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017_初めての鎌倉

今回は少しですが伊藤と昂輝のモノローグも入ります。

蒼の夢に関するモノローグでは蒼の特殊性がまた出てます。

蒼は結構神経質なのか、もしくは完全主義者なのかもしれません。

合宿を終え、自宅で6日の休養を取った俺は車窓から見える富士を眺めていた。

今日は幸い雲が無く、富士山も綺麗に見えてはいるが、雪が無いのは味気ない。

真夏の富士山は、なんというか、ただの大きな盛り土? イマイチ感動が無い。

富士山以外に特に目を引くものも無く、正直車窓の風景にも飽き始めていた。


「鎌倉って、あとどれ位掛かるの?」 「そうね・・・3時間くらいかしら?」


目的地は鎌倉の別荘、今は姉ちゃんの同人サークルの拠点になっているそうだが。

そこに向かって、俺たち姉弟と田辺と櫻崎先輩の4人でクルマを走らせている。

4人で走らせるといっても免許所持者は2人だけで、運転するのは櫻崎先輩だけ。


姉ちゃんは俺と一緒に4人乗りミニバンの後席で寛いでいる。 田辺は助手席で

ナビも務めずに爆睡している。 櫻崎先輩一人に働かせているのはペナルティだ。

昨夜俺の寝所に忍び込んできた。不思議な程に懲りるということを知らない人だ。


新幹線じゃなくクルマで移動する理由は、手荷物では済まない程の荷物量だから。

その荷物量の理由は、今日から2週間を鎌倉で過ごすことになっているからだ。

目的はその期間中、別荘近くの海の家を貸し切り状態にしてることから判明済み。


・・・海の家で焼きそばを食べる為に、ポンと二千万を出すのが俺の姉ちゃんだ。

尤も、海の家こそ焼きそばが目的だが、鎌倉滞在にはもっと別の、今回のメインと

なる目的もあるのだが・・・それはまだ一週間も先の話で、それまでは殆ど遊び。


「ザッキー、桜エビが食べたいから清水で降りなさい。 そこからは

 1号バイパスで由比を目指してね。 私はお店に予約を入れておくから」


「イエス!マム。ところで桜エビって、あんなちっこい奴が美味しいんですか?」


「美味しいわよ。 何より蒼の好物なの」 「ラジャー! ゆい目指してGOGO‼」


うん、生桜エビの刺身は絶品だね! 生の魚介類の中であれが一番旨いと思う!

最高に旨いのは旬の生だが、冷凍した桜エビも冷凍焼けに注意すれば十分に旨い。

生以外だと焼きならサザエ、天ぷらならワカサギ、フライならアジかホタテかな?

