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025_映画研究部だったよな?

前回の状態から体調は更に悪化してます。

前回の半分のボリュームで正味4日掛かりました。

ストックをためて、せめて週2回更新にしたいと

思っているのですが、そう簡単にはいきませんね。

帝山学園では、定期試験の2週間前から運動部の部活は自粛を余儀なくされる。

顧問が担当教科の試験作成に追われて、部活の監督をすることが出来なくなり

そんな状況下でも、生徒が怪我をしてしまうと学校側の責任問題になるからだ。


だから試験の2週間前にもなると、体育館とグラウンドの使用が全面禁止となる。

結果部室内だけでの活動となり、道具の手入れや部室の掃除以外は出来なくなる。



「そんなことをするくらいなら、早く帰って試験勉強をした方がマシってわけよ」


・・・早く帰って試験勉強をする気が無いだろう五十嵐の科白では無いと思う。


「五十嵐さんも試験勉強をした方が良いのではないですか?」


俺が突っ込んでも全く無駄だろうが、沢瀬の突っ込みにはどう返すのだろうか?


「大丈夫! 来週になったらやるから!」 と言いながらモニターに集中している。


・・・誰が突っ込もうが五十嵐は五十嵐だった。 もうどうしようもないだろう。

こいつ、俺の家だけでは満足出来ずに、映研部室に迄ゲーム機を持ち込み始めた。

自宅がゲーム禁止となる試験期間中に、親の目を盗んでゲームで遊ぶ為だけにだ。



そして今・・・独りでシューティングゲームをしている。



「ソレ、面白いか?」 「・・・イマイチ面白くない」



イマイチ面白くないのには訳がある。本当は格ゲー大会を予定していたからだ。

五十嵐が、一人で、勝手に映研部最強格闘ゲーマー決定戦を企画していたのだ。


それなのにゲーム音痴の俺と沢瀬しかいなかったから、少し不貞腐れているのだ。

多分頭の中が格闘ゲーム一色に塗り潰されていたのだろう。その集中力の反動だ。

そんな状態なら何をしたって『イマイチ面白くない』ことにしかならないだろう。


「何であんたたちしか居ないのよ? 田辺やこたちゃんはどうしたの?」


五十嵐が田辺と小田部(こたべ)さんを名指しするのは、2人と遊びたかったからだろう。

映研部ゲームランク1位が田辺で、2位を争うのが五十嵐と小田部さんだからだ。

その後に僅差で伊藤、大差で仁宮(にや)さんと昂輝、更に大差で俺と沢瀬の順になる。


だからCPU以下の俺と沢瀬しか居ない状況に、五十嵐はがっかりしているのだ。


「田辺は新作を描くと言って帰ったし、にやこたの2人は真面目に試験勉強だよ」


あの2人だが、五十嵐と田辺以外のメンバーの成績を知ったせいか、学年十位内

を目標に掲げて猛勉強をすると言っていた。 五十嵐も見習った方がいいと思う。


「あああ、もう! じゃあ伊藤と藤堂は何処に行ったのよ⁉」「芋掘り」「はぁ?」


「ちょ、美倉、もう一遍言ってくれる?」「芋掘り、裏の森まで芋掘りに行った」


五十嵐がモニターから目を離して俺を見つめ、その状態のまま言葉を失っている。

『ドゴーン』という効果音と共に、五十嵐が操作していたファイターが爆散する。


「・・・裏の森って、グラウンドの向こうにある?」 「そう、その森に行った」


「どうしてあの森で芋掘りなんか出来るのよ⁉」 「山田が畑を造っていたんだよ」


・・・五十嵐が信じられないという顔をしている。俺も今朝は同じ顔だったろう。

朝一に山田がA組にやって来て『少し頼みがある』と相談を受けた時の俺の顔だ。




   ◇ ◇ ◇




帝山学園のグラウンドは創設時から、お嬢様学校の頃から変わらない狭いものだ。

二つの校舎と二つの部室棟に囲まれた中庭と大差ない広さしかなく、故に野球部や

サッカー部といった広い場所を必要とする部活は、検討することさえ許されない。


その代わりに180ヘクタールもの広大な森を有していた。森の中には遊歩道が整備

され人工の池や小山が造られ、12棟もの東屋や学生寮まで建てられていたという。


当時の帝山学園は、周囲を囲む塀に護られた乙女達の別世界として存在したのだ。


しかしその別世界、乙女達の楽園は厳しい現実社会の前に消滅することになった。

バブル崩壊後の学校経営再建の折に森の8割は売却され、嘗ては学生寮があった

場所にはマンションが建ち、池や小山はショッピングセンターへと様変わりした。


