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028_色々とポンコツ過ぎてヤバい夜

前話執筆途中から、具体的には文化祭2日目辺りから体調が回復し始めました。

文化祭初日迄書くのに5日も掛かったのに、それ以降を4日で書き上げることに。

何度も読み直し、校正に要した1日を差し引いたら実質3日。体調は大事ですね。

本話は前話の疲れが出たのか、6日も掛かりました。やはり体調は大事ですね。

ゴロゴロと、ハイテンションに、転がって、沢瀬にぶつかり、叱られる俺。



「少し(はしゃ)ぎ過ぎです!」 「・・・ごめんなさい」


・・・いや、本当に、反省。


何で沢瀬に叱られることになったのかというと、ジャージが最高だから!!

着易さ、着心地、動き易さの三拍子を備えた上で保温性に迄優れているのだ。



・・・完璧ではないか!!!



ジャージこそが衣服の完成形であることに、異議を唱え()る者等居よう筈も無い。


何⁉ ファッション性に難がある? ダサい? 不潔? 冠婚葬祭では使えない?


何を言わんや! それらは全てアパレル業界の創り出した幻想、策略ではないか!


最新モードを身に纏ったスマートなイケメンと、ジャージ姿の太ったブサメンを

比較して、ジャージ姿はダサい等というのは、余りにも不合理且つ不適切な論理。


重要なのは着こなしであり、身に着ける人間である。 決して服そのものではない。


イケメンは何を着てもイケメンであり、ブサメンは何を着てもブサメン。 それが

アパレル業界にとってのアンタッチャブル、公には出来ない極大の不都合な真実。


不潔という評価等は、全くに謂われなき誹謗中傷だと言わざるを得ない。 安楽さ

(かま)けて着た切り雀になる怠けた生活習慣が問題なだけで、ジャージに罪は無い。


冠婚葬祭に関しては冠婚葬祭用のジャージを創るか、世間の常識を変えるかすれば

いいだけのことに過ぎない。 常識なんて流動的で常に変化し続けるものなのだ。



「そんなわけでジャージ最高!!」 「・・・本当に美倉はジャージが好きね?」

「当然だろ? こんなに快適で動き易い服が他にあるか? ほら、よく見てみろ!」


ゴロゴロゴロゴロ・・・・・・ゴッ!「キャッ⁉」「ワッ!」


動き易さを証明する為床を転がっていたら、菓子を運ぶ沢瀬の足に当たったのだ。




   ◇ ◇ ◇




「危ないじゃないですか! もし零れたのがお菓子ではなくて、熱いお茶だったり

 したら、大変なことになっていたかも知れないのですよ!! 判ってますか!?」


・・・そんな理由で俺は沢瀬に叱られている。 うん、自業自得だから仕方ない。

でもお菓子は個別包装のチョコと焼き菓子だったからセーフ! ツイてるな、俺!



「少し燥ぎ過ぎです!」 「・・・ごめんなさい」



「 「 ・・・・・・・・・ 」 」



「本当にもう、蒼君は子供なんだから・・・」 


・・・よし! 怒りが静まったぞ。 やっぱり沢瀬は俺に優しいぜ! フフンッ!!


「・・・由佳理ちゃん、蒼も反省しているようだから、コレで許してやってね 」


「 茜さん・⁉・ふふふ・・・そうですね。ソレでいいですね ♡ 」




「 「 「 「 「 「 きゃあぁ、可愛い~ぃ!!!!!! 」 」 」 」 」 」


俺は、姉ちゃんが持ってきた猫耳を着けることで許された。 姉ちゃんめぇ~ !


