002_沢瀬と田辺
読んでも疲れない程度、最低限の推敲,校正が疲れない程度のボリューム
として、一話最大5000文字までを目安にしようと考えています。
・・・まぁ完全に成行き次第ですが。
一限目をサボってティータイムを楽しんでいたら、まさかの絶叫タイムになった。
その原因は俺の上半身裸な写真画像。 別にエロ画像ではない、ただの風呂上り。
注目ポイントは、まるで女のように膨らんだ胸・・・中身はただの脂肪だろうが。
そんな画像を親友とはいえ高校生男子に送るなんて・・・普通はしないぜ。
それを躊躇いも無く送り付けて、ブラを選ばせようなんて普通じゃないぜ。
・・・流石俺の姉ちゃんだよ。 その大胆な行動力!・・・益々惚れたぜ!
コラだ! フェイクだ! と、五十嵐が煩いからばっさりと脱いでやったぜ。
姉ちゃんから『平均的なんじゃない?』と云われたモノをしかと見やがれ!
愕然とする五十嵐を見て悦に入ったが・・・沢瀬には無茶苦茶叱られたぜ。
・・・だがな五十嵐、『男に負けた・男に負けた』とショックを受けているよう
だから言ってやる。 ・・・男だって胸で女に勝つのはショックな事なんだよ!
だからお前も俺も等しく敗者・・・まさかのWノックアウト、勝者無き決着。
そんなもん・・・ただ虚しいだけだぜ。
・・・・・・・・・
「・・・蒼君?」 気が付けば巨乳(沢瀬)に抱き着き甘えていた。もう泣きそう。
「大丈夫ですよ! とっても奇麗な美乳です!」 褒められているのに涙が出た。
「胸だけが不足していた蒼君でしたが、これで完璧です!」 追い打ちは止めて!
確かに今まで無かったものが追加されて、肉体的にはプラスかもしんないけどね。
精神的にはマイナスなの。 解かんない? 男として大事なもの、それが無くなった
みたいな・・・そんな感じがするの? それが悲しくて、切なくて、やりきれくて。
・・・解かんないかな? 男のプライドみたいな?
・・・乳じゃないんだよ。 欲しかったのは。 求めているものは。
「欲しいのは筋肉なんだよ!! なんで脂肪なんか付くんだよ!!!」
その為に無理を通して柔道部なんかに入って、きつい練習を熟しているのに。
吐くギリギリまで、お腹を壊すギリギリまで、頑張って食べ続けているのに。
・・・それなのに、筋肉が付かずに胸が膨らんだ。 何なんだよ! これは!
思わず床を両拳でドンドン叩いた。 そんなことをしても、意味等ないのに。
ひとしきり床ドンしたら、何かすっきりした。 うん、気にしても仕方ない。
・・・いつかはバレると思っていた。 それが今日になっただけのことだ。
皆に言い出すきっかけが無くて、言い出し辛くて困っていたから寧ろ好都合?
・・・そういうことにしておこう。 きっとそれが最善だろうと思われるから。
足元が見えなくなる程の、動きを阻害する程の大きさじゃなかったのは幸いだ。
それに、誰も気持ち悪がっている素振りが無い・・・何か言いたそうではあるが。
それでは昂輝、先ずお前からだ。 そう思って昂輝の顔を見つめる。
「蒼、答えにくかったら答えなくていいから、一応質問させてくれ」
昂輝が普段通りのポーカーフェイスで静かに口を開くが、俺には解かる。
こいつなりに・・・かなり動揺している。 俺の生乳を見たからだろうか?
「お前、実は女だった・・・なんてことはないよな?」
昂輝の思ってもみなかった質問に驚きを覚えながらも、零し気味に答える。
「何馬鹿な質問すんのさ? お前も沢瀬も俺のちんKOを見たことあるだろ?」
「えっ⁉ まさか、ホテル代わりって⁉」 俺の言葉に何故か五十嵐が喰い付く。
ホテル代わりって何のことだよ? ラブホ⁉ いきなり何でそんな単語が?