まぁ天ぷらにしろフライにしろ、魚介より茸や山菜,野菜の方がずっと好きだが。



   ◇ ◇ ◇



由比は落ち着いた、というより寂れたといった方がいいような佇まいに包まれた

街だが、桜エビを食べさせる店だけは賑わっていた。 最終目的地近くの由比ヶ浜

と何か関係があるのかな? と思い調べて見たが特に関係性は見当たらなかった。

同じく海に面した土地だから、同じ様な由来に()り、同じ由比になったのだろう。


日本の地名あるあるだ。 ・・・たまたま物理的にもかなり近いというだけで。



桜エビ料理を楽しみ、鎌倉滞在組&先行組へのお土産用に桜エビを購入してから、

再び高速で東を目指す。 目指す別荘は鎌倉市と逗子市の境にあるというが、実は

鎌倉の別荘には、てか鎌倉には一度も行ったことが無いから何も解かっていない。

取り合わず判っていることは、三階建てでベッドルームは10室ということだけ。


姉ちゃんのサークル《眺富の会》の正会員は姉ちゃん含め12人だが、櫻崎先輩や

田辺のような準会員も含めれば20人になる。 その内の4人が鎌倉に、残り13人

が軽井沢の別荘で同人活動に勤しんでいる。 人数の差は単純に人気の差だとか。


軽井沢には行ったことがあるが、静かな森の中にある如何にも別荘といった建物

で、とてもリラックス出来る雰囲気を醸し出していた。 比べ鎌倉の別荘は、高級

住宅地の中の一物件といった感じで別荘感も非日常感も無い。 元々が母ちゃんの

仕事用の別邸だったのだから、利便性はいいがリゾート感の無い残念別荘らしい。


話は逸れたが、車中の4人と鎌倉滞在組の4人で8室だから残りは2室、新幹線

で先行しているのはいつもの面子、アイアイコンビに昂輝と沢瀬の計4人。 8月

は10日から25日まで部活休養期間だから、昂輝も五十嵐もフリーになるのだ。



ということで合計人数は 4+4+4=12人・・・つまり部屋数が不足する。



・・・俺と姉ちゃんが同室で、沢瀬,五十嵐,田辺の内の2人が同室かな?



なんて予想をしていたら、滞在組の4人と櫻崎先輩の5人がイベントの準備で、

有明のマンションに移動するという事だった。 櫻崎先輩も前以て指示されていた

ようで、ごねたり文句を零したりすることも無かった。 傍若無人な櫻崎先輩が、

姉ちゃん以外の人の指示に素直に従う・・・その姿から先輩の覚悟の程が窺えた。



・・・あの櫻崎先輩も、将来のことを真剣に考えていたんだな。



等と・・・当たり前のことに感嘆してしまったのは、多分俺がまだ子供だからだ。




   ◇ ◇ ◇




鎌倉の別荘は一見オフィス兼用住居といった感じで、殆ど寮と呼べる状態だった。


洗面付トイレは各階にあり、ダイニングキッチンとオフィス兼リビングが1階、

風呂は凝っていて、渡り廊下で繋がった別棟に露天風呂とジェットバスがあった。

2階はゲストルームが6室で、4室を滞在組が私室化していた。 それと遊戯室。

3階はメインルームが4室、ゲストルームとメインルームの違いは広さとベッド。

ゲストルームはセミダブルでメインルームはクイーン。 他に大きな違いはない。


3階の1室を俺と沢瀬と田辺が使い、姉ちゃんと五十嵐が1室ずつ使用となった。

昂輝と伊藤は、女性陣とは階を変えると言って、2階の残り2室使用に決まった。


・・・1室だけ何か変じゃね? あと、俺も3階に居るんですけど?


等という俺の疑問は全員にスルーされ、姉ちゃんから『モテモテね』と云われた。


荷物運びで予想外のトラブルが発覚。 荷物用エレベーターが故障していたのだ。

『普段使わないから、誰も気付かなかったのね』の言は尤もだが、困ったことだ。

3階に上げる荷物はどれも重いのだ。 俺たちが車で運んだ分も、先行組配送分も。


大型のキャリーケースは、キャスターのおかげで軽々と運ぶことが出来るが持つ

となると話が変わって来る。 しかもしっかりした造りの物ほど重い。 ケース単体

で5kgを超え、中身を詰めれば10kg超えも考えられる。最も重い姉ちゃんの物は

総重量で20kgを超えている。 ・・・何を詰めればそんなことになるのだろうか?


昂輝は、くそ重たい姉ちゃんのケース2個を軽々と担いで階段を上がっていく。

伊藤は1個だが、やはり軽々と扱っていやがる。 俺だって負けてはいられない。

ふんす!と気合を入れて持ち上げようとすると、周りから止められた。 力仕事は

男子2人に任せなさいということだ。 ・・・どうする? 今だけ女子発動? 否!


「俺も男だ!」 「私に腕相撲で勝てたら男子と認めて荷物運びを認めますよ?」


思わぬ形で沢瀬からの挑戦状を受け取ることになった。そして負けた。えっ何で?

確かに俺より身長も体●も沢瀬の方が上だが、まさか腕力迄俺より上だったの?



・・・俺、本気出したよ・・・それで負けたの?


・・・俺、今日から男子と認めて貰えなくなるの?


・・・俺、そんなに非力だったの? 実力で女子扱いされる程に?


確かに柔道部2年男子じゃ筋力最弱、1年込みでも佐川の次に弱いけど・・・女子

には負けていない。 女子部最強の鹿原先輩にだって、顧問の望月先生にだって。


・・・あれ? 俺が弱いんじゃなくて・・・沢瀬が無茶苦茶強いだけ?


