一致する。 原寸大のジオラマからは生活感が、
街としてのリアリズムが感じられないからだ。 観光目的にはいい処ではあるが。
出島観光の後は、道路とJA会館を挟んだ出島ワーフという処で、海を眺めながらの
昼食となった。 流石に長崎は海の幸が美味しい。 しかも港サイズの大盛でなく
観光地サイズであるところが嬉しい。 俺でも海鮮丼を残さず食べる事が出来た。
昼食を済ませた後は近くの水辺の森公園に足を運ぶ。 無人ではないが人が少ない。
これくらいなら、そのままでもロケに使えるだろう。 港を背景にするなら尚更だ。
この公園から道路を挟んだ向こう側にオランダ坂があって、そこから大浦天主堂や
グラバー園迄は、ほんの僅かな距離を歩くだけで済む。 観光名所の密集地だな。
「あー、こりゃ駄目だわ」 グラバー通りに差し掛かった途端に漏れ出た言葉。
「平日なのに、これ程迄の人出とは」 圧倒的だった。 休日の観光地レベル。
今迄観て回った場所もそれなりに人は多かったが、ここは別格。 まるでお祭り。
「・・・次に行くか?」 人混みにすっかり滅入った俺の言葉は完全にスルーだ。
『ここ迄来てグラバー園に行かずしてどうする!』 が、三人共通の意見のようで、
このままグラバー通りを進み、途中で大浦天主堂に立ち寄り、グラバー園見学後は
スカイロードで降りて、石橋駅で路面電車に乗り込む迄がセットメニューらしい。
・・・最後の下りがよく解からん。 目的も無く電車に乗ってどうすんだよ?
「車窓から、何かが見つかるかも知れませんので」 「成程、完乗が目的と?」
取り敢えずは人混みに突入することになった。 嫌だなぁ・・・。
◇ ◇ ◇
「どうせなら、明後日だったら良かったのに・・・」
思わず本音が零れてしまったのは仕方ないと思う。 だって物凄く暇なんだから。
仕事が暇という意味では無い。 仕事は寧ろ忙しい。 というか忙しすぎて大変。
「瑞城さ~ん、ちょっとくらい遊びに行っちゃ駄目なのぉ?」
「無理言わないでよメイちゃん、こんな処で貴女一人に出来るわけないでしょ」
今日はソロでCM撮影なんだけど、相手役がインフルエンザになっちゃったのね。
急遽代理役を探して貰っているのだけれど、私と同年代の美少女というだけの条件
でも、実際に探すとなると結構大変らしい。 そりゃあ2~3時間じゃ無理でしょ。
・・・ひょっとしたら、半日経っても見つからないかも知れない。
何処にでも居そうで居ないのが、カメラ映えのする美少女なのだ。
これが東京とか大阪だったら、直ぐに代役も見つかるんだろうけどね・・・
地方都市のタレント事情って、結構厳しいみたい。 せめて明後日だったら。
「明後日なら何なの?」 瑞城さんが疲れた表情で聞いて来るのでスマホを出す。
「このS級美少女が長崎に居ます」 私の待ち受け画面は当然ながら美倉先輩だ。
◇ ◇ ◇
グラバー通りの酷い人混みの中で判ったことは、MSS職員が4組8人も居たことと、
意外と日本人比率が高い事。 外国人には異国情調な長崎は魅力が乏しいのかな?
それと平日だというのに若い世代も結構多い事。 学生だろう年代も少なくない。
「アニメの聖地巡礼でしょうか?」 「アレか? グラバー園なんかあったけ?」
「映画じゃなくてTVの方ですよ、そちらには眼鏡橋も海辺の公園も出てましたね」
TVアニメの方は5時間もあるし、ラブコメっぽいから観なかったのだが、観た方が
良かったのだろうか? 沢瀬以外の面々もきちんと両方を視聴したのだろうか?
・・・昂輝がラブコメを観ている姿なんか想像出来んが。
三人が教会を見学している間に、俺はカステラを購入することにする。 別に好物
という訳ではないが、専門店のモノと土産物屋のモノとの価格差が大き過ぎて興味
を覚えたのだ。 どれ程に違うモノなのか? 単純に食べ比べてみたいと思った。
・・・・・・・・・
三人がなかなか出てこない。 教会の中で面白いイベントでもあったのだろうか?