・・・それでも森の2割は残った。 大都会の緑のオアシスであった学園の森は

帝山学園の象徴でもあったから、当時の理事会も最大限に残す努力をしたのだ。


元が大きいからたった2割でもかなり広い。 なんと大阪城公園の1/3もの広さだ。


山田はそこに畑を作った。 学校に無断で。 いつもの如くサバイバル術の一環だ。




「といっても、木を切り倒したりはせずに開いている土地を利用しただけだがな」


「いや、それでも学校に無断は駄目でしょうが?」 「うん、駄目だったってさ」


「・・・それで、山田君はどうなるの?」「映研に入ることになった」 「はっ?」


「ごめん、そこでどうして映研に入ることになるのかが解からないんだけど?」


「個人で畑を造るのは駄目だけど、部活で造るのなら構わないということだよ。

 事後処理になるけど、学校側も面倒事が嫌だからそういうことにしたいんだ」


「それで、映画研究の活動で芋畑を造ったってことにすると?」「そういうこと」


「・・・・・・」 五十嵐が言葉を失っている。 そうなるのも当然だと思うが。


本来なら山田がサバイバル研究部とかを創って、そこの活動にするべきだろうが、

誰も帝山一の変人山田が主宰するクラブの顧問になんかなりたくないらしいのだ。

そして帝山学園のクラブ規定だと、顧問不在の部は認められない事になっている。


「そんな理由で・・・無理やり映研での芋作りを認めることにしちゃったの?」


「体裁が全てってことだね。 映画研究部内サバイバル研究班長山田だってさ」


「蒼君、これなんかどうでしょうか?」 沢瀬がスマホで焼き芋器を見せて来る。

業務用の大きなものだ。 少しお高いが、これなら大量に焼き芋が作れるだろう。

「これでいいと思う。 明日着でお願い」 「えっ⁉ 何買うの? 焼き芋するの?」


「うん、映研部の名義料として1割、収穫の手伝いであと2割、合計3割を呉れる

 っていうから明日はここで焼き芋パーティでもしようかな? と思うんだけど」


「じゃあ明日午前着で発注しますね」 「私は1年生にメールを送っておくわ」


五十嵐は俄然元気を取り戻した。 多分焼き芋パーティに合わせて、格ゲー大会の

同時開催を目論んだのだろう。 好きにすればいいと思うが。 ところで山田はどう

するのだろうか? 一応映研部員になったから昂輝に誘うよう云っておいたのだが。


・・・格闘ゲーム大会も同時開催されそうだと、昂輝にメールを入れておくか。

芋喰いに来てゲーム大会に巻き込まれたら、山田も気を悪くするだろうからな。




   ◇ ◇ ◇




山田が芋よりもゲームに夢中になっている。 ちょっと、というかかなり意外だ。


始めから大会に参加する意思の無い俺たち4人が、焼き芋を作っている間に他の

4人と山田ともう一人のゲストである江澄(えすみ)さんの、計6人によるトーナメント戦が

行われ、最終的に勝ち残った山田と江澄さんによる決勝戦が行われている最中だ。


江澄さんは田辺やにやこたと同じクラスの友達らしい。 そういえば奈良では一緒

だったかもしれない? 基本的に憶病で上級生や男性が苦手らしいのだが、ゲーム

大会という言葉に釣られて、こんな処に顔を出す程のゲーム大好き少女とのこと。


「みーちゃんは私のゲーム友達であり、BL友達でもあるのです」 「漫研なの?」

「それは・・・入部はしたのですが、櫻崎先輩が苦手で直ぐに辞めちゃいました」


臆病で上級生が苦手なら櫻崎先輩は駄目だろうと納得。 でも男性が苦手なのに

山田を相手にゲーム出来るのだから、それ程ゲームが好きなのだろう・・・うん?


「あの子、少し様子がおかしくないか? 相手が山田だからストレスを感じてる?」


「う~ん、多分違いますね。 モニターの応答性が気になっているのだと思います。

 最初にそんな事を言ってましたので、山田先輩のような強敵相手だと、より一層

 気になるのだと思います。 相手が男性だと無理ならゲームなんか出来ませんし」


モニターの応答性がなんだかよく解らないが、ゲーム好きの田辺が言うならそう

なんだろう。 山田の表情に変化が無いのは、ポーカーフェイスということかな?


「それか、普段から応答性の悪い普通のTVでゲームしているのかも知れませんね」


「・・・それって、普通のTVはあまりゲーム向きじゃあないってこと?」


「動きの速いゲームの場合は、高性能ゲームミングモニターの方がやり易いです」


成程。五十嵐も田辺も何も言わなかったけど、結構ストレスを感じていたのかも?




