016_強化合宿なのか?
何でこの内容で本文8000字超え? 読み辛くね? 冗長じゃね? な原因は、
モノローグ担当の蒼が、BL漫画を描き上げて2日しか休養してないから。
体力が回復しておらず、グダグダな状態の蒼は軽くダークモードが入るから。
水練合宿から18日・・・奇しくも同じホテルで同じ二泊三日の運動部強化合宿。
「合宿と云いながらも、その実態はただのお遊び」 「まぁ・・・俺たちは・な」
8月1日から3日まで、俺たちは部活の合同合宿と称してまたも白浜に来ている。
何故水練合宿と同じ場所なのか? 何故またも白浜なのかというと、先代理事長の
出身地が白浜だからだ。 その関係があったり自身でも経営するホテルがあったり
で、帝山学園と白浜温泉旅館協会とはかなり深い親交関係が結ばれていたりする。
そしてその親交関係により、かなり割安に宿泊出来るというメリットがあるのだ。
もちろん協会側にも、安定的且つ将来的な宿泊客確保というメリットが存在する。
若い俺たちに、近場にいい宿があると覚えて貰うことは未来への投資となるのだ。
・・・そんなわけで、帝山学園運動部の合宿先は水練合宿と同じく白浜が定番だ。
もちろん宿泊料金だけが定番になる理由ではない。 スポーツの強豪校として有名
な白浜学園高校が近いということも、白浜を合宿場所に選ぶ理由になっている。
というか、此処で合宿を行う最大の目的が白浜学園高校との合同練習にあるのだ。
・・・男子柔道部を除く全ての合宿参加クラブは。 何故男子柔道部は除くのか?
その理由は簡単、白浜学園高校男子柔道部のレベルが低くて練習にならないから。
何故か俺たちの世代だけ、帝山学園男子柔道部のレベルが突出してしまったから。
何故かスポーツの名門校なのに、格闘系はさっぱり弱いのが白浜学園高校だから。
合同練習というより、一方的な扱きになりかねないので、俺たちは引率役の中根
と一年生4人のみが合同練習組となった。 それで丁度いいレベルの相手なのだ。
というわけで俺たち柔道部2年5人とその他11人を残して、合同練習御一行様は
6km離れた白浜学園高校へと向かっていった。 山田は合同練習が無くなった時点
で合宿不参加を表明し、今頃は何処かの山でサバイバルキャンプをしている筈だ。
山田のサバイバルキャンプは凄い。キャンプを自称しているが実際は完全に野宿。
着の身着のままにナイフ一本だけで、他は全部現地調達、虫とか雑草とかを喰う。
如何なる災害に遭遇しても困らないだけのスキルを身に着けたいらしいが、何が
そこまで山田を突き動かすのだろう? ちなみに学業も優秀で常に学年10位以内。
柔道だってルール無視の悪癖がなければ、斎藤と№3を争う多才な変人が山田だ。
そんな山田のことは置いといて、柔道部以外の11人だが生徒会役員が7人で一般
の生徒が4人となっている。 生徒会役員は丁稚奉公させられた水練合宿の代わり
に遊んでねという学校からの計らいで、一般生徒は宿泊費自己負担でバスの空席
分募集される特別枠だが、水練合宿から間が無い事も有って毎年応募者は少ない。
今年は沢瀬と田辺と田辺の御守2人で合計4人も居るが、去年はゼロだった。
「それにしても、あの部屋が一泊八千円は破格ですね」
「正規料金だと、一泊ひとり三万五千円だそうです」
「元々帝山学割で半額になるのに加え、団体扱いになるからね。 しかも往復は
合宿のバスに便乗出来るわけだから、かなり割安なリゾートになるよね?」
「瑠香ちゃんは水練合宿のリベンジですね」 「あのときは悔しがってたもんね」
沢瀬の感想に田辺と伊藤が答え、仁宮さんと小田部さんも加わる。
確かに二食付きで八千円は破格だろう。 昨年と同水準なら夕食だけでそれぐらい
になると思う。 朝食や宿泊も考えたら赤字じゃなかろうか? 団体だとそれだけ
食材費や人件費の節約になるのだろうか? 具体的な数字が知りたくなってくる。
・・・だが、そんなことより
「伊藤は一緒に行かなくてよかったの?」 と聞いてしまう。
「田辺が居るからね、どうせ何か食べに行くことになると思ってこっちを選んだ」
成程と思う。 この場に居ない10人だが、車内で出されたサンドイッチだけでは
物足りないと言って途中にあった焼肉屋に向かった。 だけど伊藤だけは残った。
柔道部の連中程ではないが、こいつだって結構食べる筈なのに? な疑問だった。
「伊藤って焼肉嫌いだった?」 「そうじゃなくて、軽食後に焼肉は重いかなと」
「それじゃあ、何を食べるかは蒼先輩に選んで貰いましょう」
「蒼君は車中ではずっと居眠りで何も食べていないから、お腹空いてますよね?」
思わぬ方向から流れ弾が飛んできた。 正直食欲なんて無いのだが・・・
「じゃあ、お蕎麦で・・・」
・・・全員から却下され、結局スイーツが美味しいというお店に決まった。
女子連中はパンケーキやらクレープやらを食べていたが、俺はアイスクリームで
伊藤はフルーツサンドを選んだ。 伊藤・・・それも結構重そうなのだが?