男が猫耳なんて誰得よ? 案件なのだが、女子には大受け。姉ちゃんも満足そうだ。

ただ一人、江澄さんだけが引いているように見える。うん、君の反応が正しい筈。


そう、江澄さん。 彼女が初めて俺の家に遊びに来たのだ。 てか連れて来られた。

五十嵐たちに引き摺られるようにして我が家にやって来た。少し泣きそうだった。


今は大分落ち着いている。 知らない人が姉ちゃんだけだからと仁宮さんは言った。

男性が、特に大人の男性が居たら怯え続けるのだそうだ。 昔の父親が原因らしい。


そんな話を田辺から聞いていた姉ちゃんは、付きっきりで江澄さんを構っていた。


・・・多分、江澄さんと俺を重ねてしまったのだと思う。




最初は緊張していた江澄さんだけど、徐々に慣れて余裕が出て来たのか、ちらちら

とゲーム機に視線をやるようになった。 俺が気付く様なら当然に五十嵐も気付く。


そうして、映研部女子会(?)恒例の格闘ゲーム大会が始まった。




   ◇ ◇ ◇




「戦前の資料にもタタイなんて名前は無いようね。 蒼の聞き間違いじゃないの?」


姉ちゃんがMSSの調査結果を持って来てくれた。 苗字にせよ名前にせよ、珍しい

からすぐに見つかるだろうと考えていたのだが甘かった。 候補者がゼロなのだ。

伊藤に現役の生徒や教師に該当者はいないと聞いて、MSSを頼った結果がこれだ。


・・・本当はもっと内々に、自分たちだけで調査を進めるつもりだったのだが。

どういう訳だか、プロのセキュリティ集団に動いて貰うことになってしまった。


・・・何でこんなことになった?




映研部女子ゲーム四天王がゲーム大会で盛り上がる中、参加しても盛り下げるだけ

俺は、同じ補欠組の沢瀬と仁宮さん、そして姉ちゃんに№2さん問題解決の糸口を

探るべく、多田井さんと謂う人物を知っているか尋ねてみたら大事(おおごと)になったのだ。


俺がうっかり盗聴されていたことや、不意に攻撃されたことを漏らしたばかりに。


格ゲーに縁のない4人で、暇潰しにでもなるかと№2さん問題を口にしたばかりに。


雑談のネタを提供しただけのつもりが、夜の大捜査線発令となってしまったのだ。


『 えらいこっちゃ~!! 』 という俺の心の叫びとは裏腹に。 大マジモードで。


何か運動でもやっていたのか? 妙に呼吸が荒い伊藤に電話で問い合わせたり、MSS

に夜間緊急対応をして貰ったりと・・・とんでもない大事になってしまったのだ。



ちなみに五十嵐たちは絶賛ゲーム中だ。 江澄さんには聞かせない様にとの配慮で。

指方向性スピーカーシステムを導入していて良かった。 そのおかげで彼女たちは

大音量でゲームを、俺たちは秘密の会話を、互いに不干渉で進めることが出来る。



「今重要なのはタタイさん探しではありません。 蒼君が盗聴された、不意打ち

 されたことへの対策こそが最重要であり、早急な解決を必要とするものです」


沢瀬が力説し姉ちゃんも仁宮さんも首肯する。 何度も首肯して強い同意を示す。

俺の「いや、多田井さんさえ見つかれば解決するのでは?」説は、完全に無視。


「お姉様、襲ってきた相手に見覚えはないのですか?」 仁宮さんの表情は真剣だ。


「いや、その時に初めて会っただけで・・・」 嘘は()いていない。全くの事実だ。


「名前も、当然判らないわね?」 姉ちゃんも真剣だ。ホントにどうしたものやら?


「蒼君、襲われた時の状況を、詳しく説明して貰えませんか?」


「いや、別に襲われたって程じゃなくて・・・攻撃はされたけど外したって感じ」


(かわ)したのですか?・・・蒼君はぼんやりしているけど、意外に敏捷ですからね」


・・・俺って、ぼんやりしてるイメージがあるの? 何で? 何処が?


「お姉様って、処構わずに舟を漕がれていますから・・・」


いや、それはただ眠いというだけだから。 ぼんやりとは違うのでは?


「蒼ちゃぁん、処構わず眠くなるってことが、ぼんやりってことなのよぉ?」


姉ちゃんがそう言いながら、頭の猫耳を触って来る。 触り心地がいいのかな?

自分でも触ってみるが『おおっ!』触り心地、むっちゃいい!! 何だこれ!!

凄く良く出来ている! 癖になりそうだぞ、コレは!! ん? 沢瀬、どしたの?