・・・よし! 確認だ! 五十嵐、勝負しようぜ! ・・・・・・負けた。

次! 姉ちゃん! 悪いが俺の名誉の為に勝負だ! ・・・・・・また負けた。

最後は田辺・・・年下相手に悪いが全力で勝負! ・・・・・・田辺にも負けた。



・・・やっぱり、俺って女子より弱いの?

鹿原先輩たちには気を遣って貰ってたの?

・・・弱過ぎて、同情されちゃってたの?




・・・もう・ふて寝・・・・・・夕寝でもするか。


程よい大きさのクッションがあるから、これを抱き枕にして・・・


「こんな処で寝るな。 部屋に連れて行ってやるから」


昂輝が俺をお姫様抱っこしてくれた。 サンキュー、このままベッドにGOね。

すれ違いざま伊藤に『えっ? 美倉、大丈夫?』って心配されたけど、大丈夫よ。

ちょっと疲れて眠くなっただけだから、って昂輝が説明してくれた。 助かるわ。



   ◇ ◇ ◇



「あいつ本当に柔道部なの? しかもかなり強いって旭ちゃんが言ってたけど?」


「藤堂君に聞いたけど、集中力が凄いって・・・ 『蒼は腕力も体力も無いが、

 集中力と対応力がずば抜けて凄い! 一瞬でも隙を見せれば最適解の反応を

 見せられては持っていかれる。 こちらから手を出せば確実に返しを食らう。

 出来るのは蒼に手を出させて、ひたすらにそれを堪え切ることだけだ。

 それを繰り返しているうちに、蒼は体力と集中力を切らして弱体化する。

 その状態でないと誰も蒼には勝てない。 事実開始2分迄なら顧問の猿石五段

 ですら、蒼に圧倒されている。 もしあいつに腕力か体力のどちらかがあれば、

 帝山柔道部最強は間違いなく蒼だ。 その証拠が寝技だ。 あいつは寝技の時に

 自分の身体を回転させ、その遠心力で、自身の体重を腕力に付加することで、

 相手を自在に動かすことに成功し、試合を完全に支配している』 ・・・と、

 寝技では顧問の猿石先生でも、蒼君には圧倒されていると言っていましたよ」



「何? 美倉の話? 猿石先生ってことは部活? ところで、茜さんと田辺は?」


1階に戻ると茜さんと田辺の姿が見えず、五十嵐と沢瀬が美倉の話をしていた。

その美倉は少し目を離しただけで眠り姫状態になっていたし、あの2人の忙しさ

には慣れているが、茜さんもそんな人だったの? 流石は美倉の姉で田辺の師匠?


「あー、伊藤、荷物ありがとね。 茜さんたちは買い出しに行ったよ。 それで美倉

 の話だけど、あいつが本当に柔道強いのか? って疑問を感じたって話してた。

 伊藤は何か知ってる? 藤堂は短時間なら美倉は強いと思っているらしいけど」


「藤堂がそう思っているなら、そういうことだと思うけど? 正直僕には柔道は

 判らない・・・そういえば会長が柔道部長なんだけど、美倉は女子並みの筋力

 だけど全ての技をマスターしていて、上手さが頭抜けているとか言ってたよ」


僕に言わせれば美倉程格闘技が似合わない男子はいないと思うし、強いとはとても

思えない。 でも上手いと言われれば素直に頷いてしまう。 それ程に美倉は知力と

胆力と応用力に優れており、全てを卒なく器用に(こな)す。 そして素早くて身軽だ。


・・・ふむ、考えてみれば美倉って柔よく剛を制すの言葉を体現しているのか?