五十嵐のラブホ発言に面喰っていたら、昂輝が補足説明をしてくれた。
・・・成程、部室棟のホテル代わりってのはラブホ代わりってことだったのか。
てっきり簡易宿泊所としての利用だと思っていたよ。
それにしてもラブホ代わりか・・・確かに使えるな。
うちの学校、そこそこのお金持ち学校だけあって末端の部室すら充実している。
広さも十分に有るから私物持ち込み放題。現に今座っているソファは俺の私物で
ベッドにもなる代物。100インチの大型TVにブルーレイプレイヤーも俺の私物。
他の面子も色々持ち込んでいる為、とても学校内とは思えない空間になっている。
はっきりいって無茶苦茶快適・・・共用且つ事前許可必須とはいえ風呂もあるし。
なんなら住みついてもいいんじゃね? レベルな快適空間が構築されている。
・・・・・・・・・
それはそうと質問への答えだな、昂輝が先か五十嵐が先か。
「沢瀬も昂輝も、昔っからの付き合いで一緒に風呂に入ったことがあるんだよ。
俺もちんKOも今よりずっと小さい・・・小学生頃の話になるけどな」
そんで二人から『ホントに男(の子)なんだ!』と云われたのは忘れたい記憶だ。
・・・二人共まだ覚えているのかな? 忘れてくれていたら嬉しいんだけどな。
ということで先ずは五十嵐、納得したか? 二人とはエロい関係じゃないからな。
問題は昂輝の質問だ。 実はこれに対しては明確な答えが無い。 不明点だらけだ。
「真性女性化乳房症というらしいんだけど、はっきりとした原因は解かってない。
俺って腎機能も肝機能も弱いし、薬を飲んだら当然のように副反応に苦しむし。
とにかく体の中のバランス調整機能が無茶苦茶で、そのせいか女性ホルモンの
比率が平均的な女性よりも多くなっていたらしいんだよ。 そんで半年くらい前
から、胸の辺りに変な痛みがあったりしてて・・・気が付いたら膨らんでた」
「今も痛むの?」(沢)「今は乳首がちょっと痛い程度」「だからブラか」(昂)
「ちょっと待って、美倉って柔道部だよね。それでいままでバレなかったの?」
昂輝が納得したかと思ったら伊藤が質問してきた。 まぁ気持ちは解かる。
「こいつは最初からインナー着用だし、着替えも専用スペースがあるから」
そう、普通柔道着の下は男だと裸なんだけど、俺は女子同様にインナー着用で、
着替えも男子更衣室の一角にカーテンで仕切られた専用スペースを用意されて
いる。理由は見た目が女子過ぎて色々ヤバいから、らしいが本当に面倒くさい。
さてっと、最後は沢瀬になるのだけど・・・こいつの表情はちょっと怖いかも。
なんか、すっごく期待しているというか、笑顔なのに目が野獣の目の様な・・・
何となく・・・何を言いだすか想像したら怖いから考えたくないというか・・・
沢瀬って、俺の大事なちんKOを要らない子みたいに思ってる節があるのよね。
だから何も聞かずにスルーしたいというか・・・等と考えていた時
《 バン!!! 》
「蒼先輩!! ふたなりに成っちゃったんですか!!!???」
扉が派手な音とともに開き、田辺のソプラノボイスが鳴り響いた!
「 「 「 「 「 田辺⁉ 」 」 」 」 」
おいっ・・・一年坊主、お前授業どうしたよ?
そんでもって、ふたなりって何?
◇ ◇ ◇
呆れたことにこの馬鹿、部室に隠しカメラを仕込んでいたらしい。
この中で一番背の高い昂輝に取り外して貰い、伊藤(=生徒会)に渡した。
『止めて』という田辺の叫びは完全に無視して。
破壊するか保管するかは伊藤(=生徒会)に一任しようと思う。
その隠しカメラで俺の胸を見た田辺は、授業を放り出して来たらしい。
お前・・・成績大丈夫か? お前は五十嵐組だったはずだが?
「あんなものを見せられたら、授業どころじゃありません!」
えっ⁉ お前、そっちの方は五十嵐組じゃないだろ?
「その五十嵐組ってどういう意味よ?」 五十嵐が不満を零すが今は無視。
「それでふたなりって何?」 どこかで聞いたことがある気がする言葉だ。
「ふたなりとは、ちんKOを装備して攻めスキルを手に入れたメスのことです」
解かった様な、解からない様な・・・でも思い出した。
姉ちゃんが主宰する同人サークルが発行する薄い本の中にそんなのが居た。
巨乳と巨根の双方を併せ持つ淫獣JD・・・名前は忘れた。
「俺をあんなのと同一視するな・・・だいたい俺は男だぞ」
俺の言葉に田辺は安堵する。
「ですよね。 安心しました。 やはり蒼先輩は受けのオーソリティです」
田辺の言葉に俺は安堵してもいいのだろうか?