フルーツはともかく、たっぷりな生クリームは見ているだけで胸焼けしそう。
右を見ても左を見ても生クリームが目に映るから、目を瞑ってアイスに集中。
生クリーム・・・カロリーと栄養価の高さは素晴らしいが、あの・味がなぁ。
「ふーん、向こうはアドベンチャーランドに行くことに決まったみたいだね。
みんなはどうする? 場所は・・・結構近いから現地集合ってことだけど?」
バニラ、苺、チョコを完食し、最後の抹茶を楽しんでいた時に伊藤からのひと言。
アドベンチャーランドか・・・動物大好きな斎藤が喜びそうだな。 高梁も大好き
そうだし高梁が行くなら八鹿も行くだろう。 でも昂輝が行く理由が思い付かん。
ましてや俺が行く理由等、尚更思い付かん。 ・・・明日の為にスルー確定だな。
「わんこと触れ合える施設があって、そこの予約が取れたらしい」
・・・行くに決まってるじゃん! 明日の予定なんか、明日考えたらいいじゃん!
◇ ◇ ◇
というわけで、やってきましたわんわんランド。 わんことの触れ合いタイム!!
人生最高のひと時! 今年の強化合宿はこの為にあったのかと思える至福の時間
・・・たったの15分。せめて1時間55分にならない? 無理ですか・・・残念。
たった15分の逢瀬・・・わんこ達は今日のお仕事終了らしい。 お疲れ様でした。
・・・でも・・・名残惜しいなぁ。
そんなことを思ってしまった・・・時のこと。
「美倉の家は金持ちだろ? 自宅で好きなだけ飼えばいいのでは?」という筋肉の
脳筋発言には少しイラっとした。 命は金だけで飼えるもんじゃねーんだよ!!
ペットを飼っていいのは、最後まで面倒を看られる自信がある奴だけなんだよ!
・・・・・・・・・
・・・残念ながら、俺にはその自信が無い。
ホントに無神経な奴だ! そんなだから、わんこ人気も斎藤と並んで最低なんよ!
