表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/20

003_制服ロンダリング

一応、各話最低でも5回は見直しをしているのですが、それでも誤字脱字やら、

単語の不適切な選択やら、文章表現の粗略さやらが残っていると思います。

そこいら辺りは、素人の手慰みということでお目溢しをお願いします。


あと、本エピソード辺りから書き方が安定してきたように思ってます。

001 と 002 は、大幅修正をしたものの・・・大目に見てやって下さい。

「お前、何で制服なんだ?」


『しかも女子の』と続けないのは昂輝の優しさなのだろう。

そう、俺は休日なのに女子用の制服を着て昂輝と難波駅コンコースに居る。

アイアイコンビと沢瀬とはここで合流の予定だ。


「姉ちゃんに着てない制服全てに袖を通せと云われたんだよ。 多分命令な。

 お前こそ何で沢瀬と一緒に来ないんだよ。同じ駅なんだから壁役務めろよ」


沢瀬は一見大人しそうな地味眼鏡だが、スタイル抜群な美少女だから痴漢に遭い

易い。休日の昼前とはいえ、極力配慮するのが友人の務めじゃなかろうか?


「これの発売日でな・・・沢瀬には悪いがこっちを優先させて貰った」


昂輝の手にある紙袋は有名な家電系玩具専門店のものだ。 多分プラモだろう。

グンダムのプラモ、通称グンプラの転売は有名だが、実は飛行機や戦車のプラモ

にだって転売屋は触手を伸ばしてくる。だから欲しいものは発売日の早朝に入手

しないと駄目なのだそうだ。 ホント、世知辛い世の中である。


んっ⁉ 触手じゃなくて食指だろうって?

いいんだよ、連中は人間じゃなくてクリーチャーだから触手が正解なの。


「何買ったの?」 「マークツーB」 「えっ⁉ マジで⁉」


『やっと入手できた』と珍しく破顔してみせる昂輝。

良かったじゃん、十年くらい前から欲しがってたやつだよね?


「これで(ワン)から(ファイブ)まで市販モデルが全部揃った」


ワンとかファイブとか、何の話と思うだろうが戦車の話だ。

イスラエルの国産戦車メルカバはフロントエンジン構造が生む独特のフォルムで

ミリタリーファンから人気が高い。 なんとなくSF的な造形なのだ。

その二番目に古いモデルであるMk-Ⅱは最も古いMk-Ⅰの進化版だが、

性能的にはⅠの部分改良に過ぎず、シリーズ中では比較的地味な立ち位置にある。

それなのにA型、B型、D型と三種あり一番マイナーなB型のキットをようやく

購入出来たということだ。 うん、それなら沢瀬スルーも仕方ない。


「作り始める前と完成後を見せて!」 「おう、何なら今日でもいいぞ」


何故作り始める前も見たいのか?


実は俺、プラモはランナー状態が一番好きなのだ。

各パーツがどのように造られているのかを見て、どのように組み上げるのかを

頭の中でシミュレーションするのが一番楽しい。 おかしいかな?


だからプラモを買ってもいいんだけど、作らないから遠慮して買わない。

作りたくても売り切れていて買えないという人が出る可能性があるから。


何故作らないかといえば、姉ちゃんに禁止されているからだ。


接着剤やら塗料やらシンナーやら、呼吸器系に害があるものが少なくないから。

防毒マスクを使えば健康被害を防げるそうだが、そこまでしようとは思わないし。

実際にそこまでやっている人も少ないだろう。 現に昂輝はやってない。


ところでこいつ、一時間以上独りで居たにも係わらずナンパされなかったそうだ。

イケメンなのに何でだろう? ガタイがいいからだろうか? 醸し出す威圧感?

俺なんか・・・はどうでもいいが、何とも羨ましい限りである。




   ◇ ◇ ◇




「酷いです! どうして私を無視するんですか!」


最初にやってきて不満たらたらなのが想定外だった田辺だ。 何でお前が来る。

こいつ、処構わずに腐った発言を垂れ流すから一緒に居たら恥かしいんだよ。


「言論の自由です」 「節度を持てという話だ。 お前は暴走し過ぎ」


昂輝は田辺の相手をしない。 話しても無駄な相手とは話さない主義なのだろう。

だから俺が相手せざるを得ないのだが、何せ話を聞かないからやり辛い。


・・・・・・・・・


「 「 あれ⁉ 田辺 (ちゃん) も来てたんだ? 」 」


沢瀬と伊藤は呼んでない田辺の存在に少し驚いているが、五十嵐はスルーだ。


「田辺は美倉のストーカーだから来ると思ってた」 らしい。


「そんなことよりも・・・」 と五十嵐は続ける。


「何で女子の制服着てるのよ? ひょっとしたら茜さんも来てるの?」


そして当然な質問をしてきた。 そういえば田辺からは疑問の声が無かった。


「はっ⁉ なんか違和感があると思っていたら⁉」 今頃気付いたんかい!


