表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/38

029_堺の休日

具合が悪くなった母を病院に連れて行ったら、脱水症状で点滴したら回復。

逆に私の体調の方が悪くなってしまった。・・・ホント、病院は鬼門だわ。

うつされた病気がただの風邪だったから、大きな問題は無いんですけどね。

ただ執筆が進まないというだけで。 ストックが溜まらないというだけで。


12/23: 以下の一文を変更しました。 他は一切変えていません。

あいつは藤堂以上の朴念仁よ。 → こいつは藤堂以上の朴念仁よ。

何処のトイレだろう? 家のトイレでも学校のトイレでもない。 飾り気も無く

窓も無い。 そして記憶にも無い。 夢だということは判るが、記憶に無いトイレ

だという事が気になる。 清潔だが狭い。 違う、どんどん狭くなっているのだ。

左右の壁がどんどんと迫って来て、遂には身体が挟まれ圧迫される迄になった。 

ドアを蹴破ろうにも脚が重くて動かせない。 冷静に現在の状況を推察してみる。



今日は何月何日で今は何時頃になる筈だ? その時間帯だと俺は何処に居る筈だ?




・・・そうだ。 俺は自宅で寝ている時間だ。 そして自室じゃなくてリビングだ。


江澄さんだ。 江澄さんが全員で一緒に寝たいと言ったから、リビングで雑魚寝と

なったのだ。 彼女は思いの外甘えん坊で寂しがり屋だった。 でも彼女のおかげ

で、全員ジャージのジャージパーティになったのだから、皆で讃えるべきだろう。


江澄さんが俺の家にパジャマを置いてなかった為、ジャージで統一となったのだ。


・・・・・・・・・


江澄さん用パジャマのネット購入を、阻止出来なかったのは甚だ残念な事である。


何でジャージよりパジャマのほうがいいんだろう? 女ってそういう生き物なの?


そういうことなら諦めるしかないが・・・


・・・しかしこれで真実は明らかになった。 身体を動かせない原因は雑魚寝だ。

恐らくは沢瀬か田辺に抱き着かれて、身動き出来ない状態になっているのだろう。


・・・・・・・・・


まだ少し眠いが・・・起きて解放されるとするか。




   ◇ ◇ ◇




俺が身動き出来なかったのは・・・姉ちゃんに抱き締められていたからだった。

あと、江澄さんにも抱き着かれていた。前門の姉ちゃん、後門の江澄さん状態。


全く覚えていないのだが、『くすぐったい~』と言って姉ちゃんの部屋に避難した

らしい。 俺が。 江澄さんも付いて来たという。 江澄さんは何も語らないが。


その結果、三人が姉ちゃんのベッドで朝を迎えることになった。 ということだ。


目が覚めたら、そのまま姉ちゃんとシャワーを浴びる羽目になった。 何でだ?

鏡に映った姿を見て更に首を傾げる。 首やら肩やらあちこちが赤くなっている。


「ダニでもいるのかな?」 「違うわよ、それはキスマークっていうの」


俺の髪を洗う姉ちゃんが教えてくれる。 ふむ? 首に当たったのはキスだったか。

たった一回キスされただけで・・・これだけ多くのキスマークが残るものなのか?


そのメカニズムはよく解からないが、アレルギー反応みたいなものなんだろうか?


俺、アレルギーにだけは縁が無いと思っていたのだが・・・昂輝に聞いてみよう。




   ◇ ◇ ◇




朝の食卓、沢瀬の前には何もない。『沢瀬先輩は朝食抜きです!』と田辺は語る。

『そして私も朝食抜きです!』・・・いや、お前はダイエットの必要が無いだろ?

全員分の朝食を作ってくれている田辺、まさかの朝食抜き宣言に思わず突っ込む。


「・・・蒼君は、私にはダイエットの必要があると思っているのですね?」


食卓で静かに席に着く沢瀬の笑顔から、突如放たれ始めた黒オーラに戦慄する。 

雉も鳴かずば撃たれまい・・・てか、完全に藪蛇だった。 五十嵐、助けて!!