「蒼君は、こんな子だから心配なんですよね」 「お姉様・・・」 「蒼・・・」


三人は危機感も緊張感もない蒼を案じるのだが、蒼はそんなことには頓着が無い。

生死の境を何度も彷徨った者に有りがちなことだが、蒼も保身に執着しないのだ。

自らの立場や安全に対する関心が鈍くなり、その反動だろうか好奇心が強くなる。


今はただ、猫耳の滑らかで、そして柔らかな触り心地に夢中になりながら、どんな

素材で、どのように作っているのだろうか?  等と場違いな思考を巡らせている。


そんな様子を三人は、特に苛立つことも無く温かな目で眺めている。 慣れたのだ。

蒼はこんな生き物だと慣れてしまったのだ。 そして筆頭調教師である沢瀬が動く。


「・・・そんなに触り心地がいのですか?」 そう言いながら、沢瀬は手を伸ばす。


「あら! 本当に素晴らしい手触りですね」 「だろ? やっぱそう思うだろ?」


沢瀬は作戦を変えたのだ。 何かを隠そうとしている蒼から聞き出すことは止めて、

蒼に同調し警戒心を解くことで、蒼のうっかりポロリを誘い出すことにしたのだ。


そう、蒼は隠していた。 というか話辛くなっていた。 №2さんがまるで犯罪者の

ように扱われるようになったこの状況で、彼女の事を口に出せなくなっていた。



・・・参ったな。 三人揃って何でこんなに大袈裟なんだろうか?

ちょっとした勘違いで、ポンコツ攻撃(アタック)を仕掛けられただけなのに?

№2さんは多分変人だとは思うけど、犯罪者って感じは全くないし。

多田井さんのことだって、臭いという事をあまり他言はしたくない。


・・・出来るだけ二人のプライバシーは内緒にしてあげたい!



等という事を、ポンコツな勘違いで周りを振り回している当人が考えていたのだ。


だが、日常モードの蒼は、チョロい等という言葉で言い表せるものではなかった。


「本当によく出来ていますね。 それに蒼君によく似合っていますから」「え~⁉」

「盗聴犯さんにも似合うでしょうか?」 「うん、№2さんには凄く似合いそう!」


・・・こんな具合だ。 周りが心配するのも無理は無いだろう。




   ◇ ◇ ◇




洗い(ざら)い白状させられてしまった。 見事な誘導尋問・・・でもなかったのに。

猫耳の素材や製法ばかりを考えていたから、うっかり油断をしてしまったのだ。


その上で『勘違いですから、放って於いても問題無いでしょう』と結論が出た。

俺としては、多田井さんに一言忠告した方が良いのでは? と思っていたのだが、

それすらも『それが勘違いですので、必要ありません』と断言されてしまった。


・・・・・・・・・


多田井さんが臭いというのが勘違いだと・・・何故断言出来るのか?

多田井さんにカメムシが付いていたとしても、それが何故判るのか?