それとも混雑で停滞しているだけなのだろうか? 人が引っ切り無しに入るから。
待つこと自体は吝かではないが、人の多い処は注目され易くて居心地が悪いのだ。
MSSが居るからナンパされることは無いが、視線だけでも十分不快に感じられる。
・・・もう帰りたいな。 なんて思い始めたあたりで、やっと三人の姿が見えた。
・・・・・・・・・
三人が戻って来たところで、傾斜の緩くなった坂を進んでグラバー園へと向かう。
沢瀬の『撮影許可が頂けませんでした』という言葉で時間が掛かった理由が判明。
当然だな。 素人が遊びで撮る映画迄、いちいち許可していたらきりが無いだろ?
・・・そういった理屈は解かっていても、なかなか納得出来ないようだ。
それ程に教会の内部が、ステンドグラスの映り込みが美しかったらしい。
・・・教会内部の映像こそ、近所のマイナーな教会でも撮れそうなものなのだが?
俺の神域に対する拘りよりも、沢瀬の本物への拘りの方が頑なではないだろうか?
・・・なんてことを、口にすることは決して無いが。 だって怖いもん。
坂を上り切った辺りがグラバー園なのだが、入園早々の人だかりにうんざりする。
「おかしいわね? もうとっくに終わっている筈なのに?」 姉ちゃんの謎科白。
「終わっているって、何が?」 「CM撮影よ、11時には終了の予定だったのよ」
現在時刻は13時42分、CM撮影の影響なんかすっかり無くなっている筈の時間だ。
人だかりを割って前に進んで行く。 俺たちを止めてくる相手に姉ちゃんが一喝。
「あなた方が許可を取ったのは11時迄、とっくの昔に私たちを制止する権限を喪失
しているのに、何故そんなことが出来るのです? 直ぐに代表者を出しなさい!」
そんな科白を吐きながら、自分の科白すら無視する様に歩みを止めない姉ちゃんは
流石だぜ。 そして11時という言葉に影響されたか周りの観光客も騒ぎ出す始末。
「茜さん、端から話し合う気は無さそうですね」「当然です! 理は我にありです」
田辺は理が云々とか言ってるが、それは違う。 姉ちゃんは為されている筈のCM
撮影の掲示を撤去して、撮影時間の遅れを隠そうとした撮影スタッフの姑息さを、
ただ単純に嫌悪したのだ。 掲示を撤去せずに遅延理由を挙げた上で、周りの了承
を求めなかった浅はかな狡猾さを見苦しいものと、事業者視点で責めているのだ。
◇ ◇ ◇
「えっ、これ、実在する人間なの?」 メイちゃんが見せてくれた写真に驚愕する。
美少女が好き過ぎる上で、同性愛志向を隠そうともしない安城メイ一推しの美少女
なら、可愛いのは当然だと考えていた予想の更に数段上をいく美しさに声を失う。
これならメイと並んでも見劣りはしない・・・というより、メイの方が見劣りする
ことになるだろう。 普段の撮影条件なら。 でも今回はメイは男装の令嬢という
設定だから、対等の条件で比較されることは避けられる。 お互いを照らし合う、
そんな関係に撮ることが出来れば、理想的なパートナーといえるし、今回のCM話
を抜きにしても、これ程の美少女に声を掛けない手は無い。 決して他所に採られ
たくはない逸材だ。 場合によっては、ガチレズ娘を手放してでも引き入れたい。
「これは、凄い美少女ね。 一度会って話をしたいわ。 連絡先は判ってるの?」
心中を悟られない様に、興奮を隠してメイに問い掛けたが・・・何? 騒がしい?
・・・・・・・・・
・・・案の定ここのスタッフでは、観光客を抑え切れなくなったようだ。 だから
忠告したのだ。 観光客の1時間と、地元民の1時間とでは価値が全然違うのだと。
撮影に優しい地元民の抑え方では、観光客を抑えること等絶対に出来ないのだと。
単純に待って下さいだけでは通用しない。 代わりの何かを提供する必要があるの
だけれど、あの連中が儲けを不意にする出費を拒んだお陰で、CM撮影そのものが
壊れ掛かっている。 かといってうちの事務所が経費を負担する気にもならない。
地元スポンサーへの御機嫌伺いの為に、全国区のトップアイドルと地方のローカル
アイドルを共演させたうえに、穴迄あけるという不始末を仕出かす連中の尻拭いを
やってやろうとは到底思えないのだ。 でも今回のスポンサーとの関係は保ちたい。
・・・むっちゃ、ムカつくが・・・
結論・・・断腸の思いで、海に蹴り落としたい連中に救いの手を差し伸べてやる!