・・・・・・・・・


五十嵐は何故か深く溜息を()き、姉ちゃんはその様子を楽しそうに眺めていた。

にやこたは朝から様子がおかしいし、江澄さんは・・・普段から挙動不審だな。

沢瀬は瞑想状態に戻るし、田辺は『反省!』と元気よく反省(?)をし始める。


・・・何なんだ? この状況は?


・・・・・・・・・


どうでもいいが、俺の目の前に並べられた朝食、食べ切れないから誰か助けて!


五十嵐が『仕方ないんだから』と言いながら助けてくれた。 あんがと!

7億人が飢餓に直面するこの世界で、食べ物を粗末に扱いたくはないのだ。



朝食を済ませた後は映研部一同で家を出る。 約束の地、堺東へと向かう為に。




   ◇ ◇ ◇




「沢瀬と田辺に・・・一体何があったの?」


美倉に話し掛けられた時、相変わらず自分の事になるとポンコツな奴だと思った。


あれだけ美倉にべったりな二人が、揃って距離を置いていることに違和感を感じて

いるようだけど、不安も感じてなければ、心配そうにしている風でもない。 少し

首を(かし)げているだけ。 それだけ二人を信用しているのだろうけど、信用し過ぎ。


あの二人は私が思っていた以上にヤバい女だった。 そして美倉は無防備過ぎる。


・・・昨夜の真実を伝えた方がいいのだろうか? そんな考えが一瞬頭を()ぎる。

私たちを驚かせ、茜さんを怒らせて、みーちゃんを怯えさせた二人の酷い暴走を。




   ◇ ◇ ◇




藤堂とのポンコツ極まる会話を終えた美倉は、納得がいかないと謂った表情を浮か

べながらリビングに戻り、戻るなり『寝る』と宣言して直ぐに寝入ってしまった。


その寝つきの良さたるや流石美倉としかいえないレベルの、みーちゃんが狸寝入り

を疑うことが当然に思える程のものだった。 そして一旦寝入った美倉は簡単には

目を覚ますことが無い。『目覚まし無しで毎朝6時に起きてますよ』という田辺の

言葉が信じられない程に。 夜は11時に就寝するとのことだから、かなり健康的。


時計を見たら11時ジャスト・・・何なのよ? この機械の様な正確さは?


『これですか』 沢瀬の声がしたので、壁時計から視線を外して声の方を見る。


「あんた、何をやっているのよ?」 思わず声が出た。 沢瀬が美倉の服を剥いで

いたのだ。 ブラだけになった美倉の上半身を膝に載せて首筋を確認していたのだ。


「何って・・・伊藤君に付けられた傷を確認しているのですよ」


冷たい笑顔にぞっとした。 沢瀬がかなり怒っている。 多分美倉と伊藤の両方に。


「私のお姉様に何てことを・・・許せません!」 「性犯罪者許すまじです!」


にやちゃんとこたちゃんも、怒りを燃え上がらせている・・・完全に伊藤一人に。

みーちゃんは場の雰囲気に怯え、田辺独りが嬉しそうに何度も相槌を打っている。


・・・・・・・・・


田辺は何で嬉しそうなんだろう? こいつだって美倉に惚れているのに? BLなの?

自分の恋愛とBLとは別腹という事なの? BL好きって、ここまで業の深い生き物?


・・・・・・・・・


そんなことはどうでもいいわね。 とにかく美倉の周りは面白い奴らばかり。

美倉の強烈な個性と存在感・・・それに負けない猛者ばかりが集まって来る。


・・・・・・・・・


本当に伊藤も厄介な相手に惚れたものだわ。 山程いるライバルの中にはこんなに

ヤバい奴迄居るのだから。 会長さんもかなり怪しいし、ザッキー先輩だって諦め

そうにない。 何より美倉本人に全くその気がない。こいつは藤堂以上の朴念仁よ。


・・・・・・そう、美倉は攻略不能レベルの大難関。


ガードはゆるゆるだから、すぐ側迄に近付くことはもの凄く簡単。 でもそこから

が至難。 美倉はじっとすることが無いから。 いつも何処かを見て何かを追って

いるから、周囲にも自分自身にも殆ど関心を示さない。 そんな友達甲斐の無い奴。


伊藤も沢瀬も、選りにも選って一番駄目な相手に惚れ込んだものよね・・・って、


「沢瀬、あんた、今、何をしてんのよ⁉」 「・・・ただの上書きですけど?」


沢瀬が美倉に覆い被さってキスの雨を降らせていた。 首筋から肩から背中から。

田辺も『私も上書きします!』と元気よくキスの大バーゲン。 こいつらマジか⁉


こんなところで! それも私が見てる目の前で!! てか、1年も見てるし!!!