・・・少し、いい気味だと思う。
ちなみに斎藤は無神経じゃない・・・実際わんこ人気に無神経かどうかは無関係。
トレーナーのお姉さんが言っていたので、多分間違いないと思える情報によれば、
大事なのは見た目と雰囲気と落ち着き。 小さく威圧感の無い見た目、優しそうな
雰囲気に落ち着いた所作、それら全てが組み合わさってわんこ人気に繋がるのだが
斎藤と筋肉は3つ全てが低評価。斎藤、せめて落ち着け、興奮するな、犬追うな。
まぁ落ち着きがあって、追いかけ回さなくても巨体と威圧感だけで駄目だけどな。
昂輝や八鹿の場合はそれ。・・・昂輝、落ち込むな、後で胸を揉ませてやるから。
そんなことを言ったら沢瀬に睨まれた・・・これは、後で怒られるかも知れない。
「だから口は禍の元って言うでしょ」と言ってくる高梁がわんこ人気断トツ1位。
わかりみしかない。高梁の側って凄く落ち着くから。にやこたもすぐに懐いたし。
2番人気が副書記の友利さん、多分2年で多分女子、いつもぽけーってしてる人。
伊藤にあの人大丈夫なの?って聞いたら、正書記がしっかりしてるから大丈夫と
云われた。 ・・・つまりはそういうこと。 ぽけーっ が、通常運転だってこと。
そして3番人気というか、3番手グループが残るその他大勢。 俺を含む10人
が適当に、満遍なく対応頂きました・・・お犬様方から。 あの子らプロだわ。
わんわんランドに於ける愉悦の15分の後、適当に小動物と触れ合ったり大動物を
眺めたり買い物したりと楽しんで、4時に門を出た。 ホテルに5時集合だから。
「俺・・・やっぱり筋肉を付けたい」 のひと言に沢瀬が冷静且つ的確に答えた。
「蒼君と高梁君との違いは筋肉じゃないですよ。 蒼君もわんこが好き過ぎです」
その言葉に多くの者が首肯する。 斎藤も筋肉も昂輝も、嫌われカルテットの3人
が何度も頷くなか、八鹿だけはそれ程気にしていない。 ホントにこいつは高梁に
夢中なんだな・・・高梁には樹原さんという想い人がいるのに。上手くいかんね。
それはそうと・・・高梁は八鹿に返事をしたのだろうか? なんてことを考えた。
・・・俺から聞くことではないと思いもしたが。
夕食は恒例なのかビュッフェ式、和洋中と彩り豊かだが・・・好きなものが無い。
時間の無駄だから出て行きたいところだけど、テーブルで田辺たちが待っている。
チョコケーキとミルクだけでいいかと思えば、沢瀬がチキンサンドも載せて来る。
「食欲が無いのですか?」という質問に、素直に「普段から無いよ」と答える。
困った顔をして「それくらいは食べましょう」と言ってくるから頷くしかない。
普段から食欲は感じない。好きなものを選ぶことでなんとか食事になっている。
だからビュッフェ式は難しい。食欲が無い者を対象としたメニューが無いから。
だからビュッフェ式は難しい。無理に流し込むだけの食事は苦行に等しいから。
・・・結局チキンサンドに手を出すことが出来ず、最後は昂輝に食べて貰った。
なんでビュッフェ式には、カロリーブロックやビタミンゼリーは並ばないんだ?
念の為に、持参はしてるけどさ・・・本当は持ち込みなんかしたくはないのに。
そんな不満を感じながらの入浴・・・そして就寝だが。
大浴場は昨年同様NGだったので、狭い部屋風呂で寂しく一人温泉。
夜は同室の高梁に『ひとつのベッドで寝ようぜ』と言ったら断られた。
『ベッドデカいじゃん、何で?』に対し『もう無理だから』の謎回答。
仕方ないので、誘われるがままに沢瀬の部屋で一緒に寝ることにした。
枕が変わると、知ってる匂いが側にないと落ち着いて眠れないからね。
更に言えば、誰かに添い寝して貰った方が深く眠れて疲れも取れ易い。
そう説明しても納得いかないのか、猿石先生他関係者一同の溜息は止まらない。
沢瀬の部屋から出て来るところを、鹿原先輩に見咎められた朝のことだった。
次からはマイ枕を持参にしろと皆に言われた。 そういやその手もあったか?
『それで添い寝はどうしろと?』と聞いたら『知るか⁉慣れろ!』と返された。
・・・それが出来たら苦労は無いのに。
そんなこんなで、合宿?のメインである2日目が始まった。
「美倉・・・あんた、ホントに男なの?」
食後のコーヒータイム、五十嵐が何とも言えない表情で話しかけて来た。
「男だぞ、何なら一緒に風呂に入って確認するか?」
「入らんわ⁉ って、何でそんな科白を当たり前のように口から出せるのかな?
沢瀬から聞いたよ。 昨夜一緒・・・同衾しても、美倉はすぐに寝付いたって」
「寝つきがいいって、健康的でいいじゃん。 何か問題あるのか?