そんな疑問も浮かんだが、面倒なので追求しなかった。 何とかなると思うから。

今度№2さんに会った時に、きちんと話し合いをすれば済む事だろうと思うから。


・・・ぶっちゃけ、現状は手詰まりだから、先送りすることしか出来ないんだわ。


・・・・・・・・・


それに俺には・・・もっと重要な、深刻な問題への対応を考える必要があるのだ。

伊藤が、俺の周りでは貴重な常識人枠だった伊藤が、実は一番ヤバい奴だった件。


・・・・・・・・・


正直言って、俺一人ではどうにも出来ない問題だと思う。 誰かの助けが必要だ。

それも女子ではなく男子である必要がある。 そうなると俺の友人の中では次席、

いや、今となっては筆頭常識人の中根か、常識は微妙だが付き合いの長い昂輝か、

間を採って高梁か・・・誰に相談すべきか? 悩ましいな・・・賽子(サイコロ)で決めるか。


遊戯室から賽子を持って来て(えやっ!)と、勢いよく転がす。

コロコロ転がった結果・・・賽子神(サイコロシン)は『昂輝を頼れ』と示した。


「姉ちゃん、俺、昂輝と話があるから部屋に行くな。 沢瀬は付いて来んなよ!」


いきなり賽子を転がしたかと思えば、そんなことを言い始める蒼に突っ込む人間は

此処に居ない。 ゲームに集中する江澄以外は蒼の行動に慣れてしまったからだ。

ただ一人田辺だけが『遂に愛の告白でしょうか!』と脊髄反射の如くに反応する。


聞こえる筈のない声を拾った田辺に『お前も来るな』と告げて蒼は自室に籠った。


ドアにコップを当てて盗聴を試みる田辺に、茜は残酷な現実を告げる。


「うちの防音性を舐めちゃ駄目。 聴診器を使ったとしても、何も聞こえないわよ」

「そんなぁ、師匠・・・それじゃあ、どうやって盗聴すればいいのでしょうか? 」

「大丈夫よ。 蒼の部屋には、高性能な隠しカメラと隠しマイクがセット済みなの」


聞き耳を立てているこの場の女子全員に、茜は蒼にとって残酷な現実を告げた。




   ◇ ◇ ◇




『一体、何があったんだ?』 重要な話があると云われても、昂輝は身構えない。

蒼が騒ぐような時に限って、大したことのない誤解や勘違いだったりするからだ。

寧ろさらりと語られる、自然に零れ出る、そんな何気ない一言の方に驚かされる。


だから深刻そうな蒼の口調に、逆に安心してしまう。 珈琲片手に蒼の言葉を待つ。


「伊藤が、ヤバい奴だった」 『伊藤が? ・・・どんな具合にヤバいんだ?』


「・・・驚かないで聞いてくれ。 打ち上げの時に遭ったことなんだが・・・」




   ◇ ◇ ◇




クラスメイトが『今年の総合一位は確実だ!』と喜び合う中、軽く尿意を覚えた

俺はトイレへと向かった。 ジェンダーフリートイレは遠いからぎりぎり迄我慢を

するとヤバい事になるからだ。 その時に伊藤も付いて来た。 話があると言って。




「レトロゲーム機をどうするかって聞かれても・・・何も考えてないけど?」

「やっぱりそうなんだ。 細川先生にはそう伝えておくよ。 多分寄贈して欲しい

 といった話になると思うけど、どうするかは美倉の好きにすればいいと思うよ」


・・・そんな話だった。


寄贈して欲しいなら寄贈で構わない。 俺が持っていても粗大ごみでしかないから。

細川先生&ゲーム研ズ一同、俺のゲームに対する関心の無さを危惧したのだろう。

俺が持っていても良くて死蔵、悪けりゃポイだろうと。そしてその予想は正しい。


それはそれでいいとして。


態々(わざわざ)伊藤を使ってワンクッション置かなくても、直接言ってくればいいのに」

「それが必要になる程の、凄いお宝だということだろうね」 「ふ~ん、そっか」


ゲーム機の話の後は、他のクラスや個人の出し物の話を聞きながら、運動部部室棟

側の連絡通路を通って、南棟3F中央ホール横のジェンダーフリートイレに着いた。


「大会議室はまだ賑わっているようだね」 「ゲーム研の連中が遊んでるのかな?」


月曜日の片付け作業に入る迄の間は、自由に遊んでいいという約束になっている。

ひょっとしたら土日休みなく、細川先生も一緒になって遊ぶつもりかもしれない。


「今から会いに行ってみる?」 「いや、月曜日でいいだろ。 邪魔はしたくない」


てか、会いたくない。 絶対にハイテンションでゲームの話ばかりしてくるから。


そして今は細川先生や、ゲーム研究部の連中のことよりも・・・


「・・・伊藤、もう個室に入っちゃてるんだけど?」


俺は、教室から車椅子を押し続けてくれていた伊藤に声を掛けた。




   ◇ ◇ ◇




『このままクラスの皆にも、茜さんにも披露するわよ』 という五十嵐の発案で、

美倉はウェディングドレス姿のままだ。 少し不貞腐れ顔で車椅子に座っている。

そんな表情をしていても美倉は圧倒的に美しく、そして可憐さも併せ持っている。


圧倒的な美しさと可憐さ、どちらか一方に偏りがちな二つの美点を、これ程高次元

に両立させている人間を、美倉の他に僕は知らない。 非現実的とも思える美貌と

高い知性、そして子供じみた言動。それらを兼ね備えた奇跡の様な存在が美倉だ。