俺にはよく判らなかったが、緊迫した好ゲームの結果山田が優勝した。田辺による

と最初は江澄さんが優勢だったが、山田の防御の硬さに焦った江澄さんが操作ミス

をしたことで、一気に形勢逆転したらしい。そこからは一方的な展開だったとか。


江澄さんが大きなマイコントローラー持ち込みなのに対し、山田は標準のパッド

使用なのにだ。これってひょっとしたら凄い事なんじゃなかろうか?知らんけど。



ともかくそんな感じで格ゲー大会は終了し、そのまま焼き芋パーティに移行した。



「山田って普段からゲームしてるの?」 誰もが聞きたいだろうことを聞いてみる。


「・・・親がプロゲーマーだから、しょっちゅう練習相手をさせられている」


成程ね、それでゲームが上手いんだ。 と、俺は納得しただけだが、周りは吃驚だ。

プロゲーマーってそれくらいに数が少ない。 公認ライセンス所有者は300名程度。


江澄さんはそんなことまで知っていた。 本当にゲームが好きなんだなぁ、この子。



でも俺はそんなことには興味ない。山田に本当に聞きたかったことを聞いてみる。


「そもそも何で映研部に間借りしたの? 活動的には園芸部の方が近いのでは?」


「園芸部は女子ばかりでな・・・唯一の男子としていいように使われる気がした」


・・・凄く尤もな理由だった。 的確な判断だろうと思う。


「それに真面目な園芸部よりも、銘銘が好き勝手なことをしている映研部の方が

 俺に合っている気がしたからな。 ここなら何でも好き勝手が出来そうに思った」


・・・凄く迷惑な理由だった。 的確な判断だとは思うが。




   ◇ ◇ ◇




格ゲー & 焼き芋大会開催日から、色々と増えたものがある。



先ずは部室棟地下1階の一角に、パーテーションで仕切られた貯蔵庫が造られた。

昂輝たちが掘り出した芋が予想以上に大量だったことに加え、それでもまだ畑の

総面積の1/5に過ぎない事から、かなり大きめの保管場所が必要になったのだ。


そして後から知ったことだが、さつま芋は1~2ヶ月熟成させることで甘みを増す。

その為の熟成場所を兼ねた保管場所として選ばれたのが、冷暗な地下空間だった。



更には映画研究部にもう1人の部員が増えた。 江澄さんが映研部に入ったのだ。

正式には映画研究部内Eスポーツ研究班長の江澄さん。 最早何でもありな状況だ。


既設のゲーム研究部はあるが、そこはゲーム制作が中心で趣旨が違うと言うのだ。

多分はただの口実だろう・・・本当の目的は山田とゲームすることなんだと思う。


だって映研部室内の片隅、Eスポーツ研究班の壁に高々と《 打倒山田 》の文字が

掲げられているからだ。・・・一応は先輩なんだから山田先輩にしてあげようよ。


ちなみにEスポーツ班が使用する追加機材の選択は、全て江澄さんにお任せした。

かなりの金額になった様だが、DVD販売による収益が有る為余裕で(まかな)えたそうだ。



そして今週から試験勉強を始めるから大丈夫、と言っていた筈の五十嵐だが・・・


「みーちゃん、もう一回、もう一回勝負よ!」 「OKです。何回でも返り討ち!」

           「 「 BATTLE START !! 」 」


・・・・・・多分、今回も大丈夫じゃないだろう。 まぁいつものことではあるが。



昂輝と伊藤と山田は今日も森で芋掘りだ。 試験前には完了させたいのだという。

試験前に拘る理由は解からないが、三人共楽しそうにしているから全然問題無い。



問題が有るとすればアレだ。 Eスポーツ班の活動スペース確保の為に、資料室の

整理をしたのだが・・・その時に見たくなかった物を見てしまったということだ。


部室に置かれているウェディングドレスが・・・何故か2着に増殖していたのだ。

俺を含めて、誰もが見て見ないふりをしたのだが、多分誰もが気になっている筈。


・・・・・・でも誰も・・・何も言わない。 多分怖くて何も言えない。



きっと、多分、恐らくは・・・沢瀬が関わっているブツだろうから。

それなのに、まるで其処には何も無いかのように振舞っているから。



聞こうとしたら、笑顔で無言なんだよ。うん、オーラを纏った笑顔。



・・・・・・ホント何なのかな? あの世紀末の覇王的な威圧感は?

山田も気を悪くする:ゲームに興味がない、ゲーム嫌いな人間の発想です。

          時間の無駄(沢)、何が面白いのか解らない(昂)、眠い(蒼)


後から知ったこと:この芋あまり美味しくないわね(五) 素人栽培の限界かな(山)

         えっ!美味しくないの? 食べたい!(蒼) ← 好奇心が勝った

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