ひょっとして、あれか? エロ? そんなん、必要ならするだろうし、
必要無いならしないだけ。 あと、朝から猥談は止めた方が良くね?」
俺の当然の発言に五十嵐が絶句し、昂輝がフォローを入れてくれる。
「・・・蒼はこういう奴だし、沢瀬もそれに慣れている」
・・・何とも微妙なフォローだな、もう少し上手い言い回しは出来無かったのか?
まぁ五十嵐含め、聞き耳を立てていた連中も納得したようだから良かったのか?
8時に合同練習組を見送る。 男子柔道部の引率役は今日も中根。 斎藤や高梁が
変わろうか? と言っても、『主将だから』な面倒見の良さと責任感が中根の長所
であり弱点でもある。 何でも抱え込む悪癖があり、将来はきっと苦労するだろう。
そう、丹羽先輩が引退した後の新主将は中根が選ばれた。 筆頭候補だった昂輝が
辞退したからだが、辞退理由が実に昂輝らしいので誰も反論出来ず中根になった。
「藤堂先輩の辞退理由って何なんですか?」 「本人の目の前で俺に聞くな」
田辺が聞いてくるので本人に直接聞くように伝える。
それで回答を得られないなら・・・潔く諦めろとも。
「藤堂先輩! どうして辞退したのですか?
蒼先輩を賭けた一騎打ちで、ヤクザ先輩に負けちゃったんですか?」
案の定田辺は昂輝に喰い付いて離れないし、昂輝は辞退理由を口にしない。
・・・それにしても田辺の創作設定は酷い。
「藤堂君に ( 田辺ちゃんを ) 押し付けましたね?」
沢瀬の言う通りだ。 俺は田辺軍団を昂輝に押し付けて静かな時間を手に入れた。
そうやって沢瀬の膝枕で居眠ろうとしている。 バス最後尾の5人席を占拠して。
俺たち男子柔道部2年と、映研女子4人組と生徒会7人からなる16人は、当初の
予定通りに白崎海洋公園を目指して阪和自動車道を北上している。目的は観光だ。
「辞退理由は何だったんです?」 「イケメンだからだよ」 「あぁ・・・」
小声の問いに小声で答える。 しっかりと伝わったようで、しきりに頷いている。
昂輝を他の学校に放流すると、何人もの女生徒が引き寄せられる現象が発生する。
どこかアユの友釣りに似ているから、長身筋肉イケメン友釣り現象と名付けよう。
引き寄せられるのが雄か雌かという違いはあるが、別にどうでもいいことだろう。
・・・時にはストーカー化する友釣り女子を、昂輝は非常に苦手としているのだ。
長身筋肉には長身筋肉なりの、イケメンにはイケメンなりの苦労があるのだろう。
・・・まぁ、同情はせんがな・・・長身筋肉イケメンには同情の余地など無い!
◇ ◇ ◇
実際に目にした白崎海岸は、ネットで見た写真以上に、日本離れした風景だった。
天候にも恵まれたおかげで、海の青と石灰岩の白のコントラストが見事に映えた。
【幼馴染】の撮影で、田辺とキャッキャウフフしていたら、筋肉に『お前ら・・・
何をやってるんだ?』と不審者扱いをされた。百合派でなくBL派なのだろうか?