見たくない! 確認したくない! それでも・・・1年生三人の様子を確認する。

にやこたの二人は顔を真っ赤にして見入っている。 みーちゃんは逆に真っ青だ。


そして更に確認したくない茜さんの様子を窺ってみるが・・・平然としている?

いや、確かにこの人もかなり変わった人なんだけど・・・これも許容範囲なの?

目の前で弟だか妹だかは判らないけど、可愛い家族が襲われているんですけど?


美倉は美倉で、こんなことをされていても目を覚まさないし!何で起きないの?

何で『くすぐったい~』って言いながら身を(よじ)らせるだけなの? 可愛いわよ!

いやホント、無茶苦茶可愛くて、沢瀬も田辺もより興奮しちゃってるんだけど!


目付きがホントヤバくなって来てて、ブラに迄手を掛けちゃってるんですけど!


あんたら二人! みんなが見てる目の前でどこ迄やっちゃうつもりなのよぉ!!

止めなさぁい! ブラを剥ぎ取るなぁ! 胸を揉むなぁ!! 舐めるなぁ!!!


あああ・・・どうしよう? 強引にでも引き剥がして二人を止めるべきなのか?

どうしたら止められる? 二人を引っ叩く? それで止まる様な二人じゃない?


あぁー!! 沢瀬! それだけは!! それだけは止めなさあぁぁいぃぃぃ!!



「由佳理ちゃんも瑠香も・・・そこ迄よぉ・・・それ以上は、本気で怒りますよ」


沢瀬が美倉のジャージパンツに手を掛けた、ギリギリのタイミングでの停止命令。

私たちは、ようやくにしてレズビアン(?)3Pショーの強制観賞から解放された。




   ◇ ◇ ◇




茜さんの許容範囲は首や肩へのキス迄だった。 ブラを剥いだ時点でワンアウト。

胸を愛撫した時点でツーアウト。 下を脱がそうとした時点でスリーアウト終了。


結果美倉は茜さんの部屋で寝ることになった。沢瀬に怯えたみーちゃんも一緒に。


そして沢瀬と田辺に美倉との二週間同衾禁止と、本日一日お触り禁止命令が出た。

その程度の処分でも沢瀬にはかなり(こた)えたみたいで、今朝は食欲を無くしていた。


・・・田辺はおかしな誤解をしていたみたいだけど。


・・・・・・・・・


更にいえば、あの問題児二人以外にも気になることが。


沢瀬&田辺の暴走二人娘と入れ替わる様に、美倉にべたべたしている1年生二人。


にやちゃんとこたちゃんが『みーちゃんだけお姉様と・・・ずるい』と言っていた

のがどんな意味なのか・・・考えるのが、少し怖い気がするんだけど大丈夫よね。

あんたら二人は、美倉に懐いているだけよね・・・問題児倍増だけは勘弁してよ。


なんてことを考えながら、美倉を囲んでいる三人を眺める。 今ではすっかり美倉

に懐いてしまったみーちゃんも居る。 ポンコツは怖くないということなのかな?