だとしたらやはり強いのかな? ・・・あの美倉が? ・・・一応は黒帯らしいし。



   ◇ ◇ ◇



・・・相変わらず、驚く程に寝つきのいい奴だ。階段を上っている時はまだ起きて

いる気配があったが、廊下を歩いている僅かな間に寝入り、今では熟睡している。


・・・可愛らしくて無防備な寝顔を晒して。


・・・困ったことに俺の右腕を抱き枕にして。


・・・非常に困ったことに腕にしっかりと当たっていて。


・・・・・・・・・本当に困ったものだ・・・色即是空、色即是空。


高梁がもう一緒には寝られないと零すはずだ・・・中学時代より遥かにヤバい寝顔

になっていやがる。 もうこれを男と思うなんて完全に無理だな。 蒼には悪いが。


同じ女子顔の高梁とは、本質的に何かが違うと感じてしまう。 かといって、女子

とも言い難い・・・沢瀬たちとも何処かが違う。 これは、ホントに何なんだか?


起きている時は目が覚めるような美人なくせして、寝ると何でこんなに可愛らし

くなるんだ? この可愛らしさは人として異常だろう? まるで仔猫じゃないか⁉

それなのに時折漏らす声は、艶があってなんとも色っぽい・・・最悪の組合せだ。


魅力のハイブリッド・・・威力が有り過ぎて、普通に理性を破壊してくれる。

沢瀬の奴・・・よくこんな奴と毎回当たり前のように一緒に眠れるものだな?


・・・男の性欲と、女の性欲とでは・・・発露条件に違いがあるのだろうか?


・・・起こしてしまうかもしれないが、腕を引き抜くしかない。 このままじゃあ

マジで理性が持たなくなる・・・先ずは優しく蒼の手を解いて仰向けに寝かせる。

・・・本当に綺麗な顔だ。 ノーメイクでこれだ、女子に嫉まれるのも仕方ない。


あの茜さんが、妬ましいと零す程なのだから。


・・・実際どの程度本気なのかは判らないが。


でも中学時代の女子の反応は多分本物だった。


男子からも距離を置かれ、蒼は孤立していた。


体力が無い為に、雑談すら重荷であった蒼は誤解されていた。


俺も沢瀬も人付き合いが下手で、蒼を取り成してやることなど出来なかった。


結果、蒼は不愛想で自分勝手で我儘なお金持ちの御子息様という扱いだった。


蒼はそれら全てを事実だと肯定した。 最も肝心なことが考慮されていないただの

結果に過ぎないそれら全てを、一切弁明することなく受け入れた。 多分弁明する

作業を厭うたのだろう。 或いは弁明する体力や気力が無かったのかも知れない。


結局、蒼は金持ちで頭が良くて顔がいいだけの、高慢ちきで嫌な奴と認識された。

誰だってもうこれ以上は動けないとなったら、ひとり足を止めるし、協力も拒む。

その動けなくなる限界点が他人より低いというだけで、誤解され爪弾(つまはじ)きにされた。


俺も沢瀬もそんな蒼を助けてやることが出来ず、ただ側に付いて居るだけだった。

それでもせめて壁役は務めようと俺は柔道を、沢瀬は空手を習い始めた。 沢瀬が

現在空手二段であることは、蒼にだけは絶対に秘密にするように云われているが。



『 あんたたち・・・何か面白そうな組合せね! 』


そんな不器用3人組に声を掛けてくれたのが五十嵐だ。 そして相方の伊藤。

この2人には助けられた。 蒼が誤解されずにクラスに馴染むことが出来た。



それと高梁、美少女顔同士でシンパシーを感じたのか? 人見知りな蒼が会うなり

懐いた稀有な男子。 あいつの存在も大きい。 蒼があれだけ自然に、柔道部の面子

に馴染めたのは、多分高梁のおかげだろう。 俺だけならどうなっていたことか?


まぁこいつも随分と丸くなっているから、中学時代の様にはならなかったろうが。



・・・それでも、五十嵐と伊藤には言葉にならない程に感謝している。



んっ?・・・足音が聞こえて来たな・・・2人? 音も軽い、沢瀬と五十嵐か?


「よしよし、ちゃんと扉は開けたままね」と、五十嵐が揶揄う様に言ってくる。


中学生になった辺りから、蒼と同室する際には扉を開け放しておく癖が付いた。

沢瀬の指摘があった。 『女性と2人きりになる際のマナーですよ』とか何とか。

本来は少しだけ開けておくものらしいが、蒼が中途半端を嫌うので全開にする。

多分、少しでなく全開に変えることで、俺は女じゃないと主張したいのだろう。


「んっふぅ、よく眠っているようね・・・じゃあ沢瀬、始めるわよ!」


何をするのかと思ったら、暇潰しに蒼のメイクをするそうだ。 出来るのか?