しらす丼が美味しかった。 ミニサイズが無かったから昂輝に少し助けて貰った。
漁船に初めて乗った。 漁船風じゃなくて、本物の漁船。 夏の旬魚はハモらしい。
最早目的不明となっている強化合宿だが、2日目はかなり充実したものになった。
・・・夕方までは。
◇ ◇ ◇
夕食はメニューを見ただけで部屋を出た。 前菜とデザート以外食べるものがない
のは問題無いが、部屋中に肉の匂いが充満するだろう状況は耐え難いものだから。
そんな状況を我慢する時間等、全く無駄でしかないので迷わず次善策を検討する。
選択肢は3つある、①.食べない ②.喫茶コーナーで軽食 ③.部屋で携帯食
個人的には①だが、沢瀬が心配するから②か③の二択かな・・・悩ましいものだ。
取り敢えずは喫茶コーナーに行ってみて、メニューを見てから考えることにした。
バターとマヨネーズ抜き、調味料は塩と黒胡椒だけの玉子サンドというオーダー
が通ったので、それとストレートティーをアイスで頼んだ。 あと抹茶セット。
「私はすぐに戻るから・・・」 「それでも、人数分の注文はマナーなので」
部屋を出てすぐ俺の後を追って来たのは鹿原先輩だった。生徒会長としてなのか、
柔道部長としてなのかは不明だが、もうすぐ夕食が始まるから手早く済ませよう。
「沢瀬の件ですか? それとも食べる気は無くても席は立たない方がいいとか?」
「・・・両方よ」
「じゃあ先ずは後者から、時間の無駄だし肉の匂いが嫌なので部屋を出ました」
「そこまでお肉が嫌いだった?」 「体調により許容限界が変わるだけですよ」
「偏食を治したいとは?」 「栄養とカロリーの摂取以外は余計なことですね」
「・・・・・・」 「ただ同じ食べるなら、好きなものを選ぶというだけです」
「状況確認頂けたようなので、次は沢瀬の件ですが・・・同衾は駄目ですか?」
「当然よ!・・・と言いたいけど、ちゃんとした理由が必要ね」 「もちろん」
俺のストレートな物言いに少し驚いた先輩も、すぐに平静を取り戻したようだ。
「ぶっちゃけただの世間体よ。 学校としても、部活としても、変に勘繰られたり
おかしな噂を流されたくないの。そのくらいは聞き分けて貰えないかしら?」
「それを、教師が言えば角が立つから先輩が? 何故先輩がそこまで?」
「美倉君のことだから、先生が言っても聞きそうにないからよ。違うかしら?」
「違いますよ、相手に関係なく俺の言動は変わりません。 昂輝が言っても同じ」
「・・・今日も同衾するつもりなの?」 「はい」 「必要なの?」 「はい」
「そこがよく解からないのよね?」 「理解を望んでませんし、期待しません」
「随分と・・・突き放してくれるわね?」 「お互いに仕方の無い事ですから」
「今朝、俺は理由を説明しました。 それが理解頂けないなら、それ以上の説明は
お互いに時間の無駄になるだけです。 建設的提案をしますから選んで下さい。
A:俺が今から帰宅する。 多分沢瀬や田辺たちも付いてくるでしょうが帰路の
安全は保障しますから問題ありません。 帰宅手段にも問題はありません。
B:既にこのホテルのスイートを押さえています。 学校も柔道部も関係なく、
俺個人で。そこに沢瀬たちも学校と関係なく、個人として同宿。の2案。
俺としては田辺たちが遊び足りない様なのでB案をお願いしたいのですがね。
・・・これが最大限の譲歩ですし、これ以上を望む権利は誰にも有りません」
「・・・選択っていっても、どちらも一方的で選択になってないじゃない。
完全に形式だけ・・・といっても、こっちが求めているものだって形式か。
もうBでいいけど、ホント、美倉君ってどっちが本当の姿なの? お気楽で
可愛い美倉君と、計算高くて冷徹無情な美倉君・・・私は後者は苦手だな」
「俺だって嫌ですよ。 面倒くさいから。 でもお気楽に過ごすにはしっかりした
土台が必要で、その土台を固めるには十分な準備と計算が必要なんですよね」
取り敢えず鹿原先輩には、ある程度は納得頂けたんじゃないかと思う。
単に色々と諦められただけかも知れないが、それならそれで構わない。
だって自分が我儘を言ってる自覚があるから。 てか、姉ちゃんと医者
の反対を押し切って、柔道やってる時点でどうしようもない我儘だから。
・・・だから、どうしても救急車のお世話になる事態だけは避けたいんよ。
と、自己弁護してみる。 ついでにメール送っとこ。 最上階に集合って。
沢瀬と田辺とにやこたと・・・念の為に五十嵐も。 映研女子全員集合だな。
・・・俺は女子じゃないけど。
にやこたの映研入部は今朝聞いた。
映研部の部室が如何に快適であるかを、田辺が熱弁したらしい。
部室の居住性が優れているから・・・って、考えてみたら凄い入部動機だな。
でも普通の部屋よりもスイートの方が、快適だから選んでしまうのと同じだ。
だから普通に、そんな動機も有りだな。
◇ ◇ ◇
3日目の昼食に、白浜学園高校運動部の部員と生徒会役員を招いて互いの親交を
深めるのが恒例になっているのだが、帝山男子柔道部2年は1年生引率の中根を
除いて全員ボイコットを表明済み、猿石筆頭顧問からもお墨付きを貰っている。
『自分たちの努力不足を棚に上げ、努力して強くなったお前たちに
参加自粛を要請してくるような連中に、礼を尽くす必要等一切無い!』
御墨付というより指示に近いし、逆に出ろと言われても誰も出なかっただろう。
というわけで、俺たちの3日目午前の予定は白浜観光。
先ずは京大白浜水族館、次に千畳敷、最後は三段壁洞窟の定番・・・定番かな?