「・・・一応わけありだから。 それより映画にする? 先ず何か食べる?」


今日は俺と昂輝と沢瀬と伊藤の映画好き4人による映画鑑賞会。だったのだが、

それ程映画好きでもない五十嵐も同行を宣言し、田辺まで勝手に現れたのだ。

しかも姉ちゃんの命令で俺がJKコスプレなんかしているものだからカオス状態。


・・・・・・・・・


取り敢えずお好み焼きでも食べようということになった。

何故お好み焼きなのか? 五十嵐が昨日から食べたかったらしい。


「昨日そう言えば良かったのに?」


「茜さんに『お寿司でいいかしら?』と訊ねられて、お好み焼きが食べたい!

 ・・・なんて、怖くて言えるわけないでしょうが」

「そうですね、茜さん、美人で上品で、お好み焼きのイメージはありませんから」

「え~っ、師匠は結構粉もんグルメ大好きですよぉ?」


女子三人の姉ちゃん評・・・一番正しいのは田辺だ。


その田辺以上に姉ちゃんに詳しいのが俺だが、姉ちゃんが【お寿司】という時は

具体的に食べたいものが無い時だ。 お寿司ならみんな大丈夫だろ? 的な。

だから五十嵐がお好み焼きをリクエストしたらお好み焼きに変わっていた筈。



で、レストラン街に足を運んだわけだが、昼前なので並ばずに入店出来た。案内

されたのは通路を挟んだ4人用ボックス席2箇所、ここに3人ずつ分かれて座る

ことになった。 定石通り男女別に分かれることになったが、田辺が少しごねた。


何で俺を女子席に引き込もうとする? 沢瀬も田辺に同調するな!


・・・・・・・・・


「昨日は大変だった?」 「無茶苦茶にな、信じられるか?買い物に6時間だぞ」


伊藤の質問に溜息交じりに応える。 本当に大変だった。 一体何があったのか?


胸の成長が鈍化したので、俺の夏物衣装纏め買いイベントが発生したのだ。

「もう通販でいいじゃん」という俺の意見は完全無視で行われたそのイベントの

参加者は姉ちゃん+映研部女子三人+女子柔道部から特別参加二人の計6人。

休憩を挟んで実質6時間、俺はただマネキンになっていただけだった。


「6時間も掛けて、姉ちゃんと出かけるときにしか着ない女物しか買ってない」


「マジ⁉・・・どんだけ買ったの?」 「20枚から先は、数えるの止めた」


完全に姉ちゃんと女子連中の着せ替え遊びに付き合わされただけ。

適当に着回せるものも少なくなかったけど、絶対に着ないものまで買っていた。


「絶対に着ないものって?」 「・・・イブニングドレス」 「 「うわあ」 」

「ということで、今日は普通の服を買おうと思う」「 「解かった、付き合う」 」


映画の後の予定が決まった処でお好み焼きがやって来た。

この店は焼き上がったものと最初から自分で焼くことが選べるタイプ。


男子テーブルは全員お店焼きだからきれいな円形で、厚みも均等な理想的な状態。

女子テーブルは全員がチャレンジャーだった。きれいなのは田辺、何気に器用だ。

あとの二人は何でお店に任せなかった?というレベル。取り敢えず目を逸らそう。


「テーブル、チェンジで!!」 


・・・五十嵐、お前何言ってんの? まぁ替わってやるけどさ。

味は・・・多分一緒だからね。 ほれ、昂輝も伊藤も、移動だ、移動。


五十嵐作は伊藤、沢瀬作は俺、田辺作は昂輝が担当。 味に問題は無かった。


「ところで映画の後に、男子二人と美倉で服を買いに行くんだって?」


五十嵐よ、そこはシンプルに男子三人と言うところではないかい?

そう思いながらも抗議はしない。 だって絶対無駄だから。


「 「 「 私たちも一緒に行くから! 」 」 」 「・・・メンズだぞ」


可愛い服なんかないぞ!と言おうとしたら田辺が余計な一言を口にする。


「最近はメンズでも可愛い服がありますから!

 きっと蒼先輩に似合うものもある筈です!!」


「 「 それはしっかりと選ばないと (いけませんねぇ) 」 」


「ちょっと待って! 昨日は可愛い可愛いで選んだんだから、メンズはシンプル

 でかっこいい、または動き易さ重視で選ばせてよ!!」


「師匠が言ってました! 蒼先輩は昨日買えなかったメンズを買うつもりだと!

 野暮なものを選ばせずに、ちゃんと可愛いものを選んでやってくれと!!!」


田辺・・・貴様、姉ちゃんが差し向けた刺客だったか⁉

しかし、この発言は不味い! 男子同盟の結束を固めねば!!