その美倉だが、不機嫌を主張するかのように、教室の隅に留まり動こうとしない。

そして誰もそんな美倉を構おうとしない。 美倉はじっとしていたら眠り出す癖が

あり、その寝顔がとても可愛いものだから、誰もがその時を待ち侘びているのだ。


だが美倉が眠り出すことはなかった。 何か思いついたかのように教室を出て行く。

直ぐに動いた藤堂を押し止めて、僕が後を追うことにした。 丁度話があったのだ。



・・・・・・・・・



予想通りに美倉は執着しなかった。 興味の無い事にはとことん関心を示さない、

その割り切りの良さが美倉らしさであるが、これは人に対してもみられる反応だ。


人気アイドルを、名前すら覚える気も無いようで、まさかの№2さん呼びだった。


クラスメイトの名前や顔は覚えているが、住所にも電話番号にもメアドにも興味を

示さない。 グループチャットも面倒の一言で(かわ)してしまう。会話すら必要最低限。


話し掛ければ応えてくれるがそれだけだ。 言葉を飾ったり、ユーモアを交えたりも

するが、基本的に必要なこと以外話そうとしない。『疲れるから』という理由で。


・・・僕は、そんな面倒くさい奴に惹かれてしまっている。


自ら『恋愛なんか煩わしいだけ』と語る恋愛音痴に、僕は惹かれてしまっている。

好みにドンピシャな見た目だけじゃない。その生き様に、強さに魅入られている。


一生遊んで暮らせる環境に甘えず、努力することに耐えられない身体を酷使して、

努力を止めようとしない。 懸命に自身の弱い肉体を克服しようと頑張っている。


無気力で心の弱い僕が、そんな美倉に惹かれてしまうのは当然なのかも知れない。


特に目標も無く、ただ可能性の芽は残したいというだけで、優等生で有り続けよう

とする打算的な僕にとって、美倉の運命に抗い続ける姿は、(まばゆ)い程に美しいのだ。


もう性別とか見た目とか関係ない次元で、僕は美倉に惹かれてしまっているのだ。


・・・それなのに・・・これは少し狡くはないだろうか?


僕が押す車椅子に、ちょこんと座っている美倉の後ろ姿。


目の前にいる美倉は・・・ドレスに合わせてアップに纏められたプリンセスヘア。

それせいで普段は隠されている、華奢な首から肩や背中にかけての肌理(きめ)細やかな

黒子(ほくろ)一つない肌が、そして滑らかなラインが(あらわ)になり、清楚でありながらも煽情的

な雰囲気を醸し出しているではないか⁉ はっきり言ってエロい! エロ過ぎる!!


・・・あぁ・・・もう、本当にエロ過ぎて・・・エロ過ぎて・・・


ヤバい。 何がヤバいかって、薄々ひょっとしたら? と考えていたことが・・・

僕がうなじフェチであることが、最悪のタイミングで、目の前に最高のうなじが

あるタイミングで、自覚出来てしまったことがヤバい。 頭がくらくらしそうだ。


『首から肩にかけてのラインが最高にエロくて、むしゃぶりつきたくなりますよ』


沢瀬が言っていた言葉が思い出された。 あの時は、何を言ってるんだこの変態女?

等と思ってしまったものだが・・・今なら判る。 あの言葉は百%の真実だったと。


田辺ではなくあの沢瀬が、興奮して語る、それ程の破壊力を秘めたものなのだと。


僕は自身の意識を逸らす為に、昨日今日の話を語り続ける。 どのクラスの出し物が

高評価だったとか、個人では誰が突出していたとか。 美倉の無関心を承知の上で。


「大会議室はまだ賑わっているようだね」 目に映ったものをそのまま口にした。


迂闊だった・・・『ゲーム研の連中が遊んでるのかな?』美倉が返事をしたのだ。

少しハスキーな艶のある声により、美倉の存在を一気に意識させられてしまった。


薄暗い廊下で、美倉と二人きりであることを意識してしまった! ヤバ過ぎる!!

今二人きりはマジでヤバい! 本当に我慢出来なくなる!! 僕は沸騰しそうな頭で

「今から会いに行ってみる?」 とナイスな提案を口にした。 あの騒がしい空間に

逃げ込めば(理性が)助かる!!「いや、月曜日でいいだろ。 邪魔はしたくない」



・・・僕には、美倉の言葉が処刑宣告のようにも聞こえた。




「・・・伊藤、もう個室に入っちゃてるんだけど?」 美倉の声で我に返る。


僕は美倉と一緒に個室に入っていた。 ジェンダーフリートイレは障害者用トイレも

兼ねていて、広さと構造が普通の個室と違い過ぎる為にうっかり気付かなかった。


「別に、行為中の付添いまでは要らないぞ」 そう言って美倉は立ち上がる。


立ち上がることで、より近く迫ったうなじに理性が消飛び、 抱き締めてしまった。

背後から強く抱き締め首筋に、振向かせては唇にキスをした。 激しいキスをした。


抱き締めた時、美倉の身体が強張ったことを感じた。


唇を離した時、美倉の表情に驚きと怯えの色が浮かんでいた。


大きく見開かれた目から零れている涙を見た時、僕は自分の行為を自覚した。




   ◇ ◇ ◇




「別に、行為中の付添いまでは要らないぞ」 そう云いながら立ち上がる。

立ち上がる時に我慢していた欠伸(あくび)が出た。 涙が出る程大きな欠伸だった。

欠伸をしている最中に背後から抱き締められた。欠伸で身体が揺れたのか?