◇ ◇ ◇
撮影現場に行ってみたら・・・そこはもう完全に修羅場だった。
観光客が好き勝手に闊歩している。 それは入園券を買った観光客にとって当然
の権利であるし、入園料金や観光客への補償を拒んだ制作会社の落ち度である。
これはもう、当然の結果だと割り切るしかない。 問題はこの惨状をどうするか?
・・・・・・・・・
探し人は簡単に見つかった。 観光客の中で一際目立つ美女、本当に観光客よね?
・・・取り敢えずは観光客、ちょっとゴージャス過ぎるだけの観光客と仮定する。
・・・・・・しかし、えげつない。 恐ろしい程にえげつない。
見れば見る程女優かモデルとしか思えない美貌に、身に纏うモノ全てがえげつない
レベルの高級品ばかり。 いや、この女は絶対にヤバいぞ! 並の金持ちじゃない。
今井社長・・・貴様が軽々しく口を利いていい相手じゃないぞ、その女は⁉
その美女に、腰巾着の様に付いて回って、喧しく騒ぎ捲くっている馬鹿。 自分の
責任だと思っていないのだろうか? 傍目には美女を責めている様にしか見えない。
美女の方は当然相手にしていない。 馬鹿とは話すだけ無駄と考えているのだろう。
海を見ながらスマホ・・・誰かと電話をしているのか? 誰だ? 一体誰なんだ⁉
「おい! あんた! さっきから俺を無視して、何様のつもりなんだよ!!」
止ぁめぇろぉ! 絶対にあんたが対等に口を利いていい相手じゃないんだからぁ!
「ぼぐぇ!!」 馬鹿を止めに走ったら、止める前に蹴り倒された。 えっ⁉ 誰?
「師匠に対する暴言は許せません!」 何なの⁉ このロリ美少女は! この威力は?
「放っておきなさい瑠香、話せる人が来たみたいだから」 美女の関係者なの⁉
「てめ! このくそ餓鬼! 俺を誰だと⁉」 止めろ今井! お前はただの馬鹿だ!
「貴方は、驚く程に何も解かっていないようですね?」
立ち上がろうとする馬鹿の前に立ち塞がったのは、やはり超級の美女・・・コレも
ゴージャス美女の関係者なの⁉ 一体何の集団よ、この顔面偏差値が異常な連中は!
しかもこの娘の迫力は何なの⁉ 今井、尻餅を搗いたけどひょっとして腰が抜けた?
「いいからそんな馬鹿放っとけよ」 私が口にしたかった言葉を吐き出した少女は
・・・えっ⁉ 何であんたが此処に居るの? 明後日じゃなかったの? てか!?
「美倉先ぱ~い!」 「あれっ⁉ 君は?」
何でメイがここに来てんのよ⁉ クルマの中で待ってなさいって云ったでしょ!!
「ハーキュリーエージェンシーの瑞城さんでしょ、大体のことはソレから聞いたわ
あと・・・菊池のおじさまからも。 それでおじさまが貴女に替わって欲しいと」
ロリ美少女の蹴りから続く怒涛の展開に、呆気に取られていたらゴージャス美女が
目の前でスマホを突き出して来た。 キクチのおじさま? キクチってまさか菊池?
突き付けられたスマホには九州財界の重鎮で、今回のスポンサーである菊池鱗太郎
氏の名が、ダンディなおじさまのイラストと共にはっきりと浮かび上がっていた。
美倉って⁉ まさか、ここ迄ヤバい女だったとは・・・予想を遥かに超えてきた。
長崎の名物料理:長崎は好きな街で何度も行きましたが、食事に関しては蒼の感想
がイコール作者の感想です。 別に不味くは無いんですけどね。
宗教を研究 :蒼は宗教研究家ではありません。 蒼は人類史を研究しているだけ
ですが、それには当然の様に宗教も研究対象に含まれるからです。
TVの方です:映画は『きみの色』で、TVアニメが『色づく・世界の・明日から』
色づくの方は長崎市公認観光案内でも紹介される程に、見事に長崎
の情景が再現されていました。 長崎好きが納得出来るアニメです。
蒼は映画しか観ませんでした。 きみの方は長崎らしさがイマイチ。
長崎をモデルにしてると解かって観ても瀬戸内っぽく感じてしまう。
でもどちらも傑作ですから、機会が有れば観ても損は無いでしょう。
あと、両作品ともラブコメでは無いと思います。 特にきみの方は。
共にロケ用の資料として映研部が購入した物で、2年生は視聴推奨。
理は :理は“ことわり”と読んで下さい。 ルビを入れると変な改行になったので
ルビは省きましたが、“り”と読んでしまうと、少し語呂が悪かったので。