「う~ん、似合う似合わないで言うなら、やっぱり美倉は可愛い系がいいと思う」


伊藤~っ! 貴様、裏切りやがったな!! というか、日和ったな!!!


「蒼、悪いが俺はファッションセンスに自信がない」


昂輝は逃げやがった! まぁ仕方ないか・・・俺自身が最初から観念してるし。

【姉ちゃんの御言葉】という錦の御旗には敵うわけがないと。


買ったものが嫌なら、通販で良さげなものを追加すればいいだけだし。


つまり、着せ替え遊びに付き合わされるだけがデメリットなだけだし。


・・・はあっ。


「もういいか・・・そろそろ映画に行こうか?」 「その前に制服の件!」


五十嵐がしつこい。 こいつはこんな性格だから仕方ないが、たまに面倒くさい。


「姉ちゃんが袖を通しておけっていうからだよ。 理由は知らない」

「あっ、それ、私知ってますよ」


何故か俺の知らないことを田辺が知っている。 どういうことだ?


俺だけでない。 五十嵐も昂輝も沢瀬も伊藤も、皆が田辺に注目する。


「ほら、蒼先輩、胸が膨らんで制服がきつくなりましたよね?」 「少しな」


「今までの制服、全部要らなくなりますよね?」 「おうっ・・・多分な?」


「それをファンが購入出来るのですが、蒼先輩が着用してこそのお宝なんです」


「・・・・・・マジか?」 「マジです。ファン全員で師匠に懇願しました」


何か、あまり知りたくなかったことを知ることになってしまった。

いや、古着リサイクルが駄目と言っているのではない。 ただ内容が酷い。

ほら見ろ、みんなドン引きして・・・? してないの? なんか全員納得顔?


五十嵐は「あー、そういうことね」で済ませるし、沢瀬なんかは


「田辺ちゃん、私でも買えるのかな? 例えば今蒼君が着ているC制服とか?」

「無理です。既に洗い替え分含め24セット全てが売約済みになっていますので」


・・・買おうとするし。


《 パァーン !!!》 と五十嵐が手を打って 「そろそろ行こっか!」

と話を切り上げる。 正直言って助かった。 あんな話題が続いていたら・・・


ということで映画館にレッツゴー!


・・・・・・・・・


久々の、シリーズ物でない本格SFは面白かったが、伊藤と沢瀬の評価は厳し目で

五十嵐は「何これ?」だし、田辺に至っては「ヒロインが女性というのが・・・」

昂輝の評価は俺に近くて「ツッコミどころは多いが、雰囲気作りはバッチリ」だ。


SFって、好みが分かれやすいよね。


好みが分かれないSFは駄作だ! なんて言う人もいたし。




映画鑑賞後の苦行は2時間で済んだものの・・・やっぱり疲れた。

こんなもん、男子だけなら30分で終わっていたぞ。


巻き込んでしまった昂輝と伊藤には悪い事をした。


でもいい勉強になったろ? 女子とは服を買いに行くもんじゃないって。

南海難波駅コンコースでは、よく声を掛けられた記憶があります。相手も男。

そういうことのメッカだったのでしょうか? そして今はどうなんでしょう?


プラモもメルカバも、広く浅くしか知らないのでコアなツッコミは御勘弁を。


五十嵐が映研部所属なのは部員数確保の為、伊藤から頼まれたからです。

ちなみに伊藤を誘ったのは蒼で、蒼を誘ったのが沢瀬です。黒幕は沢瀬。

当時は上級生も居ましたが、沢瀬と蒼へのセクハラを問題視した昂輝と伊藤が

全員を追い出して、部そのものを仲良しグループで乗っ取った形になりました。

映研って乗っ取られ易いのでしょうかね? 作者も高校時代に乗っ取りました。


帝山学園の制服は男女共にA~Cの3タイプ、計6種があります。

上がAで下はCといった着用も可能ですし、多少の改造も目溢しされています。

標準のA、厨二(又は少年漫画)のB、耽美(又は少女漫画)のCと呼ばれており、

以前は男子は男子モデル限定だったのですが10年前からジェンダーフリー。

蒼は姉指示により6種フルコンプしています。6種コンプは極少数派です。

一番多いのが性別を合わせての3種コンプで、次に多いのは昂輝のように

一番扱い易いA型のみに絞るという選び方です。

ちなみに24セットなのは夏用と冬用があるからです。


映画館は痴漢が多かった印象があります。もちろんエロでなく普通の映画です。

痴漢と言っても、手を握られたり太ももを撫でられたりといった程度ですが。

ただ家族連れが観るような映画では痴漢に遭遇したことはありません。

メニエールを発症してからは劇場に通うことは無くなりました(大音量が駄目)が、

今でも映画館に独りでいくと痴漢に遭い易いのでしょうか?

ちなみに作中で鑑賞を想定した作品は《 VESPER 》です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