倒れると思われてサポートされた? 首を(かし)げたら、首筋に何か当たった。


そして、振向かされての強引なキス。 まるで沢瀬リターンズな激しいキス。

今日は何故かキスに縁がある一日だなぁ。 天気や温度が関係するのだろうか?


沢瀬は示威行為、№2さんは凡ミス、田辺は仲間外れが嫌、伊藤は何でまた?


「何でキスをしたの?」 考えても判らないので、直接理由を聞いてみる。


「ごめん、驚かせたね・・・我慢が出来なくなって、抱き締めて、キスをした。

 そして、これ以上此処に居たら・・・もっと酷い事をしてしまうかも・・・

 だから・・・僕は先に教室に戻ることにする。 教室なら大丈夫だから・・・」


俺は伊藤の衝撃告白に驚いて、声も出せずにただ見送ることしか出来なかった。




   ◇ ◇ ◇




『・・・という事なんだ』 「・・・そうか」  ・・・予想外だった。


誤解でも勘違いでも無かった。 とはいえ、それ程大した事件でも無かった。

普段より煽情的な装いに刺激されたのか? 祭りの後の高揚感なのか? それで

伊藤が暴走した。 蒼の無防備さを考えれば、何時か起こったであろうことだ。


『・・・そうか、じゃないだろ? 昂輝たちの問題なんだぞ!』 「えっ⁉」


伊藤に襲われてショックを受けた・・・という話じゃないというのか?


『ちゃんと聞いてなかったのか? 伊藤はトイレに入ったら、我慢出来なくなる程

 発情するヤバい奴だって言ってるんだよ! つまりトイレの伊藤はヤバいの!』


『俺は別のトイレを使っているから問題ないけど、昂輝たちは伊藤と同じトイレを

 使っているんだろ? ヤバいぞ! トイレで2人きりになったら襲われるぞ!』


話が予想外過ぎて・・・少し困惑してきた。 先ずは蒼を落ち着かせよう。


「蒼、ちょっと待て、落ち着いて考えろ。何で伊藤はトイレだと発情するんだ?」


『そんなこと俺が知るかよ! 伊藤が自分で言ったんだから! 此処(トイレ)にいたら俺に

 酷い事をしてしまうかもしれないから教室に戻るって。 教室なら大丈夫って』


・・・なんとなく、話が見えてきた。少し、いや、かなり予想外過ぎて驚いたが。


「蒼・・・伊藤が我慢出来なくなったのは、場所がトイレだったからじゃなくて、

 一緒に居た相手が蒼、お前だったからだ。 伊藤はお前に情欲を覚えたんだよ」


『えっ⁉・・・そんな筈は・・・教室でも部室でも今迄襲われたりなんか・・・』


「思い出してみろ、その時他に誰かがいなかったか? 2人きりだったか?」


『・・・それは・・・解かった。 今度実験してみる「するな! 馬鹿!!」


本当に・・・蒼の恋愛教育問題は難しい。


茜さんや沢瀬に任せるわけにもいかんし。


どう説明すれば、ちゃんと理解して貰えるだろうか?


まぁ、今日明日で出来る事でもないから、ゆっくり説明すればいいか。


「もう遅いから、今日は寝ろ。 この話は今後の課題だ」 『・・・判った』




   ◇ ◇ ◇




その頃、蒼と昂輝の話を聞いていた女子一同は・・・揃って悶絶していた。




   ◇ ◇ ◇




同じ頃、伊藤は2回目に突入していた。


蒼の綺麗なうなじや、沢瀬絶賛の肩のラインが、柔らかな唇の感触が、

脳裡から離れてくれなくて、一部の昂ぶりが収まってくれないからだ。


そして伊藤は、この夜眠りに就くまでに、結局5回も致すことになる。

ジャージが最高 :確かに衣服は機能性が最重要だと思いまが、蒼は一点だけ

         重要な処を見落としています。 ジャージは防御力が低い!

         それ以外はほぼ完璧かと。 正直お洒落も良し悪しですし。

         お洒落したら、オカマさんにも好かれちゃうんですよね。

         オカマさんが駄目とは言いません。 個人的に無理なだけ。


筆頭調教師である沢瀬 :茜は蒼に甘過ぎて、調教師としては失格なのです。


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