「あいつらが遅刻って・・・珍しいよな?」


美倉にしては珍しく積極的に会話を続ける。 多分は1年生に聞かせる為だろう。


「伊藤から、寝坊したって連絡があったわ」 「伊藤が⁉ そりゃ本当に珍しい」


美倉の驚きには同意するしかないけど・・・ひょっとしたら昨日の事が気になって

眠れなかったのでは? なんて思ったりする。 伊藤はわりと気にする(たち)だから。


そして約束を、自分の都合で破る様な奴じゃないから、遅れはしても絶対に来る。


どんなに美倉と顔を合わせ辛かろうが、昨日の今日で心が乱れようがきっと来る。


・・・・・・・・・


「遅れちゃってごめん」 ほら、ちゃんと来た。 藤堂と二人、頭を下げながら。


「お前ら、遅い!」 普段はそんなことを気にしない美倉が怒る。 ふりをする。

美倉も多少は人に気を遣う様になったということ。 1年生の代わりに苦情を言う。


美倉も成長したわね・・・なんて思っていたら。


何故か藤堂と二人になって、離れた場所でひそひそ話・・・嫌な予感しかしない。

困った表情をみせる藤堂が私に手招きをする。 予感的中! て、嬉しくないわ。




   ◇ ◇ ◇




俺の話に首を傾げながら、昂輝は何故か五十嵐を呼ぶ。 五十嵐は関係ない筈だが?


「蒼がまた頓珍漢(とんちんかん)なことを言っているのだが・・・何か心当たりは無いか?」


頓珍漢とはまた失礼なことを言う奴だ! ムカつくから猫耳を着けてやる!

・・・猫耳返しを喰らってしまった。 やはり身長とリーチの差はデカい。

・・・伊藤がこちらを見ている。 猫耳が気になるのだろうか? 着けたい?


「頓珍漢な事って?」 「キスマークって増えるものなのか? と聞かれた」

「・・・確かに頓珍漢ね」 「本人は至って真面目。 という処が尚更にな」


・・・何だろう? キスマークが増えるなんて現象は、有り得ないとでも?


「そうね、心当たりは・・・有るわ」 「ええっ⁉」 「何でお前が驚く?」

「そりゃあ相手も居ないのに「相手も居ないのに? 何なの?」ごめんなさい」


五十嵐は俺を睨みつけ、大きな溜息を吐いた後に、キスマークの謎を語り始めた。


・・・・・・・・・


「ふ~ん、そういうことだったの?」 聞けば何のことは無い、普通の話だった。

沢瀬と田辺が伊藤に負けないとマーキングした結果だった。 凄く単純な話だな。

何でマーキングをしたのかは判らないが、二人は女で俺は男、思考の違いだろう。


「マーキングって、あんたねぇ・・・」 「言葉は悪いが、核心を突いているな」


五十嵐は表現に不満ありげだが、言葉だけを飾った処で()して意味は無いからな。

俺としては、全ての現象が整合した時点で、すっきりすっかり万事解決万々歳だ。




   ◇ ◇ ◇




そうして、堺東のホームで合流した俺たちは一駅下って三国ヶ丘でJRに乗り換え、

JRでは一駅上って堺市駅に到着した。 今日の目的地は駅のすぐ近くにあるらしい。


「ミケ館だっけ?」「違います、ミュシャです。 アルフォンス・ミュシャ館です」


田辺に確認したらミケ猫館ではなかったらしい。 残念。 ミュシャって誰だっけ?


「アール・ヌーヴォーを代表する画家さんです。 優美な女性像で有名な方です」

「女性像? 男性の裸じゃなくて?」 「はい、とても綺麗な線を描かれる方です」


とのことだった。 ちょっと意外だけど、線が綺麗という処がポイントなのかな?

田辺の画も線の美しさに拘りが有る様に思えるから、その辺りを観たいのだろう。


そして目的の場所は、本当に駅から直ぐの場所だった。 正式名称は堺市文化館。

本当にここなの? と、疑問に感じる程に普通な外観の建物の中に、世界でも有数

のミュシャ・コレクションが展示されているのだという。 でも本当に地味な外観。


「美倉も以前は堺市に住んでたんでしょ? 来たこと無かったの?」

「俺は来たこと無いよ。 沢瀬や昂輝はどうだか知らないけど?」

「私も今日が初めてですねぇ」

「名所とか名跡とか、意外と地元民は行かないっていうからな」


此処を選んだ田辺も今日が初めてらしいから、多分全員が初めてなんじゃないの?


「みーちゃんは入ったことあるんじゃないでしょうか?」 「・・・あります」


         「 「 「 「 「 えっ!? 」 」 」 」 」


江澄さんの言葉に驚いたのは2年生だけで、1年生は皆、然もありなんな表情だ。


「ここがみーちゃんのお家です」 と、田辺が目の前の高層マンションを指差す。

周囲から抜きん出た双子の様な高層マンション。 成程、上の階に住んでるんだ。

それなら来たことある筈だわ・・・てか、あまりに身近過ぎて詰まらないのでは?