「当ったり前よ!メイクくらい出来て当然でしょ、自分でやるしかないんだから」


意味の無い質問だった。 蒼が凄過ぎてバグっていたが、こいつらだって大企業の

社長令嬢だ。 社交の場の一つや二つは経験済みだろう。 化粧くらいは出来る筈。


・・・ということで、用無し男は部屋から追い出された。『楽しみにしててね!』

と言われて。・・・困った、楽しみにしている自分を否定出来ない。 すまん、蒼。

お前は嫌だろうが、俺はお前が化粧したらどうなるかを見てみたい。多分伊藤も。




   ◇ ◇ ◇




明晰夢というものがある・・・見ている当人が夢だと自覚出来る夢で、内容を自在

に操作出来ることもあるし出来ないこともある。 俺は大概後者なのだが、明晰夢

でない夢とはどんなものなのかと思っている。だって俺は明晰夢しか見ないから。

というか、夢か夢でないかくらいはすぐに判るだろ? 周りを注意して見回せば。


夢の場合は何処かしらにおかしな処がある。陰影とか音とか温度とか手触りとか。

或いは景色そのものとか。 例えば俺が今いる処、防波堤横の歩道なんだが鎌倉に

着いた時に見えたものじゃなくて、和歌山県南部(みなべ)の辺りに似ている。 俺は鎌倉に

居る筈なのに。しかもベッドで寝てる筈なのに夜の南部で佇むなんてあり得ない。


・・・そんな感じだから、慣れれば誰でも簡単に夢か否かの判別は出来ると思う。

その後で自在に夢を操作出来るかどうかは別問題。 どうしたら確実に出来るの?


・・・・・・・・・


まぁ、今回のように悪夢でない場合は操作なんかする必要は無いが。 そもそも夜

の海辺に佇む夢なんか見る意味も無い。 何で俺はこんな夢を見ているんだろう?

俺は南部に何か執着があったのだろうか? そういえば何か凄いなと思ったかな?



・・・そうだ! 学校だ! 小学校と中学校が国道沿いに並んでいて、調べたらすぐ

近くに高校もあって、駅近くに自動車学校もあって、何故か歯医者ばかりが3軒も

集中していて、図書館や郵便局や交番や銀行も集中してるのに、町役場だけが外れ

にポツンとあるという・・・便利なのか便利でないのかよく判らない町作りをみて

どんな経緯でこんな結果になるんだ? と疑問に思ったものだ。特に歯医者3軒。


・・・そのよくわからん町作りが心に残った結果が、夜の南部散歩になったのか?

同じ思い出リピートなら、わんわんランドの方がずっと良かったのに! 試すか?

試してみるか⁉ わんこ召喚!! 来たれ! わんこ共!! 我が求めに応えよ!!


・・・判ってた。 来るわけないわ。 涙かな? なんか顔が・・・冷たいような?

・・・いや、ホントに冷たいぞ! 雨か? 顔だけ?・・・リアルで顔だけ濡れる?

雨漏りか!! エレベーターだけじゃなくて、雨漏り迄見過ごされていたのか!!


これはもう、一刻も早く目を覚まして対応せねば!!!




   ◇ ◇ ◇




「あー・・・やっちゃたのね?」「はい、やっちゃいました」「ふふ、素敵です」


姉ちゃんが溜息交じりに呟く。 五十嵐は呆然としている。 沢瀬は興奮している。

ちなみに雨漏りじゃなかった。 目を覚ましたら変身していた。 化粧ってすげえ。

鏡を見て思った。 流石にこれで『俺は男だぁ!』と主張するには無理があると。


「なあ、化粧ってホントすげえな! お前らもそう思わね? ねぇ?」


昂輝と伊藤は語彙力がどうかしたのか、『あぁ』とか『うん』とかしか言わない。

・・・何か反応が詰まらん。 俺自身が誰? こいつ? って思う程に大化けしたの

だから、もっと面白いリアクションとか称賛とかが有ってもいいと思うのだが?