京大白浜水族館・・・ふむ、無脊椎生物が多いのか、京大も色々やってるなぁ。
「山田が居なくてよかった」
千畳敷で斎藤が漏らした言葉。 確かに山田なら処構わずに昇り降りして騒ぎを
起しただろう。 あいつは観光地に連れて行くべきではない。 特に自然の景勝地。
山田を知らないにやこたの2人は意味が解からず、しきりに首を捻っている。
「東尋坊を素登りして、傾斜のキツい道と言い切った奴だ」と教えてやるが、
東尋坊がイメージ出来ないのだろう。 スマホで検索してやっと解かった様だ。
「あいつ・・・今頃・何処で・何を・やらかしているのかな?」
斎藤の言葉に、誰もが思ったことは『 せめて警察の世話にはなるな 』だった。
後日尋ねたら、三重県の大丹倉を素登りしたとのこと。
「東尋坊よりキツい・・・殆ど道とはいえない道だったな」
国土交通省の役人さん・・・山田に道とは何かを教えてやってくれ。
白浜温泉旅館協会:一応調査・確認済みですが実在する団体ではありません。
もし同名団体が御座いましたら・・・どうかお目溢しを。
白浜学園高校も、本作執筆時には存在しておりません。
今後様々な団体名が出て来るでしょうが基本は同様です。
募集される特別枠:実は協会側からのお願い。 合宿のついでに一人でも多く来て
欲しいのは、学生の団体と一般客の混在を避けたい為。合宿先
となるホテルは、期間中を関係者だけで一杯にしたいらしい。
去年はゼロ:去年は茜と沢瀬と田辺がマイカー移動、ホテルのスイートに先乗り。
今年は茜が別冊本の出版絡みで時間が取れなくなった為、不参加。
尚、去年茜が先乗りした理由は合宿時に於ける蒼の体調管理の為。
筋肉 :008を参照。 風紀委員の坂口先輩です。 多分蒼は名前を覚えてません。
にやこた :田辺の友達の仁宮さんと小田部さんを纏めた呼称。
高梁には樹原さん:匂いを元にした蒼の推察ですがビンゴです。
匂い関係なく周りにはバレバレで、咲羽ちゃんの泥棒猫
発言はこの2人が結び付く運命にあるとの思い込みから。
蒼はこういう奴:食欲と性欲に関しては、何処か壊れている可能性があります。
或いは疲労が原因で、それどころではないのかも知れません。
睡眠欲に関しては、疲れ易くてすぐに電池切れするだけです。
最後尾の5人席:帝山学園使用のバスは基本全てアストロメガの帝山学園仕様。
1台1億円もするバスを予備含め30台用意し、普通の中型
バス並みの料金で貸し出しているのは、蒼の母親が経営する
美倉観光の協力そのもの。ちなみに蒼の母親も茜も帝山OG。
蒼が2日目の夕食であっさり部屋を出た理由は、会席膳なので席が決まって
おり周りが全員男子柔道部員で、田辺たちを気遣う必要が無かったからです。
柔道部員同士は気を置けない関係になっている為、皆勝手気儘に行動します。
京大白浜水族館:白崎海洋公園も含め、このような扱いなら実在する施設でも
問題無いかな? と考えました。 迷惑になってませんよね?