「・・・大丈夫。 今やってる特別展示は初めて」 それならいいいか。


というわけで、俺たち映研部一同( マイナス山田 )は、帝山祭成功( らしい )の

打上げ会代わりとして、第一回ご近所の名所巡り堺市編がスタートしたのである。


尚、第二回以降を開催するかどうかは全く未定である。




   ◇ ◇ ◇




特別展示は大正ロマン画家竹久夢二との共演だった。 西洋と和の美人画比べ。

まるで違う画風による対比となる筈なのに、不思議な程に一体感が感じられた。


両者ともに漫画的な、多分は漫画の方が両者に影響を受けただろう、線を基本と

した絵画だからだろう。 その線は共に繊細且つ美しいものだが、それでも線だ。


線は所詮(しょせん)線に過ぎないし、色合いもまた非写実的過ぎて、全く現実感を感じない。

何処までも二次元の絵に過ぎず、僅かばかりの命の息吹も存在感も感じられない。


綺麗なだけで、退屈な絵だと感じた。 いす丸君を使っていたら眠っただろうと。


田辺は興奮しているし、他も概ね満足しているようだから無駄足では無かったが。


「退屈そうだな」 俺と趣味が合う昂輝には、もろバレだったようだ。


「この後は食事ですが、それからショッピングモールでも見て回りませんか?」


「先輩、ショッピングモールでしたら、ここから少し離れた北花田に行った方が

 いいと思いますよ。 正直言ってここは少し大きなスーパーでしかありません」


「そうなんですか?」 「はい、中でもファッション系は壊滅的です」


偶然なのか? それとも必然なのか? 映研部ゲーム嫌い四人衆は揃ってここの絵画

にあまり惹かれていない様だ。 ゲーム嫌いは芸術関係の志向も似るのだろうか?



結局ミュシャ館の後は、北花田のショッピングモールに行くことになったのだが、

今回の堺行で一番印象に残ったことが、点と点の繋がりが悪くて移動が不便な事。

古墳の世界遺産登録で観光客増加を目指すには、要改善点がかなりある事だった。




   ◇ ◇ ◇




「おい、美倉・・・」 「 ( しっ! 中根君はお黙りなさい! ) 」


水曜日・・・久しぶりに、本当に久しぶりに柔道部に顔を出した蒼だったが、相当

に疲れてしまったのか、基礎トレーニング後の休憩で完全に眠り込んでしまった。


いつの間にかに【 世界一可愛い寝顔 】と(たた)えられるようになった寝顔を晒して。


その寝顔を、かなりの期間に(わた)って美倉成分の補給が出来なくなっていた柔道部員

全員が取り囲んでは眺めている。 起こそうとした真面目人間中根を押し(とど)めて。


その仔猫の様な寝顔には、流石の中根も癒されてしまい鹿原に抵抗出来なくなる。

顧問である猿石でさえもが、このまま寝かせておいてやれと言い出す始末なのだ。


そんな誰もが癒されるという寝顔に、癒されないのは、柔道部では昂輝ただ独り。


それは、此処では昂輝独りだけが、蒼の眠りの原因に気付いているから。


医者である父から学び、自らも研鑽(けんさん)を積むことでインターン並みの医学知識を

持つに至った昂輝だけが、蒼の身体に起きている異変に気が付いているから。


蒼の身に確実に忍び寄りつつある、不吉なものの正体に気が付いているから。


この頻繁な眠りこそが、その前兆であることを認識出来てしまっているから。


この可愛い寝顔こそが、死の前兆であることを認識出来てしまっているから。


・・・昂輝だけは、蒼の寝顔に癒されることは無かった。


食べ物を… :蒼は食べ残しはNGだけど、好き嫌いはOKと考えています。

       作者も同様。不味いと思いながら無理に食べるという行為を、

       食材や生産者に対する非礼だと考えているからです。


要改善点が :蒼はゲームや漫画よりも、こういった実務的な思考を巡らせること

       の方が遥かに好きなのです。モノ造りの方が遥かに好きなのです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