みんな頷いているから、多分いいのだろう? 一抹の不安は残るが。
「でも田辺ちゃん、理由はどうあれ隠しカメラは駄目ですよ」
映研部長の沢瀬が諭す。 口調は柔らかいが目が少し怒っている。
「そんなぁ⁉ じゃあどうやって蒼先輩の濡れ場を観ろというんですか?
蒼先輩、そういった状況になりそうなら私にも連絡をして貰えますか?」
こいつは何で俺が部室で公開濡れ場を演じると思い込んでいるんだ?
これが腐女子の本性? いや本能なのか? 男は全てエロを紐付けか?
「部室のソファーベッドは、蒼先輩の私物ですよね?」 「ああっ」
「エロいことする為のものですよね?」 「違う、仮眠&休憩用だ」
「その程度なら保健室を利用すれば良いのでは?」 「保健室は駄目なの!」
田辺が何故? という顔をしているが、保険医の危険性を知らないのだろうか?
何度も弱って寝ていたら、いずれは豹変して襲ってくるんだぞ。
「 「 それは蒼(君)だけだから! 」 」
俺が保健室の危険性を説いていたら、幼馴染ズに訂正された。 そうなのか?
ファーストキスは小6、相手は保険医さん(女)。
童貞喪失未遂は中2、相手はやっぱり保険医さん(女)。
つまり俺に保健室は鬼門なのだ。 しかも帝山学園の保険医は男だ。
姉ちゃんにも女より男に気を付けろと云われているし、柔道部だって昂輝と
一緒じゃなければ許可されなかっただろう。 全くもって難儀なことだ。
「ということだから、お前はもう教室に戻れ」 「やです。一緒にお茶します」
結局映研部員全員が一限目サボりとなった。
沢瀬・・・後で怒られるんじゃなかろうか?
◇ ◇ ◇
放課後、映画研究部は休みとなり俺と沢瀬でブラを買いに行くことになった。
五十嵐と田辺も『一緒に行く』と纏わり付いたが『部活に行け』と断った。
あいつらが加わったら着せ替え遊びが始まって、やたらと時間が掛かるから。
ちなみに姉ちゃんから行きつけの店を紹介されていた。 割と近所で便がいい。
店内にはカーテンで仕切られている謎エリアもあったが、そこはスルーする。
「それで、蒼君はどんなものを考えているのです?」
「色とデザインはシンプルで、着け易くて着け心地のいいもの」
「色とデザインが可愛くて、着け易くて着け心地のいいものですか。
ちょっと見繕ってきますから、試着室で待ってて下さいね」
そう云われて試着室で待っているわけだが、無駄に広いしやっぱり椅子もある。
やっぱ女子って、下着さえも休憩が欲しくなる程時間を掛けて選ぶのだろうか?
その点、男は楽だよな。 デザインとサイズを確認するだけで十分だもんな。
だから下着は通販で十分、服は現物を確認したくなるけどね。 肩のとことか。
・・・あれっ、通販?
・・・女物でも下着なんかは通販で十分じゃね?
トップとアンダーは昨日姉ちゃんが測ったデータがあるわけだから。
・・・試着も要ら無くね? 着け心地なんかは素材で決まるものだろうし。
・・・・・・・・・
あれぇ⁉ わざわざ店に来なくても良かったのでは?
着け方なんて、姉ちゃんに聞けば解ったんだし。 なんなら着けて貰えるし。
「・・・すまん。無駄に時間を使わせた」
かご一杯にブラを選んできた沢瀬に、先ずは詫びを入れる。
きょとんとして「何のこと?」と訊ねてくるので、答えたら微笑で返された。
「私も蒼君の着せ替えは好きだから・・・
それに蒼君を、もっともっと近くから見てみたいから」
そう言って、上半身裸の俺に顔を赤らめる沢瀬・・・やっぱりガチな百合だった。
「蒼君・・・これから益々女の子に成っていくのですね♡」
これ以上女性化して堪るか! ちんKOは絶対死守するぞ!!
注意されたが、着け易さや着け心地に拘るなら通販は止めた方がいいらしい。
作者も腎機能も肝機能も弱くて、薬を飲んだら当たり前に副反応に苦しみますが
真性女性化乳房症でも女顔でもありません。顔に関しては二枚目俳優顔とか男前
とか評されていたので・・・多分男性的なのだろうと思います。
ちなみに仮性女性化乳房症というのもありますが、これはただの肥満のようです。
謎エリア :エロ下着ではなく、オーダーメイド品のエリアです。
3Dスキャナを用意した巨大試着室を想像して下さい。