「凄いです蒼先輩! 男の娘って進化したらもの凄い美女になるのですね! 私、

 生TSなんて初めて見ましたが、今の先輩なら雄雌入れ食い間違い無しです!」


田辺は相変わらずよく解からん評価をしてくるし・・・生てぃーえすって何なん?


「ふふ、男子高校生には目の毒ね・・・どのくらい掛けて化粧をしたのかしら?」

「軽く10分ほど、それ以上は・・・手が止まっちゃって」「蒼君も起きましたし」


姉ちゃんたち女子3人はメイクの話で盛り上がっている。


「・・・そうよね、普段がすっぴんだから、少し手を加えるだけで化けるのよね」

「簡単なナチュラルメイクであの化けっぷり・・・ホントにどうかしてません?」

「蒼君は素材がどうかしてますからね。本気でメイクしたらどうなるんでしょ?」


会話の内容から察するに、俺の変身はまだ第一形態でこの先にも第二,第三形態が

ありそうだ。なんか考えただけでわくわくしてくる。どんな変身になるんだろう?


そんなことを考えながら手鏡を見つめていたら、沢瀬が背後から抱き着いて来た。


「もっと色んな変身をしてみたいと思いますか?」


『おう!』と即答しそうになるところをぐっと堪えた。 沢瀬の笑顔に危険なもの

を感じたからだ。 嫌な予感には従うと決めている。 ここは慎重に答えるべきだ。


・・・・・・至近距離で見つめ合う俺と沢瀬。


「もっと色んな変身をしてみたいと思いますね?」


『ひぇ!』と声が出そうになるところをぐっと堪えた。 沢瀬の笑顔に尚更危険な

圧力を感じたからだ。 この圧力には従うと決めている。 もはや諦めるしかない。


姉ちゃんと五十嵐が沢瀬にグッジョブサインを突き出せば、沢瀬もそれに応える。

昂輝は黙祷し、伊藤は手を合わせている。 ご愁傷さまじゃねーよ! 他人事かよ⁉

・・・他人事だな。 一応は昂輝と伊藤は化粧しないのかと聞いてみる。即否定。



成程・・・つまりはそういうことか。



俺の鎌倉生活が、着せ替え&お化粧遊び一色に染まることが決まった瞬間だった。

4人乗りミニバン:いわずと知れたアルファー〇ですね。

茜のサークルでは同車を全5台使用していますが、4人乗りは茜&蒼専用車です。

他は7人乗りの最上級グレードで色は全てホワイト。 法人所有のリース車です。

同じ車種に統一するのは操作性や運転感覚を変えない為で、当然の配慮でしょう。

他にも隘路用に軽ワゴンを3台使用しているお金持ちなサークルです。

正規メンバーは成人限定で、現在12人。 櫻崎や田辺は茜の内弟子扱いです。

サークルの要求レベルが高く、他の漫研部員は内弟子にすら成れていません。

商業誌デビューが可能なレベルであることが、参加の最低条件になっています。

あとは茜に付き合えるメンタルの強さと、社会人として最低限の一般常識の保持。


田辺にも負けた:蒼が大阪からの移動と連戦で弱体化していた為。

        実際の腕力比較評価は大体以下の通りになります。

        沢瀬 > 極僅差で 茜 ≧ 五十嵐 ≧ 蒼 > 田辺

        五十嵐は高校女子としては最上級のフィジカル。

        単純に沢瀬がスーパー女子高生ということです。

        目立ちたくなくて、その実力を隠しているだけ。


旭ちゃん:女子柔道部顧問で国語担当且つ2A担任の望月旭二段 (26歳:女性)


蒼が寝技で強い理由:周りは分析出来ても、意外と本人は解からないものです。


作業を厭うた:弁明よりも行動で、実力で解からせるという意地っ張りが蒼です。

       テストで満点に拘るのも、努力して何でも器用に熟すのもその為。

       それが逆効果になっていることに、気付かなかったのも蒼らしさ。


南部の辺り :合同合宿で白崎観光を行った帰りに、観光を兼ねて海沿いの国道

       42号線を南下したので、漠然とその辺りの風景が脳裡に残った。

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